合唱曲紹介・解説

『木馬』(大岡信/木下牧子)を解説|メランコリックな三拍子の小品

こんにちは!

今回は大岡信作詩・木下牧子作曲、混声合唱組曲《方舟》より『木馬』の紹介です。

曲調や難易度、曲の魅力・鑑賞のポイント、演奏・練習のポイントなどついて解説します!

この曲を知らなかった人、これから聴いてみたい人、これから歌ってみたい人のお役に立てば幸いです。

それではどうぞ!

『木馬』ってどんな曲?

まずは『木馬』という曲について、「この曲知らない!」「初めて知った!」という人のために、作詩者・作曲者、難易度、曲調についてざっくりと紹介します。

作詩は大岡信、作曲は木下牧子

『木馬』は全4曲からなる混声合唱組曲《方舟》の2曲目。

作詩は大岡信、作曲は木下牧子になります。

難易度は…中級~上級

『木馬』の難易度は、中級~上級程度です。

楽譜の前書きによれば、

技術的に特に捻ったところはなく、歌い易くまとめ易い曲であると言えます。

とのことですが、そこまで易しくはないと思います(笑)。

不安定な和音や転調の多さ、divisiの多さ、音域など技術的な要求は高めです。

確かに1曲目の『水底吹笛』などと比べれば曲も短いので構成感をまとめ易くはあるかもしれませんね。

曲調は…メランコリックで幻想的な曲

『木馬』はメランコリックで幻想的な曲

重たい色彩の和声と気だるい3拍子が特徴的です。

『木馬』の魅力について語る!

続いては『木馬』という曲を、「聴いたことある!」「これから聴く!」という人に向けて、曲の魅力や鑑賞のポイントについて語っていきたいと思います。

前奏部:ただ暗いのとは違う、滲むような闇の色

『木馬』は♭3つの短調、ハ短調で暗い調です。

しかし前奏から漂う雰囲気は、ただ暗いだけでなく滲むような闇の色を感じます。

本来ハ短調にはないコード、D♭/Cや、B♭m7、G♭などが使われていることがその要因かも。

(エピローグ部分のD♭/Fなんかはナポリの6っぽいですけどね。)

特にG♭→G7という歌い始め直前の多少強引な進行は、全体的な不安定感に寄与しています。

幻想的で不安定な転調部分

2回目の繰り返しが始まってしばらくすると、一時的に#系の調に転調する部分が現れます。

元の調であるハ短調からするとかなり遠隔にある和音や、セブンスのように減音程(D7だったらFis音とC音の関係)を含む和音が多用されることで幻想的な雰囲気となっています。

またこの部分では、ピアノパートが奏する和音の切り替わりのタイミングを1拍分遅らせることでビート感がずらされています。

これにより一層不安定感が引き立っています。

漠とした中の金色の輝き

クライマックス部分では他の部分と対照的に安定したコード進行が用いられています。

全パートのタテが揃うtuttiでのffは、全体的に漠とした雰囲気のこの曲の中で、刹那的な輝きを見せる部分です。

まとめ:『木馬』(大岡信/木下牧子)

それではまとめです!

《方舟》より『木馬』でした。

メランコリックな気だるい三拍子が特徴的な曲でした。

巧みな和音の使い方で、幻想的な雰囲気を醸し出しています。

クライマックスで見せる刹那的な輝きにも注目です。

今回はここまで。お読みいただきありがとうございました!