こんな方に向けた記事です。
合唱において、上質な演奏をするにはきちんとポイントを押さえて練習することがとても大切です。
ですが合唱に関するしっかりとした知識を持っている人は多くありません。
この記事では合唱曲『時の旅人』の歌い方のコツについて、合唱歴10年以上、合唱指揮者歴5年以上の筆者が、どこよりも詳しく解説します。
そのため、この記事を読みながら練習に取り組めば、確実にワンランク上の演奏を目指すことができるはずです。
- 冒頭…1~10小節
- A…11~18小節
- B…19~23小節
- C…24~31小節
- D…32~43小節
- E…44~51小節
- F…52~59小節
- G…60~65小節
- H…66~80小節
もくじ
合唱曲『時の旅人』パート練習のコツ【歌い方を解説】
全体練習の前にまずはしっかりとパート練習を行いましょう。
パート練習では次のようなことが大切です。
- 各パートの音をしっかり取る
- パート内で音を合わせる
- パートごとの課題を克服する
『時の旅人』のパート練習でやっておくべきことに関しては以下の記事に詳しくまとめてあるのでご活用ください。
合唱曲『時の旅人』歌い方のコツ【全体練習のポイント】
ここからは『時の旅人』の歌い方のコツを解説していきます。
特にアンサンブル(全体練習)に特化した内容になっています。
【冒頭】ユニゾンを充実した響きにしよう
冒頭、2小節の前奏の後歌い始めます。非常にインパクトがある出だしです。
ここでのポイントはユニゾンを充実した響きにすることです。
楽譜を見ると”めぐるめぐる”ではソプラノ・アルト・男声が同じ音を歌っていることが分かります。
また、”めぐる”という言葉を伝えることも大切です。案外”めぐる”は伝わりにくい言葉だからです。
”えぐる”に聞こえないように、mの子音をしっかりと響かせましょう。
【練習番号A】テヌートで前半の盛り上がりを作ろう
11小節目~【A】です。【冒頭】の繰り返しのフレーズとなりますが違う部分もあります。
ここでは曲の前半の盛り上がりを作ることを意識してみましょう。
強弱を表す記号が次のようについています。
- ”ぼくらは”から歌い出すところ…クレッシェンド
- ”たびびと”と伸ばして終わるところ…デクレッシェンド
つまり、このフレーズは大きなクレッシェンド&デクレッシェンド(大きくしてから小さくする)のフレーズとなっています。したがってどこかに音量の頂点があるはずです。
そのヒントになるのがテヌートの記号です。テヌートがついた音は充実した響き、重ためのタッチが求めらますので、ここが頂点と考えて良いでしょう。
【練習番号B】強弱変化を整理して歌おう
19小節目~【B】です。ニ短調へ転調します。物悲しい雰囲気ですね。この5小節間は次の【C】へのブリッジ(繋ぎ)的な役割の場面となっています。
ここでは強弱の変化を表す記号に注目です。流れを整理しておきます。
- アルトがmpで主旋律を歌う
- ソプラノ・男声が合流、まだmp
- 小さなクレッシェンド&デクレッシェンド
- ”ともだちだった”でmfにアップ
- ロングトーンでデクレッシェンド
このように強弱を細かく変化させる必要があります。しっかり把握して、どんなふうに歌ったら良いか頭に思い描きましょう。
【練習番号C】子音を生かして丁寧に歌詩を伝えよう
24小節目~【C】です。楽譜の指示にある通り「急がずに、語るように」歌う場面です。
ここでのポイントは歌詩をしっかり伝えることです。子音を生かして歌いましょう。
やや強調して発音しないと伝わらない言葉を挙げます。
- ”ぬぐって”のn
- ”みち”のm
- ”はな”のh
- ”ての”のt
音符が細かいですので最初はリズムが分からなかったり、間違えたりすると思いますので、ゆっくりめの速さで練習するのも有効です。
【練習番号D】転調を感じで明るい響きで歌おう
32小節目~【D】です。転調が印象的な部分です。
ここでは転調による色合いの変化を感じ取って歌うのが重要です。
- ニ短調(暗い調)→ニ長調(明るい調)
- accel.(アッチェレランド/だんだん速く)
このようなことから、音楽が前向きに展開していることが読み取れます。
不安でこわばっていた雰囲気から、明るく光が差すような雰囲気へほぐれていくようなイメージが感じ取れると思います。
【練習番号E】掛け合いからの一体感を意識しよう
44小節目~【F】です。fが登場して、ここから盛り上がるところです。
ここでのポイントは「掛け合い」からの「一体感」です。
まずは男声がメロディーを歌い出します。その後女声が合流しますね。
このような場合は次のことがポイントとなります。
