音楽理論

【5つの基準】シャープ・フラットの使い分け・考え方【最終的には経験です】

シャープ・フラットの使い分け
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作曲中の人
作曲中の人
シャープとフラットの使い分けで迷うな。判断基準を教えてください。

こんな疑問に答えます。

自分で曲を書いていると、どちらの表記方法が良いのか判断に迷うことがありますよね。

シャープとフラットの使い分けを厳密に判断するのは難しいです。

そこでこの記事では「こんな感じで判断すると良いよ!」という目安を紹介します。

ただ、機械的に判断することは難しいので最終的には経験が大切になります。

今回の考察は音楽理論を学ぶとっかかりになったり、理解を深めることにも繋がります。

えすた@指揮者
えすた@指揮者
ぜひ最後までご覧ください。
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【5つの基準】シャープ(♯)・フラット(♭)の使い分け

例えば「ド♯」と「レ♭」は同じ音です。

他にも「レ♯」と「ミ♭」、「ソ♯」と「ラ♭」などが挙げられますね。

こういった場合にシャープ・フラットのどちらを使うかですが、私は次の要素を総合的に考えて判断しています。

  1. メロディーの方向性
  2. 和音の構成
  3. 調の中での役割
  4. シャープ・フラットのつきやすさ
  5. 読みやすさ
えすた@指揮者
えすた@指揮者
順番に解説していきます。

使い分け基準1. メロディーの方向性で決める

1つ目はメロディーの方向性で決める方法です。比較的分かりやすいやり方です。

上昇音型ならシャープを使う

シャープフラット使い分け上昇

この場合は音が上がっていくメロディーですので「レ♭」を使うよりは「ド♯」を使う方が自然な感じです。

下降音型ならシャープを使う

シャープフラット使い分け下降

一方こちらは音が下がっていくメロディーですので「ド♯」よりは「レ♭」の方が自然かなという印象です。

えすた@指揮者
えすた@指揮者
ただし例外はしょっちゅうあります。

使い分け基準2. 和音の構成で決める

2つ目は和音の構成で決める方法です。

和音の構成音として見たとき、どちらが自然かで判断します。

「ラ♯」or「シ♭」in C7コード

分かりやすい
シャープフラット使い分け和音
分かりにくい
シャープフラット使い分け和音2

どちらもC7の和音ですが、「シ♭」で書いた方が分かりやすく、自然な記譜方法です。根音である「ド」との音程関係も短7度になるのでいい感じです。

「ラ♯」を使うと見かけ上「ソ」と二度でぶつかっているように見えます。根音との関係も見た目上は増六度となってしまいますのでイマイチかなと思います。

「ド♯」or「レ♭」in E♭7コード

最初に「ド♯」と「レ♭」の例を出しましたのでそれも同じように考えてみましょう。

分かりやすい
E♭7
分かりにくい
E♭7

話としてはC7のときと同じです。

ただし、今後の考察で「ド♯」を使う方がいいかもという場合も出てきますのでお楽しみに。

使い分け基準3. 調の中での役割で決める

3つめは調の中の役割で決めるという方法です。

えすた@指揮者
えすた@指揮者
ここは難しく感じたら読み飛ばしてもOKです。

調の中での役割とは?

