岩河三郎

合唱曲『巣立ちの歌』演奏のコツ|伝統の名曲に気持ちを乗せて歌おう

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合唱曲『巣立ちの歌』は格調高い曲調で、卒業式で何度となく歌われてきた伝統の作品です。

“いざさらば”と歌い上げる場面では熱くこみ上げるものがあります。

この記事では「『巣立ちの歌』を上手に歌いたい!」という方に向けて、練習方法や演奏のポイントを詳しく解説しました。

「どんなふうに練習を進めたら良いか」「歌うときに気をつけること」などの参考になると思います。ぜひご覧ください。

えすた@指揮者
えすた@指揮者
合唱指揮者経験10年以上の筆者が解説します。
教育芸術社「クラス合唱曲集 Super Chorus」に収録されている楽譜を参考にし、本文中で歌詩などを引用する場合には「””」で示しています。

『巣立ちの歌』の練習番号と構成について

練習に取り組む前に、次のような練習番号をつけておきましょう。

『巣立ちの歌』の練習番号
  • 【冒頭】1小節~
  • 【A】9小節~
  • 【B】18小節~
  • 【C】26小節~
  • 【D】34小節~
  • 【E】39小節~
  • 【F】47小節~(Coda)

練習番号をつけることで、練習する箇所の指示がしやすくなったり、曲全体の構成が分かりやすくなったりするメリットがあります。

合唱曲『巣立ちの歌』の歌い方のコツ

ここからは練習番号に沿って解説していきます。

楽譜と見比べながら読み進めてください。

【冒頭】1小節~|2つのメロディーを弾き分けよう

【冒頭】はピアノパートの前奏となっています。

やや難しいのは右手が2つのメロディーを担当していること。次のような感じです。

声部1:「シシシーミソーソー」

声部2:「シミレレー」

声部1:「シラソーラシシーラー」

声部2:「ミレドドー」

※♭は省略しています。

このような音楽を難しい言葉で対位法的と言ったりします。

2つのメロディーがそれぞれ独立しながらも、うまく絡み合うように意識しましょう。

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【A】9小節~|お互い聴き合って掛け合いしよう

【A】の特徴は、女声・男声が交互に歌い出すことです。

女声:”はなのいろ”

男声:”はなのいろ”

女声:”くものかげ”

男声:”くものかげ”

メロディーとメロディーがうまく噛み合っています。【冒頭】でのピアノパートと同じような関係になっていますね。

こういった場合、女声・男声がお互いのメロディーを聴き合いながら、歌い出すタイミングや音量のバランスを取ることがコツになります。

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【B】18小節~|強弱を意識してフレーズの山を作ろう

【B】からは強弱記号に注目しましょう。

まずアウフタクト(17小節の”すぎしひの”)から音量が一段階アップしてmf(メゾフォルテ/少し大きく)になっています。

ロングトーンに入りクレッシェンド。男声も合流します。

“まどにのこして”でf(フォルテ/強く)となり、【B】のフレーズの頂点をつくります。

“すだちゆく”はmp(メゾピアノ/少し小さく)になるので、ぐっと音量が小さくなります。男声が大きいままだと女声が埋もれてしまいそうですので、素早くデクレッシェンドしましょう。

その後2か所のロングトーン(22小節、24小節)でさらにデクレッシェンドがあり、フレーズをおさめます。

このように【B】ではmffmpとかなりダイナミックに音量が変化します。記号を読み取ってフレーズの山を作りましょう。

[用語の整理]

  • アウフタクト…小節の前から歌い出す部分。弱起。
  • mp(メゾピアノ)…少し小さく
  • mf(メゾフォルテ)…少し大きく
  • f(フォルテ)…強く
  • デクレッシェンド…だんだん小さく
  • ロングトーン…伸ばす音のこと
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【C】26小節~|込み上げる気持ちを乗せてたっぷりと歌おう

【C】はいわばサビ的な部分で、最も気持ちが入るフレーズです。

音量はfでそこからさらにクレッシェンド(だんだん大きく)しますが、無理やり声を張り上げずに良い声をキープしましょう。

丁寧に、またレガート(音と音とを繋げてなめらかに歌う)に歌いましょう。

フレーズを豊かに歌いきるためにはブレスも大切。ブレス記号があるところで体に深く息を入れることも意識しましょう。

良い発声、豊かな声量に、熱い気持ちを乗せましょう。

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【D】34小節~|充実したハーモニーを響かせよう

【D】は伸ばす音でのハーモニーが大変美しいところ。

次のことを意識すると美しく、充実した響きになります。

  • ピッチ(音程)を正確に
  • 音色(声の質)をよくそろえて
  • 音量バランスを整えて

とにもかくにも、お互いの声をよく聴きあうのが合唱のコツです。

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【E】39小節~|メロディー・和音が濁らないように

【E】の間奏は音が多くて大変難しいですが、頑張りどころです。

右手のオクターブユニゾンによるメロディー、左手の和音が濁らないように、クリアに響かせるように意識できると良いと思います。

【F】47小節~|輝かしく曲を締めくくろう

Codaとなる【F】は曲のラストを締めくくる場面。

アクセント(目立たせて)、クレッシェンドを上手に利用して輝かしく歌い上げましょう。

他の場面と異なるのは低音部。男声が2つに分かれています。

これによって和音を支える土台ができ、どっしりとした重厚感のある響きになります。

まとめ:伝統の名曲に気持ちを乗せて歌おう

練習番号ごとのポイントを振り返っておきます。

  • 【冒頭】2つのメロディーを弾き分けよう
  • 【A】お互い聴き合って掛け合いしよう
  • 【B】強弱を意識してフレーズの山を作ろう
  • 【C】込み上げる気持ちを乗せてたっぷりと歌おう
  • 【D】充実したハーモニーを響かせよう
  • 【E】メロディー・和音が濁らないように
  • 【F】輝かしく曲を締めくくろう

『巣立ちの歌』は、非常に格調高く、オーソドックスな書法で書かれた作品。

それゆえに、基礎をしっかり固めるのが大切です。その上に熱い気持ちを載せて歌えば、感動的な演奏になると思います。

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