こんな疑問に答えます。
指揮をするのはいろいろと難しいですよね。曲の始め方ひとつ取っても分からないことが多いと思います。
そんな方に向けて、この記事では曲の始め方を次の3パターンに分けて詳しく解説したいと思います。
- A.1拍目から曲が始まる場合
- B.アウフタクト(表拍)から曲が始まる場合
- C.アウフタクト(裏拍)から曲が始まる場合
これら3つのパターンを知っておくとほとんどの曲に対応できるようになります。
初心者向けバージョンと通常バージョンを解説します。
まずは初心者バージョンを練習し、スムーズにできるようになったら通常バージョンをに取り組むとレベルアップできるはずです。
通常バージョンをマスターできると、カッコ良く引き締まった印象で振り始めることができます。
ぜひ最後までご覧ください。
もくじ
パターンA.1拍目から曲が始まる場合【跳ね上げ】
まずはパターンAです。1拍目から曲が始まる場合で、最も多いパターンです。
途中、非常に重要なポイントにも触れていますのでお見逃しなく。
4拍子1拍目開始
4拍子の曲で1拍目から曲が始まる場合を考えてみましょう。
合唱の場合はピアノ伴奏からスタートすることが多いですよね。
- 『Let’s Search for Tomorrow』
- 『旅立ちの時~Asian Dream Song~』
- 『決意』
振り方の手順【初心者バージョン】
まずは初心者バージョンの手順は次の通りになります。
数を数えながら小さく振る方法です。
- 基本位置に構える
- 数え方は「イチ、二―、サン、ハイ!」
- 「イチ、二―、サン」でなるべく小さく振る
- 「ハイ!」と同時に腕を大きく振り上げる
- 曲の1拍目を振って示す
慣れてきたら「イチ、二―、サン」は心の中で数えるようにし、「ハイ!」の代わりにブレス(息継ぎ)を取るようにしましょう。
振り方の手順【通常バージョン】
続いては通常バージョンです。初心者バージョンがスムーズにできるようになったらトライしてみましょう。
- 基本位置に構える。カウントのため手首を立てる(※)
- 数え方は「サン、ハイ!」
- 「サン」で手首を使ってカウントする(※)
- 「ハイ!」と同時に腕を振り上げる
- 曲の1拍目を振って示す
[※カウントの方法]
- 構えの位置で手首を上に曲げ、立てる
- 「サン」と同時に手首を伸ばし、前方へ向ける
初心者バージョンと通常バージョンの違い【重要】
初心者バージョンと通常バージョンの違いを説明しておきます。
これを知っておくと指揮の動きの理解がより深まると思いますのでぜひお読みください。
違い1.予備拍を少なくした
初心者バージョンでは「イチ、二―、サン、ハイ!」と4拍分数えていましたが、通常バージョンでは「イチ、二―」を省略しました。
「イチ、二―、サン、ハイ!」のように曲が始まる前に数える拍を「予備拍」と言います。
この予備拍が多すぎると無駄な動きが増えてしまうので、できるだけ短い方が良いのです。
違い2.予備拍は振らずに手首でカウント
初心者バージョンでは「イチ、二―、サン」で小さく振ることで予備拍を示しましたが、ここでは手首を使ったカウントを行います。
小さく振る場合には、それが余分な動きとなりプレイヤーを迷わせてしまいます。
そこで手首だけを使ってカウントし、最小限の動きで予備拍を示します。
この場合、予備拍では腕は動かさずに「ハイ!」でいきなり振り上げることになります。
この動きを「跳ね上げ」と言います。
違い3.跳ね上げの大小を調節できるようにした
初心者バージョンでは曲の開始を分かりやすくするために大きく振り上げました。
普通バージョンでは「大きく」という指定はしていません。
p(ピアノ/小さく)などで始まる場合には小さく、f(フォルテ/強く)などで始まる場合には大きくという風に振り分けましょう。
手首によるカウントを使っているので、小さく振り始めても分かりやすくなっています。
3拍子の場合
ここまでは4拍子を例に解説してきましたが、3拍子の場合に触れておきます。
数え方が変わりますが、動きは変わりません。
- 『はじまり』
振り方の手順【初心者バージョン】
まずは初心者バージョンの手順は次の通りになります。
- 基本位置に構える
- 数え方は「イチ、二―、ハイ!」
- 「イチ、二―」でなるべく小さく振る
- 「ハイ!」と同時に腕を大きく振り上げる
- 曲の1拍目を振って示す
3拍子では1小節が3拍分となりますので数え方が変わってきます。
3拍子では1小節のまとまりが「イチ、二―、サン」ですので、「サン」のところで「ハイ!」を言うのが正解です。
振り方の手順【通常バージョン】
続いては通常バージョンです。初心者バージョンがスムーズにできるようになったらトライしてみましょう。
- 基本位置に構える。カウントのため手首を立てる(※)
- 数え方は「二―、ハイ!」
- 「二―」で手首を使ってカウントする(※)
- 「ハイ!」と同時に腕を振り上げる
- 曲の1拍目を振って示す
