『響きあう命』は、作曲者の瑞木薫さんの作品。
様々な工夫によって、鮮やかに世界観が表現されています。
演奏の際には、これらの工夫を読み取り、どのように表現するかがカギとなります。
ぜひ最後までご覧ください。
もくじ
『響きあう命』練習・演奏のポイント
『響きあう命』では、詩句に沿って情景が絵画的に描かれ、様々に場面が展開していきます。これが作品の特徴であり、作曲家・瑞木薫さんの作風と言っても良いかもしれません。
楽譜にはあらかじめ練習番号(【A】【B】…)がつけられていますが、これらが場面のまとまりとなっています。
楽譜を見ながら曲を聴いてみると、練習番号ごとに音楽の雰囲気がガラリと変わることが分かるかと思います。
そんな『響きあう命』に取り組むにあたっては、次の3ステップを意識して練習を進めていくと良いと思います。
- 楽譜を丁寧に読み込む
- 作曲者が描こうとした情景を想像する
- どのように表現するかを考える
まずは楽譜に書かれていることを丁寧に読むことが大切です。分からない記号が出てきたら調べてみましょう。
次に、作曲家はそれらの記号を用い、「どのような情景を描こうとしたのか」を想像してみましょう。これは同時に、歌詩と音楽の繋がりを考えることにもなります。
最後に、そうした曲の内容をどのように表現するか、つまり、「どんな風に歌うのか、表現するか」を考えます。
このステップを踏んで練習することで、作曲家の思い描いた世界に深く分け入り、説得力のある演奏に繋がります。
次からの解説も、この3ステップを意識して書きました。
ぜひ練習で役立ててください。
【冒頭】記号と情景を結びつけて
最初はピアノによる情景描写の場面です。
“深い海の底に光がさしこんでくるように”を表現するために色々な記号が使われています。
これらを読み解きながら進めましょう。
曲の世界観を共有するためにも、ピアニスト以外の人も知っておいて欲しい内容です。
光や波の揺れをイメージして
この場面では、accel.やrit.、四分音符=↑↓40といったテンポに関する記号がまず目を引きます。補助として直線も使われていますね。
また、テンポの伸縮に合わせて、クレッシェンド・デクレッシェンドによる強弱の変化もつけられています。
ゆったりと波や光が揺らめく様子をイメージして表現してみましょう。
ペダルの響きで神秘的に
パッセージとしては6連符のアルペジオになります。
ペダルによって響きを引き伸ばすことで、神秘的な雰囲気を醸し出しましょう。
フェルマータとブレスの「間」
最後に、フェルマータとブレス記号に注目しておきます。
これらに共通するのは音楽の「間」。フレーズとフレーズとの間の時間のことです。
この「間」を余裕を持ってたっぷり取ってやると、深い海の静寂を描けると思います。
【A】色彩・動きの変化を感じて
【A】から約10小節、ピアノパートによる前奏となります。
最初はニ短調ではじまりますが、11小節あたりから少しずつヘ長調に向かっていきます。
この間に、【冒頭】で示された深い海の色は、少しずつ明るさを帯びてきます。
同時に動きも出きて、活動的になってくるように感じられます。
この場面では、こういった色彩・動きの変化を感じながら弾きましょう。
そうすることで雰囲気を整えることができ、【B】からの合唱の入りを上手く導くことができます。
【B】海原のおおらかさイメージして
ここから合唱が入ります。歌う人も情景をなるべく鮮明にイメージしておきましょう。
リズムにおおらかな海原を感じて
【B】の場面は「海原のおおらかさ」をイメージさせるようなフレーズとなっています。
そのように感じられる理由はリズムにあります。
合唱のリズムは2拍3連(2拍分を3分割する3連符)。さらに、ピアノパートの右手のリズムは流れるような8分音符です。
これらのリズムが絡み合うことで、はっきりとした4拍子のキャラクターは薄れ、結果として「海の中を漂っているような、ゆったりとした雰囲気」が醸し出されているのです。
“あおいうみのなか”というスケール感や、”ちいさないのちやどり”という神秘的なイメージにマッチした音楽になっています。
フレーズを大きく捉えて
このような場面をより効果的に歌うために、いくつかポイントを挙げてみます。
- 息をたっぷりと使い、声の質感を柔らかく
- レガートに(=なめらかに)
- フレーズを大きく捉えて
これらのことを気をつけると、雰囲気にマッチした歌い方ができると思います。
アクセントの歌い方
“あおいうみのなか”に、<>のアクセントがつけられています。
