音楽では伸ばす音(ロングトーン)の処理は重要です。
ここがしっかりしていないと全体的に雑な印象の演奏となってしまいます。
逆にここをしっかり押さえておけば、端正で上質な演奏に仕上げることができます。
この記事ではロングトーンが出てきたときにどんなことに気をつければ良いのかを解説します。
もくじ
【前提】ロングトーンが大切な理由
まずはそもそもロングトーンとは何なのか、そしてなぜロングトーンで気をつけるのが大切なのか解説したいと思います。
ロングトーンとその特徴
ロングトーンとは、長く伸ばす音のこと。
フレーズ(メロディーなどの一つのまとまり)や曲の終わりに出てくることが多いです。
白い音符で書かれていることも多いですね。
譜例を出してみましょう。
この場合、最後の白い音符(付点二分音符)がロングトーンの音となります。
このロングトーンはC-dur(=ハ長調)という和音になっていますね。
このようにロングトーンではなにかしらの和音になっていることも多いです。
ロングトーンが大切な理由
ロングトーンを上手に歌うと曲・音楽が美しく、そして説得力あるものに仕上がります。
これがロングトーンが大切な理由です。
逆にロングトーンが上手く歌えないとどうなるでしょうか?
パターン① 音を切るタイミングがバラバラ
ロングトーンが上手くいっていないパターンの例として、フレーズの終わりで音を切るタイミングがバラバラになってしまう、ということが挙げられます。
この場合、フレーズや曲の終わりがいまいち締まらないものになってしまいます。
結果として音楽の説得力、感覚的に言えばビシッと決まってカッコ良い感じが失われてしまうことになります。
パターン② 和音が決まらない
先ほど出した譜例ではロングトーンが和音になっていましたね、ハモっているということです。
和音が美しく響かないというのもロングトーンの処理が上手くいっていないパターンの例となります。
合唱ではハモりはとても大切な要素ですから、美しい和音を作りたい、聴かせたいということは常に意識して練習することになります。
このことからもロングトーンを意識する重要性が分かるかと思います。
次からは、もう少し具体的にロングトーンを歌う時、練習するときに気をつけることを解説していきます!
ポイント① 音符の長さを守る
ロングトーンを歌う際のポイント、1つ目は音符の長さを守ることです。
長すぎても短すぎても×
音符の長さを守るということは、つまり楽譜で指示されている音符の分だけ音を伸ばしましょうということですね。
- 長すぎても
- 短すぎても
いけません。
先ほどの譜例を再掲してみます。
この場合、最後のロングトーンは3拍分伸ばすことが指示されていますので、3拍分きちんと音を出し続けるのが大切です。
まずは音符の長さを覚えよう
ロングトーンの長さを守るためには、まずどれだけ伸ばすのが正しいのか、楽譜から読み取れるようにならないといけませんね。
楽典の本などを参照し、音符の見た目と長さの対応関係を学びましょう。
少しずつ覚えていけると良いですね!
切るタイミングは4拍目の直前!
ここが良く間違われるところなのですが、3拍で切るというのは、3拍目に入った瞬間に切るということではありません。
3拍目の間はまるまる音が鳴っている、すなわち切るタイミングは4拍目に入る手前ギリギリになります。
休符でのブレスを合わせて切り際を合わせる
ロングトーンの切り際を合わせるコツとしては、最後にブレスをして(息を吸って)音を切ることです。
先の譜例では4拍目に休符がありますので、ここでブレスを取ります。
このブレスをメンバー全員で合わせるように意識してみましょう。
ブレスのタイミングが合えば、自動的にロングトーンの切り際も揃います。
音を切る時は口を開けたまま、音だけ切りましょう。
口を閉じて切るとその瞬間に別の音がしてしまします。
「ップ!」みたいな感じですね。
音を切る際にブレス(息継ぎ)をするようにすれば、これも同時に防げます。
ポイント② 弱くならないようにする
2つ目のポイントは、ロングトーンの間小さくならないようにすることです。
無意識のうちに弱くなっていきがち
ロングトーンは他の音符よりも長い時間歌わなければいけません。
この時、無意識のうちに音が弱く、小さくなっていってしまうことが多いのです。
楽譜上で音量に関する指示(デクレッシェンドなど)が書かれていない場合、ロングトーンの間は同じ音量をキープするのが正解です。
だんだん強くするくらいのイメージで
音量を保つためには、ロングトーンの間、逆に少しずつ音を大きくしていくくらいのイメージを持っておくと上手くいきやすいと思います。
しっかり息を送り続けるのもポイントです。
長さを見越して息を吸う・使う
ロングトーンの途中で息がもたなくなってしまう場合、息の使い方を少し工夫してみましょう。
ロングトーンでどれくらい伸ばすかは、練習していくうちに掴めてくるはずです。
「これくらい伸ばすならこれくらいの息の量が必要だな」、と逆算してみましょう。
逆算した結果、今のブレス量では足りないとなれば、それを見越して「さらにたっぷりとブレスを取る必要があるな」と分かります。
息の使い方が上達すると、合唱そのものも上達していきますよ!
