合唱曲の詳しい解説

『願い―少女のプラカード』(谷川俊太郎/三善晃)を紹介・解説します!

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こんにちは!

今回は谷川俊太郎作詩・三善晃作曲、《五つの願い》より『願い―少女のプラカード』について解説していきたいと思います!

曲調や難易度、曲の魅力・鑑賞のポイント、演奏・練習のポイントなどついて深堀りしていきます。

この曲を知らなかった人、これから聴いてみたい人、これから歌ってみたい人のお役に立てば幸いです。

それではどうぞ!

『願い―少女のプラカード』ってどんな曲?

まずは『願い―少女のプラカード』という曲について、「この曲知らない!」「初めて知った!」という人のために、作詩者・作曲者、難易度、曲調についてざっくりと紹介します。

作詩は谷川俊太郎、作曲は三善晃

『願い―少女のプラカード』は全5曲からなる混声合唱組曲《五つの願い》の3曲目。

作詩は谷川俊太郎、作曲は三善晃になります。

難易度は…中級~上級

『願い―少女のプラカード』の難易度は、中級~上級程度です。

たった3ページの短い曲ですが、付けられているハーモニーは非常に複雑。

また、頻繁に切り替わる拍子(5/8、6/8、7/8、8/8、9/8など)の変化をスムーズに歌いこなすにはそれなりに習熟が必要でしょう。

曲調は…詩の心情の変化に沿って複雑な色彩の変化を見せる曲

『願い―少女のプラカード』は詩の心情の変化に沿って複雑な色彩の変化を見せる曲。

谷川俊太郎さんの鋭い感性によって描かれるテキスト対し、ときには純粋に、ときには激しくと、一筋縄ではいかない和声で彩られています。

『願い―少女のプラカード』の魅力について語る!

続いては『願い―少女のプラカード』という曲を、「聴いたことある!」「これから聴く!」という人に向けて、曲の魅力や鑑賞のポイントについて語っていきたいと思います。

日本語の抑揚と間に忠実な拍子・メロディー

『願い―少女のプラカード』では曲を通じて拍子が定まっていません。

多くの部分で5/8、6/8、7/8、8/8、9/8など8分音符を基準とした拍子が次々と切り替わります。

これはただ闇雲に変拍子が用いられているわけではなく、日本語の言葉の抑揚や、間に忠実に沿ったものになっています。

本来歌うには不向きと言われる日本語ですが、その日本語を主骨格とした音楽に仕上げられています。

玉虫色に変化する和声の色彩

玉虫色に変化する和声の色彩もこの曲の魅力。

詩として表現される心情に沿って、言葉一つ一つ、と言うより一文字一文字に、それぞれふさわしい和声が付されています。

そしてそれらの和声は、どれひとつ取っても単純な色合いではありません。

葛藤や矛盾を孕んでいたり、どこまでもピュアで純粋だったり、うっすらと影を滲ませるようだったり…。

言葉ではでは言い尽くせない色彩感がこの曲の魅力です。

転調を駆使した美しい展開

この曲では転調の回数が非常に多く、それもまた前項で触れた色彩感へ寄与しています。

それぞれの場所で用いられている調にも、特別な意図がありそうです。

激しい訴え、大きな問い

ffで歌われるクライマックス部分では、非常にハードにぶつかる和音が用いられています。

言葉も畳みかけるように、波濤のように重ねて歌われ大きなうねりを生み出します。

ここで表現されるのは「大きな問い」。激しく訴えるような音楽です。

天に昇る祈りの気持ち

曲の最後に用いられるカデンツ的な部分に注目です。

B♭♭7 → C♭9 → D♭6,M7/A♭

特に最後の和音は三善作品特有の第2転回形が用いられています。

テンション・ノートが重ねられていることも相まって、天に昇っていくような神秘的なサウンドになっています。

真摯な祈りの気持ちに相応しいように思います。

『願い―少女のプラカード』(谷川俊太郎/三善晃)

それではまとめです!

《五つの願い》より『願い―少女のプラカード』でした。

短いながら密度が高く充実した内容を持った作品です。

日本語の抑揚や間、そして心情の変化に呼応するように付されたメロディーやハーモニーが魅力。

今回はここまで。お読みいただきありがとうございました!