ある調の中において、それぞれの音はある程度決まった役割を持っています。キャラクターと言っても良いかもしれません。

例を挙げるとこんな感じです。

  • 「ド」…曲の終止感を生み出す
  • 「シ」…「ド」に進む期待感を持つ

※ここでの「ド」「シ」は階名です。詳しくは【入門者向け】移動ド(階名)唱法とは|固定ド(音名)との違いも解説をご覧ください。

シャープ・フラットの臨時記号がついた場合にもこの「音の役割」あるいは「キャラクター」を考えることができます。

この場合、階名で考えることになりますので「何調か?」が重要です。

えすた@指揮者
えすた@指揮者
その調における音のキャラクターで、どちらがよりふさわしいか判断します。

音楽理論関係の心得がある方はお分かりかと思いますが、

  • Ⅰの和音…終止感を与える。トニック
  • Ⅴの和音…トニックに進もうとする。ドミナント

という事項と関連しています。

「ド」は単音だけである程度トニック的なキャラクターを持ちます。

「シ」は単音だけである程度ドミナント的なキャラクターを持つということです。

「ソ♯」or「ラ♭」@ハ長調/イ短調

例としてハ長調/イ短調の場合で「ソ♯」or「ラ♭」の使い分けを考えてみましょう。

これらの音が調の中でどんな役割を持っているのか確認してみます。このようになります。

  1. 「♯ソ」…イ短調の主音「ラ」に解決する
  2. 「♭ラ」…ハ長調の属音「ソ」に解決する

例えば次のような進行があったとします。

a-moll_gis

このような場合は「ソ♯」の方が適当なことが多いです。

最後の音が「ラ」なので、そこに向かうキャラクターを持つ「ソ♯」を使うというわけです。

この3つの音型の裏側には次のような和音進行があると予想されます。

a-moll_gis_2


こうしてみると2つ目の和音はE(「ミ」「ソ♯」「シ」)ですので、「2. 和音の構成」の観点からも「ソ♯」が適当だと分かります。

「ラ」→「ソ♯」と進むところでは半音下がっているので、「1. メロディーの方向性」だけだと判断に悩むかもしれません。

えすた@指揮者
えすた@指揮者
半音上がって「ラ」に解決する音→「♯ソ」を使う、と判断できます。

次の例です。

c-dur_As

ハ長調の場合だとすれば、「ソ♯」よりも「ラ♭」を使った方が自然に見えます。

「ラ♭」は半音下がって「ソ」に解決するというキャラクターを持っているからです。

この進行の裏側にある和音はこんな感じです。

c-dur_As_2内声(アルト)に入れてみました。

この場合、2つ目の和音はFm(「ファ」「ラ♭」「ド)ですので、「2. 和音の構成」の観点的にも「ラ♭」が適当そうですね。

「ソ」→「ラ♭」と進むところでは半音上がっているので、先ほどと同様に「1. メロディーの方向性」だけでは悩みます。

えすた@指揮者
えすた@指揮者
半音下がって「ソ」に解決する音→「♭ラ」を使う、と判断します。

「ド♯」or「レ♭」@ト長調

せっかくなのでもう少し深堀りしてみます。

次の譜例はト長調です。

g-dur

4拍目の「♯ド」に注目です。

ト長調の階名で考えると「ファ♯」ですね。

「ファ♯(階名)」は半音上がって属音「ソ(階名)」に強く向かうキャラクターを持っています。この楽譜でもそうなっていますね。

えすた@指揮者
えすた@指揮者
ト長調では「ソ(階名)」=「レ(音名)」であることに注意しましょう。

一方で和音を見てみると、この瞬間はE7です。

E♭7

「2. 和音の構成で決める」のときは読みやすさを取って「レ♭」を使った方が良いよねと説明しました。この場合どう判断するか。

結論、私なら「ド♯」を使います。

というのも、ト長調の進行で出てきたE♭7のコードは、A7を変形させたものだからです。

g-dur2

変形させる前の和音がこちら。これを色々変化させるとE♭7になります。

「ド♯」はこの和音の名残です。この流れを重視して、私なら「ド♯」を使うかなという感じです。

えすた@指揮者
えすた@指揮者
どうやったらA7がE♭7になるかについてはまた後日…。

使い分け基準4.シャープ(♯)・フラット(♭)のつきやすさで決める

4つ目はシャープ・フラットのつきやすさで決めるという方法です。

この方法を使うと割と機械的に判断できます。

シャープ・フラットのつきやすさとは?

