こんな疑問に答えます。両者の違いは以下の通り。
- 固定ド(音名)唱法…多くの人が使っている普通の「ドレミ」
- 移動ド(階名)唱法…調によって場所が変わる「ドレミ」
これだけの説明ではピンとこないと思いますので、この記事では初心者の方にも分かりやすいよう詳しく説明したいと思います。
また、固定ド・移動ドを比較したときのメリット・デメリットについても解説します。
これらはどちらが優れているというものではなく、取り組んでいる曲や個人の適性によって使い分けるべきものです。
もくじ
移動ド唱法とは【調によって場所が変わる「ドレミ」】
移動ドの意味は「移動するド」ということ。調によって「ド」の場所が変わるということです。
ただ、そう言われても難しいと思うので段階を追って解説します。
音の高さの表し方には2つある【音名と階名】
実は音の高さの言い表し方には2つの方法があります。
- 音名(おんめい)=固定ド
- 階名(かいめい)=移動ド
音名というのは普段多くの人が使っている「ドレミファソラシド」です。「普通のドレミ」と言っても良いと思います。
例えば楽譜に「ド」の音が書いてあったらピアノの決まった場所を弾きますよね。
この場合「ド」が固定されているということで固定ドとなります。
移動ドでは「ド」が移動する
移動ドでは「ド」が移動する、と書きましたがこれはどういうことでしょうか。
実際に聞いてみると良く分かると思います。
まずはこちら。
「ドレミファソラシド」に聞こえると思います。
次にこちらを聴いてみてください。
全体的に音が高くなったものの、こちらも「ドレミファソラシド」のような感じに聞こえますよね。これが「ド」が移動したということです。
階名は音どうしの関係を表す
先ほどの2つの例では音の高さが違うものの、どちらも音の並び方は「ドレミファソラシド」の関係と同じになっています。
これの音どうしの関係を表すのが階名と言っても良いと思います。
音名と階名をまとめると次のようになります。
音名(ピアノで弾く場所) | ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド |
---|---|
階名(音の役割) | ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド |
音名(ピアノで弾く場所) | ソ ラ シ ド レ ミ ファ♯ ソ |
---|---|
階名(音の役割) | ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド |
移動ドで歌うメリット・デメリット
ここまで来て「なんかややこしいな…意味あるの?」と思ったかもしれません。
ですが移動ド唱法には難しさを補って余りあるメリットがあります。
メリット【5つ紹介】
冒頭にも書きましたが、移動ドのメリットを説明します。
移動ドで歌うことでこれらの力・感覚を見につけることができます。
- 音程(音と音との離れ具合)の感覚
- 調性の感覚(その調の中での音の役割・性格など)
- ハモる感覚
- 初見の楽譜を歌う力
- より深く音楽を読み取る力
また、絶対音感と違って後からでも練習すれば身につけることができるというのも良いところです。
デメリット【3つ】
デメリットも3つ挙げてみます。
- 概念が理解しにくい(難しい)
- 学んでから効果が得られるまでに時間が掛かる
- 絶対音感がある人は(かなり)なじみにくい
弱点はやはり「慣れるまでの大変さ」かと思います。
できるようになるとメリットも感じやすいのですが、それまではどうしても不自由な感じを受けるかもしれません。
やってみてできないと「私はセンスや音感が無いのかな…」と落ち込んでしまうかもしれませんが心配は無用です。
むしろ、
- 「音感がないな…」
- 「音を取るのが遅いな…」
と思っている人にこそ取り組んで欲しいと思います。
移動ドと固定ドの違い
移動ドと固定ドを比較した場合のメリット・デメリットをまとめます。
メリット | デメリット | |
移動ド (階名) |
|
|
固定ド (音名) |
|
|
移動ド・固定ドはどっちを使うべき?【使い分け方法】
冒頭でも書きましたが、移動ド・固定ドはどちらが優れているというものではありません。
それぞれにメリット・デメリットがありましたね。
ベストなのは両方使えることです。
ただ、それが難しい人も多いので、そんなときはどう考えれば良いか、おすすめの方法を解説します。
ベストなパターン…両方使える二刀流
ベストなパターンとしては両方使う、いわば二刀流です。
絶対音感がある人はこれができる可能性があるのでぜひ挑戦してみてください。
- 調性のはっきりした曲、音程が簡単なとき…移動ド
- 調性のない曲、音程が非常に難しいとき…固定ド
このように使い分けるとかなり効果的です。
【おすすめ】絶対音感がない人…移動ドをしっかりマスター
絶対音感を大人になってから身につけようとするのは非常に困難です。
しかし、移動ドは練習すれば後からでも身につけることができます。
という訳で「音感がないな…」と自信がない人は移動ドに取り組んでセンスを磨きましょう。
音取りが苦手という人も多いと思いますが、それを克服できたら大きいですよね。
- 普段はできるだけ移動ド
- どうしても音が取れないとき→ピアノなどを使う
このように使い分けると感覚をどんどん鍛えていくことができます。
移動ドがどうしても気持ち悪い…無理して「ドレミ」を使わなくてもOK
「どうしても気持ち悪い…」という人もいると思います。
絶対音感を持っている人に多いです。
そう感じてしまう理由は「音名のドレミ」と「階名のドレミ」が同じ言葉なのに違う音を表していて食い違うからだと思います。
慣れの部分もあるので食わず嫌いは良くないですが、どうしても受け付けない場合は「ドレミ」を使わなくても良いのではないかと思います。
移動ドの本質は音程や音の持つキャラクターが自分の感覚が結びつくことです。
それができれば「ドレミ」と歌わなくても構わないはず。
「ドレミ」と読む以外に次のような方法が考えられます。
- 数字譜(主音を1、属音を5などと表す)
- ハンドサイン(音のキャラクターを手の形で表す)
このように間に「ドレミ」という言葉を挟まなければ違和感なく使えるようになるのでは無いかと思います。
まとめ:移動ドはメリットがたくさん。状況によって使い分けよう
移動ド(階名)について振り返りましょう。
- 固定ド(音名)唱法…多くの人が使っている普通の「ドレミ」
- 移動ド(階名)唱法…調によって場所が変わる「ドレミ」
移動ドでは次のような力・感覚が養えるのがメリットです。非常に魅力的な手法です。
- 音程(音と音との離れ具合)の感覚
- 調性の感覚(その調の中での音の役割・性格など)
- ハモる感覚
- 初見の楽譜を歌う力
- より深く音楽を読み取る力
移動ドと固定ドはどちらがより優れているというものではなく、使い分けが肝心です。
絶対音感がなくてもできるおすすめの使い分け方法は次の通り。
- 普段はできるだけ移動ド
- どうしても音が取れないとき→ピアノなどを使う
移動ドは難しくて敬遠されることも多いですが、理解できると音楽の世界をいっそう広げることに繋がります。
ぜひ挑戦してみてください。
移動ドに関しては書籍『正しいドレミの歌い方 楽器がなくても楽譜は読める!』が非常が参考になります。【やりたいこと・悩み別】おすすめ記事・本・アイテム・サービス一覧で紹介していますので、ぜひ手にとって見てください。