指揮の振り方

【初心者でもできる】効果的に強弱を振り分ける4つのコツ|現役指揮者が解説

指揮・強弱
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初心者指揮者
初心者指揮者
指揮初心者です。強弱の変化をどうやって振ったら良いか分かりません。コツを教えて下さい。

こんな疑問に答えます。

えすた@指揮者
えすた@指揮者
合唱指揮者経験は5年以上。合唱団を率いてのコンクール受賞歴もある筆者が解説します。

プレイヤーに強弱を伝えるテクニックとしては次の4つがあります。

  1. 図形の大小を変える
  2. 腕の緊張感を変える
  3. 手の平の上下を使い分ける
  4. 左手を活用する

記事の前半ではこれらについて詳しく解説します。

更に後半では、強弱に限らず「指揮をするなら絶対に理解しておきたいポイント」を紹介し、練習問題も用意しました。

この記事の内容を意識して実践すれば、すぐにでもあなたの指揮は変わります。

ぜひ最後までご覧ください。

指揮法に関するトピックでは主にこちらの本を参考にしています。

効果的に強弱を指揮する4つのコツ

再度になりますが、強弱を振り分けるための4つのコツを紹介します。

  1. 図形の大小を変える
  2. 腕の緊張感を変える
  3. 手の平の上下を使い分ける
  4. 左手を活用する
最低限の強弱記号についても知っておきましょう。こちらの記事(【まとめ】音楽の強弱記号を解説|クレッシェンド/piu・menoなど網羅)にてまとめています。

コツ1.図形の大小を変える

図形の大小とやや難しく書きましたが、要するに腕の振り方の大きさです。

図形=3拍子・4拍子などの振り方のことです。
  • 腕を大きく振る…大きな音
  • 腕を小さく振る…小さな音

となります。シンプルですね。

図形の大小による強弱の指示が最もオーソドックスな方法になります。

表現できるダイナミクス(強弱の幅)が広く、プレイヤーにも伝わりやすい方法です。

えすた@指揮者
えすた@指揮者
まずはこの方法を優先して取り入れましょう。

コツ2.腕の緊張感を変える

腕の緊張感というのは力の入れ具合と考えてもらえばOKです。

  • 腕に力を入れて振る…大きな音
  • 腕の力を抜いて振る…小さな音

となります。

例えばテンポの速い曲の場合、図形の大小だけで強弱を表現するには限界があります。

図形を大きくしてしまうとテンポに遅れてしまうからですね。

そういうときに使えるのが腕の緊張感です。図形は小さいままで腕の緊張感を高めていくと、テンポを落とさずにクレッシェンドを表現できます。

えすた@指揮者
えすた@指揮者
少し専門的になりますが、「先入法(せんにゅうほう)」を用いるときも腕の緊張感で強弱を表現します。

コツ3.手の平の上下を使い分ける

指揮ではささいなことも音の出(で)に影響します。

その中の一つが手の平の向きです。

  • 手の平を上向き…歌って!
  • 手の平を下向き…歌わないで!

という印象を与えます。

初心者の方はどういう訳か手の平を下に向けて振る方が多いです。

それが有効な場合もありますが、使いすぎるとプレイヤーを委縮させてしまい、積極的な音楽が出てきにくくなります。

そのため、私は基本的に「手の平を上」で振っています。

逆に「抑制して」「緊張感を持って」のような意図を伝えたい時には「手の平を下」にして振るのが非常に有効です。

sub.p(急に小さく)等の場面でも使えますね。

いずれにせよ意図を持って使い分けましょう。

えすた@指揮者
えすた@指揮者
歌わせたいなら「手の平は上」です!

コツ4.左手を使う

指揮をする上では左手を使うことも重要です。強弱に関しても有効に活用しましょう。

例として、このような表現ができます。

  • 手の平を上向き…フォルテやクレッシェンド
  • 手の平を下向き…ピアノやデクレッシェンド
  • 強くこぶしを握る…フォルテで、アクセント的な固い音
  • 右手・左手で同じ動き…tutti的な(全員が揃った)フォルテ

先ほど「手の平の向き」について触れましたが、左手を使って応用することもできますね。

えすた@指揮者
えすた@指揮者
指揮棒を持つ場合も左手を有効利用しましょう。
クレッシェンドやデクレッシェンドはロングトーンに付随することも多いです。こちらの記事(【現役指揮者が教える】伸ばすところ・フェルマータの振り方とコツ【具体例あり】)も合わせてご覧ください。

