こんな疑問に答えます。
音楽記号は覚えるのが大変ですが、楽譜を読むためには必要不可欠の知識です。一つひとつ覚えていきましょう。
この記事ではmpの読み方や意味をはじめ、「どう演奏したら良いか?」「指揮はどうしたら良いか?」というところまで深堀りしていますのでぜひ最後までご覧ください。

もくじ
mpの読み方と意味
mpの読み方と意味は次の通りです。
- 読み方…メゾ ピアノ(メッゾ ピアノ)
- 意味…「少し弱く」
m(メゾ)は「中間の」、p(ピアノ)は「弱く」という意味を表すので、全体で「少し弱く」という意味になります。
pの「弱く」の意味が控えめになるので、mpはpよりも強く演奏することになります。
他の記号と比べた時の関係は次の通り。
- p < mp < mf < f
mpの歌い方とポイント
mpが登場したときにはどのように歌ったら良いでしょうか。
ここでは音量以外に気をつけたいことを3点紹介します。
- どんな音楽にしたいかイメージを持つ
- 前後の場面との関係性を読み取る
- 小さな音でもしっかり支えたまま歌う
1. どんな音楽にしたいかイメージを持つ
mpを歌う際には音量だけでなく、「どんな音楽にしたいか」をイメージしてみましょう。
多くの曲に共通するイメージとしては、あまり大きく盛り上がる場面わけではないけれど、すごーく静かという訳でもない感じ。
次のポイント「2. 楽譜から前後の場面との関連性を読み取る」ともあわせて考えてみて下さい。
2. 前後の場面との関係性を読み取る
mpは「少し弱く」の意味と説明しましたが、どれくらい小さく歌えばよいのかということは、前後の関係性からも変わってきます。
例えば直前の場面がpなど、もっと小さく歌う場面であれば、mpはそれよりは大きく、または積極的な音楽になる、考える事ができるでしょう。
逆に直前がmfなど、もっと大きく歌う場面であれば、それよりももっと小さく歌うことを意識すると音楽のメリハリがつくと思います。
3. 小さな音でもしっかり支えたまま歌う
mpはどちらかといえば小さく歌う記号ですが、そんなときでも声の支えはしっかりと保ったまま歌いましょう。
声の支えがないとピッチ(音程)が下がりがちになります。
ピッチが下がるとメロディーが美しくありませんし、ハーモニーも濁ってきます。
音量が大きくても小さくても、ピッチは常に意識しておきましょう。
mpの指揮の振り方
次に、指揮者の立場ではどのように振ったら良いかを、基本編と応用編に分けて解説します。
【基本編】図形の大小で振り分けよう
指揮の図形(≒振り方)は大きい音が欲しければ大きく振る、小さい音が欲しければ小さく振るのが基本です。
なので「これくらいの音量で歌ってほしいな~」というイメージをもとに図形(振り方)の大きさを決めましょう。
音量のイメージは歌い方のポイントでも触れたように、前後の関係も踏まえつつ決めていきます。
mpは「少し小さく」ですので、やや小さめの図形で振ります。
その他に、強弱の指揮をより効果的にするバトンテクニックは次の通り。
- 次のフレーズに対するブレス
- 腕の緊張感
【応用編】ニュアンス・タッチまで考え抜こう
mpの意味は「少し弱く」ですが、指揮者としては「少し弱く、そしてどのような歌い方にして欲しいか」つまり、音のニュアンスやタッチまで踏み込んで考えたいところです。
具体的なパターンをいくつか挙げてみます。
- 「少し弱く」+「なめらかに」
- 「少し弱く」+「目立たせて」
- 「少し弱く」+「緊張感を持って」
例のように、弱く歌うこととアクセント的な固いタッチで演奏することとは矛盾しません。
これらを振り分けるのは非常に難しいですが、指揮者としての実力の見せ所でもあります。
作曲家がどのような場面を描こうとしているか、そこまで思いを馳せることで見えてくるものもあると思います。
ここまで考えられると、非常に豊かな音楽表現ができると思います。
【実践例】mpが登場する合唱曲とその解釈
mpはほとんどの作品で登場する汎用的な記号です。
ここでは使われ方のパターン別に合唱曲を紹介し、その上で
- どんなふうに捉るか
- どのようなイメージを持ちたいか
- 自分ならどのように振るか
これらについてを解説したいと思います。
『未来』(谷川俊太郎:作詩/高嶋みどり:作曲)
高嶋みどり作曲の『未来』では、合唱の最初のメロディーはmf、続いてmpが登場します。
mfから始まるのは、テーマとなるメロディーを積極的に、伸びやかに歌って欲しい、そんな雰囲気が読み取れます。
次いでmpが登場しますが、ここで音量を1段階落とすことで、次に続く”きまっている”のリズムとの対比がより鮮やかになっています。
またこの曲ではmpとdolce(甘く、柔らかく)が共存するフレーズもあり、そういった部分ではいっそうレガートな、柔らかいタッチで歌うこと、振ることがふさわしいでしょう。
『天の川』(藤巻吏絵:作詩/若松歓:作曲)
『天の川』は静かな場面の繊細な描写で、p系の強弱記号が巧みに使い分けられています。
歌い出しはppで「とても小さく」。しばらくして登場する男声のメロディーでmpが登場します。
mpというと通常は小さめの音量記号ですが、ここではppからの変化ということで非常にたっぷりとした印象を受けます。
実際、スラーもついたこの男声のメロディーは、静かでありながらもたいへん雄大です。
このように強弱記号を読み取るときは前後関係にも注目です。
『信じる』(谷川俊太郎:作詩/松下耕:作曲)
『信じる』ではテンポアップする中間部、”じらいを”の場面に注目してみましょう。
最初の音量はmpで、そこからstringendo(ストリンジェンド/だんだん急き立てて)とpoco a poco cresc.(ポーコ ア ポーコ クレッシェンド/すこしずつ次第に大きく)で激しさを増していきます。
この場面のmpは「柔らかさ」や「静かさ」ではなく、「緊張感」を持っており、後に続く音楽の激しさを強く予感させます。
ここで音量を落とすことでstringendoなどがより効果的になるというわけです。
まとめ:【音楽記号】mpの読み方と意味
まとめです。今回の内容を振り返っておきましょう。
- 読み方…メゾ ピアノ(メッゾ ピアノ)
- 意味…「少し弱く」
ただ単に小さく歌うだけなら簡単そうですが、実はいろいろ考えなければいけないことがあります。
この記事で挙げた合唱曲を実際に聴いてみたりすると分かってくるかも知れません。
引き続き、音楽記号の理解を深めていきましょう。

