こんな疑問に答えます。
合唱の並び方(パートの配置)は「絶対こうしなさい!」というものではなく、実はいろいろあります。
この記事ではオーソドックスな並び方から、少し工夫した並び方まで解説します。
それぞれのメリット・デメリットも解説しますので、メンバーの特性や表現したい音楽に合わせて選んでみてください。
並び方をしっかり考えられると演奏のクオリティアップにも繋がります。
もくじ
【3選】混声3部合唱での並び方
まずは中学校でよく歌われる混声3部合唱の場合について解説します。
コンクールに挑戦するときにはこの内容を参考に、どんな並び方がよいかも考えてみると良いと思います。
舞台上での右側・左側は次のように言い表します。
- 上手(かみて)…指揮者から見て右側
- 下手(しもて)…指揮者から見て左側
よく使う言葉なので覚えておきましょう。読み方にも注意です。
SAB(ソプラノ・アルト・男声)
舞台下手(指揮者から見て左側)からソプラノ・アルト・男声の順で並びます。
メリット:最もオーソドックスで慣れている
この並び方は最もオーソドックスな方法となっています。
そのため歌う方も指揮をする方も慣れている、というのが一番のメリットではないかと思います。
その他のメリットとしては以下の通りです。
- 女声と男声の掛け合い(ずれて歌う)の場面が分かりやすい
- 1つのパートが固まっているので安心感がある
- 指揮者からのキュー出しがやりやすい
デメリット:人数バランスの悪さが目立つ
図を見ていただくとと分かるのですが、男声パートが上手側(右側)に大きく偏っていますよね。
このようにSABの並び方は人数バランスの悪さが目立つのが欠点です。
混声3部合唱の場合、クラスの男女比は1:1くらいのことが多く、どうしても男声パートの人数が多くなってしまうからですね。
人数バランスが偏っていても音量的なバランスが取れていれば問題ありません。
しかしこれだけ場所に偏りがあると、聞こえ方にも影響が出てきそうです。
特に客席の右側は男声が大きく聞こえてきそうですね。
SBA(ソプラノ・男声・アルト)
男声を真ん中に配置して、下手からソプラノ・男声・アルトの順で並ぶ方法です。
メリット:バランスが良い
この並び方のメリットは人数の多い男声パートが端っこに固まらないで済むことです。
見た目的にも聞こえ方的にもバランスが改善しそうですね。
その他のメリットは次の通りです。
- 真ん中の男声が低音を鳴らすことでハーモニーが安定する
- 男声が女声の声を聴きやすい(特にソプラノ)
デメリット:ソプラノとアルトが離れる
SABで並んでいたときは女声同士(ソプラノ・アルト)が隣り合っていましたが、男声を真ん中に配置したことでそれぞれが離れてしまうのがデメリットです。
女声が離れていると次のような難しさが出てきます。
- 女声のユニゾン(同じ音を歌うこと)をそろえにくい
- ソプラノ・アルトでハモるときの一体感が出にくい
どちらの場合も合唱曲にはよくあるパターンとなっています。
前列女声・後列男声(女前男後)
男声は後列に並んでもらい、前列にソプラノ・アルトが並ぶ方法です。
メリット:お互いの声をよく聴ける
この並び方ではソプラノ・アルト・男声が互いに接する部分が多くなります。
なのでお互いの声をより聴きあえるようになる、というのがメリットです。
これに比べると他の並び方は接していないパートもありましたね。
- SAB…ソプラノと男声離れている
- SBA…ソプラノとアルトが離れている
デメリット:パートが平べったく広がる
図の通り、各パートが横長に広がっています。人数によっては1つのパートが1列で並ぶということもあるでしょう。
この場合次のような難しさが出てきます。
- 後ろの同じパートの人を頼りにできない
- パートの端と端が遠い→声をまとめづらい
例えばアルトの人からすると、後ろにいるのが男声パートになりますので自分の音が不安になってしまうかもしれません。
また、ステージの端っこ寄りの人とソプラノ寄りの人とでは結構距離が離れてしまいます。
そのためアルトパートで1つの声にまとめることが難しくなります。
【3選】混声4部合唱での並び方
続いては混声4部合唱の場合の並び方を3つ紹介します。
SATB(ソプラノ・アルト・テノール・バス)
最もオーソドックスな並び方です。
メリット:掛け合いが分かりやすい
