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《群青》は、東日本大震災と原発事故で離ればなれになった、福島県南相馬市立小高中学校の平成24年度卒業生たちの言葉をもとに、音楽教諭の小田美樹さんが曲をつけ、信長貴富さんが編曲した作品です。

この記事では、そういった背景も踏まえながら、主に、実際に練習・演奏する際の技術的なポイントに焦点を当てて解説していきたいと思います。

なお、この記事では混声四部合唱版の楽譜をもとに解説しています。

混声三部バージョンの記事(【混声三部合唱】《群青》練習・演奏のポイント|背景を踏まえて歌おう)もあわせてご利用いただきますと、理解が深まると思います。

《群青》(作詞:福島県南相馬市立小高中学校 平成24年度卒業生(構成:小田 美樹)/作曲:小田 美樹/編曲:信長貴富/パナムジカ)をもとに執筆し、本文中で歌詞などを引用する場合には「」で示しています。

【混声四部合唱】《群青》練習・演奏のポイント

楽譜に記載の練習番号(【A】【B】…)に沿って解説していきます。

【A】9小節~ 「(あ)ああのまちで」

低声系がリードしよう

【A】のフレーズは4パートによるユニゾンですが、音域がかなり低くなっています。

ソプラノ・テナーの高声パートの人にとってはかなり響かせづらいことが想定されます。そのため、ここではアルト・ベースの低声パートがリードするようにしましょう。

14~15小節の「おもいだいて いっしょにときをすごしたね」あたりは、かなりメロディーとして聴かせるのには苦労しそうです。

あまり押さえつけた暗い声にならないようにし、言葉のフレージングへの意識をしっかりと持つようにしましょう。

【B】17小節~ 「(い)またびだつひ」

10度のハーモニー

17~18小節では、女声がハモリ、男声がメロディーという役割の整理となります。

そのため、まずは女声どうし・男声どうしで音をしっかりと統一する練習をしておきましょう。

また、全体であわせる際には10度(オクターブ+3度)のハモリとなっていることに留意しましょう。

かなり音と音どうしが離れた音程ですので、一体感が生まれにくくなっています。

各パートが入り混じって(=スクランブルで)歌う練習をやってみたいフレーズです。

2声から4声への広がり

17~18小節のフレーズは女声+男声、すなわち2声でのハーモニーでした。

一方19~20小節にかけては、それぞれのパートが固有の音に分かれていくことで、4声のハーモニーに展開していきます。

ここではぜひ混声四部合唱ならではのハーモニーの広がりをぜひ感じてみてください。

特に、以下の下線部の歌詞でのコードで、”ハモった!”という感覚をつかみやすいと思います。

  • 20小節「(ちがって)」…B♭m(シ♭・レ♭・ファ)
  • 21小節「ばしょ」…D♭M6(レ♭・ファ・ラ♭・シ♭)
  • 22小節「おなじそ

ピッチとバランスに注意

【B】のフレーズの最後となる、24小節のロングトーンには少々注意が必要です。

各パートの音確認しておくと、ソプラノ・アルト・ベースの3パートがラ♭、テノールがドの音を担当しています。これはA♭のコードの第5音(ミ♭)が抜けた形です。

3パートが歌うラ♭の音は和音の根音。和音を決めるためには、この音がピッタリとそろっている必要があります。

特に、女声はハモっているところから実音で同じ音に収束しますので、ピッチのばらつきが目立ちやすいです。「はず」で合流する際には細心の注意が必要です。

テノールのドの音は和音の第3音で、バランス的には強く出す必要のない音なのですが、音域的に高いので大きく出やすく、悪目立ちしやすくなっています。

ここは”量より質”を意識して、メロディーラインによりそうように、丁寧に歌うようにしましょう。

【C】25小節~ 「(またね)と」

ピッチがぶら下がらないように

【C】の最初の4小節は男声によるメロディーです。

pである上、ベースの人にとっては高めの音域ですから、ぶら下がって聴こえないように注意が必要です。

ピッチを高めに、また明るい音色を意識することで、ぶら下がりを回避しましょう。

内声・外声の組み合わせ

29小節からは掛け合いのフレーズとなります。

先行するのは、アルト+テナーの内声。遅れてい入るのがソプラノ+ベースの外声という組み合わせです。

アルトパートはメロディーですから、掛け合い中で埋もれないように、主役意識を持ってしっかり歌うことが必要と思います。

テノールはハモリですから、主役のアルトをかき消さないように、寄り添って歌ういましょう。

ソプラノ・ベースは音域的に離れますので、互いに聴き合う意識をより強く持ちましょう。

通常のSATBのオーダーでは立ち位置も離れてしまいますから、練習の際は(あるいは本番でも)並び方を工夫してみてもよいかもしれません。

合流してのハーモニー

33小節で4パートが合流してハーモニーを形作ります。

コードとしてはE♭(ミ♭・ソ・シ♭)となります。

ベースが根音として和音を支え、ソプラノ・テナーは第5音ですから下がらないように。アルトは周囲の音をよく聴いて、中に丁寧に入るイメージで第3音を歌います。

【D】33小節~ 「(あ)のひみたゆうひ」

ユニゾンに集中して

【D】からは一転してユニゾンとなります。

跳躍の多いメロディーとなりますので、正確な音程で歌うことを特に意識しましょう。

アカペラで、ゆっくりとしたテンポで練習してみると、ピッチがばらついている部分を見つけ出しやすいと思います。

【E】42小節~ 「(じ)てんしゃをこいで」

メイジャーセブンスのコード

45小節の和音には要注意です。

コード的にはD♭M7(レ♭・ファ・ラ♭・ド)となります。根音であるレ♭と第7音であるドの音が長7度でぶつかる、複雑な響きです。

  • ファ・ド(=女声の完全5度)のパートだけ
  • レ♭・ラ♭(=男声の完全5度)のパートだけ
  • レ♭・ファ・ラ♭(=D♭の部分)のパートだけ
  • ファ・ラ♭・ド(=Fmの部分)のパートだけ

