こんな悩みに答えます。
この記事では初心者の方でもすぐに取り入れることができ、効果の出やすい方法を解説しています。
- 3年間指揮法を学び
- 合唱指揮者歴が5年以上あり
- コンクールなどで結果を出してきた(ブロック大会クラスで金賞・優秀指揮者賞)
という経験をもとにしているので参考になるはずです。
この記事を読んで実践すると、
- 何をしたらよいか分からない状態を脱出できる
- 指揮を振る見た目がそれっぽくなる
- 指揮がちょっとは楽しくなる
という風になれるはずです。
ぜひ最後までご覧ください。
【初心者向け】すぐにできる合唱指揮のコツ5選
すぐにできる合唱指揮のコツは次の5つです。専門的な知識がなくても取り入れられると思います。
- 「ビシッ」と構えて注目を集める
- 腕全体を大きく使う
- 歌っている人の顔を見る
- 強弱に応じて大小を振り分ける
- 曲の終わりも「ビシッ」と決める
あわせて、初心者がやってしまいがちな悪い例についても解説しました。
そうなってしまわないようにするだけでも効果大です。
初級編1. 「ビシッ」と構えて注目を集める
まずは曲の始め方のコツです。
曲を始める前には「ビシッ」と構えることが大切です。
- いつも指揮をするポジション(=場所、体の前)に腕を伸ばす
- いったん動きを静止し、プレイヤーの注目を集める
- その後、振り始める
このような順序で曲をスタートさせましょう。
注目を集める際には、緊張感が高まり切るまでじっと我慢することも必要です。
指揮に慣れていない方がステージに立った時、どうしたらよいか分からなくなり、慌てて「ふにゃっ」と振り始めてしまうということがありがちです。
このように「ふにゃっ」と始めてしまうと、音楽自体の始まりも「ふにゃっ」としてしまいます。
結果としてタイミングが揃わなかったり、良い声で歌い出せないといったことに繋がります。
初級編2. 腕全体を大きく使う
指揮をするときには腕全体を大きく使いましょう。
胸を張り、両腕を左右に目一杯広げてみてください。これだけの長さ・広さをしっかりと使うのがポイントです。
こうすることで見た目もカッコよくなりますし、自信たっぷりで振られると歌う方も思い切って声を出しやすくなります。
音楽的な表現の上でも、ダイナミクスレンジなどを始め、表現の幅が広がります。
緊張しているせいなのか、、自信が無いのか、縮こまった状態で指揮を振っているというのがよくある悪い例です。
詳しく言えば、肘から先だけ、手首だけしか使わず振っている状態です。
こういう指揮は、非常にカッコ悪く、セコイ印象を見る人に与えます。
また、小さく自信が無さそうに振られると歌う側ものびのびと歌えません。
初級編3. 歌っている人の顔を見る
指揮をしている時は歌っている人の顔を見るようにしましょう。
プレイヤーに対して自分の実現したい音楽を伝えるが指揮者の役割です。
目線によってより効果的にそれを伝えることができるようになります。
歌っている人の顔を見ると目線が上がり、自然に胸を張るような姿勢になります。
その結果、腕も大きく使うことにも繋がります。
腕全体を大きく使うことの重要性は先ほど説明しましたね。
最初は目線を合わせるのが恥ずかしいかもしれませんが、これは慣れなので頑張りましょう!
