こんな疑問に答えます。
合唱の練習ではポイントを押さえて練習することが肝心です。
この記事では次の内容について合唱歴10年以上、指揮者歴3年以上の経験をもとにまとめました。
- パート練習・音取りのコツ
- 歌い方・アンサンブル(合わせ)のコツ
- 音楽づくりの方向性、仕上げ方のポイント
- 指揮・伴奏で意識すること
この記事を読みながら練習に取り組んでいただきますと、ワンランク上の演奏を目指せること間違いなしの内容になっています。
それではどうぞ!
※2023/07/30追記
お問い合わせフォームより、次のコメントを頂きました。
えすた様の合唱ノート、解説がわかりやすく、昨年私のクラスが地
えすた様が解説する表現方法をクラスの生徒たちと一緒に読み込ん
もくじ
合唱曲『地球星歌~笑顔のために~』の概要
まずはじめに『地球星歌~笑顔のために~』の概要についてご紹介します。
- 作詞・作曲:ミマス
- 編曲:富澤裕
- 演奏時間:約4.5分
- 編成:ピアノ付き混声三部
- 言語:日本語
- 難易度:ふつう~やや難
『地球星歌』の作詞者・作曲者について
作詞・作曲をされたのはミマスさん。音楽ユニット「アクアマリン」作詞・作曲担当をされています。
ミマスさんによれば
この歌は、作者が実際に世界の多くの国々を旅した経験から生まれました。あなた自身も広い世界とつながっていて、生活や人生を通して世界をより良く変えてゆける。そんなイメージを大切にして歌ってください。
引用:『音楽之友社(2020). クラス合唱曲集レッツ・コーラス! 第二版』
とのことです。壮大でメッセージ性の強い作品なんですね。
編曲者は富澤裕さん。ミマスさん作詞・作曲、富澤さん編曲の合唱作品としては他に『COSMOS』などがあります。
『地球星歌』の難易度について
『地球星歌』の難易度は中学生向けのレパートリーとしてはふつう~やや難の作品となっています。
基本的にオーソドックスな感じですが、難しいところとして
- 6/8拍子
- ソプラノにやや高音域あり(ファ)
- 細かな強弱記号の解釈
などが挙げられます。
この記事ではこれらについても細かく解説していきますので是非ご覧ください!
『地球星歌』の構成と練習番号
練習していく上で曲の構成を掴んでおくことはとても重要です。
ここでは『地球星歌』の構成を分析しながら、練習番号もつけていきたいと思います。
- 冒頭:1小節~(前奏)
- A:9小節~(Aメロ)
- B:25小節~(サビ@イ長調)
- C:45小節~(Bメロ)
- D:59小節~(サビ@変ロ長調)
- E:75小節~(サビ@変ロ長調 繰り返し)
ここから見て分かるのはサビの繰り返し回数が多いということです。
このサビに関して、楽譜の上では細かく強弱が指示されていますのでこれらをどう解釈し、消化し、演奏に反映していくかが音楽づくりの上では大きなポイントとなります。
もう一点、逆に1度しか歌われないC(Bメロ)にも注目してみましょう。
このフレーズは一曲の中で唯一p系の音量が指示されています。
この部分のアピールにもぜひ取り組みたいですね。
『地球星歌』歌い方のコツ
ここからは練習番号に基づいて「歌い方のコツ」を解説していきたいと思います。
パート練習、アンサンブル(合わせ)などでお役立てください!
レベルに分けて解説しています。練習の段階に応じて取り入れてみてください。
- Lv.1:序盤の練習、音取り・譜読み
- Lv.2:中盤の練習、慣れてきての合わせ
- Lv.3:終盤の練習、本番に向けた仕上げ
A:”このあおぞらは~”のコツ
まずはAメロです。
1番と2番の歌詩があり、繰り返し歌われるフレーズとなっています。
Lv.1 どこまでがユニゾン?
音取り・譜読みの段階においては、ユニゾン(合唱パート全員が同じ音を歌う)かそうでないかということが大切です。
ぱっと見でユニゾンかどうかわからない場合は、この解説を参考にチェックしてみてください。
Aの歌い出しでは”このあおぞらは~とおいま”までがユニゾンとなっていますね。
音取りや合わせの際には、お互いの音を良く聴き合い、同じ音になるように練習しましょう!
