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《花》は、森山直太朗さんの楽曲を榎本潤さんが混声四部合唱に編曲した作品です。

編曲者の榎本潤さんによれば、“原曲の持つメッセージ性を大切にし、混声合唱ならではのハーモニーの厚みや華やかさ、そして何よりも説得力のある演奏を実現できるように心がけ”て編曲されたとのこと。

この記事では、カワイ出版の混声四部版《花》をもとに、練習・演奏のポイントを実践的な視点から詳しく解説していきます。

ハーモニーの作り方、言葉の表現、アーティキュレーション、クライマックスの作り方など、日々の練習に役立つポイントをまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。

お役に立てば幸いです。

《花》(作詞:御徒町凧/作曲:森山 直太朗/編曲:榎本潤/カワイ出版)をもとに執筆し、本文中で歌詞などを引用する場合には「””」で示しています。

《花》練習・演奏のポイント

楽譜に記載の練習番号に沿って解説していきます。

ぜひ楽譜に書き込みながら読み進めてみてください。

【冒頭】1小節~ “はなのように”

一つひとつのハーモニーを確認して

【冒頭】のフレーズは、男声3パートによる男声合唱です。

アカペラになりますので、ピアノパートによる伴奏の支えはありません。そのため、合唱だけでも安定したハーモニーを奏でられるよう、十分に確認しておきましょう。

特に練習の初期段階で注意しておきたいのは、各フレーズの始まりの音・終わりの音です。

具体的には、1小節の”なのように”の”は”や、2小節の”はなのよう”の”に”、7小節の”み”などがチェックポイントになると思います。

楽譜上で音符が短いところは、そこで長く伸ばしてみると、ハーモニーが合っているのかそうでないのかよく分かります。

練習が進んできたら、フレーズの途中、例えば1小節の”はなのように”の”よ”などでも立ち止まって確認してみましょう。

言葉の抑揚に沿った表現を

【冒頭】では数多くのクレッシェンド、デクレッシェンドが書かれていますが、表現する際は少し注意が必要です。

このような細かなクレッシェンド・デクレッシェンドは、楽譜に書いてあるとおりに音量を増減させようとすると、メロディーの流れを損ない、不自然な印象になってしまいやすいからです。

このようなクレッシェンド・デクレッシェンドは、言葉の抑揚の表現を補助するような意味合いで強弱が書かれていると捉えるとうまくいきやすいです。

メロディーの音の高さを無視して、リズムとフレーズだけで読む、「フレーズ読み」という練習をしてみると、これらの強弱の意図が汲みやすいかと思います。

また、まずは歌詞を音読してみることも有効な練習になると思います。

【A】8小節~ “(だい)ちをつよく”

力強さと繊細さを兼ね備えた表現を

ここでは”だいちをつよく”に付けられたアクセントや、”ふみしめて”に付けられたテヌートの記号をしっかり表現してほしいと思います。

アクセントは「目立たせて」という意味になりますが、”だいち”や”つよく”といった言葉のニュアンスを意識して、力強く表現するとよいでしょう。アクセントを意識しすぎて荒っぽい歌い方になってしまわないように気をつけてください。

テヌートは「音の長さを十分に保って」という説明がされることが多いですが、ここでは音符一つひとつに重みを乗せて、言葉を噛みしめるように歌うと、歌詞の意味を踏まえた表現になると思います。

10小節の”はな”のテヌートは、h子音、a母音を丁寧に歌うことで、タイトルでもある”はな”を繊細に表現できると思います。

細かい音符がずれないように

11~12小節ではrit.(リタルダンド/だんだん遅く)があります。

細かい16分音符がずれないように気をつけましょう。

指揮法的には分割する選択肢も大いにあるでしょう。

【B】13小節~ “Uh”

ヴォカリーズとアーティキュレーションの違いを活かして

【B】の女声合唱では、歌詞として”uh”や”lu”、”la”とヴォカリーズに変化がつけられています。

また、スラーが付けられているところ、スタッカートがつけられているところ、何も書かれていないところと、アーティキュレーションにも違いがあります。

これらの違いをぜひ演奏に活かしましょう。

“uh”の部分は基本通りレガートに、ハーモニーを充実させて。

“lu”は、スタッカートを活かしてリズミカルに、生き生きと歌いましょう。

“lu”から”la”に変わるところでは、母音が明るく広がるようなイメージを持って。

【C】17小節~ “もしもあなたが”

