リクエストをくれた方へ
メールにて連絡が取れなかったのでここに書いておきます。
このブログを見つけていただいて、またリクエストもいただきありがとうございます。大変嬉しいです。
卒業式で歌われるということで、あまり時間がないと思いますが参考になればと思います。
もし質問やわかりにくいところがありましたが、またお問い合わせフォームからご連絡いただければ幸いです。
それでは今回の質問内容を紹介します。
『旅立ちの日に』のアルトパートに関して、
- どうすればつられずに歌えるか
- どうすれば掛け合いのときに声が出るか
それぞれのコツを教えてください。
とのことです。
今、楽譜を見てみたところ、たしかにアルトは難しいところが多いですね(特に②について)。
逆に言えばしっかりと楽譜に向き合って真摯(しんし)に取り組んでおられることが感じられる質問でもありますね。
もくじ
①どうすればつられずに歌えるか
アルトがハモるときの音は、合唱にかなり慣れていても難しいことが多いです。なかなか音が取れずに悩んでしまうのも、とても分かります。
一番効果があるのは、ちょっと申し訳ない答えにはなってしまうのですが、「とにかく何回も、繰り返し練習すること」です。ぶっちゃけ言うと、これが一番効果のある方法です。
とは言っても、音取りスピードをアップさせるためのコツや、どんな部分に気をつけたら良いかというポイントはあるので、それをお伝えしたいと思います。
次の5ステップでやってみましょう。
- どこがユニゾンでハモリなのかを知る
- 音符をよく見て次の音をちょっとだけ予想する
- ピアノをしっかり聴きながら歌う
- ピアノをはずしても自信を持って歌えるようになる
- 他のパートの音を感じながら歌う
ステップ1. どこからどこまでハモっているかを知る
もしかすると、もうすでに曲の練習を始めて、実際に歌ってみているかもしれませんね。
ですが、まずは少し後戻りして、楽譜をじっくりと見ることから始めてみましょう。
やってみてほしいのは、アルトがソプラノと同じ音を歌う部分、そしてソプラノと違う音を歌う部分を探すことです。
なかなか音が取れないときというのは、今自分が歌っている音があっているのが間違っているのかも分からない状態です。
それを克服するには、どこからどこまでが他のパートと同じ音なのか、どこからどこまでがハモるところなのかを知っておくことが必要です。
例えば11小節目を見てみましょう。ここから合唱が歌い始めるわけですね。
アルトの音が書いてあるのは一番上、ト音記号が書いてあるのと同じ段です。普段歌うときは、もしかすると歌詩だけを見ているかもしれませんが、今回は音符にも注目してみましょう。
“しろいひかりのなかで”は歌詩1文字に対して1つの音符だけが書かれています。これはソプラノとアルトが同じ音を歌うため、1つの音符にまとめて書いてあるということです。
要するに、ここはソプラノとアルトが同じ音ということになります。このようにいくつかのパートが同じ音で歌うことをユニゾンといいます。
というわけで、まずはソプラノとアルトがユニゾンになっている部分を探してみましょう。楽譜上で、1つずつしか音符が書いていないところを探せばOKです。
ちなみに、”しろいひかりの”(11小節)~”きみはとびたつ”(18小節目)まではソプラノ、アルト、男声が同じ音を歌っています。
続いて”かぎりなくあおい”(19小節目)も、やはり音符は1つずつしか書かれていないので、ここもソプラノとアルトは同じ音です。
23小節目の”じゆうをかけるとりよ”までくると、音符が2つになりました。ここからソプラノとアルトが分かれてハモる部分です。
「ここからハモる!」ということが分かるように、楽譜に書き込んでおいてください。
ここから1コーラス目の終わりである34小節まで、基本的にソプラノとアルトはハモっています。ですが、24小節目に注目。一瞬ですが”りよ ふり”のところは音符が1つになっているのが見つかります。
ここはソプラノとユニゾンになるので「同じ音!」と書き込んでおきましょう。
こうすることで、もしハモる部分で音を見失ってしまっても、ここで復帰できるようになるはずです。そうなれば続く25小節からのハモリにも入りやすくなると思います。
ステップ2. 音符をよく見て、次の音をちょっとだけ予想する
続いては、楽譜から自分の歌うべき音を予想してみましょう。
「自分は音感がないから無理!」と思うかもしれませんが、ちょっと予想するだけなら、楽譜をしっかり見ればできますよ。
見分けるポイントは次の2点。
- 次の音符が上がっているか下がっているか
- 次の音符が近いか遠いか
見分け方1. 次の音符が上がっているか下がっているか
まずは並んだ音符の書いてある場所に注目しましょう。
今自分が歌っている音符と、次に歌う音符の高さを見比べてみます。すると次のことが分かります。
- 上がっている→次は高い音
- 下がっている→次は低い音
次の音が今より上がるか下がるかが分かるだけでも歌いやすくなるはずです。
見分け方2. 次の音符が近いか遠いか
音符の高さに加えて音符の離れ具合、つまりどれくらい離れているかにも注目してみましょう。
- 近い→音の高さはあまり変化しない
- 遠い→音の高さが大きく変化する
1.2. を組み合わせると、例えば「次の音は少しだけ下がるな」とか、「次の音は結構上がるな」といったことが分かります。
次の音が完全に分かる状態は目指さなくても大丈夫。あくまでなんとなく予想するだけで十分です。これだけでも音のイメージがしやすくなり、音を覚えやすくなります。
ステップ3. ピアノをしっかり聴きながら歌う
ステップ1.と2. ができたら歌う前の準備は完了です。いよいよ実際に声を出して歌ってみましょう。