Lv.1 休符を守ろう
Aの場面での歌い方のコツとしては、「休符をきちんと守る」ことが挙げられると思います。
具体的には
- ”このあおぞらは”の後の8分休符
- ”きっとつづいてる”の後の4分休符+8分休符
などですね。
休符を合わせる際には、そこで取るブレス(息継ぎ)のイメージを合わせると上手くいきやすいと思います。
- 短い休符(8分休符)→小さなブレス
- 長い休符(4分休符+8分休符)→大きなブレス
のようなイメージです。
Lv.1 ”が”は鼻濁音で歌おう
『地球星歌』の歌詩では全体的に”が”という歌詩が多くなっています。
- ”だれかが”
- ”かがやく”
- ”まいにちが”
などなどです。
このような”が”をはっきり歌いすぎると美しい響きを損ねてしまう恐れがあります。
そこで使われるのは鼻濁音という方法です。
”が”をそのまま(ga)と読むのではなく。(nga)というように前に少し”ん”をつけて歌いましょう。
これによって”が”の音を柔らかく発音することができます。
Lv.2 言葉をしっかり伝えよう
Aは語りウタ的な場面のため、特に歌詩をしっかりと伝えたいところです。
特に伝わりにくそうな部分をチェックしておきましょう。
”あおぞら”
母音(アイウエオ)で始まる言葉は、響きが乗りづらく埋もれてしまいがちです。
リズムもやや難しいですが少し意識してはっきり歌いましょう。
”とおい”
”とおい”という歌詩は、メロディーの音域が低く、音自体が伝わりにくくなっています。
こういった場合には”と”のt子音をやや強調し、メロディーラインをアピールしましょう。
Lv.2 アルトのメロディー意識を持って歌おう
”みあげるほしぞらに”というフレーズはアルトがメロディーです。
音域的に低く、かなり聞こえづらいと思いますが、ここは主役だと思ってしっかり歌いましょう。
B:”あなたのまいにちが~”のコツ
ここからは1回目のサビとなります。
Lv.1 次の音楽のためのブレスを取ろう
Aでブレスを揃えることに触れました。
Bの場面ではブレスを取るだけでなく、次の音楽をイメージした上でブレスを取ることを意識してみましょう。
Bの初めの音量はf(フォルテ/強く)となっていますので、それを思い描いてブレスを取ります。
B直前には4分休符+8分休符がありますので、ここでたっぷりと息を吸いましょう。
もう一か所、33小節目の直前のブレスもポイントです。
ここは休符が短くて忙しいのですが、やはり次の音量がfとなっていますので、瞬間的に大きくブレスを取りましょう。
Lv.2 鼻濁音で歌うべき言葉をチェック
先ほど述べましたが、『地球星歌』では鼻濁音で歌うべき言葉が多くなっています。
Bの場面をチェックしておきましょう。
- ”まいにちが”
- ”おもいが”
- ”ひろがる”
- ”えがお”
Lv.1 ロングトーンの長さを守ろう
Bのフレーズの終わりには比較的長めのロングトーンがあります。
2小節分しっかりと伸ばし切りましょう。
ここに関しては特に指示がありませんので、fの音量をキープして、弱くならないようにするのが良いと思います。
Lv.2 男声の動きをアピールしよう
Bをはじめ、何か所かで男声が女声とずれて歌詩を歌う場所があります。
Bの場合は、
- ”あいする”
- ”まだみぬ”
などですね。
こういった箇所はしっかりと良い声で歌ってカッコ良くアピールしましょう。
Lv.2 強弱でメリハリをつけよう
Bの場面はずっとフォルテで歌うのではなく、途中にmf(メゾ フォルテ/少し強く)があり、アピールポイントの一つとなっています。
楽譜上は「f → mf」の変化ですが、ここはやや大げさに音量の変化を見せ、「f → mp」のようなイメージで歌ってみても良いと思います。
C:”このちいさなてで~”のコツ
一曲を通して唯一p系(mp)の音量指示となっています。
静かさの聞かせ所と言っても良いでしょう。
Lv.1 主旋律はどこ? メロディーを伝える工夫をしよう
Cも部分の初めのフレーズは、矢印で示されている通り男声です。
その上で女声がハモりを担当しているという形ですね。
ハモりのパートがメロディーよりも高い音域になる時は、メロディーが分かりにくくなりますので、今回の場合には女声の音量をより絞って、pのつもりで歌ってみる工夫をしてみても良いと思います。
続く”みえないいとを”のフレーズはソプラノがメロディーとなっています。
ここはハモりの男声の方が音域的には低いのですが、ソプラノを引き立たせるためにpで歌っても良いかもしれません。
Lv.2 ユニゾンの音量を考えて!
