合唱曲の詳しい解説

『今年』(谷川俊太郎/松下耕)を解説|年末はこれで決まりの大曲

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こんにちは!

今回は谷川俊太郎作詩・松下耕作曲、《この星の上で》より『今年』について解説していきたいと思います!

曲調や難易度、曲の魅力・鑑賞のポイント、演奏・練習のポイントなどついて深堀りしていきます。

この曲を知らなかった人、これから聴いてみたい人、これから歌ってみたい人のお役に立てば幸いです。

それではどうぞ!

『今年』ってどんな曲?

まずは『今年』という曲について、「この曲知らない!」「初めて知った!」という人のために、作詩者・作曲者、難易度、曲調についてざっくりと紹介します。

作詩は谷川俊太郎、作曲は松下耕

『今年』は全5曲からなる混声合唱とピアノのための《この星の上で》の5曲目。

堂々の終曲です。

作詩は谷川俊太郎、作曲は松下耕になります。

難易度は…中~上級

『今年』の難易度は、中~上級です。

冒頭は親しみやすいメロディーのユニゾンから始まりますが、中~終盤にかけてどんどん発展していきます。

メロディーの掛け合いや難しめのハーモニーが多用されており、比較的高い技術が要求される曲です。

divisiする箇所、豊かな声量が求められる箇所も多いので、ある程度人数の多い体力のある合唱団に向いています。

曲調は…メロディックな序盤、変化に富んだ中盤、感動的な再現部の終盤

『今年』は大きく分けて3つの場面で構成されている曲です。

  • 序盤…印象的なテーマが提示されます。メロディー同士の掛け合いで構成
  • 中盤…リズミカルで目まぐるしく激しい、ドラマチックな展開
  • 終盤…序盤で提示されたテーマが再現され、感動的なラスト

こんな感じ。

演奏時間は約6分の大曲です。

『今年』の魅力について語る!

続いては『今年』という曲を、「聴いたことある!」「これから聴く!」という人に向けて、曲の魅力や鑑賞のポイントについて語っていきたいと思います。

前奏で提示される印象的なテーマとそれに乗せて語られる歌詩

『今年』の前奏部分ではピアノパートによって非常に印象的なメロディーが奏でられます。

これがこの曲全体を貫くテーマ。終盤にも再登場します。

歌い出しはしっとりとしたpによるユニゾン。

歌うというよりもparlando(パルランド/話すように)的な、語りの部分です。

合唱が入ってからも背後ではずっとピアノがテーマを鳴らしていることに注目です。

様々な情景が流れていくようなメロディーの掛け合い

Fluently flowing(よどみなく流れて)からはテンポが少し上がり、指示通り音楽の流れが増していきます。

2分音符中心でコードを鳴らしていたピアノパートも8分音符中心のアルペジオとなっていますね。

一方で合唱はパート間でのメロディーの掛け合いへと変化しています。

次々と新たな調へ転調してくコード進行と相まって、情景が見えては去っていき、また次の情景が見えて…というような曲想となっています。

この場面の最後ではtuttiで序盤の山を形成。

中盤へと移ってゆきます。

リズミカルなフレーズと力強いスケール

中盤からはさらにテンポアップ。

16分音符が多用されるリズミカルな音楽になります。

この部分の音の特徴は、全音階のスケールが使われていること。

例えば最初の4小節。使われている音を楽譜から拾い上げてみます。

Des Es F G A H

ピアノパートでいくつか例外的な音(C、As)がありますが、基本的にはこれら5つの音だけが選択されていることが分かるかと思います(ダブル♭などは異名同音に読み替え)。

これらの音を鍵盤で弾いてみたりすると分かりますが、全部全音同士の関係ですよね。

これが全音階のスケール。

普段親しんでいる音階とは違うので違和感があるかもしれませんが、重力に逆らうような力強さのある音です。

ハーモニーも全音階に準じてつけられているので、通常の3和音(ドミソやラドミ)は現れません。

それだけ聴くと余り心地よい響きではありませんが、16分音符の切羽詰まったリズムに乗ることで迫力ある音楽になっています。

4パート揃ったところでは、全音階スケールが使われていることに加え、「2階建て」の和音が使われています。

いわゆるUST(アッパーストラクチャートライアド)です。

女声およびピアノパート右手のハーモニーは、

  • F#7omit5(構成音:F#,A#,E)

男声およびピアノパート左手のハーモニーは

  • E7omit5(構成音:E,G#,D)

のようになっています。

これをコードで表すと、

  • F#△7omit5/E△7omit5

ってな感じでしょうか? 間違ってる気もします…。

ヴォカリーズで再現されるテーマ

終盤に入り、この曲もいよいよ大詰めです。

Grandly(雄大に)からは冒頭で提示されたテーマがヴォカリーズによって再現されます。

これまではピアノパートで奏されてきたメロディーですが、合唱も加わっての熱唱。グッとくる部分です。

“生きてゆくかぎり”…繰り返しながらのエンディング

曲のエンディングでは、”生きてゆくかぎり”というメロディーが、合唱・ピアノパートで交互に繰り返されます。

何度も繰り返されることで、強い祈りの気持ちが心に沁み渡ってくるようです。

曲の終わりに向かって音量は小さくなっていきますが、ラストのロングトーンは永遠に消えることのない灯のように、ppppで響き続けます。

まとめ:『今年』(谷川俊太郎/松下耕)

それではまとめです!

《この星の上で》より『今年』でした。

序盤・中盤・終盤とそれぞれ大きなクライマックスを持つ、約6分の大曲でした。

特に終盤に入ってからのテーマの再現や、繰り返される”生きてゆくかぎり”というメッセージにはウルっと来るものがありますね。

今回はここまで。お読みいただきありがとうございました!