[※カウントの方法]
- 構えの位置で手首を上に曲げ、立てる
- 「二―」と同時に手首を伸ばし、前方へ向ける
パターンB.アウフタクト(表拍)から開始【数え方に注意】
アウフタクト(弱起)は小節からはみ出したフレーズのことです。楽譜を見ると分かりやすいと思います。
アウフタクトにはいろいろなパターンが考えられますが、よく出てくる4拍子4拍目開始を例に解説します。
4拍子の4拍目開始
最初の小節は4分音符が1つはみ出していますよね。これがアウフタクトです。
この場合は4拍目から曲が始まっていることになります。
実際の曲では8分音符のときも多いです。
- 『聞こえる』
- 『あなたへ―旅立ちに寄せるメッセージ』
- 『未来へ』
振り方の手順【初心者バージョン】
まずは初心者バージョンです。
- 基本位置に構える
- 数え方は「イチ、二―、ハイ!」
- 「イチ、二―」はなるべく小さく振る
- 「ハイ!」と同時に腕を大きく振り上げる
- 曲の4拍目を振って示す
4拍目から曲が始まりますので、その1拍前で「ハイ!」を言います。
つまり「イチ、二―、サン!」と言う代わりに「イチ、二―、ハイ!」となる訳です。
振り方の手順【通常バージョン】
- 基本位置に構える。カウントのため手首を立てる(※)
- 数え方は「二―、ハイ!」
- 「二―」で手首を使ってカウントする(※)
- 「ハイ!」と同時に腕を振り上げる
- 曲の4拍目を振って示す
[※カウントの方法]
- 構えの位置で手首を上に曲げ、立てる
- 「二―」と同時に手首を伸ばし、前方へ向ける
初心者バージョンでは「イチ、二―、ハイ!」だったところ、予備拍をより短くし、カウントを使います。
パターンC.アウフタクト(裏拍)開始【引っ掛け】
最後にアウフタクトが裏拍になっているパターンを解説します。
難しいですがよく出てくるのでしっかりマスターしましょう。
4拍子の4拍目裏開始
アウフタクトが8分音符になっているパターンです。
この場合は4拍目の裏拍(=8分休符+8分音符)から曲が始まることになります。
実際の曲では16分音符のときも多いです。
- 『天の川』
- 『マイバラード』
- 『春に』
振り方の手順【初心者バージョン】
まずは初心者バージョンです。
- 基本位置に構える
- 数え方は「イチ、二―、サン、ハイ!」
- 「イチ、二―、サン」ではなるべく小さく振る
- 「ハイ!」と短く言うと同時に腕を素早く振り上げる
- 4拍目裏の音を感じながら続く1拍目を振って示す
アンダーラインの部分がこれまでとの違いとなっています。
裏拍から曲が始まるので、腕を上げたところで音が出ることに注意しましょう。
言い換えると「ハイ!」と次の「イチ」の間で音が出ます。
振り方の手順【通常バージョン】
- 基本位置に構える。カウントのため手首を立てる(※)
- 数え方は「サン、ハイ!」
- 「サン」で手首を使ってカウントする(※)
- 「ハイ!」と短く言うと同時に腕を素早く振り上げる
- 4拍目裏の音を感じながら続く1拍目を振って示す
[※カウントの方法]
- 構えの位置で手首を上に曲げ、立てる
- 「サン」と同時に手首を伸ばし、前方へ向ける
表拍開始・裏拍開始の違い【重要】
表拍開始と裏拍開始の振り方の違いを説明しておきます。
裏拍開始の場合、「ハイ!」の後すぐに8分音符を引き出す必要があります。
そのための工夫が表拍との違いです。
- 「ハイ!」と短く言う(8分音符の間をつくるため)
- 「跳ね上げ」よりも素早く腕を引き上げる
ここでもし「ハーイ」と間延びした感じで言ったり、腕の動きがゆったりしていると、裏拍から弾き始める/歌い始めるタイミングが無くなってしまいます。
このように振るテクニックを「引掛け(ひっかけ)」と言います。
「ハイ!」になれたらブレスを取るようにしますが、ブレスも瞬間的に短く吸うと裏拍を引き出しやすくなります。
曲の始め方全体のポイント【構えた視線を集める】
最後に全体的なのポイントについて触れておきます。
- 構えた後きちんと制止する
- 腕~手にプレイヤー(歌う側)の視線を集める
- 全体の集中力が十分に高まるのを待つ
曲を開始する際には構えが重要です。
ここを適当にすると曲の開始で失敗してしまいます。
まとめ:曲の始め方は曲の途中のフレーズでも使える
曲の開始方法について3つのパターンで解説してきました。
- A.1拍目から曲が始まる場合
- B.アウフタクト(表拍)から曲が始まる場合
- C.アウフタクト(裏拍)から曲が始まる場合
これらを知っておけば、ほとんどどんな曲でも大丈夫だと思います。
曲の開始は、曲の途中から始まるフレーズに対しても同じように使えます。
- 新しくパートが入ってきたとき
- 合唱→ピアノの間奏
- ピアノの間奏→合唱
これらのときに使ってみてください。
指揮に関するコツはまだまだあります。こちらの記事(【まとめ】初心者のための指揮法完全ガイド|合唱指揮者が基礎から解説)でまとめていますのであわせてご覧ください。