見る人を決めてしまうのも手です。良く歌ってくれる人の顔、仲良い人の顔とかです。
どこを見たらよいか分からず、指揮をしているのにうつむいて下の方を見てしまうケースがあると思います。
当然、これは良くありません。
指揮者はプレイヤーに対して音楽の指示を出したり、エネルギーを与える役割を担っています。
うつむいてしまっていると、それらが上手く伝わらないですよね。
初級編4. 強弱に応じて大小を振り分けよう
音楽には強弱があります。
音量が大きいところは大きく、小さいところは小さく振ってみましょう。
このときプレイヤーに対して
- 「もっと大きく歌って!」
- 「もっと音量を落として!」
という気持ちが伴っているととても良いです。
楽譜上では音量の強弱はこのような記号で表されています。これらを参考に指揮の動きに反映させましょう。
- 盛り上がるところ…f(フォルテ),ff(フォルティッシモ)
- 静かなところ…p(ピアノ),pp(ピアニッシモ)
音楽の内容に関係なく振り方が同じになってしまうのが良くある悪い例です。
音楽には盛り上がるところ、静かなところがあります。
それを無視してずっと同じ振り方をしていると、実際の音楽と指揮の動きがちぐはぐになってしまいます。
- 楽譜には「小さく」と指示があるのに大振り過ぎる(指揮がうるさい印象)
- 楽譜には「大きく」と指示があるのに小さく振りすぎる(指揮がショボい印象)
そうなるとプレイヤーは混乱しますし、演奏を聞いている立場の人から見ても違和感を覚えます。
なお、強弱をどう振り分けるかということに関してはこちらの記事(【初心者でもできる】効果的に強弱を振り分ける4つのコツ|現役指揮者が解説)にて詳しく解説しています。
初級編5. 曲の終わりも「ビシッ」と決めよう
曲を終えた後は慌ててすぐに振り向かず、「ビシッ」と決めましょう。これは曲を始めるときと同じことですね。
- 曲を終える
- 「ビシッ」と決めた状態で心の中で3つくらい数える
- 慌てずにゆっくりと腕を下ろし、振り返って礼をする
舞台上で3つ数えるのはなかなか勇気がいります。そんなに溜めて大丈夫か不安になりますが、大丈夫です。余韻も音楽の大切な要素です。
とにかく落ち着いて、余裕を持って振舞うことが大切です。
曲が終わった後、慌ててすぐに動いてしまったり、「やれやれ、終わった終わった」と緊張感が抜けてしまうのは良くありません。
まだステージには立っているのですから、曲が終わった後の振舞い方も本番の一部だと思いましょう。
バタバタと楽譜を片づけ始めたり、スタスタと退場してしまうと雑な印象を与えてしまいます。
【中級者向け】指揮をレベルアップさせるコツ9選
ここからは初心者レベルを脱し、中級者を目指したい方に向けて心がけておきたいテクニックなどを解説していきたいと思います。
- ブレスを取ろう
- 1拍前にイメージを込めよう
- クレッシェンド/デクレッシェンドを表現しよう
- レガート/マルカートを振り分けよう
- rit.・accel.・a tempoを振り分よう
- フェルマータの振り方
- 左手を使おう
- ポリフォニー(掛け合い)を振り分よう
- 手の形を使い分けよう
ここまで実践できれば、
- 指揮で音楽が変わっていくのが感じられる
- 自分が音楽を動かしている実感が得られる
- 「あいつはなんか違うな…!」と思わせられる
ようになってくると思います。
中級編1. ブレスを取ろう
ブレス、つまり息を吸うことですが、これはプレイヤーだけでなく指揮者にとっても大切です。
指揮者というのは「次の音楽」を指示するのが役目です。
「次の音楽」をイメージしてブレスを取ることで、自分の体が「次の音楽」を鳴らすのに適した状態になります。
この体の状態(全身の緊張感や表情)を見せることがプレイヤーに対しての「指示」になるというわけです。
「次の音楽」をイメージしたブレスは非常に大切です。小手先のバトンテクニックよりもまずはブレスを意識しましょう。
中級編2. 1拍前にイメージを込めよう
先ほどのブレスを含め、指揮の動きで一番大切なのは「次の音楽の一拍前」です。
指揮というのは音楽を導くものであって、音楽に合わせて振るものではありません。
プレイヤーは指揮を読み取って音楽を演奏するわけなので、「音が鳴ってから/音と同時に指示を出されてももう遅いよ」ということなんですね。
