【同声3部合唱】《歌声はどこにいくの》練習・演奏のポイント

《歌声はどこにいくの》(作詩:みなづきみのり/作曲:松下耕)は小学生のコンクールなどで人気のレパートリーです。
明るく生き生きとした歌い出しから、繊細なハーモニー、ダブルコーラスによる広がりまで、さまざまな表情を持った作品です。
この記事では、練習・演奏のポイントを実践的な視点からまとめました。
日々の練習にお役立ていただければ幸いです。
もくじ
《歌声はどこにいくの》の練習番号
練習を始める前に、楽譜に小節数および練習番号(【A】【B】…)を書き込んでおきましょう。
小節数と練習番号をつけることで、練習の際にどこから始めるかをスムーズに伝えることができますし、それだけでなく、場面のつながりを整理することができるようにもなります。
今回は次のようにつけました。
- 【前奏】…1小節~
- 【A】…9小節~ ”(うたごえ)は”
- 【A’】…17小節~ ”あのやまこえて”
- 【B】…29小節~ ”うたごえは”
- 【C】…37小節~ ”(わた)しの”
- 【D】…45小節~ ”いのちの”
- 【E】…49小節~ ”(うたごえ)は”
- 【E’】…57小節~ ”あなたのむねの”
- 【F】…73小節~ ”うたはきえない”
- 【G】…81小節~ ”世界のいちぶに”
- 【H】…85小節~ ”(あらそい)を”
- 【H’】…93小節~ ”いのりやねがいに”
- 【I】…105小節~ ”(うた)ごえは”
《歌声はどこにいくの》練習・演奏のポイント
上で設定した練習番号に沿って解説していきます。
ぜひ楽譜に書き込みながら読み進めてみてください。
【A】…9小節~ ”(うたごえ)は”
生き生きと歌おう
【A】に書かれているAllegrettoは「やや速く」、 con brioは「生き生きと、活気をもって」という意味。
快速なテンポに乗って、明るい音色で歌いましょう。
ただし、アクセントがついたように固くならないほうがよいでしょう。
跳躍音程に注意しよう
【A】のフレーズで注意したいのは、離れた音へ跳ぶ「跳躍音程」です。
たとえば”うたごえは”と伸ばしたラの音から”どこに”の最初の音であるレの音への跳躍、”わたしのうたは”でのドからドへのオクターブの跳躍などが挙げられます。
高い音へ上がる際は、その音をあらかじめ高めにイメージし、体を十分に使って歌うことが大切です。
ユニゾンを磨こう
【A】のフレーズの特徴は、ユニゾンであること。つまり、全員が同じ音を歌います。
歌い手全員で音がひとつにぴったりとまとまるように、よりいっそう耳を使うことを意識してください。
一体感と透明感のある響きを目指しましょう。
【A’】…17小節~ ”あのやまこえて”
ここからハモる
【A】のフレーズがユニゾンだったのに対し、【A’】からはパートに分かれてハモります。
こういったところでクリアにハモれると、聴いている人にハッとするような印象を与えることができます。
”あのやまこえて”では、レ・ファ・ラによる短調の和音(=Dm)となっています。
”て”で伸ばしてみて響きを確認する練習もしてみましょう。
pを印象的に
音量がpとなることも【A】との大きな違いです。
mfからpへと音量が大きく変わるため、音楽の表情もがらりと変化します。このコントラストははっきりと出したいところです。
ここは思い切って小さくしてみてもよいでしょう。
ただし、言葉が埋もれてしまわないよう、しっかり発音することも忘れないようにしましょう。
半音進行の効果
Ⅲパートの音に注目してみましょう。
”あのやまこえて あのうみこえて あさひののぼるばしょまでいって あしたの”では、レ → ド♯ → ド♮ → シ♮ → シ♭ と、半音ずつ音が下がっていくことが分かると思います。
これによってハーモニーに新たな彩りや緊張感が生まれているのですね。
特に臨時記号のあるド♯ やシ♮の音は正確に歌えるようにしておきましょう。
【B】…29小節~ ”うたごえは”
繊細なニュアンスで
【B】のフレーズはpから始まります。
【A’】もpではありましたが、con brioの「生き生きとして」の音楽の中でのpでした。
【B】ではテンポこそ変わりませんが、ピアノパートの音域やコード進行が変わることで繊細なニュアンスが出てきています。
そういった音楽の変化を感じながら、歌い方に反映できるとよいと思います。
3パートそろうときのハーモニー
【B】の最初はⅠパートだけが歌い出し、遅れてⅡとⅢのパートが加わるという構造になっています。