【超重要】ポイントは常に「1拍前」

これら4つのコツの効果をより高めるために重要なことを解説します。

それは「常に1拍前を意識する」ということです。

指揮の役割は「次の音楽をプレーヤーに伝えること」です。

伝えるタイミングが「1拍前」ということになります。

したがって、強弱を伝えたい場合においても「1拍前の動き」が最重要となります。

初心者の方の場合、例えば楽譜にフォルテと書いてあるその場所で大きく振ろうとしてしまいますが、これは△です。

指揮と言うのは次の音楽を示すものなので、「フォルテと書いてある1拍前」に大きく振り、大きな音を要求するのが正解です。

えすた@指揮者
えすた@指揮者
「1拍前の動き」がプレイヤーにダイレクトな影響を与えます。

「1拍前」に行うべきことは次の3つです。

  1. 欲しい音を明確にイメージする
  2. 次のフレーズを歌い切れるブレスを取る
  3. ブレスに応じた予備運動

1. 欲しい音を明確にイメージする

まずは自分がどのような音を鳴らして欲しいのかを明確にイメージする必要があります。

今回は強弱のつけ方がテーマですが、「フォルテと書いてあるから強い音」「ピアノと書いてあるから弱い音」というだけでは不十分です。

具体的にはこのような感じで詳細に思い浮かべましょう。

【フォルテと書いてある】

  • 鋭いアクセント感を持った短い音
  • たっぷりとしたレガートで表情豊かな音

【ピアノと書いてある】

  • 緊張感を持った静かな音
  • スタッカートのついた軽やかな音
えすた@指揮者
えすた@指揮者
どういう音が欲しいのか、具体的にイメージを持ちましょう。

2. 次のフレーズを歌い切れるブレスを取る

「1拍前」に行うこととして外せないのが「ブレス」です。

プレイヤーがフレーズを歌い始める前に息を吸うのと同様に、指揮者も「ブレス」を取ります。

このときに「自分がイメージした音で次のフレーズが歌い切れるようなブレス」を取ることが大切です。

これによって指揮者自身の体が「そのフレーズを歌える状態」になります。

指揮者の体の状態は音楽のイメージとしてプレイヤーに伝わります。

ブレスに関してはこちら(【影響大】なぜ指揮者のブレスが重要なのか【源泉は音楽のイメージ】)も合わせてご覧ください。
えすた@指揮者
えすた@指揮者
「ブレス」は必ず取りましょう。

3. ブレスに応じた予備運動

予備運動、つまり点(≒拍)を示す前の予備の動きです。これがずばり「1拍前の動き」となります。

例えば図形の大小を用いて示す場合、

  • 大きい音が欲しければ予備運動を大きく
  • 小さい音が欲しければ予備運動を小さく

とすればOKです。

このとき「1.欲しい音を明確にイメージする」「2.次のフレーズを歌い切れるブレスを取る」ができていれば腕も自然とそれに応じた動きになるはずです。

繰り返しになりますが、「フォルテと書いてある所」ではなく、「フォルテを引き出したいフレーズの1拍前」の動きが重要です。

えすた@指揮者
えすた@指揮者
「音のイメージ」「ブレス」が「腕の動き」に結びつきます。

強弱を振り分けるコツ【実践編】

もう少し具体的に考えられるよう練習を用意しました。

ピアノとフォルテの振り分け【図解】

4拍子でフォルテとピアノを振り分けてみましょう。

実施手順
  • 4拍子図形
  • 四分音符=72ぐらい(もう少し遅くてもOK)
  • 図形の大小を使って強弱を表現

ポイントは次の通りです。

  • 1小節目4拍目:次のピアノのための「小さいブレス」
  • 2小節目4拍目:次のフォルテのための「大きいブレス」
  • テンポが変わらないようにすること

さらにレベルアップしたい方は

  • レガートで柔らかな音の出をイメージ→「平均運動」を活用
  • スタッカートで固い音の出をイメージ→「叩き」を活用

など、パターンを変えて練習してみてください。

まとめ:効果的に強弱を振り分ける4つのコツ

強弱を振り分けるための4つのコツと、そのために最重要のポイントを振り返ります。

強弱を振り分ける4つのコツ
  • 図形の大小を変える
  • 腕の緊張感を変える
  • 手のひらの上下を使い分ける
  • 左手を活用する

これらに加えて、「常に1拍前を意識する」ことが非常に重要とお伝えさせていただきました。

強弱以外の表現においても必須の考え方ですので、これを機会にぜひ押さえてみてください。

こちらの記事(【まとめ】初心者のための指揮法完全ガイド|合唱指揮者が基礎から解説)では指揮法を学ぶ上で知っておきたい知識をまとめています。あわせてご覧ください。

初心者のための指揮法完全ガイド
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