こんな疑問に答えます。
この記事では合唱歴10年以上、合唱指揮者歴5年以上の筆者が『マイバラード』(松井孝夫:作詩/作曲)の指揮の基本とコツについて解説しています。
こちらの記事(【疑問を解消】現役指揮者が語る「指揮者の役割」とは【不要?いらない?】)で書いたように、合唱をする際には指揮者の役割は非常に重要で、演奏への影響も非常に大きいです。
次の練習番号に沿って解説していきますので、まずはこれらを楽譜に書き込んでからご覧いただくと分かりやすいと思います。
- 【冒頭】1小節~
- 【A】7小節~
- 【B】15小節~
- 【C】23小節~
- 【D】27小節~
- 【E】36小節~
すぐに実践できるよう、ポイントを絞ってお伝えします。これらに取り組めば、あなたの指揮も必ずレベルアップするはずです。
こちらの記事(【まとめ】初心者のための指揮法完全ガイド|合唱指揮者が基礎から解説)では指揮法を学ぶ上で知っておきたい知識をまとめています。あわせてご覧ください。
もくじ
『マイバラード』指揮の基本【拍子・テンポ・曲想】
まずは『マイバラード』を指揮するにあたっての基本事項を確認しておきましょう。
ざっくりとまとめると以下のようになります。
- 拍子…4/4拍子
- 最初のテンポ…4分音符=88
- 曲想…「語る部分」「歌い上げる部分」あり。基本はレガートで。
これらのことから、4拍子のオーソドックスな振り方をベースにしつつ、以下の2つの場面を振り分けるのが良いと思います。
- 「語る部分」=parlando/パルランド
- 「歌い上げる部分」=cantando/カンタンド
どこが「語る部分」なのか「歌い上げる部分」なのかは、楽譜に書かれている指示やメロディーの変化から感じ取ることができるはずです。
『マイバラード』振り方のコツ【練習番号ごとに解説】
ここからは練習番号ごとに詳しく解説しています。
【冒頭】アウフタクトの16分音符で息を合わせよう
【冒頭】、ピアノパートの出だしは16分音符2つが小節からはみ出しています。こういった部分をアウフタクトと言います。
このアウフタクトはなかなか厄介です。次の3点を意識して取り組んでみましょう。
- 予備拍を曲のテンポに合わせる
- ピアニストと息を合わせる
- 「ここで弾き始めて!」という気持ちを持って振り上げる
1.予備拍を曲のテンポに合わせる
曲を開始する際には予備拍を取ります。「イチ、二ー、サン、ハイ!」と言うものですね。
よくあるミスが、予備拍を取っているときのテンポと、曲が始まったときのテンポが違っているということです。これでは予備拍を取っている意味がなくなってしまいます。
ちなみに「ハイ!」と短く書いているのには理由があります。
これはアウフタクトが裏拍(8分休符+〇分音符)で始まるときのテクニックです。
今回なら「ハイ!(ラララ~)」と曲が始まるイメージとなります。
もちろん本番では「イチ、二ー、サン、ハイ!」は心の中で数えましょう。練習では口に出してもOKです。
ここからは少しハイレベルな話になります。
予備拍というのはなるべく短い方が良く、『マイバラード』の場合は次のように行うのがベストだと思います。
【最少の予備拍】
- サン(カウント)、「ハイ!」(跳ね上げ)
※跳ね上げ…腕を止めた状態から上方向に引き上げる動き
ただ、これは結構難しいです。そこでやや冗長になりますが4拍分の予備拍を取るのがおすすめです。
【おすすめの予備拍】
- 「イチ、二―、サン、ハイ!」
2.ピアニストと息を合わせる
曲始めるときは、自分の動きだけに集中せず、ピアニストとも息を合わせましょう。
最低限、目線を合わせてから降り始めてみてください。
3.「ここで弾き始めて!」という気持ちを持って振り上げる
「ハイ!」のタイミングでは、「ここで弾き始めて!」という気持ちと共に腕を振り上げます。
+αで、ブレスも合わせて取れると完璧です。
- 練習の段階…「ハイ!」
- 本番の段階…「ハイ!」の代わりにブレスを取る
【練習番号A】”みんなで”~メロディーが2拍目から始まることに注意しよう
【練習番号A(7小節)】から合唱が歌い始めます。
歌い出しで大切なのはプレイヤー(歌う側)に対するキュー出しです。キュー出しというのは、言い換えると「ハイ!」を指揮で示すということです。
ここで注意するべきなのが、フレーズが何拍目から始まるかということです。”みんなで”は2拍目から歌い出しますよね。
なので、キュー出しの「ハイ!」を言うのはその1拍前、4分休符のある個所となります。
拍の数え方は次のようになります。
- 「イチ、二ー、サン、シー、ハイ!」
腕の動きもこれに合わせ、「ハイ!」のタイミングで振り上げます。繰り返しになりますが、「どうぞここから歌ってください」という気持ちを持ちながら振りましょう。
良く勘違いしてしまいがちなのは、
- イチ、二―、サン、ハイ!