31小節の1拍目など、3パートがそろうところはポイントです。
それぞれのパートが異なる音で歌うことでファ・ラ・ドの長調の和音(=F)を形作っています。
途中から入るⅡ・Ⅲパートは、入った瞬間から和音の中に自然に溶け込めるよう、音のイメージを思い浮かべて準備しておきましょう。
33小節も同様です。
【C】…37小節~ ”(わた)しの”
感じ方を切り替えて
【C】からはMeno mosso(メノ・モッソ/今までより少し遅く)となり、三拍子に切り替わります。
これまでの四拍子と比べると、より優美で揺れるような雰囲気になります。
リズムの感じ方が大きく変わりますので、しっかり切り替えることが大切です。
言葉のズレを活かして
41小節~では、3つのパートがそれぞれの歌詩をずれて歌います。
それぞれの言葉がタイミングよく鳴り、きらめくように聴こえると、この場面の魅力が引き立ちます。
他のパートの動きもよく聴きながら、遅れないように入るのがコツになります。
和音の変化を感じて
【C】の8小節間は、コード進行が複雑で、その分、各パートの音も難しくなっているので注意が必要です。
少しテンポを落としてもよいので、確実に音を取っておきましょう。
また、ピアノパートだけを聴いてみて、どのようなコード進行になっているのかつかんでおくのもよい練習になると思います。
【D】…45小節~ ”いのちの”
話すように
【D】からはAndantino parlandoとなります。
parlandoは「話すように、語るように」という意味の記号で、メッセージを大切に語ってほしい、という作曲者の意図が感じられます。
そのためここでは、言葉を丁寧に、愛情をもって歌いましょう。
【E】…49小節~ ”(うたごえ)は”
メロディー意識を持って
【E】からは再び【A】のテンポに戻ります。con brioになるので生き生きと。
メロディーを担当するのはⅡとⅢのパートになります。
【A】と比べるとパート数が減りますので、自分たちがメロディーを担当しているという意識をもって、積極的に歌いましょう。
カウンターメロディーを活かそう
Ⅰパートはメインのメロディーに対するカウンターメロディーを歌います。
【A】と異なる部分ですので、しっかりアピールしましょう。
2つのメロディーが絡み合うことで音楽に立体感が生まれます。
【E’】…57小節~ ”あなたのむねの”
ハーモニーの色と強弱のコントラスト
【E’】は【A’】に対応する場面ですが、63~64小節は【A’】にはなかったフレーズです。
ここでのポイントは、強弱とハーモニーの違いです。
63小節でmfへいったん音量を落とすこと、そして♭系の響きになることでハーモニーの色合いが変化することを意識しましょう。
そうすることで、65小節でのfがより引き立ちます。
【F】…73小節~ ”うたはきえない”
呼び交わすダブルコーラス、音のこだま
【F】は、この曲の中でも特に難しい場面です。
ここでは、3パート×2グループによる二群合唱(ダブルコーラス)になっています。
人数が足りない場合には、楽譜の最初に注記されている方法も検討してみてください。
このような形になっているのは、2つのグループがお互いに呼び交わし、音のこだまのように響き合う効果を生み出すためだと考えられます。
”なみのようになってひびき”という歌詩ですから、まるで波が寄せては返すような場面をイメージするとよいでしょう。
合流地点に集中
最初は1群、2群が交互に歌う形で進んでいきますが、79小節の”たびをする”で合流します。
ここでタイミングがピタッと合い、一体感が出るように気をつけましょう。
2つのグループが合流することで、ぐっと迫力が増す場面です。
【G】…81小節~ ”世界のいちぶに”
動きを持って
【G】ではModerato con motoとなっています。Moderatoは「中くらいの速さで」、con motoは「動きをもって」という意味です。
テンポに乗って、積極的に音楽を前に進めることを意識してみましょう。
ピアノ伴奏もよく聴いて
【G】の部分は、【C】と同じくコード進行が難しいフレーズとなっています。
ここでも、一つひとつの音をしっかり確認しておくことが大切です。
また、ピアノパートをよく聴いて、和音の進み方をつかんでおくことも有効です。
【H】…85小節~ ”(あらそい)を”
入りの音をクリアに、転調注意
【H】のアウフタクトは、次に触れる転調の関係で少し音が取りにくくなっています。
転調を印象的に聴かせるためにも、このユニゾンは正確に、クリアに歌いたいところです。
さらなるエネルギーで!
