こんな声に答えます。
『決意』は中学生向けのレパートリーとしては珍しく混声四部合唱で、冒頭にアカペラ部分もあって歌い甲斐のある作品です。
この記事では合唱曲『決意』の歌い方のコツについて、合唱歴10年以上、合唱指揮者歴5年以上の筆者が詳しく解説します。
この記事を読みながら練習に取り組めば、確実にワンランク上の演奏を目指すことができるはずです。
ボイントを押さえておけば、ただ闇雲に繰り返し練習する場合よりも何倍も効率よくレベルアップできますよ。
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もくじ
『決意』の全体練習(アンサンブル)のコツ
『決意』の解説は、次のように練習番号をつけ、それに従って進めていきます。
- 【冒頭】1小節~
- 【A】9小節~
- 【B】17小節~
- 【C】25小節~
- 【D】29小節~
- 【E】33小節~
- 【F】38小節~
- 【G】48小節~
- 【H】58小節~
- 【I】63小節~
- 【J】69小節~
【冒頭】アカペラでは端から端まで聴きあうこと
『決意』の冒頭は伴奏の無いアカペラ部分となっています。
アカペラでの最重要のポイントはメンバー同士の声をよく聴き合うことですが、他にもいくつかコツを紹介しておきます。
- メンバーの端から端まで聴き合おう
- 同じ音をチェックしてよくそろえよう
- 積極的に音楽を前に進めよう
1. メンバーの端から端まで聴き合おう
合唱をするときは数人~数十人で一緒に歌いますよね。
メンバーが並んだときに端っこにいる人から反対側の端っこにいる人まで、全員の声を聴くくらいの意識を持つことが、アカペラを成功させるコツの一つです。
また、普段とは並び方を変えることも有効です。周りにいるメンバーやパートが変わることで新しい発見ができるはずです。
2. 同じ音をチェックしてよくそろえよう
『決意』は混声四部合唱ですが、常に4パートそれぞれが違う音を歌っている訳ではありません。
よく見てみると、実は同じ音を歌っていることも多いです。
具体的には次のような箇所が挙げられます。
- 1小節目…アルトとソプラノの「ファ」
- 3小節目…アルトとバスの「ファ」
- 6小節目…ソプラノとテノールの「ド」
これらの箇所で同じ音がぴったり同じ音にそろうように意識して練習すると、ハーモニーが澄んだ響きに仕上がってきます。
3. 積極的に音楽を前に進めよう
【冒頭】のテンポはAndante con moto(歩くような進行感で、動きを持って)という意味です。
ピアノ伴奏がつく曲では伴奏が音楽を進めてくれるので、歌はそれに乗って歌えば良いことが多いです。
しかし最初の3小節分は伴奏がありません。なので合唱だけで音楽を進めなければいけないんですね。
そこで合唱が積極的に音楽を進めようと思わないと、音楽が停滞してしまいます。
【A】ユニゾンの部分に注目しよう
9小節目~【A】です。テンポ設定はModerato(中くらいの速さで)となっていて、【冒頭】よりは少し早くなります。流れのあるテンポ感となります。
歌い出しは全員が同じ音を歌うユニゾンとなっています。
また、11小節目からハモりますが、実はソプラノとテノールは全く同じ音を歌っていることを知っておきましょう。
このようなユニゾンではまず全員の音をしっかりとそろえることが大切です。
【A】では音量的にはmpとなっていて、大きく盛り上がるところではありません。
曲の序章、前ウタ的な部分となっています。ポップスで言うとAメロです。
このような部分ではしっかり歌い上げるよりは歌詩を語るような雰囲気を出していくほうが、曲全体の構成がはっきりします。
【B】強弱を上手く使って立体感を作ろう
17小節目から【B】です。スタートの音量はmpですが、ここではクレッシェンド・デクレッシェンドが多く書かれています。
特に意識しておきたいのはクレッシェンドの山(どこで一番大きくなるか)です。
【B】では”あいし”、”うやまい”という歌詩が<>の頂点になっていますね。
ここをめがけてクレッシェンド、そしてその後にしっかりと音量を絞ってみてください。そうすると女声と男声との山の位置のずれが音楽に立体感を生み出します。
また、24小節目からのクレッシェンドは【C】のmfに向けて盛り上げていきましょう。
【C】初めてのmf。魅力的にメロディーを歌おう
25小節目から【C】です。ここで初めてmfが登場します。
これまでのp系の音楽とは切り替えて、しっかりと歌いましょう。
また、この部分では”あなたの”、”すがた”というメロディーが非常にのびやかで印象的。3連符が使われているからですね。
3連符はタイミングがずれがちですので、よく合わせておきましょう。
ただし、気をつけすぎて音楽が萎縮してしまわないようにしてください。
【D】初めてのp。小さくてもメッセージの力は失くさずに
29小節目から【D】です。ここでは初めてpの音量が登場します。これまでで一番小さい音量はmpでしたね。
なのでここではp系の聞かせどころと言えると思います。
ただし、ただ音量を落とすだけではこの部分の持つメッセージの力強さが薄れてしまいます。
音量としては小さいですが、言葉を丁寧に歌うことで歌詩に込められた思いを表現しましょう。
“いきかたをまなぶ”というメロディーがソプラノ・テノール(一部アルトも)によるユニゾンとなっていることからも、作曲者の「ここは大事!」という気持ちが読み取れます。
