加藤昌則

合唱曲『証』練習・演奏のポイント|情熱的に歌い上げよう

『証』解説

2011年度Nコン中学の部課題曲の『証』(作詞:山村隆太 作曲:阪井一生 編曲:加藤昌則)の解説記事です。

合唱歴10年以上、指揮者の経験をもとに詳しく解説しました。ぜひ参考にしてください。ワンランク上の演奏に繋がるはずです。

「もっと詳しく解説してほしい!」という場合は、お問い合わせからお気軽にご連絡いたください。補足・追記いたします。

NHK出版「NHK 全国学校音楽コンクール 課題曲集 90回記念 中学校 混声合唱」に収録されている楽譜を参考にし、本文中で歌詩などを引用する場合には「””」で示しています。

練習・演奏のポイント

【A】小さな音量でも歌詩をしっかり伝えよう

【A】の音量は、ソプラノがp(ピアノ/小さく)となっています。

音量としては小さいのですが、歌詩ははっきりと伝えられるようにしましょう。

歌詩は子音をしっかり目に発音することで伝わります。

[子音の例]

  • えを”…m
  • りかえってちゃ”…f
  • おざかる”…t
  • みに”…k

アルトはサブのメロディーです。ソプラノを邪魔しないようpp(ピアニッシモ/とても小さく)となっています。

【B】ソプラノ・アルトでタテをそろえよう

【B】からはソプラノとアルトが同じタイミングで同じ歌詞を歌うようになります。(「タテがそろう」と言います。)

なんとなく歌うのではなく、「ここからはタテがそろうんだぞ」ということをお互いのパートが意識しましょう。

意識することで一体感が生まれ、よくハモるようになります。

【C】クレッシェンドのやり方を工夫しよう

【C】では頻繁にクレッシェンドが登場します。

クレッシェンドはだんだん大きの意味ですが、毎回毎回大きくしていくと、いつか限界が来て息切れしてしまいます。少し工夫が必要です。

ここではクレッシェンドを次の2つに分けて考えてみたいと思います。

  1. 実際に音量を変化させるクレッシェンド
  2. 勢いをキープするクレッシェンド

①としては、21~22小節にかけてのクレッシェンドが挙げられます。ここではmpからmfへと大きく盛り上げます。28~29小節にかけてのクレッシェンドも同様で、mfからffへ、しっかりと盛り上げましょう。

②として挙げられるのは26小節、27小節のクレッシェンド。ここでは2拍分伸ばす間に勢いがなくなってしまわないよう、音量やピッチ(音程)をキープするイメージで歌いましょう。②パターンのクレッシェンドは毎回やると先程行ったように息切れしてしまいますし、音楽的にも少々しつこい感じになってしまうと思います。

24~25小節のクレッシェンドは①②の中間的な役割だと捉えましょう。

【D】主役意識を強く持とう

ここからはサビ。主役のメロディーを担当するのはアルトです。

普段アルトの人がメロディーを担当することは少なめですので、主役意識を強く持って歌いましょう。

音量はff(フォルティッシモ/とても強く)です。もし十分に音量が出ないときは、この部分だけソプラノから数人応援に来てもらっても良いと思います。

ソプラノはサブの旋律なので、少し人数が減ってもバランスは取れると思います。

【E】メロディーの交代を意識しよう

【E】の特徴はメロディーを担当するパートが短いスパンで切り替わること。

どのパートがメロディーを担当するかは矢印で示されています。

[メロディーを担当するパート]

  • “きずつけあーーっ”…アルト
  • “てはなんども”…ソプラノ
  • “ゆるー”…アルト
  • “しあえたこと”…ソプラノ

自分のパートはどこでメロディーを担当することになるのか、頭に入れて歌いましょう。

パートが切り替わるところでは、メロディーがひとつながりで聞こえるよう、声質やピッチを統一することを意識して練習してみてください。

【F】音量バランスに注意しよう

【F】は曲頭の【A】に対応するフレーズですが、男声が入ることでハーモニーが豊かになっていることが違いです。

音量はmp(メゾピアノ/少し小さく)です。43~44小節の男声は音域が高く、声が自然と大きくなりがち。

ですがそうすると3パートのバランスが崩れてしまいますので、なるべく抑制して、丁寧に歌いましょう。

【G】ロングトーンに注意しよう

クレッシェンドの注意点は【C】と同じです。

その他に注意したいのがロングトーン(伸ばす音)です。

[ロングトーンの箇所]