「つきやすさ」というのは割と私独自の考え方です(おそらく)。

調号の場合シャープ・フラットのつく順番は決まっていますよね。それと同じになります。

  • シャープ…ファドソレラミシ
  • フラット…シミラレソドファ

この順でつきやすいと考えます。

つきやすい方を優先してシャープ・フラットをつけるという方法です。

えすた@指揮者
えすた@指揮者
伝わるか分かりませんがイオン化傾向みたいな感じです。

「ド♯」or「レ♭」@ハ長調/イ短調

例えばハ長調/イ短調において「ド♯」か「レ♭」かで悩んだとします。

シャープ・フラットのつきやすさを検討すると、

  • 「♯ド」…つきやすさ2番目(ファ
  • 「♭レ」…つきやすさ4番目(シミラ

なので「♯ド」の方を使うほうが良さそうと判断できます。

実際に色々な楽譜を見てみると、「ド♯」の方が良く見るかなという肌感覚はあります。

「ソ♯」or「ラ♭」@ハ長調/イ短調

「ソ♯」
a-moll_gis
「ラ♭」
c-dur_As

もう一つ、ハ長調/イ短調における「ソ♯」と「ラ♭」でやってみましょう。

先ほど「3. 調の中での役割」で検討した音になります。結論としては「どちらもアリ」ということで、最終的には解決先の音で判断しました。

  • 「ソ♯」…つきやすさ3番目(ファド
  • 「ラ♭」…つきやすさ3番目(シミ

という感じでどちらもつきやすさは3番目です。

実際、半々くらいの割合で楽譜にも登場しているかなといった感じがありますよね。

「ド♯」or「レ♭」@変ホ長調/ハ短調

男の子
男の子
他の調でも同じように使えますか?
えすた@指揮者
えすた@指揮者
階名(移動ド)を使うと同じように考えられます。

先ほどはハ長調/イ短調で考えましたが、調を変えた場合はどうでしょうか。

例えば変ホ長調/ハ短調(フラット3つの調)で考えてみます。

まずは「ド♯」「レ♭」それぞれをホ長調の階名に変換します。

調性音名階名
変ホ長調「ド♯」「レ♭」「♯ラ」「♭シ」

この階名に先ほどの方法を適用します。

  • 「ラ♯(階名)」…つきやすさ5番目(ファドソレ
  • 「シ♭(階名)」…つきやすさ1番目(

となるので、ホ長調では「シ♭(階名)」=「レ♭(音名)」を使う方が良いことが分かります。

実際、「ド♯」と「レ♭」では後者の方が登場頻度が高いような気がしますよね。

「♯ド」or「♭レ」@ト長調

g-dur再掲です。

もう一つ、ト長調において「ド♯」と「レ♭」を比較してみましょう。

これまでの検討では、

  • 「3. 調の中での役割」なら「ド♯」
  • 「2. 和音の構成」なら「レ♭」

が良さそうという結論でした。

まずは階名に変換します。

調性音名階名
ト長調「ド♯」「レ♭」「ファ♯」「ソ♭」

となるので、同様に判定します。

  • 「ファ♯(階名)」…つきやすさ1番目(ファ
  • 「ソ♭(階名)」…つきやすさ5番目(シミラレ

となりました。なので「4. シャープ・フラットのつきやすさ」の観点から言えば「ド♯(音名)」を使うのが良さそうです。

感覚的にもト長調の曲では「レ♭」より「ド♯」のほうがよく見かけますよね。

えすた@指揮者
えすた@指揮者
このように「4. シャープ・フラットのつきやすさ」を使えば機械的に判断できます。

使い分けの基準5. 読みやすさで決める

シンプルに楽譜の読みやすさで決めてしまう方法もあります。

演奏する側としてはその方がありがたい気もします。

一方、作曲家的には「このように書いた方が譜面上美しい…」ということもあるでしょう。

また、音楽経験の多寡によって楽譜の読みやすさというのも変わってくると思います。

g-durさらに再掲です。

E7の和音の例で、「ド♯」or「レ♭」に関しては、

  • 和声法に精通している→「ド♯」
  • コードネームに精通している→「レ♭」

が見やすいと感じるのではないでしょうか。

ソプラノを歌う立場からすると見やすいのは完全に「ド♯」となると思います。

えすた@指揮者
えすた@指揮者
読みやすさは音楽経験の多寡、立場によって変わります。

【まとめと結論】楽譜を色々見て経験を積むことが大切

ここまで、シャープ・フラットを使い分けるための5つの判断基準を解説してきました。

  1. メロディーの方向性で決める
  2. 和音の構成で決める
  3. 調の中での役割で決める
  4. シャープ・フラットのつきやすさで決める
  5. 読みやすさで決める

観点によって結論が変わることもありました。結局のところどうすればいいのでしょう。

結論としては「総合的に考えて決めるしかない」ということになります。

この判断をするためには、たくさんの楽譜を見て経験を積むことが必要です。

例えばハ長調で「♯ド」と「♭レ」の使い分けで迷ったら、ハ長調で「#ド」や「♭レ」が出てくる楽譜を探して参考にしてください。

私自身はそんな感じで学んできました。

登場例を探すのは大変ですが、色々な楽譜を見て、知っていることはそれだけ力になります。

結局のところ、そうやって成長していくしかないのではないかなと思います。

作曲学ぶのは大変ですが、頑張りましょう!