こんな疑問に答えます。
合唱曲の練習をする際にはポイントをしっかり押さえておくことが大切です。
この記事では合唱歴10年以上、指揮者歴3年以上の筆者が以下の内容をまとめました。
- パート練習・音取りのコツ
- 歌い方・アンサンブル(合わせ)のコツ
- 音楽づくりの方向性、仕上げ方のポイント
- 指揮・伴奏で意識すること
この記事を読みながら練習に取り組めばと、ワンランク上の演奏を目指せること間違いなしの内容になっています。
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もくじ
合唱曲『予感』の概要
まずはじめに『予感』という曲の概要について触れておきたいと思います。
- 作詩:片岡輝
- 作曲:大熊崇子
- 演奏時間:約3分
- 編成:ピアノ付き混声3部
- 言語:日本語
- 難易度(クラス合唱):やや難しい
作詞者・作曲者について
『予感』は平成14年度NHKコンクール中学校の部の課題曲として用いられた曲です。
作詩者は片岡輝(かたおかひかる)さん。《ひとつの朝》、《未来への決意》、《地球に寄り添って》など、多くの合唱作品に用いられています。
作曲者は大熊崇子(おおくまたかこ)さん。『心に海を』など、小・中学生向けの合唱レパートリーを中心に数多く作曲されています。
難易度について
『予感』はもともとNコンの課題曲だったこともあり、中学生向けのレパートリーとしては難しい部類に入る作品です。
メロディーに用いられているリズムやテンポ変化、転調、アーティキレーションなど様々な要素が用いられており、これらをどうクリアしていくかが演奏する上でのハードルとなります。
逆に言えば、これらの表現を確実にこなしていくことで説得力やドラマ性をしっかりと表現することのできる、やりがいのある作品でもあります。
構成と練習番号
練習していく上で曲の構成をつかんでおくことはとても重要です。
ここでは『予感』の構成を分析しながら、練習番号もつけていきたいと思います。
- 冒頭:1小節~(前奏)
- A:5小節~(”こころのなかに”)
- B:14小節~(”いまだいちに”)
- C:22小節~(”こころまで”)
- D:37小節~(”こころのなかで”)
- E:45小節~(”いまだいちに”)
詩は3つの連から成り、曲もそれに応じた構成となっています。
第1連 | A、B |
---|---|
第2連 | C |
第3連 | D、E |
第1連ではAがいわゆるAメロ的な部分、そしてBがサビと捉えても良いでしょう。
第3連がいわゆる2番の歌詩となっており、DがAメロ、Eがサビ的な部分となっています。
第2連を歌うCの部分は、1番と2番を繋ぎ、音楽に変化を与えるブリッジ的な部分となっています。
合唱曲『予感』歌い方のコツ
ここからは練習で使える歌い方のコツを解説していきます。
音取りに不安がある場合、まずはしっかりとパート練習を行いましょう。
こちらの記事(【5ステップ】質の高いパート練習の進め方とコツ|経験者のノウハウ公開)もご参照ください。
【A】16分音符と3連符のリズムを正確に
5小節目~【練習番号A】です。
細かい音符が中心で、語りかけるような場面となっています。
ここで注意してほしいのは16分音符と3連符のリズムを正確に歌い分けることです。
具体的には次の歌詩です。
- ”なかにー”(16分音符×2 +8分音符)
- ”よかんー”(3連符)
両方が同じリズムになってしまわないように気をつけましょう。
また、【A】のようなリズムが細かいフレーズでは言葉をしっかり伝えることも大切です。
言葉やリズムによって気をつける点が変わりますので、それぞれピックアップしておきます。
- ”こころ”
- ”ひとつ”
- ”よかん”
- ”かげ”
- ”ふあん”
- ”かなた”
- ”ひかり”
- ”ひろがる”
【B】fの”いま”をクリアに入ろう
14小節目~【練習番号B】です。
ポップスで言えばサビと位置付けられるような場面です。
【B】の音量はf(フォルテ/強く)となっています。豊かな音量でしっかりと歌いたい場面です。
歌い出しの”いま”という歌詩なのですが、”い”で始まる言葉は母音がつぶれてしまいやすく、響きが乗りにくいので注意が必要です。
音もやや高いところから始まりますのでしっかりと準備をして、丁寧に入りましょう。
【C】掛け合いとのフレージングを意識しよう
22小節目~【練習番号C】です。
ここから詩の第2連。音楽的にはブリッジ(繋ぎ)の部分となっています。
Cの場面で特徴的なのは、歌詩を歌うパートと”ルルル”で歌うパートに分かれている掛け合いになっていることです。