  • “ぼくがもし
  • “ゆめ
  • “あきらめたな
  • “とおく
  • “しかって

ロングトーンでは長さをそろえたり、ハーモニーを整えることが重要になります。

【H】アルトと男声で息を合わせよう

ここからは再びアルトが主役。

アルトと男声はタテがそろっているので、タイミングを良くそろえて歌いましょう。

男声はハモリのとき(57小節など)とユニゾン(59小節など)のときがあるのでその点も意識すると音が早く取れると思います。

【I】フレーズ終わりの違いを考えよう

【E】では37~39小節に「しだいに落ち着けて」という指示が書かれていました。フレーズの終わりに向かって、音楽を収束させる意図です。

一方で【I】には同様の指示はありません。

ここもフレーズの終わりではあるのですが、続く指示としてに「テンポを上げてリズミックに」があります。

つまり、ここでは音楽を収束させていくのではなく、むしろ前向きに押し出していくような歌い方が相応しい場面となっています。

続く音楽の内容によってフレーズの締めくくり方を変えましょう。

【J】テンポを上げてノリよく弾こう

ここからはPoco piu mosso(ポーコ ピウ モッソ/前よりも少し早く)となります。

シンコペーションのリズムやアクセントを活かしてノリよく弾きましょう。

【K】変化を感じて柔らかく歌おう

大きな変化がある場面です。音量やピアノパートの音形、テンポが異なります。

またdolce(ドルチェ/甘く、柔らかく)、legato(レガート/なめらかにつなげて)といった記号もありますので、見逃さずに表現しましょう。

【L】テンポ感を切り替えて、遅れずに歌おう

TempoⅠ(テンポ プリモ/もとの速さで)があり、ゆっくりになっていたテンポがもとに戻ります。

ゆったりと優しい雰囲気から、またノリの良いテンポへしっかり切り替えましょう。

早くなったテンポに遅れないようにするのが大切です。

【M】転調を明確に、熱く歌い上げよう

ここから♭の数が増えて転調します。サビの部分に関してはニ短調 → 変ホ短調という変化です。

この転調は前触れが短く、かなり突然切り替わります。瞬時に切り替えることができれば、聞いている人を驚かせるような効果が出せるでしょう。

半音高くなる転調ですので、その分音域も高くなります。ボルテージを上げて熱く歌い上げましょう。

【O】お互い聴き合ってハーモニーを響かせよう

ラストは合唱らしいハーモニーが魅力的な場面です。

自分のパートの音をしっかり取るだけでなく、お互いの声を聴きあうことで豊かな響きが生まれます。

sfz(スフォルツァンド)はその音を特に大きくという記号です。

ポイントの振り返り

ポイントを振り返ります。

  • 【A】小さな音量でも歌詩をしっかり伝えよう
  • 【B】ソプラノ・アルトでタテをそろえよう
  • 【C】クレッシェンドのやり方を工夫しよう
  • 【D】主役意識を強く持とう
  • 【E】メロディーの交代を意識しよう
  • 【F】音量バランスに注意しよう
  • 【G】ロングトーンに注意しよう
  • 【H】アルトと男声で息を合わせよう
  • 【I】フレーズ終わりの違いを考えよう
  • 【J】テンポを上げてノリよく弾こう
  • 【K】変化を感じて柔らかく歌おう
  • 【L】テンポ感を切り替えて、遅れずに歌おう
  • 【M】転調を明確に、熱く歌い上げよう
  • 【O】お互い聴き合ってハーモニーを響かせよう

「もっと詳しく解説してほしい!」という場合は、お問い合わせからお気軽にご連絡いたください。補足・追記いたします。