のように、いろいろな組み合わせでパートを取り出して鳴らしてみると、和音への理解が深まりますし、全体であわせたときの響きへの感動があると思います。

高声+低声のハモリ

47~48小節の「ぐんじょうにそまる」のフレーズでは、ソプラノとテノールの高声がほぼ同じ、アルト・ベースの低声が全く同じ音を歌っています。

メロディーは低声が歌っており、その3度上で高声がハモるという構造です。

一般的に高い音の方が聴こえやすくなるため、高声パートの人は抑えめに、少し響きを押さえて歌い、バランスを取ることを意識しましょう。

逆に、低声パートの人はメロディー意識を持って積極的に歌いましょう。

最後のロングトーン「る」でテノールが分かれて第5音に入ることで、A♭のコードが完成します。

1コーラス目を締めくくる和音を、美しく決めることを意識してみてください。

【G】54小節~ 「(あれか)ら」

丁寧に言葉を歌おう

【G】は【C】と対応する部分ですから、基本的な注意事項は同じです。

ピッチなどの点に加え、比較的言葉が詰まっているフレーズでもありますので、しっかりと”しゃべる”意識を持つことが重要です。

一瞬のユニゾンにある意図

60小節について、各声部を注意深く見ると”いま”がユニゾンになっていることが分かります。

このあたりから作曲者の意図を読み取ることもできそうです。

【H】63小節~ 「(ひび)けこのうたごえ」

「ひびけ」を丁寧に

【H】のフレーズでは、アウフタクトの「ひびけ」が、音域的に低く、言葉的ににも伝わりづらいところかと思います。

入りの音をよく狙って丁寧に歌うことを意識しましょう。

また、上がった先が「け」でe母音となっており、響きが潰れやすいです。

喉の天井を高くキープすることを意識してみると良いかもしれません。

「たいせつ」に歌う

67小節からの「たいせつな」からはいったんmfとなります。

ここにある意図としては、いったん音量を落とし、続くクレッシェンドと【I】でのfを効果的にするということが1つ。

加えて、「たいせつ」という言葉にニュアンスを持たせて、という意図もありそうです。こちらのほうがむしろ大きいかもしれません。

【I】71小節~ 「(な)みだのあとにも」

転調の前触れを感じて

78~79小節は、大きな変化が訪れるフレーズです。ここで登場する臨時記号は、次の【J】からの転調の準備、いわば前触れです。

コードシーケンスなどをまとめてみましょう。

[78小節の1~2拍目]

  • コード…A♭=変イ長調のトニック
  • この瞬間は”普通に”フレーズをまとめている

[78小節の3~4拍目]

  • 合唱パートとピアノパート右手のコードは同じ
  • ピアノパート左手がソ♭へと下降。コードがA♭7/G♭に

[79小節]

  • コード…E♭7=【J】のイ長調でのドミナントセブンス
  • ドミナントcresc.によるエネルギーの高まりが、音楽を新しい調へと向かわせる動力源に

78~79小節に掛けてアルト・ベースの伸ばすラ♭は、A♭ → Eへコードの切り替わりの際、ソ♯へと表記が変わっています。音高は同じで名前が異なる異名同音です。

名前が変わると同時に、変イ長調における主音からイ長調における導音へと、役割を変えており、これが転調の軸となっています。

また、ピアノパートの左手が担当するベースラインは、ラ♭ → ソ♭ → ミ♮と、全音ずつ下降しており、スムーズな転調を導いてくれています。

【J】80小節~ 「(きっ)とまたあおう」

半音上がる転調による展開

先ほど触れたように、【J】からイ長調へと転調しています。

【I】以前と比べると、半音上がっており、全体の音域が高まることで自然と盛り上がる展開となっています。

82小節まではユニゾン。ここはぜひとも充実した響きで。

83小節ではそれまでのユニゾンからDM7の和音へと一気に広がり、カタルシスを感じさせるフレーズとなっています。

【K】89小節~ 「(ま)たあおう」

願いを込めたユニゾンで

【K】は再びユニゾンとなりますが、【J】異なる場面であることは明らかです。

願いを込めるように、優しく、柔らかい音色で歌いましょう。

またピアノパートのアンサンブルも意識するとよいでしょう。

おわりに

本記事では、混声四部バージョンでのポイントとして、主に声部や和声に注目して解説しました。

曲想や全体的な音楽的構成については、【混声三部合唱】《群青》練習・演奏のポイント|背景を踏まえて歌おうもあわせてご覧いただけますと理解が深まると思いますので、ぜひごりよください。

何か分からない点などありましたら、お問い合わせからお気軽にご連絡ください。

この度はリクエストいただき、ありがとうございました。