言葉を語るように

【C】の音量はpです。大きく盛り上がる場面ではなく、むしろ語りかけるように歌いたい場面です。

語頭がかならずしも表拍にないのでその点は意識しておきましょう。

例えば”もしもあなたが”というフレーズでは、裏拍の”あなた”をしっかり歌いにいくとよいでしょう。

ただし、この時レガートさが失われないよう注意してください。

“なにかにふかくきずついたなら”も同様、”ふかく”が裏拍になりますので、意識するとよいいと思います。

ヴォカリーズはアカペラで確認を

ソプラノのメロディーに対し、他の3パートはハーモニーの伴奏パートとなります。

練習の際はピアノパートを外してアカペラで和音を確認しておいてほしいと思います。

時間はかかりますが、一つひとつの響きを味わい、確かめていくことで全体的なハーモニーが整ってきます。

【D】27小節~ (間奏)

横の流れを大切に

【D】からはテンポが少し上がっていますので、横の流れを大切にしましょう。

これまでのしっとりとした雰囲気から、少しノリ良くなるようなイメージで。

合唱への受け渡しを意識して

30小節にはデクレッシェンドがあり、これによって主役がピアノから合唱に引き継がれます。

【E】で合唱が歌い出す最初の響きをイメージして、それを呼び込むように弾いてみましょう。

【E】31小節~ “もしもあなたの”

入りの和音を正確に

【E】は合唱の4パートがtutti(全員で)で入ります。

入りの”も”のピッチ、ハーモニーは特にしっかり確認しておきましょう。G(ソ・シ・レ)の和音になっています。

この音で伸ばしてみると、ハーモニーの良し悪しがよく分かります。

また、【E】全体をピアノパートなしで(アカペラで)練習するのも効果的です。

アウフタクトの音をそろえて

31小節の入りが4パートでハモっていたのに対し、35小節のアウフタクト(34小節の一番最後の8分音符)は全員がレの音を歌います。

この音をピタッと同じ音にできるよう、確認しておきましょう。

3声の一体感を持って

41小節では、アルト・テノール・バスの3パートが”うたをうたおう”という歌詞を繰り返して歌います。

これらの3パートのタテ(=歌うタイミング)が揃っていることはしっかり意識しておきましょう。

一体感を持ってクレッシェンドすることで、【F】のサビに向かいます。

【F】42小節~ “はなのように”

充実した響きで

【F】からはサビとなります。

【E】と同じく、4パートのハーモニーが重要なフレーズです。各パート充実した響きで歌いましょう。

なお、音量指示としてはmfとなっており、やや控えめに思えますが、これは46小節からのクレッシェンドと、48小節で迎えるfを見据えての面もあるでしょう。

アルトがミソ

43小節はアルトのファ♮がミソです。

この臨時記号によってハーモニーにおしゃれな色合いが加わります。

存在感が出せるように意識してみるとよいでしょう。

クライマックスをつくる

先ほども書きましたが、46小節からのcresc.は47小節のfに向かっていきます。

このロングトーンが大きな山となりますから、それを見据えてここまで歌い進めるようにしましょう。

【G】54小節~ “la la la”

転調による色彩変化を感じて

【G】からは♭が3つになり、転調しています。

♯系から♭系になることで、色彩がガラッと変わります。

その変化をよく感じて歌うようにしましょう。

多彩なアーティキュレーションを活かして

【G】で特徴的なのは多彩なアーティキュレーションです。具体的には、テヌート、スタッカート、アクセント、スラーが使われています。

様々な表情で歌われるフレーズが、女声・男声で交互に重ねられることで、非常に面白い場面となっています。

自分のパートが歌ってる時、他のパートはどんなフレーズをどのように歌っているのか、ということを少し意識してみるとよいと思います。

転調前のコードプログレッションをクリアに

60小節からコードプログレッション(=コード進行)がダイナミックに動きます。

♭系の調から再び♯系の調に戻る前触れの和声と言ってよいでしょう。

臨時記号の付く音は、音がやや取りづらいかもしれません。

頭の中に、次に鳴るべき和音を思い描き、クリアなピッチで歌えるようにしましょう。

【H】62小節~ “(たと)えこのみが”

強い意志を切々と

【H】は”たとえこのみがはてるとも”~という歌詞が非常に印象的なフレーズです。

“たとえ”のt子音、”はてるとも”のh子音など、語頭の子音を強調し、そこに言葉のニュアンスを乗せるように歌いましょう。

強い意志を切々と歌うような表現ができると思います。

十分な「間」を取って

66小節のrit.、67小節のフェルマータはたっぷりと取って、十分な「間」をつくるようにしましょう。

67小節最後の4分休符にもフェルマータがついていることに注目です。ここで音のない時間を「聴かせる」ことを意識しましょう。

あわてて次に進む必要はありません。ここでの緊張感が【I】の歌い出しをより印象的なものにしてくれます。

【I】68小節~ “はなのように”