一方バスの「ファ♯」は和音の彩りを変化させる役割を持っていて、これまた大切です。
【E】間奏部分はピアノパートも主役
33小節目からは間奏部分に入ります。ヴォカリーズ(”U”などで歌うこと)によるハーモニーが充実しているところですので、【冒頭】で解説したアカペラのコツも応用できそうですね。
また、ここでは合唱だけでなくピアノパートもメインで聞かせたいところ。
特に33小節目のピアノの右手は【C】の”さきをあるいていった”というメロディーを再現しています。
練習の際には、次のようにしてみると良いと思います。
- 合唱だけで(アカペラで)練習してみる
- ピアノパートだけを聞いてみる
- いっしょに合わせてみる
このように工夫してみると、いっそう曲の魅力が分かってくると思います。
【F】1回目との違いを主張しよう
38小節目から【F】です。【A】の再現部となりますが、違いがあるところは主張しましょう。
ここではアルトとバスが”Um”によってバスラインを担当する部分が違います。
しっかりとした存在感が出せると良いでしょう。
鈴木憲夫作品でよく見られる”Um”の表記ですが、「ウmー」だったりオープンハミング(口を開けたハミング)だったり、演奏としてはいろいろな解釈が見られます。
昔、「ウの口をして鼻に響かせて発音する」と見たことがあるような気がするのですが…。
こちらの記事でもそのことに触れています。
一方でソプラノとテノールは、低声パートが抜けたことでメロディーラインが頼りない感じにならないよう、主役の意識を強めましょう。
【G】充実した分厚いハーモニーを作ろう
繰り返しの後、48小節目から【G】です。速度の変化を表すTempoⅠ(テンポ プリモ/最初の速さで)があります。
これにより【冒頭】のテンポに戻りまり、少しゆっくりになります。ハーモニーをじっくりと聞かせる場面と言っても良いと思います。
実際、【G】は『決意』の中では最もハーモニーが複雑で充実している部分となっています。
まずは各パートの音取りを正確にして、自分たちのパートを自信を持って歌えるようにしておきましょう。
また、【G】後半54小節目からはmfが登場し、そこからcresc.が書かれています。
これまでで一番盛り上がる部分ですので、力強く歌っていきましょう。
【H】祈りの気持ちを持って歌おう
58小節目~【H】で、ここから変ホ長調に転調しています。
テンポが再びModeratoになりテンポアップ。少し動きがある雰囲気となります。
【I】に入る手前にrit.(リタルダンド/だんだん遅く)があります。一時的にテンポをゆっくりにする記号です。
このテンポの緩みに祈るような気持ちを込めて歌うと、その後の盛り上がりが引き立ち、感動的なクライマックスに繋げることができると思います。
【I】温かいハーモニーを伸びやかに歌おう
63小節目から【I】です。a tempo(ア テンポ/元の速さで)により、rit.でゆるんだテンポが元に戻ります。
ヴォカリーズによる場面ですが、これまでは”U”だったのがここでは”Ah”になっていますね。これにより温かみと広がりのあるハーモニーが生まれます。
音量的には激しく盛り上がる感じではないですが、たっぷりと豊かに響かせられるとエンディングにふさわしい雰囲気が醸し出されます。
【J】アラルガンドの歌い方・決め方
69小節目から【J】です。TempoⅠですので【冒頭】のテンポとなり、曲の終わりに向けてゆっくりになります。
71小節目の記号はallargando(アラルガンド/遅くしながら次第に大きく)です。
曲のラストを「重厚に熱く盛り上げて!」という気持ちが現れている指示ですね。
次のことがポイントです。
- 最初は小さく入る。音量の幅が出しやすいため
- クレッシェンドの傾き。後半で一気に盛り上げると迫力が出る
- ハーモニー。大きくなってもお互いの声をよく聴き合う
最後のロングトーンにも注意が必要。テンポがゆっくりになっていますので最後の4分音符の1拍分は通常より長めになります。
最後の小節に入った瞬間音を切るのではなく、1拍分十分に響かせてから切りましょう。それにより迫力と重厚感もいっそうアップします。
まとめ:『決意』の歌い方のコツ【四部合唱を攻略しよう】
まとめです。
- 【冒頭】アカペラでは端から端まで聴きあうこと
- 【A】ユニゾンの部分に注目しよう
- 【B】強弱を上手く使って立体感を作ろう
- 【C】初めてのmf。魅力的にメロディーを歌おう
- 【D】初めてのp。小さくてもメッセージの力は失くさずに
- 【E】間奏部分はピアノパートも主役
- 【F】1回目との違いを主張しよう
- 【G】充実した分厚いハーモニーを作ろう
- 【H】祈りの気持ちを持って歌おう
- 【I】温かいハーモニーを伸びやかに歌おう
- 【J】アラルガンドの歌い方・決め方
全体として、p系の音楽の作り方、聞かせ方がポイントになりそうです。
pやmpは小さく、少し小さくといった意味ですが、「小さくて静かな場面」「小さいけど響きが豊かな場面」などいろいろ考えられるので、イメージを膨らませてみましょう。
その他、合唱の練習方法についてはこちら(【ポイント6つ】全体練習(アンサンブル)をまとめる方法|合唱指揮者が解説)でもまとめていますので参考にしてみて下さい。
合唱コンクールに向けてやるべきことを知りたい場合はこちら(【まとめ】合唱コンクール完全攻略ロードマップ|3ステップで解説)をご覧ください。