少々弾力のあるタッチで、あくまで柔らかさを保った上で目立たせましょう。
通常の>のアクセントのように声を強く当ててしまうと、曲の雰囲気を損なってしまいます。
>も<>も、どちらもアクセントの一種です。
一般的によく使われるのは>の記号で、「音を目立たせて」というような意味です。どちらかといえば固く、激しめの表現で使われることが多いです。
一方、<>はもう少し柔らかな表現で、弾力があります。
作曲家の三善晃が多用することから、三善アクセントと呼ばれることもあります。(合唱界限定かもしれませんが…。)
『響きあう命』では両方のアクセントが使われていまが、場面にマッチするように考えて使い分けられています。
跳躍音程に注意
また、”はるかなときを”で「ファ」から「レ」へ向かう跳躍(離れた音へ向かうこと)にも注意しましょう。
上がった先で急に声が大きくなったり、乱暴な上がり方にならないよう、あくまで丁寧に処理することが大切です。
声のアタック感(当たり)が強くなると、拍節的になる、つまり、はっきりとした4拍子が感じられるようになってしまい、この場面の雰囲気を壊してしまうのです。
【C】強弱で距離感を表現しよう
【B】と似ている場面ですが、新しい要素も数多く登場します。
「大きく」は「近く」、「小さく」は「遠く」
【C】では強弱の記号に注目しましょう。
25小節”ひかりとかぜのなか”のフレーズ以降、クレッシェンドとデクレッシェンドが繰り返されます。
クレッシェンドは「だんだん大きく」、デクレッシェンドは「だんだん小さく」でした。
つまり、ここではフレーズの中心に向かって膨らませていき、フレーズの終わりに向かって収めていく、という流れになっています。
このとき、単に音量を大小で捉えるのでなく、距離感で捉えてみてください。
つまり、「だんだん大きく」は「だんだん近く」、「だんだん小さく」は「だんだん遠く」です。
このようにイメージすると、歌詩の掛け合いと合わせて、立体的なサウンドを醸し出すことに繋がり、一段階上のレベルの表現ができると思います。
音量の山と谷を押さえて
クレッシェンド・デクレッシェンドをする中で、どこが音量的な山なのか、逆に谷なのかを知っておくことは大切です。
山に当たるのがmeno fのところになります。ただし、山とは言っても大きなクライマックスではないので、やや控えめに。
逆に谷となるのがmpです。音量をしっかり絞り、”きみのほほえみ”という言葉を大切に伝えるようにすると効果的です。
meno fについて補足しておきます。
menoは、これがつけられた記号の意味を弱める効果を持ちます。
f(フォルテ)は強くの意味ですので、meno fはfよりも少し弱い程度の音量になります。
mfと比べると、それよりは少し大きい音量を意味します。
ここまで読んで、「mfでもfでもなく、なぜわざわざmeno fを使うの?」と思った方もいると思います。こういった疑問ひとつひとつに、丁寧に解釈を与えることが音楽づくりでは大切なことです。
結論としては、「音量的には膨らませて欲しいけど、クライマックスではないから少し控えめに」という意図がここでのmeno f込められています。
【B】【C】というのは曲全体を見たときの、序盤のまとまりです。
meno fのところは、このまとまりの中では山場。ですが、まだ曲の序盤で、曲の後半にはさらに大きな盛り上がりが控えています。
そのため、ここでfを使ってしまうと、盛り上がりすぎて全体のバランスが悪くなってしまいます。
meno fを使うことで、fは後半に「取っておく」ということなのです。
他の場面でもmeno fとfが使い分けられていますが、fは本当にクライマックス的な場面、または激しい場面でしか使わないように計算されています。
【D】嵐の場面
【D】は歌詩を聞いて分かる通り、嵐の場面です。
暗いイ短調に転調し、テンポもやや速くなることが場面の変化に関わっています。
決然として
表情や歌い方を表す記号として、risoluto(リゾルート)が書かれています。
これは「決然と」という意味になります。
具体的にどうすれば、というのは難しいですが、例えば声の音色が浅く、子供っぽくならないように気をつける、というのが一つの手。
大人っぽく、深い声をイメージして歌ってみましょう。
堂々とfで
音量はf。堂々と歌いましょう。
ただし、声を張り上げすぎると汚くなってしまうので、男声パート全員で声がまとまるよう、耳も使いながら良い発声を心がけることが肝心です。
テヌートはどっしりと