あなたが演奏する立場だったとします。
その場合にはフレーズを歌い出すときには、大体その一拍前にブレスと取りますよね。
「次の音楽」の準備をするために息を吸うのわけです。
指揮の場合もそれと全く同じで、「次の音楽」の一拍前にブレスを取り、その時の腕・辛さの状態がプレイヤーに対する指示となるのです。
この一拍前の感覚は、普段の練習の時から身につけることができます。
せーの、で歌い出すときに、指揮者は「サン、ハイ!」などと言いますよね。
この「ハイ!」のタイミングが「次の音楽の一拍前」です。
練習の時にはこの「ハイ!」が指揮者の指示出しと同じ役割を持つことになります。
例えば次のフレーズをf(フォルテ/大きく)で歌って欲しい時、
(次はfですよ…)「サン、ハイ!」
と言うことで大きく歌わせることができます。
逆に次のフレーズをp(ピアノ/小さく)で歌って欲しい時、
(次はpですよ…)「サン、ハイ!」
と言うことで、より小さな音量で歌ってもらうことができます。
「ハイ!」が指揮者の指示出しと同じ役割を持つとはこういうことなのです。
言い換えると、普段の「ハイ!」の言い方は本番での指揮の振り方に直結します。
本番で「ハイ!」に相当するのがブレスであり、指揮の動き(点前運動)です。
練習の時から大きな「ハイ!」を言っていれば、それが本番ではfを予感させるブレスや指揮になっていく、ということなのです。
中級編3. クレッシェンド/デクレッシェンドを表現しよう
楽譜にはクレッシェンド(だんだん大きく)、デクレッシェンド(だんだん小さく)のような記号もよく書かれます。
このような場合にはどう振れば良いでしょうか。
方法は2つあります。
- 腕の振り方(=図形)の大小で表現
- 腕の緊張感で表現
- 左手を使う
1.は分かりやすいと思います。ピアノやフォルテの振り分けけを応用し、「だんだん大きく振ればクレッシェンド」、「だんだん小さく振ればデクレッシェンド」の振り方となります。
2.の緊張感と言うのは「力の入り具合」と言っても良いかと思います。
「力が入っていればクレッシェンド」、「力が抜けていればデクレッシェンド」のようにプレイヤーからは感じられます。
腕に思いきり力を入れるとプルプルしてきます。これが緊張です。テンポが速い曲で図形を大きくしては間に合わない場合や、感情的・内面的なクレッシェンドが欲しい際には非常に有効なテクニックです。
中級編4. レガート、マルカートを振り分けよう
楽譜の指示にはp、fと言った音量のほかに、legato(レガート/なめらかに)、marcato(マルカート/固く音を目立たせて、レガートの逆)といった唱法/奏法に関するものもあります。
これらに対応するのも指揮者の役割です。
レガートに歌って欲しい、と言う場合には腕を滑らかに動かします(平均運動)。
逆にマルカートだったりアクセントをつけて歌って欲しい場合にはコツコツと叩くように、鋭く振ります(叩き運動)。
練習の際の「ハイ!」で音量の指示を出せることは先ほど説明しました。
レガート、マルカートなどはどんな言い方をすればよいでしょうか。
次のフレーズをレガートで歌って欲しい時は、
(次はレガートですよ…)「サン、ハーーイ」
と引き延ばして言います。(テンポに遅れないようにしましょう。)
逆に次のフレーズをマルカートで歌って欲しい時は、
(次はマルカートですよ…)「サン,,ハイ!」
と短く切って言います。(速くなり過ぎないようにしましょう。)
中級編5. jouh rit.・accel.・a tempoを振り分けよう
rit.(リタルダンド/だんだん遅く)やaccel.(アッチェレランド/だんだん速く)といった速度に関する記号はどう振れば良いでしょうか。
特にrit.からのa tempo(ア テンポ/元の速さで)は頻出です。
これはシンプルに、腕の動きをだんだん遅くしたり、速くしたり、元に戻したりすることで実現できます。
コツとしては次の3点を挙げたいと思います。
- どれくらいテンポを変えるのか自分の中でイメージを持つ
- 自分がテンポを変えるという意識を持つ
- テンポを変える部分は特にしっかり見せる
繰り返しになりますが、指揮が先にあり、音楽が後というのがキモです。
テンポが変わったからそれに動きを合わせるのではなく、指揮が変わるからテンポも変わるのです。
