パート練習はとても大切です。
各パートがそれぞれしっかり歌えていてこそ、全体として良いアンサンブル・良い音楽ができるからです。
この記事ではパート練習の進め方・仕切り方を解説し、目的や注意点に関してもフォローしています。
ぜひ最後までご覧ください。
【5ステップ】パート練習の進め方
まずはパート練習のやり方・進め方を5ステップで解説します。
- どこを練習するか指示する
- ピアノを弾く or 歌ってお手本を示す
- メンバーに歌ってもらう
- フィードバックをする
- もう一度歌ってもらい、定着させる
ステップ1.どこを練習するか指示する
パート練習を行う時は最初に「どこ練習するのか」を明確に指示することが大切です。
- どの曲を練習するのか
- どの部分を歌うのか
これらのことを教えてあげてください。
こうすることで歌う側も「ここを歌うんだな」と心づもりができます。
この指示が曖昧だと歌い出しがそろわなかったりして質の高い練習になりません。
結果、何度もやり直すことになりタイムロスになります。
限られた時間でパート練習を効率的に進めるためにも、歌う場所の指示出しはしっかりと行いましょう。
ステップ2.ピアノを弾く or 歌ってお手本を示す
次にピアノを弾く or 歌ってお手本を示します。
音取りの段階ではピアノを弾いて示した方が正確です。
一方で言葉が難しい場合(外国語のとき)やリズムが難しい場合は、歌って示したほうが分かりやすいということもあります。
ステップ3.メンバーに歌ってもらう
お手本を示したら次はメンバーに歌ってもらいます。
音取りなど初期のパート練習では次のような、基本的な部分をチェックしましょう。
- 音高(ピッチ)が合っているか
- リズムが合っているか
ステップ4.フィードバックをする
歌ってもらった後、どのぐらい歌えていたかのフィードバックを行います。
音が間違っていたらその点を指摘したり、リズムが掴めていなければ正しく教えてあげましょう。
ステップ5.もう一度歌ってもらい、定着させる
フィードバックをしたらそれで終わりではありません。
もう一度歌ってもらい、本当に指示が伝わっているか、きちんと歌えるようになったか確認しましょう。
一度の指示・練習で歌えるようになるとは限りません。1~5のステップを何回か繰り返しながら練習を進めていきましょう。
【5+1つ】パート練習の目的
パート練習を行う目的として次の5+1個を挙げたいと思います。
これらのポイントを意識して取り組んでみてください。
- 音取り
- 音の統一(ピッチと音色)
- 強弱・奏法など記号の確認と練習
- フレージング、言葉などの作り込み
- アンサンブル(合わせ)の復習
- 親交を深める
目的1.音取り
新しい曲を練習し始めたとき、最初に行うのが音取りです。
各パートが担当する音を歌えるように練習します。
確実に音を取らないとアンサンブルになったときに歌えません。
最初は大変ですが繰り返し練習しましょう。
難しめの曲になるとdiv.が出てくることがあります。
一つのパートが分かれて歌うという意味の記号です。
div.のある個所は音が取りにくいことも多いのでパート練習でしっかり攻略しておきましょう。
目的2.音の統一(ピッチと音色)
統一と言うのは要するに「そろえること」です。
合唱では音をそろえることはとても大切です。
合唱の魅力であるハーモニーをはじめ、すべての基礎になるからです。
演奏のクオリティに一番大きな影響を与える要素と言っても過言ではありません。
特に「ピッチ」と「音色(声の質)」に気をつけて、パート内の音を統一していきましょう。
目的3.強弱・奏法など記号の確認と練習
楽譜には様々な記号が書かれています。
- 強弱記号…音量に関する指示
- 奏法記号…歌い方に関する指示
- 表情記号…曲の雰囲気に関する指示
これらの意味、そして「どう歌ったら良いか」をしっかり確認しましょう。
確認の上、それがしっかり表現できるように練習します。
ここはフォルテ、ここはピアノと頭では分かっていても実際歌うとなると上手くいかないこともあるからです。