- 掛け合い(ずれて歌う)…メロディーの引継ぎ、子音による入りのアピール
- タテ(タイミング)がそろう…一体感
”ひらこう”でタテがそろいますね。「なんとなく」ではなく意識的に「ここはそろうんだ」と気をつけることで一体感が生まれます。
【練習番号F】音量のバランスを取ろう
52小節目~【F】です。女声のリズミックで躍動的なフレーズが始まります。
ここでは女声と男声の音量バランスに気を使う必要があります。
- 女声(ソプラノ・アルト)…新要素。音域が低め
- 男声…【E】の繰り返し。音域が高め
女声が新しいメロディーを歌いますので、こちらが目立つように調整しましょう。
女声はソプラノ+アルトとなるので人数的には多いのですが、音域が低いので男声にかき消されないよう注意が必要です。
男声は(fではありますが)やや控えめに歌うなど工夫しましょう
【練習番号G】1曲を通してのクライマックスを作ろう
60小節目~【G】です。3パートそれぞれが異なるフレーズを歌って複雑な音楽をつくります。
最後の”うたおう”が『時の旅人』全体を通じて最も盛り上がるところ、クライマックスです。
アクセントも付いていますので、音を一つひとつ力強く歌い上げましょう。
- ここは曲のクライマックス
- ここは静かな場面
- ここは転調している
など、曲を分析することをアナリーゼと言い、構成感のある演奏をするために必要です。
詳しくはこちらの記事(【入門】合唱曲のアナリーゼ(楽曲分析)|やり方・ポイント【書き方の具体例あり】)をご参照ください。
【練習番号H】掛け合いで幻想的に、最後の和音を温かく
65小節目でMeno mosso(メノ モッソ/前より遅く)でテンポが変化し、ト長調に転調します。続く66小節目~【H】となります。
穏やかな曲調で、後奏のような場面です。
2つポイントを挙げたいと思います。
掛け合いで幻想的な雰囲気を醸し出そう
”ぼくらは たびびと”というフレーズでは3パートがそれぞれ違うタイミングで歌い出します。
この掛け合いを正確に歌うと「男声→アルト→ソプラノ」の順で次のよう聞こえます。
- ”ぼくぼくらはルルル”~
- ”たびたびびとルルル”~
- ”ときときのル”~
- ”たびたびたびびと”~
折り重なるメロディーを歌詩が輪唱のようで幻想的です。
この雰囲気が【G】の魅力です。しっかり表現しましょう。
最後の和音を温かく決めよう
最後の和音(”ララ”~)は、曲を締めくくる大切なハーモニーです。
コードネームで言えばGとなります。
【Gの構成音】
- 「レ」…アルト(↓)
- 「シ」…ソプラノ
- 「ソ」…アルト(↑)、男声
ここから分かるようにアルト(↑)の人と男声は同じ音「ソ」を歌っています。
お互いの音をよく聴き合ってぴったり揃えましょう。ハーモニーが美しくなりますよ。
きれいなハーモニーの作り方に関してはこちらの記事をご覧ください。
合唱曲『時の旅人』指揮・伴奏のコツ
ひとまず冒頭だけ取り上げています。
指揮のコツ
まずは指揮のコツです。
『時の旅人』は4拍子で1拍目から曲が始まりますので、曲の始め方としては
心の中で「3(サン)、4(シ)!」
と数えながら、「4(シ)!」で腕を振り上げて示します。
前奏の音量はff(フォルティシモ/とても大きく)ですから、ピアニストが大きく弾きやすいように大きく振り上げるのがポイントです。
「3(サン)、4(シ)!」だけで始める自信がない場合には、「1(イチ),2(ニ),3(サン),4(シ)!」と4つ数えても構いません。「4(シ!)」で大きく振り上げるのをお忘れなく。
伴奏のコツ
指揮のポイントで書きましたが、冒頭の音量はffなので思い切って弾き始めましょう。
2小節目に入ったところでデクレッシェンド(と同時にrit.)があります。
ここで音量を小さくしていくことで、次の合唱の入りを導くイメージとなっています。
まとめ:合唱曲『時の旅人』歌い方のコツ
- 【冒頭】ユニゾンを充実した響きにしよう
- 【練習番号A】テヌートで前半の盛り上がりを作ろう
- 【練習番号B】強弱変化を整理して歌おう
- 【練習番号C】子音を生かして丁寧に歌詩を伝えよう
- 【練習番号D】転調を感じで明るい響きで歌おう
- 【練習番号E】掛け合いからの一体感を意識しよう
- 【練習番号F】音量のバランスを取ろう
- 【練習番号G】1曲を通してのクライマックスを作ろう
- 【練習番号H】掛け合いで幻想的に、最後の和音を温かく
全体練習をしていると「ここの音が不安だな」「ここでリズムが合わないな」ということが出てくると思います。
そうしたときはまたパート練習に立ち返って練習しましょう。