練習・演奏のポイント

混声三部『僕らはいきものだから』練習・演奏のコツ|未来へ続く歌声を

『僕らはいきものだから』練習・演奏のポイント
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『僕らはいきものだから』はNコン中学校の部、2024年の課題曲です。

緑黄色社会の長屋晴子さんが作詞・作曲を担当され、それを桜田直子さんが合唱編曲したものです。

この記事では練習・演奏のコツを分かりやすく解説しています。

参考になれば幸いです。ぜひ最後までご覧ください。

「第91回(2024年度) NHK全国学校音楽コンクール課題曲 中学校 混声三部合唱 ぼくらはいきものだから」の楽譜を参考にし、本文中で歌詩などを引用する場合には「””」で示しています。

『僕らはいきものだから』練習・演奏のコツ

『僕らはいきものだから』練習・演奏のポイント

楽譜に記載されている練習番号(【A】【B】…)に沿って解説します。

練習番号は場面の切り替わりを見つける手がかりになりますので、ぜひ活用してください。

【A】p系のユニゾンを上手に歌おう

【A】は”おだやかに”とあるように、p系で静かな場面。

淡々としたピアノ伴奏にマッチするような歌い方をイメージしましょう。

ユニゾンの部分も多いので、互いの音をよく聴き合って、ピタッと合わせることが目標です。

弱声の場面では音程に注意

弱声、つまり小さめの音量で歌う場面では、音程が不安定になってしまいがちです。

音は小さくても、体をしっかり使って、全身で声を支えることを意識しましょう。

そうすることで、音程が安定します。

6小節の”このままがいい”などはかなり音が高いので、しっかり上がった先の音をイメージしましょう。

休符も大事に

メロディーを上手に歌うためは、声を出すことも大事ですが、同時に休符も大事です。

例えば5小節目の”はらがへる”の後の8分音符。

ここはピアノパートもお休みなので、全員が休み。つまり、全く音のない瞬間です。

こういったブレイクは、ポップス系の曲ではとても大事です。

直前の音を伸ばしすぎないように注意しましょう。

メロディーを受け継いで

【A】の場面では、最初のメロディーをアルト・男声が歌い、続いてソプラノが歌う、というように、パートが移り変わります。

それぞれのパートが歌うメロディーが、ひと続きに聞こえるよう、受け渡しを意識しましょう。

前のパートの歌声をよく聴いて、歌い方やニュアンスを感じ取ることが大切です。

【B】変化を読み取って表現しよう

【B】は構成的には【A】の繰り返しとなります。

そのため、基本的には似ているのですが、アレンジが加えられていることを見逃さないようにしましょう。

こういった小さな変化をしっかり読み取って、音楽として表現することが、良い演奏をする上でとても大切です。

伴奏が変わると雰囲気も変わる

演奏音源を聞くと、【B】からは少し音楽に動きが出てきて、ノリが良くなっていることが感じられると思います。

その理由はピアノパートの伴奏形が変化していることにあります。

【A】では4分音符が中心の、非常に淡々としたものでした。

一方で【B】はテンポの柱となる4分音符に加え、左手で裏拍のリズムを刻んでいます。

これが、動きとノリを与えているのですね。

こういった違いをしっかり感じ取りながら歌いましょう。

ハモる部分を押さえて

11小節の”まもっていた”のフレーズは【A】との違いが際立っている部分です。

【A】ではソプラノとアルトだけでしたが、【B】は男声が加わってハモることで、非常に広がりのあるハーモニーになっています。

「ここでハモる!」ということが分かっていると音も取りやすくなりますし、意識するだけでもずいぶんとハーモニーは美しくなるものです。

ユニゾンの「きっぱり感」

【B】は【A】と比べてハモる部分が多くなっています。

一方で、ユニゾンの良さが光るフレーズもあります。15小節の”ふりたくはない”です。

直前までハモっていたところから、瞬時に音がまとまるため、「きっぱり感」を感じるフレーズです。

このユニゾンをビシッとキメて、”ふりたくはない”という、少し強い口調をを上手く表現しましょう。

【C】サビに向かうフレーズは聞かせどころ

【C】ではサビに向かう22~24小節あたりが聞かせどころです。

サビに向かって盛り上げて