【D】のフレーズにはテヌートの記号が多く使われています。
意味としては「音の長さを十分に保って」ということになりますが、これではピンとこない人も多いと思います。
「一つひとつの音が短く・軽くならないよう、しっかり目に歌う」と言い換えると少し分かりやすいでしょうか。
アクセントにも近いのですが、アクセントのようにきついアタック感になったり、音が短く弾むようにならないように気をつけてみてください。
子音でニュアンスを生かして
最後に言葉の歌い方に関することです。
子音とは、例えば”くろい(kuroi)”という歌詩のkとrの音がそうです。
子音を上手に使うと、歌詩をクリアに伝えられるほか、ニュアンスも出すことができます。
【D】のフレーズでは”くろい(kuroi)”、”きばをむく(kibawomuku)”のk子音を強調して歌ってみましょう。
こうすることで、場面の激しさをより強く表現できます。
ただし、k子音はやり過ぎると乱暴な歌い方になってしまうので注意してください。
【E】前後で歌う方を対比させて
【E】からは、再びガラッと雰囲気が変わります。
37~40小節では”たゆとう”、”まいおちる”といった言葉のイメージによくマッチした音楽になっています。
柔らかい声で
dolce(ドルチェ)の記号は歌い方・表情を表す記号で、「甘く、柔らかく」の意味。【D】のrisolutoとの対比となっています。
メロディーを滑らかに、角ばらないようすることで、女声・男声のメロディーの絡みが美しく、また叙情的な雰囲気になります。
音量を切り替えて
【D】はfでしたが、【E】の37~40小節ではmp~mfと、全体的に音量は控えられています。
確実に表現しておきたいのが、38~40小節にかけてのクレッシェンド・デクレッシェンドです。
音量の変化に波のうねりをイメージしてみましょう。
掛け合いはタイミングが大切
【D】は男声1パートがメロディーを歌っていましたが、【E】は女声と男声の掛け合いとなっています。
お互いのパートのメロディーを聴き合いながら、タイミングをはかって入りましょう。
うまくいくと2本のメロディーが絡み合って、まさに”まいおちる”という情景を表現できます。
また、先ほど触れた子音を生かし、”かれは”のk、”まいおちる”のmあたりを強調すると、メロディーの絡みや言葉が分かりやすくなります。
なお、con moto(コン・モート)は「動きをつけて」といった意味です。
この場面ではテンポを上げたりすることは難しいので、上昇するメロディーに合わせて、積極的に、駆け上がるようなイメージで歌う、といったの解釈になるかと思います。
【E’】嵐を乗り越えて
41~44小節でさらに雰囲気が変わり、ポイントも異なるので練習番号を追加しました。
このあたりでは、”のりこえ”という言葉にふさわしく、力強く前向きに音楽が変化していっています。
パートがずれる仕掛け
41~42小節では、ソプラノ、アルト、男声がそれぞれ別のタイミングで動きます。
記号や歌詩の位置、音が変わるタイミングに注目すると、ソプラノ→アルト→男声の順番で、1拍ずつずれる仕掛けになっているのです。
3パートが合わさった時に、どのようになるのか、最終形をイメージしながら歌ってみましょう。
この中では特にアルトのフレーズが浮き上がってくると良いと思います。
<>や>の記号も上手く利用して歌いましょう。
前述のとおり、<>は弾力のあるアクセント、>は少し固めのアクセントです。
和音の変化を感じて
43小節は音が難しいので注意が必要。特に臨時記号のついた音を歌うパートは、しっかり確認しておきましょう。
ここから【F】に入る45小節にかけては、複雑な響きが、次第にシンプルで透明感のあるものへに変化していきます。
“あれくるうなみ”を”のりこえ”というイメージが反映されているのですね。
こういった和音の変化を感じ取りながら歌ってみましょう。
43~45小節に掛けてのコードネームで表すと次のようになります。(※厳密に記述できていないかもしれませんが、本質は間違っていないと思うので、ご容赦ください。)
A♭+5/B♭ → Bm11 → D/E → A
コードネームが分からない人でも、進むにつれて記号がシンプルになっていくことが分かるかと思います。
「記号がシンプル=響きもシンプル」と思ってもらってOKです。
まるで、嵐が去り、空が明るく開け、爽やかな風が吹いてくることが感じられるような描写です。
このあたりのフレーズは、かなりコードが工夫されていて、他の混声三部合唱の作品ではなかなか見られないものです。