【H】からは3回目のAllegretto con brioとなります。
【A】や【E】と異なるのは、ヘ長調から嬰ヘ長調へ変わっていること、そして音量がmfからfになっていることです。
半音高くなることで、音楽にさらに強いエネルギーが生まれます。
”ゆうき”でハーモニーを広げよう
【A】ではメロディーがすべてユニゾンだったのに対し、【H】では89小節の”ゆうき”からハモります。
ここでパッと響きが華やかに広がることで、聴いている人にとっても非常に印象的なフレーズになります。
「ここでハモる!」ということはぜひチェックしておいてほしいと思います。
【H’】…93小節~ ”いのりやねがいに”
音量の違いに注意、力強さをなくさないように
【H’】は【A’】に対応するフレーズですが、音量指示が異なっていることに注意しましょう。
mfとなっていますので、直前の【H】と比べれば少し小さくなります。
ただし、あくまでf系の音楽になるので、力強さを保ったまま音量を絞る場面と考えるとよいでしょう。
むしろ、”いのり”、”ねがい”といった歌詩に込められた思いが、より強くなっていくようなイメージで歌いたいところです。
どんどんパワーアップ
94小節からcresc.がありますので、じわじわと盛り上げていき、97小節でfとなります。
その後、さらにクレッシェンドしてpiù fへ、さらにffへと段階的にパワーアップさせていきましょう。
このffが、曲全体を通じてのクライマックスになります。曲全体の構成を考えながら、ここに向かってエネルギーを積み上げていくことが大切です。
特に、テヌートがつけられた”いるんだよ”は、作曲者が強調したかった大切な言葉として読み取ることができます。
一つひとつの音に重みを乗せるように、力強く歌いましょう。
【I】…105小節~ ”(うた)ごえは”
ハーモニー、div.注意
【I】からはエンディングの場面となります。
106小節ではⅡパートにdiv.(同じパートの中でさらに音が分かれることを表す記号)があります。
音も難しくなりますので、Ⅱパートはあらかじめ音程をしっかり確認しておきましょう。
sostenutoでたっぷりと
また、106小節にはmolto riten.とsostenutoが書かれています。
molto riten.は「いっそうだんだん遅く」、sostenutoは「音を十分に保って」という意味です。
ここではテンポをしっかりゆるめながら、たっぷりとした音楽を作り、最後の盛り上がりを演出しましょう。
同じ音をそろえて、響きを広げよう
110小節は全パートが同じファ♯の音を歌います。
ラストということもあり、特にピッタリとそろえることが大切です。
そのうえで、声がふわっと広がっていくようなイメージを持てると、曲の最後にふさわしい余韻が生まれます。
まとめ
《歌声はどこにいくの》は、明るく生き生きとしたユニゾンから、繊細なハーモニー、三拍子の優美な表情、そしてダブルコーラスによる広がりまで、さまざまな音楽の変化が盛り込まれた作品です。
練習では、跳躍音程やユニゾンの精度、ハーモニーの響き、強弱のコントラストなどを丁寧に確認していきましょう。
また、歌詩の内容に寄り添いながら、歌声が遠くへ広がっていくようなイメージを持つことで、より説得力のある演奏につながります。
本記事が、皆さまの練習や演奏づくりの参考になれば幸いです。
何か分からない点などありましたら、お問い合わせからお気軽にご連絡ください。
この度はリクエストいただき、ありがとうございました。