このあたり、poco a poco cresc.(ポーコ ア ポーコ クレッシェンド)と書かれています。

poco a pocoは「少しずつ」、cresc.は「だんだん大きく」の意味。

クレッシェンドする際には、「どこに向かって、どれくらい」ということをしっかりイメージするのが大切です。

このクレッシェンドは【D】のfで歌うサビに向かうものですね。

ピアノパートのビート感やコード(和音)の変化も感じ取りながらクレッシェンドしていくと、いっそう効果的なものとなります。

最初は小さく、がコツ

クレッシェンドでよくある失敗が、クレッシェンドが出てきた瞬間に大きくしてしまうこと。

しかしこれでは「急に大きく」であって、「だんだん大きく」になりません。

また、【D】に向かっていきたいのに、すぐに大きくしてしまっては、それ以上大きくすることができなくなり、尻すぼみにもなってしまいます。

こうならないためのコツが、クレッシェンドの最初は小さめに入ること。

【C】の基本的な音量はmfですが、アルトの”あのはねを”はmpとなっていますね。

ここで小さく入ることを意識すると、その後のクレッシェンドでダイナミクスレンジ(音量の幅)を広く取ることができ、クレッシェンドの効果がいっそう高まります。

小さくてもノリはキープ

先ほどアルトは小さく入ってと言いましたが、だからといって消極的になってしまわないように。

むしろ16分音符のフレーズは、この先にあるサビへの期待感、ワクワク感を持って、軽快に歌いましょう。

ソプラノ・男声の”Oh”も、アクセントを活かしてアピールしてみましょう。

【D】合唱らしい充実した響きで

【D】はサビの場面となります。

大きく歌うには良いブレスで

【D】に入ったところの音量はf(フォルテ/強く)ですから、堂々と”とあるように、しっかり歌って盛り上げましょう。

大きく歌うために大切なのがブレス(息継ぎ)。たっぷりと深く息を吸うことが大切です。

女声は【D】に入る直前、”とびたい”で伸ばした後に4分休符がありますので、ここで大きくブレスを取りましょう。

男声のラインはたっぷりと

ソプラノ・アルトがメロディーのラインを担当しているのに対し、男声はカウンターラインと言って、いわばサブのメロディーを担当します。

16分音符が主体の細かいリズムを歌う女声に対し、男声は8分音符が主体で、起伏の少ないゆったりとしたメロディーラインになっています。

こういったフレーズはたっぷりと、おおらかな歌い方をすると、メインメロディーとの対比が明確になります。

音量にニュアンスをつけて

25小節~32小節までが【D】の前半。33小節からは後半に入ります。(【D’】をつけても良いでしょう。)

前半がf系で盛り上がる音楽だったのに対し、後半はmpと静かめの雰囲気になります。

ここでは、“さよならだってくりかえす”という歌詩に合わせ、少し切ない雰囲気を意識してみましょう。

ただ単に小さく歌うというだけでなく、こういったニュアンスも意識できると、表現に深みが出てきます。

締めくくりのフレーズを美しく

サビは盛り上がるフレーズであると同時に、1コーラスの終わりの部分でもあります。

締めくくりの部分に、”かわりゆくぼくらがうつくしいのです”という印象的な歌詩が登場します。

ここは是非上手に歌いたいところ。ポイントが多くなるので、個別に説明します。

フレーズの山

まず、poco cresc.(少しクレッシェンド)があります。これは音型に合わせて自然に膨らませて、と捉えると良さそうです。

具体的には”かわりゆくくらが”の、”ぼ”が一番高くなっているので、ここに向かって息を回し、フレーズに山を作るイメージ。

このように歌うと、メロディーが棒読みにならず、生き生きしたものになってきます。

“凛と”歌うには

また、”うつくしいのです”のフレーズには”凛として”という指示が書かれています。

先ほど触れたように、ニュアンスをイメージを持って歌いましょう。

“う”の入りが雑にならないよう丁寧に、そして”う”から”つ”への跳躍を、出来るだけ滑らかに繋ぐと、品のある歌い回しになります。

デクレッシェンドで締めくくり

最後のデクレッシェンドはフレーズを収めるの上で非常に重要です。

最後まで気を抜かず、良い発声をキープしましょう。

“です”の”す”は無声音でsになります。タイミングがずれないように。

【E】アルトのラインが主役!