目的4.フレージング、言葉などの作り込み
ここからはより完成度を高めていくための内容になります。
作り込みの内容は色々ありますが、代表として
- ロングトーン
- 言葉
の処理に関して触れておきます。
他の要素としては
- リズム
- カンニングブレス(ローテーションブレス)
- より良い発声
- フレージング
などが考えられます。
ロングトーン
「ロングトーン」は長く伸ばす音のことです。
- 伸ばす拍の正確さ
- 音色の統一感
- ハーモニーの美しさ
などが顕著に表れるので十分練習しておく必要があります。
言葉(子音・アクセント)
合唱は歌詩のつく音楽ですので、言葉を伝えることも大切です。
- 子音
- アクセント
に留意しましょう。
目的5.アンサンブル(合わせ)の復習
パート練習は一度やったら終わりではありません。
「パート練習⇔アンサンブル」を何回も繰り返して音楽を磨き上げていきます。
アンサンブルで明らかになった課題を振り返り、クリアしていくのもパート練習の目的の一つです。
課題の例をいくつか挙げます。
合わせたら歌えなかった
パート練習では歌えていた場所も、合わせてみたら歌えなかったということは良くあります。
- ハーモニーが難しくて音を見失った
- 他のパートから音を拾えなかった
- 歌い出すタイミングが分からなかった
などですね。
原因は何かを考え、パートに持ち帰って練習する必要があります。
アンサンブルの指示をその場でこなせなかった
アンサンブルでは指揮者から色々な指示を受けると思います。
当然、その場で消化しきれない(こなせない)という場合もあります。
そういう時にはパートに持ち帰って練習します。
他のパートと歌い方が違った
歌い方(音色や表現)に関しては、パート内だけでなく他のパートも含めて統一する必要があります。
それぞれのパートが異なる歌い方をしていては良い音楽が作れないからです。
事前に「こうやって歌おうね」と決めておくのがベストですが、はじめからすべて決め打ってしまうのも難しいです。
パート間の歌い方の相違が出た場合、アンサンブルで擦り合わせていきます。
そこで決まった歌い方が完全にマスターできなければ、パートに持ち帰って練習する必要が出てきます。
目的+α.親交を深める
練習自体とは直接関係ないかもしれませんが「親交を深める」ことも大切なことです。
パート内で仲が良いと練習の雰囲気が良くなり、楽しいです。
雰囲気が良く楽しいと良い練習ができます。
【7つ】パート練習を仕切るときのコツ
パートリーダーとして練習を進めていく上で、気をつけておくと良いことを挙げたいと思います。
コツ1.はっきりと指示出しする
練習の指示をはっきりと出すことは重要です。
ここが曖昧だとメンバーも「どこを歌えばいいのか」「何に気をつければ良いのか」が分かりません。
- 全員に伝わるよう大きな声ではきはきと
- どこから始めるのか、何に気をつければ良いのか明確に
これらのことを意識してください。
コツ2.どう練習すればできるようになるかまで踏み込む【やや難】
次のような練習をやってしまうことがよくあると思います。
上手くいかなかった部分を指摘
→「もう一回!」とひたすら繰り返す
悪くはないのですが、これだとメンバーを辟易させてしまう可能性もあり得ます。
そこで私が意識しているのは、上手くいかなかった点を指摘した上で具体的な改善策まで踏み込むことです。
次のような感じです。
- 「どう歌えば良いか」
- 「どういう練習をすればできるようになるか」
ここまで指示が出せるとパート練習のクオリティが段違いに上がります。
メンバーからすると「次は何をやるべきか」が明確になるからです。
コツ3.歌い出しのカウントを適切に行う
歌い出すタイミングを指示する際、「サン、ハイ!」などと言いと思います。これをカウントと言います。
カウントを適切に行うことは大切です。
カウントの正確性・ニュアンス(言い方)は歌の良し悪しにダイレクトに影響するからです。
- 曲の拍子・リズム
- 曲・場面のイメージ
などなどを念頭に置き、カウントに反映させましょう。
カウントが歌にどう影響するか解説します。
