合唱曲の詳しい解説

【混声編】木下牧子の合唱作品1(~1990年)|方舟/ティオの夜の旅/光る刻

木下牧子1~1990
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作曲家・木下牧子の代表的な合唱作品を年代別に紹介するシリーズです。

本記事では~1990年に初演(または作曲・出版)された作品を集めました。最初期の作品ですが、《方舟》、《ティオ》など現在でも人気のある名曲揃いです。(《光る刻》も良い曲です!)

難易度、初演データなどをまとめていますので、作曲家・木下牧子を俯瞰する資料としても使えるかと思います。簡単に紹介コメントも書いていますので、是非ご利用ください。

この記事で紹介している作品
  1. 《方舟》
  2. 《ティオの夜の旅》
  3. 《光る刻》
  4. 随時追記していきます!

混声合唱組曲《方舟》

木下牧子さんの合唱組曲としてはこの《方舟》が最初の作品。

今でも盛んに演奏され、大人気の曲です。とにかくカッコ良いですもんね。

個人的にはこの作品の初演から既に40年も経っていることに驚くばかりです。

《方舟》の概要

テキストは大岡信の詩から取られています。

比類ない格調の高さと、日本度の美しさ

木下牧子《方舟》の巻頭言より

と木下牧子さんが書かれていますが、まさにそんな感じですね。

《方舟》の概要
  • 作詩者:大岡信
  • 初演:東京外国語大学混声合唱団「コール・ソレイユ」(1980年12月)
  • 全曲の演奏時間:約20分
  • 編成:ピアノ付き
  • 言語:日本語
  • 難易度:上級
  • レパートリー:演奏会、コンクールなどに

《方舟》の収録曲

全4曲。それぞれ明確な個性を持ち、充実した内容の曲となっています。

《方舟》の収録曲
  1. 『水底吹笛』
  2. 『木馬』
  3. 『夏のおもひに』
  4. 『方舟』

《方舟》の特徴

最初にも書きましたが、大岡信による格調高いテキストが第1の魅力なのではないかと思います。一点の曇りもないというか、選び抜いた語彙、磨きぬいた表現を用いた詩です。

一方サウンドに関しては、声部を贅沢に使い、テンションを効果的に用いた現代的な和声感が特徴です。

この音使いによって《方舟》は新しい合唱の世界を切り開いたのではないかと思っています。

終曲『方舟』は終始5拍子、速いテンポの激烈な音楽で、いわずもがな斬新です。

混声合唱組曲《ティオの夜の旅》

木下牧子さんの合唱組曲2作目。

《方舟》とはうって変わってコミカルな楽想も含まれ、木下牧子さんの多彩さを伺わせます。

こちらも今なお大人気の作品となっています。

《ティオの夜の旅》の概要

《方舟》の大成功を受け、再び「コール・ソレイユ」の鈴木成夫氏から委嘱があり書かれた、と認識しています。

《ティオの夜の旅》の概要
  • 作詩者:池澤夏樹
  • 初演:東京外国語大学混声合唱団「コール・ソレイユ」(1983年12月)
  • 演奏時間:約20分
  • 編成:ピアノ付き、無伴奏
  • 難易度:中~上級
  • レパートリー:合唱祭、演奏会、コンクールに

《ティオの夜の旅》の収録曲

全5曲です。1.『祝福』は無伴奏。実質的に混声八部合唱の難曲です。

他の曲はピアノパートが付きます。

《ティオの夜の旅》の収録曲
  1. 『祝福』(無伴奏)
  2. 『海神』
  3. 『環礁』
  4. 『ローラ・ビーチ』
  5. 『ティオの夜の旅』

《ティオの夜の旅》の特徴

ボリューム感のある1,3,5曲、そして間奏曲的な役割を果たす2,4曲という構成になっています。

2,4曲は技術的にも比較的易しいため合唱祭などでも良く歌われている印象です。

《方舟》はモノトーンで硬質、《ティオ》はカラフルで遊び心にあふれた作品というのが私のイメージです。

混声合唱組曲《光る刻》

《方舟》、《ティオ》と比較的近い時期に書かれた作品ですが、あまり知名度が無い気がします。

が、個人的にはそれに劣らぬ名曲が揃っていると思います。

木下牧子さん本人が3.『鹿』が好きだとおっしゃっていたような(twitterとかで)。

ちなみに読み方は《ひかるとき》です。

《光る刻》の概要

初演は1987年ですがその後改定され、松原混声合唱団によって改訂版が初演されています。

改訂版の出版は1995年ごろのようですね。

《光る刻》の概要
  • 作詩者:蔵原伸二郎ほか
  • 初演:広島県立賀茂高等学校合唱部(1987年3月)
  • 全曲の演奏時間:約14分40秒
  • 編成:ピアノ付き
  • 言語:日本語
  • 難易度:中級~上級
  • レパートリー:演奏会、コンクールなどに

《光る刻》の収録曲

全4曲。全曲ピアノパートが付きます。

木下牧子動物シリーズの一角と言っても良いかもしれません。

『鹿』は国語の教科書に載っていたような。

《光る刻》の収録曲
  1. 『老いたきつね』(詩:蔵原伸二郎)
  2. 『もぐら』(詩:木島始)
  3. 『鹿』(詩:村野四郎)
  4. 『象』(詩:吉原幸子)
それぞれ異なる詩人の作品が用いられています。

《光る刻》の特徴

《光る刻》ではすべて

動物の孤独と死

木下牧子《光る刻》の巻頭言より

をテーマに扱った詩が用いられています。

「孤独と死」というとネガティブな印象で、暗い曲を想像するかもしれません。

しかしこの組曲においてはむしろ逆で、「孤独と死」に対して神秘性や、力強さを感じる音楽となっています。

死は必ず訪れる、その確信があるからこそ一瞬の生が輝く、そんなイメージが組曲のタイトル《光る刻》となっているのでしょう。

【混声編】木下牧子の合唱作品まとめ1(~1990年)

~1990年に初演(または作曲・出版)された木下牧子による混声合唱作品のご紹介でした。

この記事で紹介した作品
  1. 《方舟》
  2. 《ティオの夜の旅》
  3. 《光る刻》
  4. 随時追記していきます!

随時、作品を追加していく予定です。是非またお越しください。