『僕らはいきものだから』はアルトが活躍することが多いですが、一番の見せ場がこのあたり。

半音のラインを生かして

45~48小節はアルトが主役です。

“Oh”の歌詩で、「ソ♭ → ソ♮ → ラ♭ → ラ♮」と上がっていく半音のラインはしっかり聞かせてください。

ソプラノ・男声の”Oh”のアクセントは、アルトの16分音符の動きにうまく応えましょう。

【F】リズムを立たせて

【F】はリズムがキーポイントになりそうです。

引き続き、アルトが主役

【F】も【E】に引き続きアルトが主役です。

49小節には”リズムを強調してカッコよく!”と書かれています。

アクセント(>)を意識して、積極的に歌いましょう。

ソプラノ・男声の”Oh”は、”かたらおう”、”はなそう”の歌詩に被せてあります。

ここのアクセントもノリよくいきましょう。

掛け合いを軽快に

53小節からは雰囲気が大きく変わるため、練習番号【F’】としてもよいと思います。

ここは男声が先行し、それに女声が応えるという作りになっています。

ピアノパートのビートを感じながら、軽快にリズムに乗って歌いましょう。

特に女声は16分音符の裏拍になるので、入るタイミングが遅れないよう、食いつきが肝心です。

音のない瞬間「ブレイク」が命

57小節は、クレッシェンドのあと、音をスパっと切って、音の無い瞬間をしっかり作りましょう。

こういった部分をブレイクといって、ポップスではとてもかっこよい聞かせどころになります。

【G】繊細なタッチで歌おう

【G】のはじめには”やさしい気持ちで”と書かれています。

楽譜に書かれている通り、少しテンポを落とすと雰囲気を変えて歌うことができそうです。

音量のボトムpp

音量はpp(ピアニッシモ/とても弱く)です。

一番初めの【A】はpでしたから、曲の中で最も静かな場面となります。

表現としては、頑張って小さく歌うというよりは、より繊細なタッチで歌うことを意識するほうが良いででしょう。

ピアノの伴奏形を感じながら

【G】と【A】とを比較すると、テンポ・音量だけではなく、ピアノパートの伴奏形も変化しています。

【A】は淡々とした4分音符が刻まれていたのに対し、【G】では2分音符となっています。

リズムを刻むというより、響きが伸びているという感じです。

こういったリズムや和音を感じながら歌うことで、”やさしい”雰囲気が出てくると思います。

跳躍は繊細に

p系の場面で難しいのはメロディー跳躍です。

例えば、”ふりそそぐ”というフレーズでは、「ファ→レ」でソプラノがに大きな跳躍があります。

こういったところで雑に上がってしまうと、音が飛び出したようになって、場面の雰囲気を壊してしまいます。

丁寧に、柔らかく上がれるように練習しましょう。

上がった先の音を、なるべく早めにイメージするのがコツです。

再びfへ盛り上げよう

少し先に目を向けると、【H】ではfが再び登場します。そこまでの持っていき方がポイント。

64小節から、男声「そうだって」→アルト「ぼくらは」→ソプラノ「ぼくらは」と次々に入って盛り上げていきましょう。

書かれていはいないですが、気持ち的にはクレッシェンドしていっても良さそうです。

アルトは男声よりも大きく、ソプラノはアルトよりも大きく入ることを意識するとうまくいくと思います。

【H】会場に響きを満たそう

【H】は最後のサビとなります。充実した響きを会場に満たし、曲を締めくくりましょう。

男声が雰囲気を引っ張ろう

【H】で最初にメロディーを歌うのは男声です。

“確信をもって”と書かれているように、fの音量で、堂々と歌いましょう。

男声が全体の雰囲気を引っ張ることで、遅れて入るアルト、ソプラノも流れに乗りやすくなります。

アルトの動きに存在感を

男声のメロディーに続いて、アルトが”いきものだから”と入ります。

これまであまりなかったメロディーです。

しっかり歌って、存在感をアピールしましょう。

響きを充実させて、最後にふさわしく

72~73小節の”かわりゆくぼくらがうつくしいのです”のフレーズは、これまでに何度か登場しており、この曲を通じて一番伝えたいメッセージと言っても良いでしょう。

ここがラストになるので、漫然と歌わずに、気持ちを込めて歌いましょう。

未来へ続くクレッシェンドを

77~78小節のロングトーンは、クレッシェンドしていき、cut outして終わります。

音を切るときは、会場に響きを解き放つように。

未来へ続くようなイメージをもって、曲を締めくくりましょう。

まとめ

最後に、練習番号ごとのポイントを簡単にまとめておきます

  • 【A】p系のユニゾンを上手に歌おう
  • 【B】変化を読み取って表現しよう
  • 【C】サビに向かうフレーズは聞かせどころ
  • 【D】合唱らしい充実した響きで
  • 【E】アルトのラインが主役!
  • 【F】リズムを立たせて
  • 【G】繊細なタッチで歌おう
  • 【H】会場に響きを満たそう

本記事を活用して、良い演奏ができるよう頑張ってください。

より詳しく解説して欲しい点がある場合は、お問い合わせなどからご連絡いただければと思います。

最後までご覧いただきありがとうございました。