作品の魅力の理由の一端がこういった部分にありそうですね。
また、曲全体を通じて、難しい和音はピアノパートに担当させ、合唱パートはなるべく音を取りやすくなるよう配慮されているようにも感じられました。
【E】のようにどうしても難しくなってしまうところはあるのですが、格好良い音を気持ちよく歌って欲しいという作曲家の想いがあるのかもしれません。
【F】明るく、のびのびと歌おう
これまではイ短調でしたが、ここからイ長調へ。
明るい調へ変化し、のびのびと気持ちよく歌える場面になります。
タテのそろいとハーモニーを意識して
【F】の場面ではソプラノ・アルト・男声の3パートのタテ(歌うタイミング)がそろい、ハモります。
ハモる場面ではお互いの音をよく聴き合いながら、響きを溶け合わせることを意識してください。
練習のときにはピアノパートなしで、アカペラでゆっくりと練習すると、一つひとつの和音を確認しながら歌えるため、大変効果的です。
デクレッシェンドと言葉のニュアンス
49小節はちょっとしたアピールポイントだと個人的には思います。
【F】は全体的に明るい場面なのですが、ここだけ暗い単調の和音が使われています。一瞬、ちょっと切ない雰囲気になることを感じてもらえるかなと思います。
また、デクレッシェンドがあるので、【C】で触れた「距離感」を思い出してみましょう。
「小さく」は「遠く」でした。そうイメージすることで、“はてない”という言葉のニュアンスがうまく表現できそうです。
その後は再びクレッシェンドしていき、meno fになります。
f系なので消極的になる必要は全くなく、のびのびと歌いましょう。
ただし、続く【G】の場面でさらに盛り上がるfがあることを見通しておきましょう。
【G】スケールと躍動感をイメージして
【G】は非常に大きなスケール感や躍動感が感じられる音楽になっています。
本格的なfが登場
これまでは、嵐の場面である【D】を除いて、全体的に控えめな音量指示が主でした。
この【G】までの来て、やっと本格的にfが登場します。
ここまでは出し惜しんでいた、とっておきのfというわけです。
“なんぜんなんおく”という圧倒的なスケール感をイメージして歌いましょう。
リズムを目立たせて
リズムの面ではシンコペーションが多用されています。付点やタイで繋がったリズムがシンコペーションです。
これにより、生き生きとした躍動感のあるフレーズとなっています。
このリズムを際立たせる意図もあって、テヌートの記号が多用されています。
ここでは「リズムを力強く目立たせて」と捉えると良いでしょう。
>(アクセント)でなく、テヌートを用いているのは、「固いタッチの激しい歌い方にはせずに」「音が弾むように軽くならずに」という理由から、というのが私の考えです。
【H】一瞬のきらめきとエネルギーの膨張
“きせきのほし”という歌詩がとても印象的で、表現にこだわりたい場面です。
「ハッ」とさせるようなpで
まず大切なのがsub.p(スービト ピアノ)の記号。
pは「小さく」、sub.は「急に」の意味なので、sub.pは「急に小さく」の意味になります。
瞬間的に音量を絞り込むことで、聞いている人を「ハッ」させ、惹きつけるような効果があります。
加えて”きせき”という言葉をささやくように歌うと、より印象的に伝えることができると思います。
ここでも子音のテクニックが使えます。”きせき”という言葉を、子音を意識してささやくように歌うと、一瞬のきらめきを感じさせるような雰囲気が出せると思います。
なお、【H】に入る手前の直前のロングトーン(”つむいできた“)で、減衰せず、ギリギリまで音量を保つことを意識すると、sub.がより効果的なものになります。
ピアノパートのリズムに乗って
【H】の場面ではピアノパートが8分音符をリズミカルに刻んでいます。
ここに大きな期待感を感じながら、クレッシェンドしていきましょう。
エネルギーの膨張
【H】ではまずアルトがパートソロでメロディーを歌い、その後男声、ソプラノと合流していきます。
このような構造は”つなげる”という歌詩にリンクしているようにも思えます。
3パートが合流しながらクレッシェンドしていき、fに向かいましょう。
まるで生命のエネルギーがどんどん膨張して行くような印象を、私は受けました。
複雑な和音を攻略しよう
60小節は和音の移り変わりが非常に複雑です。
音が取りにくい場合は、まずピアノパートだけをよく聴いてみて、和音の正解をつかむような方法を試してみても良いと思います。