Cの部分では
ハモり(”このちいさなてで”)
↓
ユニゾン(”できること”)
↓
ハモり(”みえないいとを”)
↓
ユニゾン(”たどって”)
と交互に繰り返しています。
ユニゾン部分は全部のパートが同じ音を歌いますので音量が大きく聞こえてしまいます。
p系の音楽をしっかり聞かせるためにも、すこし音量を小さく歌う意識を持っておきましょう。
Lv.2 クレッシェンドは後半が大切
”かんじることー”のロングトーンで練習番号Dにかけて長いクレッシェンドがあります。
こういった場合、はじめから大きくし過ぎると、後半で息切れをしてしまいます。
むしを長いクレッシェンドは後半が大切。
前半はじわじわと、後の方になるにしたがってグーッと大きくしていくと効果的なクレッシェンドになります。
Lv.3 より静かな音楽を表現するためには
何度も言うようにCはp系の静かな音楽です。
こういった静かな聞かせ所というのは他の曲では少ないと思いますので、よりアピールするにはどうすればよいか考えてみましょう。
1つは、mpをより小さな音量で歌って表現する方法です。
もう一つ考えられるのは、音色(おんしょく)を変えること。声の質ですね。
ここではやや声を潜めるように、ひそひそ声のような感じで歌うことで、より静かな音楽をアピールすることができると思います。
D:”そう! だれにでも~”のコツ
ここから転調。変ロ長調(♭×2の長調)となります。
半音上がることで盛り上がるところですね!
Lv.1 ユニゾンを揃えることを忘れずに
Dからはf。つい一生懸命声を出すことだけに集中してしまいますが、周りの音を良く聴くことは常に大切です。
楽譜をよく見ると多くの部分でユニゾンとなっていることに気が付きます。
音量を大きくしても音を揃えることを忘れないようにしましょう。
Lv.2 クレッシェンドの頂点を意識しよう
Dの後半にはクレッシェンドがありその後にff(フォルティシモ/とても強く)が登場します。
湖の音量は『地球星歌』全体を通して最大の音量となります。
”ふるさとといおう”メッセージがクライマックスとなるよう、全員で気持ちを共有しましょう。
E:”あなたのまいにちが~”のコツ
『地球星歌』最後の場面です。
サビの繰り返しですが、他の部分とどこが違うのか考えながら練習しましょう!
Lv.2 piu fは音量をキープ!
Fで指示されている音量はpiu f(ピウ フォルテ/フォルテより強く)です。
こういった特殊な指示の場合には、単に音量のことだけでなく気持ちの面も指示に含まれていると考えると良いと思います。
このpiu fに込められているのは「熱い気持ちを持って」と、私ならば考えます。
かなり長い間大きな音量で歌うことを要求されますが、しっかり歌って欲しい場面です。
Lv.2 mfはsubito感を持って
”いつのひか~”のmfではsubito(スビト/急に)の感じが欲しいところです。
直前の音量がpiu fのためハッとさせるような音量変化を作れるとアピールポイントになるかと思います。
ただ小さくするのではなく、祈りの気持ちを持って、優しく丁寧に歌いえると良いと思います。
Lv.2 ラストの和音を決めよう
一曲を締めくくる最後の和音を確認しておきましょう。
お互いの音、ピアノパートも良く聴きあって声が溶け合うように歌いましょう。
- 第5音…ファ(男声)
- 第3音…レ(ソプラノ)
- 根音…シ♭(アルト/(男声))
『地球星歌』指揮のポイント
『地球星歌』は6/8拍子(はちぶんのろくびょうし)という拍子になっています。
1小節の中に8分音符が6つあるという意味です。
この曲のテンポ(付点4分音符=ca.66)だと6拍子を一つ一つ振るのは適しませんので、8分音符3つを一つにまとめて2拍子で振ることになります。
曲の最終盤、98小節目からはrit.(リタルダンド/だんだん遅く)がありますのでここもチェックしておきましょう。
『地球星歌』伴奏のポイント
ピアノ伴奏はテンポをキープして、あまり揺らさないように弾くと、合唱は6/8拍子にノリやすいのではないかと思います。
ピアノパートの8分音符の動きが、合唱の休符などを合わせる際の大切な手掛かりとなります。
こちらの記事合唱のピアノ伴奏3つのコツ【歌い手と上手にアンサンブルする方法】もあわせてご覧ください。
まとめ:合唱曲『地球星歌』歌い方のコツ/指揮・伴奏のポイント
合唱曲『地球星歌』を解説させていただきました。
コンクールの練習をされている方はこちらの記事【まとめ】合唱コンクール完全攻略ロードマップ|3ステップで解説もあわせてご覧ください。