”ルルル”を歌い際にはスラーのつき方に注意しましょう。
スラーでまとめられているフレーズは一息で歌い、ブレス記号があるところにフレーズの切れ目があると考えると良いと思います。
特に23小節目~24小節目のソプラノの音が切れてしまわないよう気をつけましょう。
こうすることで歌詩のパートと”ルルル”のバートがうまく絡み合い、立体的なサウンドが生まれます。
フレージングと同時に音量バランスについても考えられるとよりグッドです。
- 歌詩のパート…mp
- ”ルルル”のパート…p
このようになっています。これを意識することで歌詩を歌うメインメロディーが引き立ちます。
【D】転調に向けてダイナミックにクレッシェンドしよう
37小節目~【練習番号D】です。ここから詩の第3連に入ります。
音楽の構成としてはAと対応している場所となっています。
【D】の聴かせどころは続く【E】にかけての大胆な転調です。
- 【D】ヘ長調(♭×1)
- 【E】ト長調(♯×1)
全音分高くなり、かなり盛り上がります。
クレッシェンドをする際にはメンバー全体で「どんなクレッシェンドにするか?」を共有することが肝心です。
またクレッシェンドと同時にrit.(リタルダンド/次第に遅く)の記号がありますね。
このrit.は転調前の大きな区切りを作り、次のクライマックスに向けて盛り上げていく大切な役割を持っています。
しっかり、たっぷりとタメて音楽を作りましょう。
a tempo(ア テンポ/元の速さで)となるのは【E】に入ってからです。
ということはその直前、”いま”の”い”は一番ゆっくりになっているテンポで歌うということになりますね。
この”い”もたっぷりと溜めて歌いましょう!
【E】ラストのポイント3つ
45小節目~【練習番号E】です。
1曲を通してのクライマックス部分です。
最後だけあってポイントも多いので分けて解説します。
クレッシェンドは先を見据えて
49小節目から始まるクレッシェンドは非常に長いですね。
52小節目のfが目標となりますが、前半で頑張りすぎると後半で息切れしてしまう恐れがあります。
前半はじわじわ、後半で一気にグアーッと大きくしていくほうが迫力のあるクレッシェンドになるのでおすすめです。
アクセントは力強く歌おう
【E】ではアクセント(目立たせて)の記号がいくつかつけられています。
- ”たくして”
- ”くみだそう”
この2か所ですね。
それだけ大切な歌詩、フレーズということになりますので積極的にアピールしてみましょう。
ハーモニーを堂々と決めよう
ラストの”くみだそう”のロングトーン(伸ばす音)ではハーモニーを磨きましょう。
ハーモニーを美しく決めるためにいちばん大切なのは「お互いの声を聴きあうこと」です。
和音を分解して考えると次のようになります。
- 第5音…レ(ソプラノ)
- 第3音…シ(アルト)
- 根音…ソ(男声)
やや難しい内容ですが【3ステップ】和音の根音(ルート)・第3音・第5音の見分け方【並べ替えがポイント】もご利用ください。
合唱曲『予感』指揮のポイント
『予感』は4拍子の曲ですので、基本は4拍子図形で振ることになります。
歌い方の解説でも触れた通り、言葉の処理が大変大きなウェイトを占めていますので、なるべく「言葉を振る」ような意識を持っておくと良いと思います。
rit.・riten.・a tempoなどの速度変化の指示も多いですので自分で分かりやすいようにチェックしておきましょう。
指揮初心者の方は【まとめ】初心者のための指揮法完全ガイド|合唱指揮者が基礎から解説をぜひご覧ください。
合唱曲『予感』伴奏のポイント
右手の4分音符の動きがテンポ感を決める重要な要素です。
このリズムが安定しないと、合唱の細かい動きが揃わなくなってしまいますので、テンポをしっかりとキープしましょう。
指揮のポイントと同じくrit.・riten.・a tempoなどの記号の場所もチェックしておきましょう。
合唱のピアノ伴奏3つのコツ【歌い手と上手にアンサンブルする方法】もあわせてご覧ください。
まとめ:合唱曲『予感』歌い方のコツ/指揮・伴奏のポイント
合唱曲『予感』を解説させていただきました。
かなりポイントをしぼって解説しましたが、合唱の練習でやるべきことはまだまだあります。
詳しく知りたい方は【ポイント6つ】全体練習(アンサンブル)をまとめる方法|合唱指揮者が解説もあわせてご覧ください。
コンクールで結果を出す戦略を知りたい方は【まとめ】合唱コンクール完全攻略ロードマップ|3ステップで解説をご覧ください。