楽譜を見ていると♯(シャープ)や♭(フラット)の記号をよく見かけます。
ト音記号やヘ音記号の近くにたくさんついているのも見たことがあるかもしれません。
今回の記事ではこれらの記号に関して詳しく解説します。図解をたくさん用いて分かりやすく説明するのでぜひご覧ください。
- ダブルシャープ・ダブルフラット・ナチュラル
- 変化記号の有効範囲
- 調号(シャープが4つ、フラットが5つの場合など)
も合わせて解説するのでお楽しみに。
これらの記号の理解が深まると楽譜を見るのが楽しくなってくると思います。
ではいってみましょう。
もくじ
シャープ・フラットの意味と読み方
まずはシャープ・フラットなどの基本的な意味と読み方(=どう演奏すれば良いか)を確認しておきましょう。
次の5つを解説します。
- シャープ
- フラット
- ダブルシャープ
- ダブルフラット
- ナチュラル
これらの記号をまとめて変化記号と呼びます。音を変化させる記号ということですね。
変化記号(シャープやフラットなど)は次の2種類に分けられます。
- 臨時記号…一時的につけられる
- 調号…音部記号(ト音記号など)にまとめてつけられる
この記事でも何度か登場するので頭の片隅に置いておいてください。
1.シャープ…半音上げて
まずはシャープです。音を半音上げてという意味になります。
今回の例だと元の音が「ファ」。そこから半音上がって「♯ファ」になります。
ピアノでは右上の黒鍵(黒い鍵盤)を弾きます。
2.フラット…半音下げて
次はフラットです。シャープとは逆に音を半音下げてという意味です。
今回の例では元の音が「シ」。そこから半音下がって「♭シ」となります。
ピアノでは左上の黒鍵を弾くことになります。
3.ダブルシャープ…半音2回分上げて
ダブルシャープはシャープ2つ分、つまり半音2回分(=全音)上げてという意味になります。
今回の例だと、元の音は「ファ」。これにダブルシャープがつくととなりの「☆ファ」の音になります。(今回フォントが用意できなかったので☆で表しました。)
半音2回分上がるので実際にピアノで弾くときは「ソ」の音を弾くことになります。
4.ダブルフラット…半音2回分下げて
ダブルシャープの逆で、半音2回分(=全音)下げてという意味の記号です。
今回の例だと、元の音は「シ」。これにダブルフラットがつくことでとなりの「☆シ」の音になります。
実際にピアノで弾くときは「ラ」の音になりますね。
5.ナチュラル…元の高さで
ナチュラルは変化記号(シャープやフラット)を打ち消し、元の高さにするという意味になります。
この例ではナチュラルがつく前の音は「♯ファ」なので、ナチュラルがつくと「ファ」の音に戻ります。もともと半音上がっていたので、反対に半音下がることになります。
もう一つ例を出します。
ナチュラルがつく前の音は「シのダブルフラット」です。これにナチュラルがつくと元の「シ」の音に戻ります。
もともと全音下がっていたので、ナチュラルがつくことで全音上がることになります。
シャープ・フラット=黒鍵とは限らないので注意
シャープやフラットが出てきたとき、必ず黒鍵(黒い鍵盤)を弾くことになると思うかもしれませんが、そうではありません。例外もあります。
- 「ミ」にシャープがついたとき…「ファ」
- 「ド」にフラットがついたとき…「シ」
となるので、白鍵(=白い鍵盤)を弾くことになります。
他の場合として、
- 「シ」にシャープがついたとき…「ド」
- 「ファ」にフラットがついたとき…「ミ」
となります。
シャープ・フラットの有効範囲【いつまで続く?】
変化記号の有効範囲、つまり記号の効果がいつまで続くのかということを確認しておきましょう。
楽譜を正確に読むためにはとても大切です。
臨時記号の場合…その小節の中だけ続く
臨時記号の場合は記号が登場した小節の間だけ有効となります。次の小節になったら効果が切れるということです。
この例では1回目の「ファ」の音にシャープがついています。なのでこれは半音上がって「♯ファ」ですね。
次に登場する「ファ」の音には何もついていませんが、小節内なのでシャープは有効です。なのでここも「♯ファ」となります。
3回目の「ファ」では小節が変わっているのでこれは「♮ファ」となります。
4回目は特に何も書かれていないのでそのまま「ファ」となります。
もう一つ例を見てみましょう。今度はフラットです。
1つ目の「シ」にフラットがついています。なのでこれは「♭シ」ですね。
2つ目の「シ」は♭の効果が継続するのでこれも「♭シ」です。
