こんな疑問に答えます。
音楽記号は覚えるのが大変ですが、楽譜を読むためには必要不可欠の知識です。一つひとつ覚えていきましょう。
この記事ではmfの読み方や意味をはじめ、「どう演奏したら良いか?」「指揮はどうしたら良いか?」というところまで深堀りしていますのでぜひ最後までご覧ください。
もくじ
mfの読み方と意味
mfの読み方と意味は次の通りです。
- 読み方…メゾ フォルテ(メッゾ フォルテ)
- 意味…「少し強く」
m(メゾ)は「中間の」、f(フォルテ)は「強く」という意味を表すので、全体で「少し強く」という意味になります。
fの「強く」の意味が控えめになるので、mfはfよりも弱く演奏することになります。
他の記号と比べた時の関係は次の通り。
- p < mp < mf < f
mfの歌い方とポイント
mfが登場したときにはどのように歌ったら良いでしょうか。
ここでは気をつけたいことを2点紹介します。
- 積極的に歌う
- fとの関連性を考える
- mpとの関連性を考える
1. 積極的に歌う
mfは「少し強く」の意味と先ほど解説しました。
「少し」とは言え「強く」の意味が含まれているので、音楽的には積極性が必要なことが多いです。
当たり前のようですが、なぜわざわざこんなことを言うのか。
それはmfはf(フォルテ/強く)やp(ピアノ/弱く)ほど意味合いが明確でないため、何も意識していないと漫然とした、ぼんやりとした歌い方になってしまいがちだからです。
よりレベルの高い音楽を作っていきたいならば、どの場面に置いても「ここはこんな風に歌う!」と決めて、意識的に歌うことが必要です。
mfは音量的にはクライマックスではないことが多いですが、積極的に歌うことを最低限心がけておくと良いと思います。
2. fとの関連性を考える
mfと比較して、fは音楽の盛り上がりの頂点、クライマックス的な場面で使われることが多い記号です。
逆に言えば、mfで声量のキャパシティ全開まで歌ってしまうと、fとの違いが出せなくなってしまいます。
したがって、一つの目安として次のように考えると良いと思います。
- mf…クライマックスではないが積極的に
- f…しっかり歌って盛り上げる
実際の楽譜では、「mfから始まってクレッシェンドしてfになる」「fでサビを歌いきったあとmfに戻る」などのパターンが考えられますが、両者の違いをはっきり出せるように見通しながら歌うことが肝心です。
3. mpとの関連性を考える
一方でmpとの関連性も考えてみましょう。
mpもmfも中間的な性格を持つ音量記号です。それゆえ両者の歌い分け方は結構難しいです。
音量的な違いはもありますが、どちらかと言えば「どんな場面・音楽にしたいか」という表情的な観点から考えると整理しやすいと思います。
一つの例として目安を挙げてみます。
- mp…静かにしっとりと歌う(または語る)場面
- mf…積極的にたっぷりと歌い上げる場面
このようにすると音楽のドラマがより多彩に表現できると思います。
mfの指揮の振り方
次に、指揮者の立場ではどのように振ったら良いかを、基本編と応用編に分けて解説します。
【基本編】図形の大小で振り分けよう
指揮の図形(≒振り方)は大きい音が欲しければ大きく振る、小さい音が欲しければ小さく振るのが基本です。
なので「これくらいの音量で歌ってほしいな~」というイメージをもとに図形(振り方)の大きさを決めましょう。
音量のイメージは歌い方のポイントでも触れたように、前後の関係も踏まえつつ決めていきます。
mfは「少し大きく」ですので、大きめの図形で振ります。
【応用編】ニュアンス・タッチまで考え抜こう
mfの意味は「少し強く」ですが、指揮者としては「少し弱く、そしてどのような歌い方にして欲しいか」つまり、音のニュアンスやタッチまで踏み込んで考えたいところです。
具体的なパターンをいくつか挙げてみます。
- 「少し強く」+「たっぷりと豊かに」
- 「少し強く」+「固めのタッチで」
- 「少し強く」+「(直前のfとの対比で)落ち着いて」
このように歌い方のタッチの硬軟や、前後の記号との関連性を考えることができます。
この後で実際の合唱曲を取り上げて解説しますので参考にしてみて下さい。
【実践例】mfが登場する合唱曲とその解釈
mfはほとんどの作品で登場する汎用的な記号で、最も登場頻度が高いと言っても良いでしょう。
ここでは使われ方のパターン別に合唱曲を紹介し、以下の観点で解説したいと思います。
- どんなふうに捉るか
- どのようなイメージを持ちたいか
- 自分ならどのように振るか
『未来』(谷川俊太郎:作詩/高嶋みどり:作曲)
高嶋みどり作曲の『未来』では、合唱の最初のメロディーをmfで歌います。
アウフタクトからの6度の跳躍が大変気持の良いメロディーです。
ここをmfで積極的に歌うことで、とても印象的な出だしとなります。
続く”それはみらいのようだった”も引き続きmf。さらにスラーとpoco dolce(ポーコ ドルチェ/少し甘く、柔らかく)の記号が書かれています。
これによりさらに広がりが出て、伸びやかさも増してきます。
mfの積極性がよく生かされているフレーズだと思います。
指揮をする際には、大きめの図形で、横幅をしっかり使ったなめらかな動きで振ると良いと思います。
22小節目からもまたmfですが、これまでとは意味合いが変わっています。
比較して見ると次のような感じ。
- これまで…伸びやかなメロディー、レガート系
- ここから…リズムかはっきりとしたメロディー、ややアクセント系
このように、同じ音量記号でも音形によって歌い方は変わってきます。
『ほらね』(いとうけいし:作詩/まつしたこう:作曲)
『ほらね、』の終盤に現れるmfを見ていきましょう。楽譜では練習番号【L】の部分です。
73小節目からのmfはff(フォルテシモ/fより強く)の後でいったん音楽を落ち着かせる意図で書かれています。
ずっと強いテンションが続くと、やや暑苦しく感じられるのですね。
また曲の前半において、同様の場面【C】【I】ではpが使われていましたが、ここではmfとなっています。
いったん落ち着かせるとは言っても、【L】は転調後のクライマックス部分のためp系まで落とすのではなく、あくまでもf系の積極性を保って欲しいという作曲者の意図が感じられます。
指揮をする際は、図形の大きさだけでffとmfを振り分けるのはやや難しいかも知れません。
そこで次のようにしてみるのが一つのやり方です。
- ff…全身を大きく広げてクライマックスを表現、たっぷりとしたブレス
- mf…図形の大きさはキープしたままで、やや脱力(リラックス)して見せる
まとめ:【音楽記号】mfの読み方と意味
まとめです。今回の内容を振り返っておきましょう。
- 読み方…メゾ フォルテ(メッゾ フォルテ)
- 意味…「少し強く」
mfはついなんとなくの感覚で歌い進めてしまいそうですが、音楽全体を見渡せば「こんな風に歌うと良いんじゃないか?」というビジョンが見えてきます。
その他の記号に関してはこちらの記事(【覚えよう】音楽の強弱記号を解説|piu・meno・pocoなど)で解説しているのであわせて御覧ください。