合唱曲の詳しい解説

『夏のおもひに』(大岡信/木下牧子)を解説|潮の流れと朝夕の暗み

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こんにちは!

今回は大岡信作詩・木下牧子作曲、混声合唱組曲《方舟》より『夏のおもひに』の紹介です。

曲調や難易度、曲の魅力・鑑賞のポイント、演奏・練習のポイントなどについて解説したいと思います!

この曲を知らなかった人、これから聴いてみたい人、これから歌ってみたい人のお役に立てば幸いです。

それではどうぞ!

『夏のおもひに』ってどんな曲?

まずは『夏のおもひに』という曲について、「この曲知らない!」「初めて知った!」という人のために、作詩者・作曲者、難易度、曲調についてざっくりと紹介します。

作詩は大岡信、作曲は木下牧子

『夏のおもひに』は全4曲からなる混声合唱組曲《方舟》の3曲目。

作詩は大岡信、作曲は木下牧子になります。

難易度は…中級~上級

『夏のおもひに』の難易度は、中級~上級です。

《方舟》の中では比較的メロディーやハーモニーなどがシンプルな作品となっています。

が、木下作品特有の息の長いフレーズに合唱団の体力が試されそう。

またピアノパートの音型が細かくアンサンブルに苦労しそうな感じです。

曲調は…流れるように、そして移ろうように

『夏のおもひに』の特徴はピアノパートがほぼ全体に渡って16分音符によるアルペジオを奏で続けるところ。流れるようなイメージです。

そして移り変わる和音が時の移ろい・情景の変化を感じさせます。

『夏のおもひに』の魅力について語る!

続いては『夏のおもひに』という曲を、「聴いたことある!」「これから聴く!」という人に向けて、曲の魅力や鑑賞のポイントについて語っていきたいと思います。

シンプルな旋律・一人で物思いに耽る感じ

合唱パートの歌い出しはアルトによるパートソロです。

合唱によるハーモニーは付されていない、シンプルなもの。

流れるようなピアノパートの伴奏に乗せて歌われます。

この旋律のシンプルさ故、海辺にて孤独に物思いに耽るような雰囲気が出ているように思います。

広がるハーモニー・視点が遠くへ

しばらくすると女声によるハーモニーが展開されます。

それまでは単旋律だったので、ここにきて一気にハーモニーが広がるような印象。

これにより視線が遠く、海の彼方へ。視界が開けます。

時間の停止・夕日の沈む海は影絵の世界へ

中間部ではこれまで絶えず流れていたピアノパートが動きを止めます。時の流れが止まってしまったかのような感覚です。

ここからは変ロ短調(♭×5)の調となり、深いの色調を音楽に与えます。

太陽は沈みかかり、海原は影絵のような世界へ。

低く響く波のうねりの音・遠い記憶に思いを馳せて

この曲でピアノパートが動きを止めるもう一つの場面、合唱の響きだけのアカペラの箇所です。

アルト、バスによるハミングがまるで低く響く波うねりの音のように感じられます。

自分の内に沈思していく過程で、周囲の音は意識の外に消えてゆき、しかし波の音だけは響き続けている…、とそんな感じでしょうか。

遠い記憶に思いを馳せます。

潮騒の余韻・思い出に残るしこり

曲を終止する和音が非常に印象的です。

こんな感じ。

C#m7 → GM7

ハッとさせるような予想外の進行です。

またGM7のときメロディーが一拍目に鳴らすCis(ド#)の音は11thとなる和声外音。あえて言うと異質な音です。

あるいは記憶の中にしこりのようなものが残っているのか? そんな想像を掻き立てる音です。

まとめ:『夏のおもひに』(大岡信/木下牧子)

それではまとめです!

《方舟》より『夏のおもひに』でした。

流れるようなピアノパートに潮の流れや移り変わる光の色彩が表現されます。

逆にピアノパートが動きを止める場面では、情景の変化や登場人物の心情の変化にも思いを馳せてみると、一層心に沁みる曲です。

今回はここまで。お読みいただきありがとうございました!