のタイミング、つまり4拍目で腕を振り上げてしまうことです。
この数え方はフレーズが1拍目から始まる場合に適した振り方ですね。
【練習番号B】フレーズ終わりの3拍分を決めよう
【練習番号B】は【A】の繰り返しのフレーズとなっています。ここではフレーズ終わりのロングトーンを指揮してみましょう。
伸ばす拍は3拍分です。このロングトーンにはデクレッシェンドなどはついていませんので、音量はそのまま真っすぐキープです。
そのような気持ちが指揮者の腕に現れると非常に良いと思います。
さらにできそうなら、休符のタイミングで次に続く【練習番号C】に対するブレスを行えるとバッチリです。fの音量をイメージしましょう。
【練習番号C】力強く振ってf感を引き出そう
【C】での音量はfです。『マイバラード』の中ではサビと言ってもよい場面です。
豊かな音量を引き出せるよう、力強く振ってみましょう。
【C】のフレーズは大胆な2拍3連のリズムが非常にカッコ良いのですが、反面タテがばらつきやすい(タイミングがそろいづらい)という難しさもあります。
もしここで4拍子を正確に振ると、このリズムのばらつきを助長してしまう恐れがあります。
それを回避するために、この部分だけ大きな2拍子で振るということも考えられます。
また、別の方法としては2拍3連をすべて分割して振る方法も考えられます。
ただしこれはややうるさい(大げさな)印象を与えてしまう可能性があります。
「ここは一つ一つの音をマルカート的に、固くしっかりと歌って欲しい」という表現を求める場合ならそれもありかもしれません。
【練習番号D】音量はキープ!でも振り方を少し工夫しよう
【D】の”きらめけ”からは曲調が一転しますね。これまでの情熱的な雰囲気から、爽やかで開放的な雰囲気となります。
音量記号は書かれていないのでここではfをキープする必要があります。ですがメロディーの表情が変わっているため振り方に工夫が必要です。
具体的には左右に幅広くエリアを使い、大きく滑らかな動きで振ると良いのではないかと思います。
【練習番号E】しっかりとテンポをゆるめよう
2番を歌った後【E】のCodaに入ります。
【E】でやるべきことは次5つです。
- molto rit.でしっかりテンポをゆるめる
- ”とどけ”に対するキュー出し(分割もアリ)
- ”ジ”を3拍で切り、最後の”Hum.”に対するブレス
- 最終小節3拍目のピアノパートに対するキュー出し
- 音を切って曲を締めくくる
まとめ:合唱曲『マイバラード』指揮の基本・振り方のコツ
- 拍子…4/4拍子
- 最初のテンポ…4分音符=88
- 曲想…「語る部分」「歌い上げる部分」あり。基本はレガートで。
- 【冒頭】アウフタクトの16分音符で息を合わせよう
- 【練習番号A】メロディーが2拍目から始まることに注意しよう
- 【練習番号B】フレーズ終わりの3拍分を決めよう
- 【練習番号C】力強く振ってf感を引き出そう
- 【練習番号D】音量はキープ!でも振り方を少し工夫しよう
- 【練習番号E】しっかりとテンポをゆるめよう
こちらの記事(【まとめ】初心者のための指揮法完全ガイド|合唱指揮者が基礎から解説)では指揮法を学ぶ上で知っておきたい知識をまとめています。あわせてご覧ください。