作曲者・編曲者|か行

合唱曲『桜の季節』練習・演奏のポイント|場面ごとの役割を意識しよう

『桜の季節』解説

この記事では2014年度Nコン中学の部課題曲の『桜の季節』(作詞:ATSUSHI 作曲:ATSUSHI / マシコタツロウ 編曲:加藤昌則)について、練習・演奏のポイントを詳しく解説しています。

「もっと詳しく解説してほしい!」という場合は、お問い合わせからお気軽にご連絡いたください。補足・追記いたします。

NHK出版「NHK 全国学校音楽コンクール 課題曲集 90回記念 中学校 混声合唱」に収録されている楽譜を参考にし、本文中で歌詩などを引用する場合には「””」で示しています。
(2025/10/19)より詳しくなるよう、全体的に追記しました。

練習・演奏のポイント

【A】2つのメロディーを歌い分けよう

メロディーの役割

【A】の場面の特徴はメインとサブ、2つのメロディー歌われることです。

5~8小節はソプラノがメイン、アルトがサブ。9~12小節ではソプラノがメイン、男声がサブです。

それぞれのメロディーの特徴を整理すると次のようになります。

  • メイン…細かい動き、mp、ややリズミカルに
  • サブ…ゆったり動き、p、なめらかに(スラー)

サブのパートはバックコーラス的なイメージを持っても良いかもしれません。

このような特徴を踏まえることで、それぞれのメロディーの良さを活かしながらも調和したサウンドを作ることができます。

メインのメロディーのコツ

ソプラノが歌うメインのメロディーを上手に歌うには、跳躍音程(ちょうやくおんてい)に気をつけることが大切です。

跳躍とは、音が離れたところに飛ぶこと。

例えば、4小節の”いつもおなじ”のフレーズでは、「ド → シ♭」と、かなり離れたところまで音が飛んでいます。”きせつなのに”、”すこしせつないのは”なども、同様に跳躍があります。

跳躍でのポイントは主に次の2つ。

  1. 事前に上がった先の音を明確にイメージする
  2. 体をしっかりと使って声を出す

跳躍で上がった先の音は、正しい音に届かず、低くなってしまうことが多いので、十分に注意しましょう。

サブのメロディーの表現

サブのメロディーでは気をつけることが異なります。

まず6小節では、”せつない”のフレーズが出てきますが、ここでメインとは別の動きをしていることをアピールするため、少しつない”のsの子音を強調して歌いましょう。

また、8小節ではクレッシェンドとデクレッシェンドの記号がありますので、“なぜ”というフレーズの真ん中をふくらませるように強弱をつけてみましょう。

【B】タテのそろいを意識しよう

【A】では2つのメロディーがそれぞれ独立して動いていましたが、【B】では歌詩のタイミングが3パートでそろっている(タテがそろっていると言います)ところが多いのが特徴です。

【A】と比べると簡単なようですが、ただなんとなく歌っていると意外にもタイミングがバラけてしいます。

「ここはタテがそろうぞ」という意識を持つことで、一体感を持ったサウンドになっていきます。

また、タテがそろうということは、ハーモニーが生まれるということでもあります。各パートの音をしっかり取った上で、3パートで合わせたときにどのような響き鳴るのかを感じ取りながら歌いましょう

ハーモニーを感じるためにはピアノパート無しで、テンポを落として歌ってみるのも効果的です。

【C】短く切る音、長さを保つ音、目立たせる音を歌い分けよう

【C】ではメインのメロディーを担当するソプラノと、リズムを担当するアルト・男声に役割が分かれます。

リズム担当パートには”歯切れよく”という指示があります。ここでのポイントは短く切る音、長さを保つ音、目立たせる音の区別をしっかりつけること。

  • スタッカート…短く切る
  • テヌート…長さを保つ
  • アクセント…はっきりと目立たせる

特に”きみの”、”たのしそうな”の4分音符は、意識しないと短く効いて歌ってしまいそうな音符ですのでチェックしておきましょう。

25~26小節ではアクセントの記号がでてきます。特にソプラノのメロディーが伸ばしている間は、リズム担当のパートが主役となりますので、しっかりと主張するのが良いでしょう。

このように短い音、長い音、目立たせる音を区別して歌い分けることでリズムにメリハリが生まれ、締まった音楽になります。

練習の際には、リズムを担当する、アルト・男声だけを取り出して歌ってみるのも良いと思います。

【D】パートの役割を活かそう

【D】は【A】と対応する場面ですが、主役のパートが変わります。

まず32~34小節の”あれはきっと はじめてのこい”はアルトと男声がユニゾンでメロディーを歌います。主役意識を持ってしっかり歌いましょう。

一方ソプラノは、ずれて歌詩を歌う掛け合いの役割となっています。アルト・男声のメロディーをよく感じ取り、タイミングよく入りましょう。

続く35小節以降ではメロディー担当が男声だけになります。アルトはその上でハモる役割です。アルトは男声のメロディーをかき消さないように、少し控えめに歌うと良いでしょう。

どこがメロディーでどこがハモリなのかを知っておくのはとても大切。その理由の1つ目は音取りがスムーズに進むこと。2つ目は、メロディーはしっかりと、ハモリパートはそこに寄り添うようになどと、歌い方を変えられることです。