合唱では掛け合い(各パートがメロディーずれてを歌う)ことも多いです。
SATBの並び方はそういった場合に分かりやすいのがメリットです。
その他のメリットは以下の通りです。
- 各パートがまとまっている
- 隣り合うパートの音域が近い
- 指揮者のキュー出しが行いやすい
デメリット:外声同士(ソプラノ・バス)が遠い
SATBの並び方ではソプラノとバスがかなり離れてしまいます。
音域が最も離れていることもあり、お互いに聴き合うことが難しくなります。
逆に言うと、ソプラノ・バスがお互いに意識して聴き合うことは混声4部合唱のポイントでもあります。
STBA(ソプラノ・テノール・バス・アルト)
男声を真ん中に配置する方法です。
メリット:役割が近いパートがまとまる
この並び方では役割が近いパート同士がまとまるのがメリットです。
- 高声…ソプラノ・テノール
- 低声…アルト・バス
実際の曲では次のようなフレーズがよくあります。
- ソプラノとテノールでオクターブユニゾン
- アルトとバスのタテがそろってハモる
デメリット:女声が離れる
この並び方では女声同士(ソプラノ・アルト)が離れてしまうのがデメリットです。
曲によってはソプラノ・アルトでユニゾンやハモりとなっている場面も多いです。
そういった場合は音を合わせるのに苦労するかもしれません。
前列女声・後列男声(女前男後)
前列にソプラノ・アルト、後列にテノール・バスを配置する方法です。
メリット:女声は男声の支えを聴きながら歌える
混声4部合唱において男声はハーモニーの土台を作っていることが多いです。
この土台を意識しながら歌うときれいな和音が作れます。
この配置の場合、後ろに男声が並んでいますので自然にそれができるのがメリットになります。
また、パート同士が接している面が増えているのもポイントです。
これによりお互いの声をより意識して歌うことができます。
デメリット:パートが横に広がる
図の通り、パートが平べったく横に広がってしまうのがデメリットです。
混声3部合唱のときと同じく、次のような難しさが出てきます。
- 後ろの人の声を頼りにすることができない
- 同じパートの端っこの人が遠い
つまり、他のパートの音は聴きやすいけど、自分と同じパートの人の声を聞くのが難しいということですね。
すべての編成で使える並び方
混声3部合唱、混声4部合唱など、すべての編成で使える並び方です。
スクランブル
各パートがランダムに混ざり合う並び方です。
ポイントは自分の前後左右に同じパートの人が(なるべく)いないようにすることです。
メリット:声が混ざり合う
この並び方の場合、隣の人が別のパートの人となります。
そのためいろいろなパートの声を聴きながら歌うことができます。
慣れないと難しいかもしれませんが、歌えるようになってくると声が良く混ざり合い、いちだんと豊かなハーモニーが生まれます。
その他のメリットは次の通り。
- 他のパートの音をより深く理解できる
- 個々人の歌い方に触れあえる
- 自分で音楽を進める意識が高まる
デメリット:一人ひとりがしっかり歌えないと厳しい
パートが固まっているときと比べ、自分と同じパートの人を頼りにすることがかなり難しくなります。
そのため、この並び方をするときはメンバー一人ひとりが自立して歌えるようになる必要があります。
逆に言えば、この並び方で充実した合唱ができるならかなりのレベルですね。
まとめ:合唱団の特性に合わせて並び方(オーダー)を選ぼう
この記事で紹介した並び方を振り返っておきます。
- SAB(ソプラノ・アルト・男声)
- SBA(ソプラノ・男声・アルト)
- 女前男後(前列:ソプラノ・アルト、後列:男声)
- SATB(ソプラノ・アルト・テノール・バス)
- STBA(ソプラノ・テノール・バス・アルト)
- 女前男後(前列:ソプラノ・アルト、後列:バス・テノール)
- スクランブル
もしできるようであればスクランブルも試してみてください。
本番でやってみても良いですし、練習のときだけでもやってみるといろいろな発見があるはずです。
「他のパートに釣られて歌えなかったな…」という場合は音取りの復習やパート練習に立ち返りましょう。
合唱パート全般の基礎知識・ノウハウについてはこちら(【まとめ】合唱パートに関する基礎知識・ノウハウ【初心者・PL向け】)からどうぞ。