ステップ3ではアルトの歌う音をピアノで弾いてもらいながら歌います。音取り用の音源(CDなど)があればそれを利用してもOKです。普通のパート練習と同じ要領で進めましょう。
このときピアノの音をしっかりと聴くことがとても大切になります。なるべく同じ音で歌えるようにしましょう。
ゆっくりとしたテンポで練習するのも効果的。合っている場所、間違っている場所が分かりやすくなります。
あわせてステップ1.2. でチェックしたことも時々思い出してみてください。
ステップ4. ピアノをはずしても自信を持って歌えるようになる
ステップ4では、アルトのパートをピアノなしで歌ってみます。
この状態で自信を持って歌えることが大切です。
アルトのパート内で、お互いの声を聴きながら、しっかり合わせましょう。この練習をなるべく完璧に近づくまで繰り返しましょう。
ステップ5. 他のパートの音を感じながら歌う
ステップ5は発展的な内容です。
アルトを歌うときでも、ソプラノや男声、ピアノパートの伴奏も一緒に聴きながら歌いましょう。こうすることでハーモニーが美しい合唱になります。
ただし、これは結構難しいと思うので、余裕があったら挑戦してみてください。
②どうすれば掛け合いのときに声が出るか
もう一つの質問内容にいきたいと思います。
『旅立ちの日に』では46小節から女声と男声が交互に歌う「掛け合い」の場面となっています。
テンポも上がって非常に躍動感のある音楽となっています。
一方、ここのアルトは、なるほど存在感を発揮するのに難儀しそうに感じます。
どうすればうまく歌えるか、私なりに対策を考えてみました。
- まずはしっかり音を取る
- 母音を響かせる練習をする
- cresc.の作り方を工夫する
対策1. まずはしっかり音を取る
この部分のアルトが声が出ないのは、そもそも音がしっかり取れておらず、自信を持って歌えていないことが原因である可能性があります。
音取りのコツはこの記事の前半で解説したとおりです。もう一度まとめておくと、次のようになります。
- どがユニゾンでハモリなのかを知る
- 音符をよく見て次の音をちょっとだけ予想する
- ピアノをしっかり聴きながら歌う
- ピアノをはずしても自信を持って歌えるようになる
- 他のパートの音を感じながら歌う
特にステップ1. は重要で、掛け合いの部分はほとんどがハモリなのですが、”とびたとう”の”とびた”の部分や、”みらいしんじて”の”み”がソプラノと同じ音になっています。
これを手がかりにして歌い始めることで音が取りやすくなると思います。
難関なのが46小節目の歌い始め。ここは手掛かりが少ないので、ステップ3. の練習で自信をつけておく必要があるかもしれません。
あるいはステップ2. の内容を応用すれば、45小節目で伸ばしている”しんじて”の”て”、そこからちょっとだけ上に上がれば良いことが分かります。それを手掛かりにするのも良いでしょう。
対策2. 母音を響かせる練習をする
掛け合いの場面で音量が出にくいもう一つの理由は、音符が細かいことです。
ある程度音符が長いと、母音(ア、イ、ウ、エ、オ)が響きやすいのですが、音が短いと母音が響く前に次に進まなければならず、声量も出にくくなります。
母音を響かせる練習としては、次の3つが有効です。
- しっかり発声練習をしておく
- ゆっくりのテンポで練習する
- 母音唱をする
母音唱とは、子音を取り払って、母音だけで歌う方法です。
例えば”いま わかれのとき”は、「いあ ああえおおい」となります。
ちょっと変な感じですが、母音だけで、はっきり歌えるようにすることで、母音を響かせるイメージが持てると思います。
発声練習に関してはこちら(【合唱人向け】大きな声で歌うコツと速攻で効く練習法【実績あり】)も参考にしてください。
対策3. cresc.の作り方を工夫する
最後に音楽的な表現に触れておきたいと思います。
52小節にcresc.(クレッシェンド/だんだん大きく)が書かれています。
ここから曲の最後に向かって盛り上げていくのですが、なかなか音量がアップせずに思うようにいかないことがあるのではないでしょうか。
そこで試してほしい工夫があります。それはクレッシェンドが始まる”このひろい”を小さく入ること。
スタート地点を小さくすることで、その後のクレッシェンドの幅を広げることができるというわけです。
ポイントは男声の入りの音量をぐっと落とすこと。
男声パートは女声と比べて音域がかなり高いため、声が出やすくなっています。男声だけが大きいと、相対的にアルトの声が小さく聞こえてしまいます。そこで男声に少し押さえてもらって、全体のバランスを取るというわけです。
そもそも混声3部合唱では男声が1パートのため人数が多くなっていることが大半です。そこで並び方を工夫してバランスを整える方法も考えられます。それについてはこちら(【7選】合唱パートの並び方(オーダー)を工夫しよう|メリット・デメリットも解説)も参考になると思います。
まとめ:『旅立ちの日に』アルトの解説|つられない・掛け合いのコツ
この記事のポイントを振り返っておきます。
①どうすればつられずに歌えるか
- どこがユニゾンでハモリなのかを知る
- 音符をよく見て次の音をちょっとだけ予想する
- ピアノをしっかり聴きながら歌う
- ピアノをはずしても自信を持って歌えるようになる
- 他のパートの音を感じながら歌う
②どうすれば掛け合いのときに声が出るか
- まずはしっかり音を取る
- 母音を響かせる練習をする
- cresc.の作り方を工夫する
この曲のアルトは確かに難しいと思います。ですが、曲の中で大きな役割を持っていることもまた事実。
アルトがしっかり歌えると曲全体の魅力が一回りも二回りもアップすると思います。
もし分からないところがあれば、またお問い合わせフォームから連絡いただければ記事に追記します。