練習・演奏のポイント

合唱曲『夢の世界を』歌い方のコツ【違いと工夫をつかんで歌おう】

『夢の世界を』
男の子
男の子
合唱曲の『夢の世界を』を歌います。コツやポイントを教えてください。

こんな方に向けた記事です。

合唱の練習では、きちんとポイントを押さえておくことが肝心です。

この記事では合唱曲『夢の世界を』の歌い方のコツについて、合唱歴10年以上・合唱指揮者歴5年以上の筆者が詳しく解説します。

この記事を読みながら練習に取り組めば、確実にワンランク上の演奏を目指すことができるはずです。

えすた@指揮者
えすた@指揮者
「間違いない」ポイントをまとめました。
教育芸術社『クラス合唱曲集 Super Chorus」に収録されている楽譜を参考にし、本文中で歌詩などを引用する場合には「””」で示しています。
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『夢の世界を』の構成【場面ごとの違いと工夫】

合唱曲『夢の世界を』歌い方のコツ

まずは曲全体を見渡して、場面ごとにどのような違いがあるかを解説します。

『夢の世界を』は大きく2つの部分に分けられます。それぞれに練習番号(【A】【B】)をつけてみましょう。

練習番号
  • 【A】…9小節目~(”ほほえみ”)
  • 【B】…25小節目~(”さあ”)

これらの場面の違いを分析してみましょう。

1. 声部(パート数の違い)

【A】と【B】でまず違うのは声部といってパートの数の違いです。

【A】はunis.(ユニゾン)と書かれています。これは「全員が同じ音のメロディーを歌う」、という意味になります。

つまり、ソプラノもアルトも男声も、同じ音を歌うのですね。

音が同じということはハモリはありません。シンプルでスッキリとした印象になります。

一方で【B】にはdiv.(ディヴィジ)とい書かれています。これは「パートに分かれて歌う」、という意味です。

これまで同じ音を歌っていたソプラノ・アルト・男声が、ここからは別々の音を歌う、ということになります。

具体的に見てみると、25小節目の”あ”ではソプラノ・アルト・男声の順に「ミ」「ソ」「ド」の音を歌っています。これを同時に鳴らすと和音になります。

これまではユニゾンでシンプルな響きだったところから、一気にハーモニーが広がるという仕掛けになっているのですね。

2. 強弱の違い

【A】の強弱記号はmf(メゾフォルテ)になっています。これは「少し強く」という意味です。

一方で【B】からはf(フォルテ)です。「強く」という意味で、mfと比べるとワンランクアップの記号です。

【A】では少し抑えて歌いはじめ、【B】からは一段階元気に、盛り上げる流れになっているのですね。

ちなみに、【B】に入る手前には<のような記号があります。これはクレッシェンドと言って、「だんだん大きく」の意味。これによって【B】のfに繋げます。

強弱の違いをしっかりと表現すると、メリハリのある音楽になりますよ。

3. リズムの違い

最後にリズムに注目してみましょう。まずは合唱パートから。

【A】は黒い音符が目立ちます。これは8分音符が主体となっているからですね。

8分音符は比較的細かなリズムで、ここでは優しく語りかけるようなメロディーになっています。

一方【B】では”さあ”や”かけぬ“なので白い音符が登場していることが分かります。これらは付点2分音符といって、長く伸ばす音を表し、気持ちよく歌い上げるような場面で使われるリズムです。

先ほど述べたハーモニーと合わせて、広々と世界が広がっていくような効果を生んでいますね。

次にピアノパートも見ておきましょう。

【A】では8分音符が主体ですが、全体にスラーがつけられており、柔らかく滑らかな表情です。

一方【B】では付点8分音符が登場し、全体的に弾むような活気のあるリズムになっています。

ピアノパートは合唱がロングトーンをしている間に弾むようなリズムを高音で弾くことで、音楽を軽快に前に進めるような役割を担っています。

伴奏のリズムの変化は音楽の雰囲気に大きく影響します。よく感じ取ってみましょう。

『夢の世界を』歌い方のコツ

ここからは場面ごとに歌い方を詳しく解説します。

えすた@指揮者
えすた@指揮者
楽譜に書き込みながら読み進めると効率的です。

音取りに不安がある場合、まずはしっかりとパート練習を行いましょう。

【A】歌い方のポイント

9小節目~【練習番号A】となっています。

次のポイントを意識して練習しましょう。

  1. ユニゾンをしっかり合わせよう
  2. 言葉の1文字目を丁寧に
  3. 休符を守ってブレスを取ろう
えすた@指揮者
えすた@指揮者
一つひとつ解説します。