ここはとても難しいですが、うまく決まれば、圧倒的な印象をもたらすことのできる聞かせどころです。
【E’】と同様に、57~61小節のコードネームをまとめておきます。
G6 → FM7 →
Dm7 → CM7 → Bm7 →Cm7 → F9 →
B♭
【H】は平行和音と言って、構成音を平行移動させるような進行です
今回は下向きに平行移動しています。
最後に【I】の変ロ長調でのⅡ→Ⅴ(Cm7 → F9)で転調を実現してます。
【I】クライマックス、そして最後の場面へ
ここから最後に向けて、クライマックスを構成する場面です。
ダイナミクスレンジを大きく
65小節以降の強弱表現の流れを整理しておきます。
まず最初はmpです。”ちいさなゆめ”という言葉に対応していますね。
続いて、ソプラノ→アルト→男声と順に合流しながらクレッシェンドしていき、fへ。
さらに”ひとみに”でffを迎えます。
ここが曲全体を通して最も大きく歌うべきところであり、クライマックスです。
65小節目のmpから、ここまで持ってくることをあらかじめ思い描き、ダイナミクスレンジ(音量の振れ幅)をなるべく大きく取ると、ffが際立ちます。
fp&クレッシェンドはピアノとアルトを頼りに
69小節のfpの記号は、フォルテピアノと言って、「強く、ただちに弱く」という意味です。
つまり、入った瞬間は強く、そしてすぐに小さくし、その後またクレッシェンドしていく、という流れになります。
聞く人を驚かせるような、アピール力のある表現ができます。
fp&クレッシェンドで大切なのは、強弱を変化させるタイミング。
小さくするタイミングや、その後のクレッシェンドのタイミングがバラバラだと、効果が半減してしまいます。
そうならないために、ここではピアノとアルトを頼りにタイミングをはかりましょう。
まず小さくする方は、ピアノがsub.pとなる16分音符に合わせます。
クレッシェンドはアルトの音が「レ」→「ミ♭」に変化したのを聞いてからクレッシェンドしていきましょう。
このように、クレッシェンドは、すぐに大きくしてしまわずに、なるべく小さいままキープし、後半で一気に掛けていくほうが効果が大きくなります。
ピアノがテンポを引っ張ろう
stringendo(ストリンジェンド)は、「しだいに急き立てて」という意味。
テンポを速めながら、最後の場面に向けてテンションを高めていく、そんな意味合いに捉えると良いでしょう。
このstringendoは、ピアノパートが役割が大きな役割を担います。
クレッシェンドしながら、付点のリズムを躍動させ、テンポを引っ張っていきましょう。
【J】力強く締めくくろう
【J】は曲を締めくくる最後の場面になります。
力強いユニゾンで
【J】の場面は【D】と似ていますが、メロディーを3パートで、しかもユニゾンで歌うことが特徴です。
全員で同じ音を歌うことで、非常に力強い意思が表現できます。
嵐を乗り越えて、一段成長した、そんな感じでしょうか。
ユニゾンでは全員の音がピタッとそろうよう、より耳を使って歌うことが大切です。
allargandoのニュアンス
77小節からはallargando(アラルガンド/だんだん強く、遅く)か書かれています。
意味としてはcresc.(クレッシェンド)とrit.(リタルダンド)を組み合わせたようなもので、曲の最後に使われることも多い記号です。
ただ単に強く、遅くというよりは、「だんだんと力強く」というようなニュアンスが付帯することを知っておきましょう。
迫力あるロングトーンを決めよう
ラストのロングトーンは、ピアノが最後の和音を弾ききった後、さらにクレッシェンドすると、迫力あるラストシーンが表現できます。
このロングトーンは音の切り方も重要です。空間に響きを放つようなイメージでズバッと切りましょう。
指揮者の人もカッコよく決められると良いですね。
ここが中途半端だと、消化不良感が出てしまいます。バッチリ決められるように!
ラストのロングトーンでは、合唱は空虚5度と言われるハーモニーを作っています。
これもまた、ラストシーンの力強さを表現するのにふさわしい響きです。
『響きあう命』まとめ
『響きあう命』は様々な場面を備え、それぞれに作曲家の工夫が凝らされている作品です。
限られた時間の中で取り組むには難しいところもあるかもしれませんが、こなせた分だけ聴く人に強い印象を与えられると思います。
ぜひ頑張ってくださいね。
より詳しく解説して欲しい点がある場合は、お問い合わせなどからご連絡いただければと思います。