鷹羽弘晃

合唱曲『手紙~拝啓 十五の君へ~』演奏のポイント|歌い方を切り替えて

『手紙』演奏のポイント
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『手紙~拝啓 十五の君へ~』はNコン中学校の部2008年度の課題曲。

ポップス系の曲ですが、合唱の良さも十分生かされる編曲となっています。

この記事では練習・演奏する上でのポイントやコツを詳しく解説しています。

ぜひ最後までご覧ください。

音楽之友社「クラス合唱曲集 レッツ・コーラス! 第二版」に収録されている楽譜を参考にし、本文中で歌詩などを引用する場合には「””」で示しています。

『手紙~拝啓 十五の君へ~』の練習番号について

楽譜に記載されている練習番号をそのまま使用します。

練習番号を参照することで全体の構成がより分かりやすくなります。

今回の場合、【A1】は【A2】の繰り返しであることや、【D】に来ると場面がガラリと変わることが分かりやすくなっています。

『手紙~拝啓 十五の君へ~』演奏のポイント

『手紙』演奏のポイント

【A1】16分音符は話しかけるように

『手紙』の歌詞は、15歳の「ぼく」が大人になった未来の自分に手紙を宛てる、という設定になっています。

それを反映して、全体的にメロディーが16分音符で書かれていることが音楽的な特徴となっています。

テンポにもよりますが、16分音符は日本語で話しかける・語りかけるときに近いリズムになります。

このことを踏まえ、【A1】の場面は話しかけるように歌いましょう。

  • 子音をしっかり目に
  • リラックスして、力みすぎない

ということを意識するとうまくいきやすいです。

【B1】強弱記号に気をつけて

【B1】も【A1】に引き続き話しかける場面ですが、強弱記号があり、その分音楽的な起伏のある場面となっています。

まず【B1】に入ってmf。【A1】はmpでしたので1段階アップということになります。

さらに後半でcresc.があるので、【C1】に向けて盛り上げていきます。

“いま”では珍しく8分音符。ここで勢いをつけて、続くfに向けて駆け上がりましょう。

【C1】パートごとの役割を把握して

【C1】はサビの場面。ここは語るというよりしっかり歌い上げるのが適した場面です。

“まけそうで なきそうで”は3パートそろって歌い、その後ソプラノと、アルト・男声に別れ、ズレて歌詩を歌います。

メロディーはソプラノ。1パートになっても頼りなくならないよう、fをキープしてしっかり歌いましょう。

アルト・男声はバックコーラス的な役割です。同じ役割どうし、息を合わせて歌いましょう。16分休符は入るタイミングが難しいです。遅れずに。

24小節の”いまをいきている”では、今度はソプラノ・アルト、アルト・男声という組み合わせになります。

fmfmpとだんだん小さくなっていくのは、エコーのようなイメージで。

【A2】再び語るように。大人っぽく

ここからは大人になった「ぼく」が返事を書く場面。

なのでここで歌う男声は大人になったつもりで歌いましょう。落ち着いて、深い声で歌えると良いと思います。

【B2】主役のアルトを引き立たせて

引き続き、大人っぽく話すように歌いたい場面です。

メロディーはアルト。ソプラノと男声はメロディーをかき消してしまわないよう、控えめに歌いましょう。そうすることでメロディーとヴォカリーズ(Wo)のバランスが取れ、立体的なサウンドになっていきます。

【C2】fをキープ、次につながるテンションで

再度のサビです。切り替えて、しっかり歌いましょう。

【C1】では場面の終わりに向かって音量を小さくしていきましたが、【C2】ではずっとfです。小さくなっていかないようにしっかりキープしましょう。

むしろ【D】に向かってテンションを高めていくくらいが良いと思います。

【D】転調とリズムの変化を感じてノリよく

ここでハ長調からト長調に転調しています。それだけでなくピアノパートが16分音符を刻み、ビート感も高まります。

ここは思い切ってノリよく歌うのが肝心。あまりに自分勝手になってしまうと合唱として破綻してしまいますが、そうならない程度に、気持ちよく歌いましょう。

ノリを演出するのに大切なのがシンコペーション。タイで繋がった音符は少しアクセントを付けるような感じで目立たせると、らしさが出てきます。

ハンドクラップ(手拍子)をつけても良いと思います。

【E】雰囲気をガラリと変えて

ここからはmpですが、音量以上に雰囲気を変えることが大切な場面です。

話しかけるように、それも優しく、繊細な雰囲気が出ると良いと思います。

ヴォカリーズ(Woo)のパートも同様に、乱暴にならないようにしましょう。

その後、再び盛り上げて最後のサビを歌い上げてください。

【F】気持ちを込めて締めくくろう

【F】で気をつけることは【A1】【A2】とさほど変わりません。

違いをつけるとするならば気持ち。

“しあわせなことをねがいます”という祈りの気持ちを持って、最後を締めくくりましょう。

大切なのは、メンバー全員が同じ方向感を共有していること。どのような気持ちで、どのように歌いたいか、お互いに話し合っても良いと思います。

まとめ:場面ごとに歌い方をしっかり切り替えよう

練習番号ごとのポイントを振り返っておきます。

  • 【A1】16分音符話しかけるように
  • 【B1】強弱記号に気をつけて
  • 【C1】パートごとの役割を把握して
  • 【A2】再び語るように。大人っぽく
  • 【B2】主役のアルトを引き立たせて
  • 【C2】fをキープ、次につながるテンションで
  • 【D】転調とリズムの変化を感じてノリよく
  • 【E】雰囲気をガラリと変えて
  • 【F】気持ちを込めて締めくくろう

全体として、それぞれの場面での歌い方の切り替えがポイントです。

【A】【B】では手紙を読むように、そして話しかけるように。【C】【D】では思い切ってノリよく。【E】【F】では話しかけるような歌い方で、さらに気持ちを乗せて歌えると良いと思います。

「もっと詳しく解説して欲しい!」といったリクエストがありましたらお問い合わせからご連絡いただければ対応いたします。