ユニゾンをしっかり合わせよう

【A】のフレーズは全員が同じ音を歌うユニゾンとなっています。

音が同じなので、声がぴったりとそろうようにお互い聴き合いながら歌いましょう。

言葉の1文字目を丁寧に

言葉・歌詩を伝えるためには1文字目が大切です。

  • 子音をはっきり発音する
  • 入りの音をよく狙う

これらを意識すると良いと思います。

休符を守ってブレスを取ろう

フレーズに終わりに8分休符がついていることに気づくと思います。

この休符を守ることは、直前の伸ばす音の長さをそろえることにも繋がります。

休符では息継ぎ(ブレス)を取りますが、全員が同じタイミングで息を吸えるようにすると良いでしょう。

【B】歌い方のポイント

25小節目~【練習番号B】となっています。

ここでのポイントは次の3つ。

  1. 豊かなハーモニーを感じよう
  2. 強弱の変化をつけよう
  3. フレーズを大きなまとまりで捉えよう
えすた@指揮者
えすた@指揮者
音がふわっと広がるような場面となっています。

豊かなハーモニーを感じよう

【A】がユニゾンだったのに対し、【B】からはパートが3つに分かれます。

この豊かなハーモニー、響きの広がりを十分に感じながら歌いましょう。

自分の音を必死で歌うのではなく、周りの音を聴くことで美しい和音が生まれます。

強弱の変化をつけよう

【A】がmf(メゾフォルテ・少し強く)だったのに対し、【B】からはf(フォルテ・強く)となっています。

しっかり大きく歌いましょう。

2カッコに入った後、”せかいを”でmfになります。音量を小さくすることを忘れずに。

1カッコにクレッシェンド(だんだん強く)が書かれています。

もともとfだったところからクレッシェンドしますが、その先もfですね。

ここでの解釈方法はいくつか考えられます。

  • 2回目はフォルテより大きく歌う。piu fのようなイメージ
  • クレッシェンドの前に一段階音量を落とす(”おもいで”から)
  • 内面的/気持ち的なクレッシェンドと捉える

クレッシェンドの考え方はこちらの記事(クレッシェンド・デクレッシェンドのコツ【合唱の迫力・魅力アップ】)でも解説していますのであわせてご覧ください。

フレーズを大きなまとまりで捉えよう

【B】の歌い出し”さあ”は長めの音符を使ったメロディーとなっています。

言葉の繋がりとしては”さあ でかけよう”なので、4小節の大きなまとまりで捉えましょう。

”さあ”と”でかけよう”の間で大きくすきまが開いてしまわないようにするのがポイントです。

えすた@指揮者
えすた@指揮者
フレーズを大きくとらえましょう。

【Coda(コーダ)】ラストはたっぷりタメて歌おう

45小節目~【Coda(コーダ)】です。

注意したい記号は次の2つ。

  1. rit.(リタルダンド/だんだん遅く)
  2. テヌート(音の長さを十分に保って)

テヌートの意味はピンと来ないかもしれませんのが「一つひとつの音をしっかり目に歌って欲しい」というような意味になります。

フレーズとしては2カッコ(33~36小節目)と同じようですが、曲の一番最後ということもあるので、よりたっぷりと「タメ」を作るのがポイントです。

えすた@指揮者
えすた@指揮者
同じフレーズのようですが、ここでは曲の途中とラストで違いをつけましょう。

まとめ:繰り返しでの違いを歌い分けよう

ポイントを振り返っておきます。

『夢の世界を』歌い方のコツ

【A】のポイント

  • ユニゾンをしっかり合わせよう
  • 言葉の1文字目を特に丁寧に
  • 休符を守ってブレスを取ろう

【B】のポイント

  • 豊かなハーモニーを感じよう
  • 強弱の変化をつけよう
  • フレーズを大きなまとまりで捉えよう

【Coda】のポイント

  • ラストはたっぷりタメて歌おう

『夢の世界を』はシンプルで短めの作品ですが、良く構成が考えられている曲です。

【A】【B】の場面の違いをしっかりとつかみましょう。

その他、全体練習(アンサンブル)で役立つポイントについてはこちらの記事(【ポイント6つ】全体練習(アンサンブル)をまとめる方法|合唱指揮者が解説)で解説しています。

最後までお読みいただきありがとうございました。この記事が「良いね!」と思ったらtwitterなどで広めていただけるとうれしいです。