こんにちは!
今回は大岡信作詩・木下牧子作曲、混声合唱組曲《方舟》を紹介します!
難易度・編成、組曲の魅力、各曲の紹介などを解説しています。
どんな団・どんなステージでおすすめかにも触れていますので、選曲に役立つと思います。
この曲集を知らなかった人、これから聴いてみたい人、これから歌ってみたい人のお役に立てば幸いです。
それではどうぞ!
もくじ
《方舟》ってどんな組曲?
まずは《方舟》という曲集について、「この曲知らない!」「初めて知った!」という人のためにざっくりと紹介しておきます。
作詩は大岡信、作曲は木下牧子
混声合唱組曲《方舟》は全4曲からなります。
作詩は大岡信、作曲は木下牧子です。
今回の記事で元にしているのは【混声版】ですが、【男声版】もあります。
作曲家の木下牧子さんは、合唱界においては押しも押されもせぬ存在。
親しみやすいアカペラの小品から、大規模なピアノ付き組曲やパイプオルガン付きの作品なども手掛けておられます。
今回取り上げる《方舟》はその中の「大規模なピアノ付き組曲」にカテゴリされるものの一つです。
作詩は大岡信さん。
大岡&木下作品では他に『なぎさの地球』(第69回NHK全国学校音楽コンクール 高等学校の部・課題曲)が思い浮かびますね。
《方舟》と共通する印象として
- 海
- 世界観・音楽のスケールの大きさ
- 格調高い言葉遣い
- 歴史的な深みを感じさせる音使い
なんかが思い浮かびます。
《方舟》の初演は1980年12月。そして木下牧子さん1作目の合唱組曲です。
本当にこれは驚くべきこと。
現在、約40年経ってなおいっこうに古びていません。
むしろ随所に斬新さを感じさせる、非常に優れた作品です。
難易度は中級~上級程度
《方舟》の難易度は中級~上級程度です。
いずれの曲も充実した内容を持ち、規模の大きい作品が並びます。
ディナーミク(音量の幅)が大きく、フレーズも木下作品特有の長さがあり、合唱団の自力や体力が否応なしに試される作品となっています。
また1曲目『水底吹笛』に代表されるようにrit.やaccel.などが細かく付されており、規模の大きな作品の中でこれらの記号をどう有機的に機能させるか、指揮者の構成力・センスも問われます。
《方舟》は演奏効果が高く、演奏会のレパートリーとしてプログラムの核となりうる作品です。
もちろんコンクール向けとしても〇。実際『水底吹笛』や『方舟』は好んで選曲されるようです。
なお、中高生の校内合唱コンクール向けに「できますか?」という質問を見かけますが、ちょっと厳しいです。
中~大規模の合唱団におすすめ
編成的には中~大規模くらいの合唱団におすすめです。
40~60人程度の大学、一般団に適したレパートリーかと思います。
この組曲の持つスケール感の大きさ、特に終曲『方舟』の迫力を十分に表現しきるには人数が多い団の方が適していると思います。
声的にもある程度成熟した声質の方が適していると思いますので、大学生以上の年齢の団に歌って欲しいような気がします。(高校生の演奏が悪いというわけではありませんが…。)
《方舟》の魅力について語る!
続いては《方舟》という曲集を、「聴いたことある!」「これから聴く!」という人に向けて、その魅力について語っていきたいと思います。
魅力1.言葉の格調高さ
魅力1つ目は言葉の格調高さ。
木下牧子さんもこの点に魅かれて作曲を決意したそうです。
選び抜かれた言葉がとにかくカッコいい!古風な趣もたまりません。
魅力2.壮大なスケール感
詩の内容的にも音楽的にも非常にスケール感が大きく壮大。
この世界観に浸るとなかなか至福の時を過ごせるような気がします。
魅力3.瑞々しい情感の表出
格調高い言葉が選び抜かれている一方、瑞々しい情感の表出という面でも優れています。
音楽もそれに寄り添うように叙情的な表情を見せます。
特に『水底吹笛』や『夏のおもひに』では胸が熱くなるような展開が魅力です。
魅力4.サウンドの鮮烈さ
サウンドの鮮烈さ、書かれてから40年経つ今なお古びない音楽が《方舟》の最大の魅力化もせれません。
終曲『方舟』の5/4拍子が良く取り沙汰されます。当然それも他に類を見ない要素です。
しかしその他の曲を取ってみても、現代的な和声、重厚に重ねられた声部、ピアノパートの表現力、様々な転調とどこを取っても新しい作品と遜色ありません。
と、いうかこの《方舟》こそが現在の合唱作品のモデルを作ったと言えるのかも。(言い過ぎかもしれませんが…。)
混声合唱組曲《方舟》の各曲を紹介!
1.『水底吹笛』
《方舟》1曲目は『水底吹笛』。
すべてひらがなで書かれた詩が印象的です。
長いフレーズが特徴的な曲。cresc.とdecresc.、accel.とrit.が交互が交互に繰り返され、水の揺らめき、そして感情の揺らめきが効果的に・ダイナミックに表現されています。
2.『木馬』
2曲目は『木馬』。
陰鬱な和音で進行する3拍子の作品です。
前書きによると
メランコリックな小品
とのこと。まさにそんな感じです。
3.『夏のおもひに』
3曲目は『夏のおもひに』。
流れるようなピアノパートと旋律、移り変わる和音。
それらの要素が朝夕の海の色調や物思いに耽る登場人物を効果的に描写します。
4.『方舟』
4曲目は『方舟』。表題曲であり、終曲です。
全編を激しいテンポの5/4拍子で貫いた斬新な楽章です。
力強い豊かな声量で歌われ、迫力満点。
言葉の格調高さも際立ちます。
まとめ:《方舟》(大岡信/木下牧子)
それではまとめです!
混声合唱組曲《方舟》の紹介でした。
誕生から40年以上。今なお古びない鮮烈な作品です。
曲のスケール感が大きく、フレージングやディナーミクなど要求レベルは高いです。
力のある合唱団は是非挑戦してみてください。
《方舟》に興味を持たれた方は、以下の記事で各曲をそれぞれ詳しく紹介しています。あわせてどうぞ!
今回はここまで。お読みいただきありがとうございました!