荻久保和明

『IN TERRA PAX(地に平和を)』(混声三部)の練習・演奏のポイント

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この記事では組曲『IN TERRA PAX』より『IN TERRA PAX(地に平和を)』(混声三部版)の練習・演奏のポイントをまとめています。

『IN TERRA PAX』(作詩:鶴見正夫/作曲:荻久保和明/音楽之友社)を参考にし、本文中で歌詩などを引用する場合には「””」で示しています。

『IN TERRA PAX』の練習番号について

以下の通り練習番号を設定して、解説を進めていきたいと思います。練習番号をつけると、曲全体の構成が分かりやすくなり、練習の指示出しもスムーズに行うことができます。

練習番号
  • 【A】…3小節 “In terra pax”
  • 【B】…12小節 (“さあ のべにでよう”)
  • 【C】…34小節 (“とくとくと”)
  • 【D】…52小節 “In terra pax”
  • 【E】…61小節 (“さあ そらをみよう”)
  • 【F】…83小節 (“さわさわと”)
  • 【G】…101小節 “In terra pax”

【A】【D】【G】が”In terra pax”で始まる、テーマ的なフレーズを歌う場面。その間に【B】【C】(1コーラス目)、【E】【F】(2コーラス目)の場面が挟まれているという構造になっていることが分かります。

『IN TERRA PAX』の練習・演奏のポイント

【A】3小節 “In terra pax”

豊かに華々しく歌う場面です。先程も述べましたが、テーマとなるフレーズです。

練習のポイントの一つはハーモニー。アカペラ(ピアノ伴奏なし)で、またテンポを落として一つ一つの和音を感じながら、確認しながら練習しましょう。

ソプラノ+アルト、ソプラノ+男声、アルト+男声などと、2つのパートを取り出して組み合わせで歌ってみると、「こんな音になっているのか」という発見もあると思います。

次に言葉。気をつけたいのは”あい”です。音符が短いので響きが乗らず、潰れた母音になりやすいです。丁寧に歌うことを心がけましょう。

“In terra pax”はラテン語で、”terra”が「地」、”pax”が「平和」です。日本語では特に語頭の子音が大切ですが、外国語ではそれと並んで語尾の子音も大切になります。

この場合だと”pax”の”x”が該当します。しっかり入れたい音になります。ただし、次の”ちきゅう”が遅れないように拍内で処理することが必要です。

【B】12小節 (“さあ のべにでよう”)

【A】がタテ(各パートの歌うタイミング)がそろった音楽(=ホモフォニー)だとすれば、【B】の場面は3パートがそれぞれずれてメロディーを歌うの音楽(=ポリフォニー)です。

ポリフォニーではいくつかポイントがありますが、ずれるメロディーの入りをクリアに歌うことがそのうちの一つです。”さあ”のsや”のべ”のn、”はらばい”のhなどの子音をうまく使うと、うまくいきやすいです。

表情の指示としては、”deciso”(意志的に)と書かれています。これに関しては、”さあ”の歌い方などにそのような「感じ」を込めたいところです。

26小節~は”brillante”(ブリランテ/輝かしく)のアルトが主役です。音量差もはっきりと書かれていますが、単純に大きい小さいだけでなく、ソプラノ・男声は背景でその中に主役のアルトが浮き上がる、というような、音楽の全体像をイメージすると良いと思います。

31小節から33小節にかけてはハーモニーとdim.の音の残り方を美しく。小さくなったときでも声の支えをキープすることが肝心です。

【C】…34小節 (“とくとくと”)

【C】もパートがそれぞれ掛け合うポリフォニー的な音楽ですが、【B】と比べると色合いが深まり、少しミステリアスな雰囲気も感じられます。

音量に関してはmpで始まり、クレッシェンドしてf、そして【D】へと繋がっていきます。そのような流れも頭に入れて歌い通すのが大切です。

46小節からはリズムの対比、51小節などは強弱とテンポの変化(poco riten.)を効果的に。

【D】…52小節 “In terra pax”

基本的に【A】と同様ですが、56小節からはどのパートがメロディーを歌っているかを意識しておくと良いでしょう。強弱記号で示されています。

【E】…61小節 (“さあ そらをみよう”)

【B】と同様に、ポリフォニーの歌い方と情景のイメージが大切です。

歌詞が異なるのでその点はしっかり伝えたいところ。ただし、母音のレガートな流れを妨げることがないように気をつけましょう。

【F】…83小節 (“さわさわと”)

やはり【C】と同様、言葉と情感を大切に。

【G】…101小節 “In terra pax”

【A】【D】と同様ですが、クライマックスの場面として、より響きの豊かさが求められます。ここで一層盛り上げられるよう、音楽全体の構成や体力配分を考えておきましょう。

109小節からは”ラララ”によるポリフォニーになります。16分音符の音の粒がクリアに出るように。スタッカートの音の粒をそろえる練習をしておきましょう。

ラスト2小節の”In terra pax”は特に重点的にハーモニーを確認しておきましょう。盛り上げることと母音の輝き、ハーモニーの美しさをそれぞれ両立する必要があります。このあたりもやはりアカペラで確認したい部分です。

最初に書きましたが言葉の上では”pax”のxは大事です。しっかりそろえられるよう、指揮も含めて練習しておきましょう。