【E】小さく入って音量の差をアピールしよう

47小節からが【E】の見せ場。

mp(少し小さく)で入り、そこからクレッシェンドしていき、f(強く)まで持っていきます。

ポイントは2点。1点目はmpを小さめに入ること。これによりクレッシェンドするときのダイナミクスレンジ(音量の差)をより効果的にアピールことができます。

2点目は歌詞にあわせてクレッシェンドをつけること。楽譜をよく見ると”まえをみて”、”すすもうと”、”こころには”という3つのフレーズにそれぞれクレッシェンドがつけられていることが分かります。歌うごとにぐいぐいと大きくしていくイメージで歌いましょう。

49小節のロングトーン(伸ばす音)は、勢いを失わないよう3拍分伸ばし切りましょう。また、切るタイミングもきちんと合わせるのもポイントです。

【F】fpで聞き手を惹きつけよう

2回目のサビになります。リズムに関する注意点は【C】と同様です。

57小節にあるfp(フォルテピアノ/強く、すぐに小さく)は聞かせどころ。音量が小さくなるとこは、大きく歌うところよりもむしろ、聴いている人を強く惹きつけることができるのです。

fpでは、入った瞬間は大きく歌い、そのあとすぐに小さくします。このとき完全に音が消えてしまわないように響きを残すようにしてください。

その他のポイントは以下の通り。

  1. pにするタイミング
  2. ぶつかる音は要練習
  3. 発声が荒くならないように

それぞれ、詳しく解説します。

1. pにするタイミング

fpは大きく歌った後すぐに小さくする記号ですが、fの時間が短すぎても十分なインパクトが出ません。

8分音符1つ分くらいの時間を目安にしてみてください。

このときメンバー内で小さくするタイミングがバラバラにならないよう練習しましょう。

2. ぶつかる音は要練習

ここではアルトが「ラ」、男声が「シ♭」の音を歌っています。

これらの音は半音でかなりハードにぶつかる音(=不協和音)となっています。

お互いがお互いにつられないよう、しっかり練習しましょう。

ピアノパートを含めた全体ではB♭M7(ビー フラット メイジャー セブンス)というかっこ良いコードになっています。

3. 発声が荒くならないように

fpや山形アクセントを表現しようとして、発声が荒くなってしまうことが心配されるフレーズです。

いくらfpができていても声が悪ければ本末転倒ですので、良い発声をキープすることを意識しましょう。

【G】伸びやかに、気持ちよく歌おう

【G】は”いきいきと”と書かれている場面。

声の出やすい音域に設定されていますので、fで気持ちよく歌い上げましょう。

また、タテがそろっているので、ハーモニーも確認しておきたい場面。前述の通り、ピアノパート無しで練習しておくと良いでしょう。

先に進んで、68小節では男声だけがロングトーンで残るのが正解。

その後、69小節では柔らかく繊細に歌い出し、70小節のクレッシェンドでしだいに力強い歌い方に戻していきます。

そうするとことで71小節のピアノパートのrisoluto(リゾルート/決然と)に繋がる流れが生まれます。

【H】フレーズ終わりは切ない雰囲気で

3回目のサビです。【C】【F】で触れた注意点は同様に意識しましょう。

80~81小節のフレーズの終わりは、”おわかれだね”という歌詞に応じて、デクレッシェンドに切ない雰囲気を出せると良いと思います。

mpをできるだけ繊細に、柔らかい表現で歌いましょう。

【I】複雑なハーモニーをクリアしよう

聴き合うことが大切

【I】の82~83小節はほとんどアカペラ(伴奏なし)の場面です。合唱だけでもしっかりとしたハーモニーを作れるようによく練習しておきましょう。

ハーモニーを作るうえでは、自分のパートの音をきちんと歌うことも大切ですが、それにも増してお互いの声をよく聴きあうことが大切です。

楽譜の指示として”自由なテンポで(遅めに)”とあります。テンポがゆっくりになると、タイミングもずれやすくなるので、その点にも注意しましょう。

ぶつかる音に注意

87~88小節でロングトーンに入ってからは複雑なハーモニーになっています。ここでもやはり聴きあうことが重要です。

男声↓のパートが伸ばし続ける「ファ」の音が和音を支える土台になりますので、まずはこの音を中心に耳を向けてみるとうまく行きやすいと思います。

分かれた男声の↑パートの「ド」の音は、ソプラノの「シ♮」の音と半音でぶつかっているので、つられないように。

男声の↓パートの「ファ」の音は、ソプラノの「ミ」の音とぶつかるのでそこも注意しましょう。

浮遊感や不思議な余韻のあるコードになっています。

ポイントの振り返り

  • 【A】2つのメロディーを歌い分けよう
  • 【B】タテのそろいを意識しよう
  • 【C】短く切る音、長さを保つ音、目立たせる音を歌い見分けよう
  • 【D】パートの役割を活かそう
  • 【E】小さく入って音量の差をアピールしよう
  • 【F】fpで聞き手を惹きつけよう
  • 【G】伸びやかに、気持ちよく歌おう
  • 【H】フレーズ終わりは切ない雰囲気で
  • 【I】複雑なハーモニーをクリアしよう

「もっと詳しく解説してほしい!」という場合は、お問い合わせからお気軽にご連絡いたください。補足・追記いたします。詳しく知りたい点をお聞かせください。