- 正確性…カウントを間違うと歌い出しがばらつく
- ニュアンス(言い方)…歌い方に影響大
ニュアンスの方に関して補足しておきます。
例えば「次はfなので大きな声で歌いましょう!」と指示を出しておいて、
「サン、ハイ!」
と言ったらどうでしょうか。
とても大きな声では歌えませんよね。
これがカウントが歌い方に影響するということです。
- 強弱
- テンポ感
- レガート・マルカート
これらに応じてカウントのニュアンスを使い分ける必要があります。
コツ4.ダメ出しするときは言い回しに注意
パート練習では上手くいかない点を指摘すること、要するにダメ出しが多くなります。
ダメ出しをするときにはメンバーのテンションを下げてしまわないよう、言い回しに十分配慮する必要があります。
あなたが歌う側だったとします。ひたすら「低い!」「ピッチ悪い!」と指摘しまくられると、仮にそれが正しくても気分的には嫌ですよね。
嫌な気持ちになるとそれがまたピッチを悪くするので悪循環です。
そこで私は次のようにしています。
- 「低い」と指摘する代わりに「もうちょっと高めに」と言い換える
- 「ここでブレスをしっかり取りましょう」などアプローチを変える
パートリーダー(あるいは指揮者)と言えどメンバーが歌ってくれての合唱です。
上から目線にならないようにしましょう。
コツ5.明るい雰囲気づくりを心がける
コンクール直前などは特にそうですが、クオリティにこだわるあまり剣呑な雰囲気のパート練習になってしまうことは良くあります。
私自身、指示出しの口調がついつい厳しくなってしまった経験を持っています。
ですが雰囲気が悪くなりすぎると
- 楽しくない
- 体が硬くなる
- ブレスが浅くなる
などと色々弊害も出てきます。
なので、基本的に練習は明るい雰囲気になるようにするのが吉です。
ちょっとした笑顔と指示出しの声のハリだけでずいぶん変わるので、意識してみてください。
コツ6.1か所にこだわり過ぎない
あるフレーズがどうしても上手く歌えない、ということはよくあります。
そういった場合は何度も練習することが一つの方法。ですが時にはこだわり過ぎないことも必要です。
1か所に時間を掛け過ぎると他の部分の練習ができなくなってしまいますし、「いつまでも上手くいかないな…」という事実は雰囲気を重くします。
なのでその場では諦め、一旦寝かせる(=時間を置く)ことも有効です。
寝かせることで次回やったときになぜか上手く歌える、と言うパターンもあるからです。
コツ7.ボキャ貧に逃げない【やや難&やや厳】
指示を出そうとしたとき、思っていることがうまく言葉にならないことがありますよね。
自分の感覚を言葉に起こすことは非常に難しいし、その気持ちは良く分かります。
ですが、こうした時に「ボキャ貧だから…」と思考停止するのは禁物です。
なぜなら指示がどうしても曖昧になってしまうし、自身の成長に繋がらないからです。
なんとか言葉を紡(つむ)ぐ努力をしましょう。
苦労して伝えようとする過程で、音楽に関する語彙力が培われます。
この語彙力が音楽における表現力にも繋がるので、言葉は大切にして欲しいと思います。
まとめ:質の高いパート練習のやり方・進め方・コツ
まとめです!
この5ステップを繰り返すことでパートのレベルアップを図りましょう。
- どこを練習するか指示する
- ピアノを弾く or 歌ってお手本を示す
- メンバーに歌ってもらう
- フィードバックをする
- もう一度歌ってもらい、定着させる
この記事の後半では結構難しい内容まで踏み込みました。
繰り返し読んで質の高いパート練習を実施していただければと思います。
合唱の練習法に関してはこちらの記事(【絶対に上手くなる】合唱の練習方法まとめ|流れ・目的・内容を解説)でまとめています。
また歌い方・発声のコツはこちらの記事(【合唱初心者必見】歌い方・発声のコツを総まとめ【上達スピード向上】)でまとめています。どうぞご利用ください。
合唱に関する本(【指揮者が選ぶ】合唱のおすすめ本|上手くなる本・知識がつく本)を読むことも良い練習をするためのヒントになると思います。