次の小節に入るとその前についていたフラットが無効になるので5つ目は「♮シ」となります。
調号の場合…小節が変わっても効果が続く
一方で、次は調号としてついているシャープ・フラットの場合です。
調号というのはト音記号の近くにまとめてつけられているシャープ・フラットのことです。
調号で示されたシャープ・フラットは曲が終わるまで有効です。
この場合、調号によって「ファ」「ド」にシャープがついています。
なのでこれ以降に登場する「ファ」と「ド」はすべて「♯ファ」「♯ド」となります。
調号がついているのは高い「ファ」「ド」ですが、低い「ファ」「ド」に対しても有効なので注意しましょう。
同様にフラットの場合も見てみましょう。
フラットがついている音は「シ」「ミ」「ラ」ですね。
シャープのときと同じく、低い「ミ」に対しても♭が有効なので注意しましょう。
臨時記号はオクターブ違うと無効になる
先ほどの例で少し触れましたが、調号の場合はオクターブ違っていてもつけたシャープ・フラットは有効です。
一方で臨時記号の場合はオクターブ違うと無効になります。
実際にはこれだと分かりにくいので、()つきでナチュラルを書くことが多いです。
【調号】シャープ・フラットのつく位置と順番
調号に関してもう少し深堀りしておきましょう。
シャープ・フラットのつく位置と順番は決まっている
調号を使う場合、最大で7つまでシャープやフラットがつくことがあります。
このシャープ・フラットは一見でたらめについているようですが、実は
- どの音につくか
- どういう順番でつくか
は決まっています。
- シャープの場合…ファソソレラミシ
- フラットの場合…シミラレソドファ
の順番になります。
シャープ、フラットはつく順番が逆になっていることにも注目です。
シャープ系の調一覧
シャープがついた場合、何調になるのかをまとめておきます。
シャープのつく位置、順番についても確認してみてください。
- ファドソレラミシ
の順番でシャープがついているはずです。
♯の数 | 調号 | 長調/短調 |
0 | ハ長調/イ短調 | |
1 | ト長調/ホ短調 | |
2 | ニ長調/ロ短調 | |
3 | イ長調/嬰ヘ短調 | |
4 | ホ長調/嬰ハ短調 | |
5 | ロ長調/嬰ト短調 | |
6 | 嬰ヘ長調/嬰ホ短調 | |
7 | 嬰ハ長調/嬰イ短調 |
フラット系の調一覧
同様にフラットの場合も確認しておきましょう。
- シミラレソドファ
の位置と順番でつきます。
♭の数 | 調号 | 長調/短調 |
0 | ハ長調/イ短調 | |
1 | ヘ長調/ニ短調 | |
2 | 変ロ長調/ト短調 | |
3 | 変ホ長調/ハ短調 | |
4 | 変イ長調/ヘ短調 | |
5 | 変ニ長調/変ロ短調 | |
6 | 変ト長調/変ホ短調 | |
7 | 変ハ長調/変イ短調 |
シャープ・フラットの使い分け
たとえば、「♯ド」と「♭レ」などは同じ音ですよね。こういう音を異名同音(エンハーモニック)と言います。
これらを厳密に使い分けようとすると結構難しいので、ざっくりとした目安を5つ紹介します。
- メロディーの方向性で決める
- 和音の構成で決める
- 調の中の役割で決める
- シャープ・フラットのつきやすさで決める
- 読みやすさで決める
こちらの記事(【5つの基準】シャープ・フラットの使い分け・考え方|結論は経験を積むこと)で詳しく解説しています。
まとめ:【楽譜の読み方】シャープ・フラットの意味
最後に今回の内容をまとめておきたいと思います。
まずは基本的な意味を押さえましょう。
- シャープ…半音上げて
- フラット…半音下げて
- ダブルシャープ…半音2回分上げて
- ダブルフラット…半音2回分下げて
- ナチュラル…元の高さで
さらに、記号の有効範囲も気をつけなければなりませんでした。
- 臨時記号…小節内だけ有効、オクターブ違いは無効
- 調号…小節が変わっても有効、オクターブ違っても有効
調号でシャープ・フラットがつく順番は、後々大事になってくるので覚えておくと吉です。
- シャープ…ファドソレラミシ
- フラット…シミラレソドファ
楽譜を書くとき、シャープ・フラットをどう使い分けるかは難しいです。次のことを目安にしてください。
- 上昇音型・♯系の調…シャープ
- 下降音型・♭系の調…フラット
シャープ・フラットをマスターして楽譜がスラスラ読めるようになりましょう。
楽譜の読み方に関しては【詳説】楽譜の読み方完全ガイド【初心者~上級者まで必見】でまとめていますので、あわせてご覧ください。