クレッシェンド・デクレッシェンドがつく場合
ロングトーンの音には
- cresc.(クレッシェンド/だんだん大きく)
- decresc.(デクレッシェンド/だんだん小さく)
- dim.(ディミヌエンド/だんだん小さく)
といった、音量を変化させる記号がつくことが少なくありません。
こういった場合にも息の使い方は変化しますので、計算に入れておく必要があります。
デクレッシェンドの場合、音量をだんだん小さくしていくので使う息の量は少なくて済みそうですね。
ところが下手に息を使う量を減らしてしまうと、後に述べるようにピッチが下がってしまったり、響きのない声になってしまいやすいのです。
クレッシェンドでもデクレッシェンドでも、基本的にブレスはたっぷりと取ると考えておくと良いかと思います。
ちなみに余談ですが、字で書かれる場合にはdecresc.よりdim.の方が良く見ます。
ポイント③ ピッチが下がらないようにする
ポイント3つ目は伸ばしている間にピッチが下がらないようにすることです。
ピッチも無意識のうちに下がりがち
伸ばしている間に音量が小さくなっていくのと同じく、ピッチが下がる(音が低くなってしまう)ことが良く起こります。
音が下がるということは、間違った音に変わってしまうということですので、メロディー的にも美しくありませんし、ハーモニーも狂ってきます。
声は斜め上に出すイメージで
声を伸ばすとき、音を真横に出すのではなく、目線のやや斜め上に向けるようなイメージで歌ってみましょう。
基本的にピッチというのは低くなってしまいがちですので、特に初心者の内は高め高めに意識をしておくのがコツです。
余裕を持ってブレスを準備しよう
音量を保つ場合もそうでしたが、ピッチの場合でもやはりブレスが大切です。
ピッチを保つのにもブレスが必要です。
余裕を持って準備することはロングトーンの間に音が下がってしまうことの対策になります。
周りの歌声も頼りにしてピッチを保つ
合唱では周りで一緒に歌ってくれている人がいます。
自分で気をつけるのも大切ですが、周りの人の声をよく聴いてピッチを揃えるということもぜひ意識しましょう。
ロングトーンでは音が持続する分、周りの音も聴きやすいはずです。
周りの声を聴くことは次に説明する内容、「ポイント④ 他のメンバーと音を揃える」にも繋がってきます。
ポイント④ 他のメンバーと音を揃える
ポイントの4つ目は他のメンバーと音を揃えることです。
先ほど述べたことと同じようですが、ピッチに加えて母音・音色・音量も意識して統一していくことになります。
音を揃えるということは合唱、というより音楽全般において常々大切になってきます。
これにより、純粋な美しい響きになりますし、人数を生かした迫力あるサウンドも作れるようになっていきます。
ピッチ・音色・音量を揃える
ピッチは音の高さのこと。
音色(おんしょく)とは声そのものや母音の質のことを指します。
これがメンバー同士バラバラにならないよう、響きを解け合わせるように歌うのが重要です。
音量に関しては、例えばp(ピアノ/小さく)という指示がされている場面で自分の声だけが大きすぎないか、ということがチェックポイントになります。
自分が声を出すことに一生懸命になるのではなく、周囲の音もよく聴くことが大切です。
音を揃えるときのチェックポイントをまとめておきます。
- ピッチ(音の高さ)
- 音色(母音の質など)
- 音量(自分だけ大きすぎないかなど)
パート間で同じ音を揃える
自分と同じパートの人は当然ですが同じ音を歌っています(div.がなければ)。
しかし同じ音を歌っている人は自分のパートだけでしょうか?
実は、他のパートの人が自分と同じ音を歌っていることも良くあります。
このロングトーンの場合、ソプラノとバスがドの音を歌っていますね。
オクターブ違っていますが同じ音です。
このような音がぴったり揃うと、全体として響きがとても澄んできます。
ロングトーンの際には、自分と同じ音を歌っているパートが他にないか探してみることをおすすめします。
メンバー全体で和音を作る
ロングトーンは和音になっていることが多い、と初めの方で述べました。
慣れてきたら、この和音を美しく響かせられるように挑戦してみましょう。
そのためには、自分の歌っている音や自分のパートの音だけでなく、和音全体の響きを聴くこと、そしてそこに自分の声が溶け合うように歌うことが必要です。
ピアノパートがつく曲の場合、もちろんピアノの音も聴いてみましょう。
まとめ:【合唱】ロングトーン/伸ばす音で気をつけたいポイント・練習法
それではまとめです。
ロングトーンで気をつけたいのは次の4点でした。
- 音符の長さを守る
- 弱くならないようにする
- ピッチが下がらないようにする
- 他のメンバーと音を揃える
全体に共通するコツとしては、周りの音を良く聴いて声を良く合わせること。
合唱をやるなら常に意識しておくべき重要なポイントですので、この点だけでも覚えておきましょう。
歌い方全般のコツをはこちらの記事(【合唱初心者必見】歌い方・発声のコツを総まとめ【上達スピード向上】)でまとめてますので合わせてご利用ください。