こんにちは!
今回は寺山修司作詩・信長貴富作曲、《思い出すために》より『思い出すために』について解説していきたいと思います!
曲調や難易度、曲の魅力・鑑賞のポイント、演奏・練習のポイントなどついて深堀りしていきます。
この曲を知らなかった人、これから聴いてみたい人、これから歌ってみたい人のお役に立てば幸いです。
それではどうぞ!
もくじ
『思い出すために』ってどんな曲?
まずは『思い出すために』という曲について、「この曲知らない!」「初めて知った!」という人のために、作詩者・作曲者、難易度、曲調についてざっくりと紹介します。
作詩は寺山修司、作曲は信長貴富
『思い出すために』は全6曲からなる寺山修司の詩による6つのうた《思い出すために》の5曲目。
曲集のタイトルにもなっているように、6曲の中でも重心を成す一曲です。
作詩は寺山修司、作曲は信長貴富になります。
難易度は…中級
『思い出すために』の難易度は、中級程度です。
スウィング的なリズムは厄介な上に、ブリッジ部分の和声の難しさや盛り上がる部分の旋律の絡みの複雑さなど、難しいポイントが多数あります。
一聴しての親しみやすさとは裏腹に、結構ややこしい曲です。
ただし、信長作品の魅力でもあるメロディックさが練習へのモチベーションを助けてくれると思います。
曲調は…ジャズワルツ風の大人な雰囲気
『思い出すために』はジャズワルツっぽい大人な雰囲気が特徴です。
ノリの良い3拍子のテンポ感や、スウィングのリズム、そして大人なブルーなコードがその要因。
ジャズで使われる唱法、スキャットも後半で登場します。
詩で登場する風景やシチュエーション、シニカルな感情が反映されているように思います。
『思い出すために』の魅力について語る!
続いては『思い出すために』という曲を、「聴いたことある!」「これから聴く!」という人に向けて、曲の魅力や鑑賞のポイントについて語っていきたいと思います。
アドリブ的なピアノソロが異国情緒を漂わせる
冒頭のピアノソロ、いきなり聴きどころです。
ジャズのアドリブ風と言えるかもしれません。
臨時記号の付された音が異国情緒を漂わせます。
ノリの良いジャズワルツに乗って歌う
ジャズワルツ的なリズムに乗って歌われるメロディーも魅力。
ジャズと合唱が融合した音楽ってそんない多くないと思うので、聴く分にも歌う分にも楽しめる部分です。
記憶の中の風景が流れていくブリッジ部分
中盤には記憶の中の風景が次々と流れ去っていくような場面があり、後半に向けてブリッジ的な部分にもなっています。
54小節目からの転調する部分までのコード進行は非常に複雑。
ちょっとまとめてみましょう。
G-5 → F+9 → Bm-5M7/E → A♭+9/D → B♭+5/C → G♭+5/A♭ → G♭7 → Fm
分数コードや+5、-5などいろいろ出てきてややこしいですが、ベース音だけ拾っていくと、
G → F → E → D → C → (B♭) → A♭ → G♭ → F
※(B♭)は経過音的に出てきます。
のように順次進行していることが分かります。
これがコード進行の骨格ですね。
泣きメロのスキャット
Fmに転調してしばらくすると、”ダバダバ”のスキャットで歌われるフレーズが始まります。
ここもジャズっぽい要素の一つです。
ffで歌われることもあり迫力がある一方で、悲哀を感じさせるメロディーでもあります。
ホロっと切ないアルトのパートソロ
スキャット部分のあと、一転して落ち着いた音楽になります。
この部分のアルトのパートソロは非常に印象的です。
ホロっと切ない感じがたまらなく沁みる部分です。
明かされる詩の核心と曲の構成巧みさ
最後の最後で歌われる歌詩がこの曲の核心部分。
それに合わせてクライマックスを持ってくる曲の構成が非常に巧みです。
後奏のピアノはTempo Ⅱ(前より早いテンポ設定)になっているのも心憎い演出ですね。
『思い出すために』の練習・演奏のポイント!
最後に、『思い出すために』という曲を「これから歌う!」「今練習してる!」という人に向けて、練習・演奏のポイントについて解説します。
スウィングのリズムを極める
何はともあれリズムをしっかりと練習することが必要になりそうです。
自然に口が回るようになるまでリズム読み(音無しで歌う)に取り組みましょう。
半音全音の幅を意識して音を取ろう
実はリズムだけでなく音自体も結構厄介です。
臨時記号が多用されているので、音と音の幅(音程)が全音なのか、半音なのか、区別しながら譜読みを進めると良いと思います。
例えば21~22小節目にかけての男性のフレーズは臨時記号が付いているため、曖昧にならないよう注意したい部分です。
- A音→B音(シ♭)へ上がる時→半音
- B音→C音へ上がる時→全音
- C音→H音(シ)へ下りるとき→半音
です。
テンポをゆっくりにして練習してみるのも手ですね。
『思い出すために』(寺山修司/信長貴富)
それではまとめです!
《思い出すために》より『思い出すために』でした。
ジャズワルツ的な大人の雰囲気を持つ曲でした。
詩の核心部分(平たく言うとオチ)を最後まで引っ張る曲の構成にも注目です。
リズム・音ともに厄介ですで、工夫して練習してみましょう。
今回はここまで。お読みいただきありがとうございました!