祈りの気持ちで

【I】の最初の4小節間は、メロディーを歌うのがソプラノ単独となります。

加えて音量はpとなり、ピアノパートの動きも最小限で、音域も高くなっていることから、非常に静かで、またピュアな印象の場面となっています。

しっとりと、祈るような気持ちでメロディーを歌ってみましょう。

テンションを変えて

71小節に入るとcresc. e accel.があります。クレッシェンドしながらアッチェレランド、つまりテンポを速めていく記号です。

4拍目のピアノパートの上昇音型も伴い、これまでのしっとりと静かな場面から、再び盛り上がる場面へ切り替わっていきます。

漫然と歌わず、意識的にテンションを切り替えていくことが大切です。

ピアノパートを感じて

79小節で聴いてほしいのがピアノパート。合唱がデクレッシェンドしていくのとは反対に、ピアノパートは上昇しながらクレッシェンドしていきます。

ここではピアノが主役となり、【J】からの再度の盛り上がりを引き出す役割を担っています。

【J】80小節~ “はなのように”

ロングトーンをキープ!

86小節はロングトーンが延長されています。これまでの場面と大きく異なる要素です。

ここは絶対に弱くならないように、また高音がぶら下がってこないように、十分に体を使った発声が必要です。

ここでの和音は、合唱だけではEm(ミ・ソ・シ)ですが、ピアノパートの低いド♯が入ることで、全体としてはハーフディミニッシュのコードとなっています。

言葉の掛け合いを意識して

88~89小節はこれまでにあまりなかった歌詞の掛け合いのフレーズで、女声・男声が交互に歌います。

いち”の入りをクリアに歌うことで、掛け合いを明確にすることができると思います。

みしめて”も同様ですが、バスの低いメロディーが非常に格好良いので、ぜひ存在感を発揮してほしいと思います。

【K】92小節~ “(やど)す”

4拍分キープ!

【K】は前のフレーズの終わりの音から始まります。

92小節のロングトーンは4拍分、ピッチ・音量・発声をしっかりキープしましょう。

このような細かいところを磨き上げることが良い演奏に繋がります。

編曲者の思いが見えるフレーズ

94~95小節はヴォカリーズによるフレーズで、fが使われています。

本アレンジの「花」ではfが使われている場面はそう多くないことを考えると、このフレーズには編曲者の強い思いが込められていることが分かります。

明るい母音で、レガートに、たっぷりと歌いましょう。

【L】96小節~ “(だい)ちをつよく”

より強い祈りの気持ちで

【I】と同じくMeno mossoであり、ソプラノ単独のメロディーですが、3パートがヴォカリーズで厚みを与えていることから、さらに強い祈りの気持ちが込められているような場面です。

音量はmfとなっています。これはサビの部分でも使われている音量記号ですが、それとはニュアンスが異なります。

サビのmfが(比較的)外向きにエネルギーが向かって発散的なフレーズだとすれば、このmf心の内に強い意志を秘めたような、凝縮感のあるフレーズのように私には感じられます。

感じ方はそれぞれかもしれませんが、いずれにせよ全く同じmfにはならないように考えてみるのがよいでしょう。

アルトのラインを浮き上がらせて

98~99小節はアルトが他の3パートとは異なる動きを見せます。

これはぜひ聴かせたいラインですので、アルトの人は少ししっかり目に歌い、”れぞれ”のs子音を強調して、存在感をアピールしましょう。

ここで複数の旋律が絡むのは、“それぞれのはな”という歌詞から着想したアイディアのようにも思えます。

十分にテンポを緩めて

98小節からrit.がはじまり、99小節に入るとmoltoの指示も加わります。

十分にテンポを緩めて、曲の最後の余韻を作りましょう。指揮法的には、やはり11小節などと同じく、分割して振ることを考えておくのがよいでしょう。

また、テンポが緩んだ分、最後のロングトーンにもよりたっぷりとした「間」が必要となることも押さえておきましょう。

まとめ

《花》は、原曲のメッセージ性と、混声四部合唱ならではの厚みのあるハーモニーが魅力の作品です。

練習では、言葉の抑揚、ハーモニーの響き、強弱やアーティキュレーションの変化を丁寧に確認していきましょう。

力強く歌う場面と、祈るように静かに歌う場面の対比を意識することで、より説得力のある演奏につながります。

本記事が、皆さまの練習や演奏づくりの参考になれば幸いです。

何か分からない点などありましたら、お問い合わせからお気軽にご連絡ください。

この度はリクエストいただき、ありがとうございました。