テンポの変化と言うのは音楽の中でもかなり重大な出来事ですので、これが上手くいかないと演奏が破綻してしまう恐れも出てきます。
そのため、3. 「テンポを変える部分は特にしっかり見せる」と書いたように、指揮を見てもらえるように指揮者自身がアピールするのも大切です。
中級編6. フェルマータの振り方
rit.と並んで初心者の方が頭を悩ませるのがこのフェルマータです。
中級編7. 左手を使おう
指揮に関する悩みで
「左手はどうすれば良いの?」
「両手が使えない!」
ということも良く聞きます。
こうすれば正解! と言うものは無いのですが、私の場合ですと
- 右手:拍子(図形)やテンポをキープする役割
- 左手:アクセントやレガートなどの表情の指示を与える役割
のように使い分けていることが多いです。
※左利きなら反対になります。
上手い指揮者ほど左手(聴き手と逆)の使い方が優れていると思います。
中級編8. ポリフォニー(掛け合い)を振り分けよう
ポリフォニーと言うのは2つ以上(3つ以上?)のメロディーを絡み合っている音楽などを指す言葉です。
合唱においては歌詩がずれて歌われる個所など。掛け合いとも言われますね。
ポリフォニーではメロディーの歌い出しの部分が特に重要ですので、それに対してキュー出し(歌って! という指示)を行います。
具体的な方法としては
- 次に歌い出すパートを向く(目線、体)
- 左手を使う
- 一拍前にブレスを取る
などがあります。
1.「次に歌い出すパートを向く」に関してはこの記事の最初の方で登場した、「歌っている人の顔を見る」というコツと共通しますね。
場合によっては目線だけでなく体全体を向けて振ることも有効です。
2.「左手を使う」は一つ前の項目の応用で、複雑なポリフォニーになってきたときには両手を動員することもあります。
そして、3.「一拍前にブレスを取る」が最も重要な項目。やっぱりブレスなんです。
中級編9. 手の形を使い分けよう
手の形というのも音に対するアプローチとして有効です。
- グーを強く握る→硬い音、重い音、大きい音
- 手を伏せる→小さい音、抑制された音、緊張感のある音
- 指先までやや脱力させる→柔らかい音
といったことを使い分けられると、さらにレベルアップすることができます。
指揮者にとって一番大切なこと
ここまで、指揮法に関する色々なテクニックをお伝えしてきました。
最後に、指揮をする上ですごく大切なことをお伝えします。この記事で一番重要なところです。
それは、自分が音楽を引っ張っているという気持ちを持つことです。
ここまで何度か同じようなことを言ってきたので、何となく察していたかもしれませんが、あたらめて説明いたします。
良く勘違いされますが、指揮と言うのは音楽に合わせて振っているのではありません。
音楽に合わせて振り付けをしているのではないということです。
では何をしているか? まず指揮があって、それに音楽が導かれているのです。
指揮が先、音楽がそれについてくるという順序です。
- ×…音楽→指揮
- ◎…指揮→音楽(プレイヤー)
指揮者であるあなたが指揮を振るから、それに従って音楽がついてくるんですね。
そういった意味では、指揮を振り始める前の準備、「楽譜から読み取れることはできる限り読み取り、音楽のイメージを自分の中に形作っていく」ということもとても大切になります。
「楽譜のインプットに基づいて、音楽を引っ張っていく」ということです。
- 自分が音楽を引っ張っているという気持ちを忘れないようにしよう!
まとめ:【初心者向け】経験者が教える合唱指揮のコツ
それではまとめです。
合唱指揮初心者の方にぜひともやって欲しいことは次の5点でした。
- 曲を始める前はビシッと構えて注目を集める
- 腕全体を大きく使う
- 歌っている人の顔を見る
- 大きいところは大きく、小さいところは小さく振る
- 曲の終わりをビシッと決める
そして脱・初心者、中級者を目指す方にやって欲しいこと、それは
- 一拍前にブレスを取る
ということでした。
それに加えこの記事で一番お伝えしたいことは、自分が音楽を引っ張っているという気持ちを持って欲しいということです。
初心者でも熟練者でも、これが指揮をやる上では最重要のポイントです。
この記事が指揮初心者の方のお役に立ち、指揮の楽しさを少しでも知ってもらえれば幸いです。