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この記事では、《今、ここに》を練習・演奏する際のポイントを、場面ごとに詳しく解説していきます。

ぜひ日々の練習や音楽づくりにお役立てください。

《曲名》(作詩:伊藤玲子/作曲:松下耕/パナムジカ出版)をもとに執筆し、本文中で歌詩などを引用する場合には「””」で示しています。

《今、ここに》の練習番号

練習を始める前に、楽譜に小節数および練習番号(【A】【B】…)を書き込んでおきましょう。

小節数と練習番号をつけることで、練習の際にどこから始めるかをスムーズに伝えることができますし、それだけでなく、場面のつながりを整理することができるようにもなります。

今回は次のようにつけました。

練習番号
  • 【イントロ】…1小節~
  • 【A】…3小節~ “(いま)ここに”
  • 【B】…11小節~ “(くう)き”
  • 【C】…20小節~ “(いま)ここに”
  • 【D】…28小節~ “わたしのからだと”
  • 【E】…36小節~ “(いま)ここに”
  • 【F】…42小節~ “わたしは”

《今、ここに》練習・演奏のポイント

楽譜に記載の練習番号に沿って解説していきます。

ぜひ楽譜に書き込みながら読み進めてみてください。

【イントロ】…1小節~ ”ooh”

Moderato teneramente

冒頭に書かれているModerato teneramente(モデラート テネラメンテ)の意味を確認しておきましょう。

  • Moderato…「中くらいの速さで」
  • Teneramente…「優しく、柔らかく、愛情を持って」

Moderatoのテンポ感ですが、これはメトロノームで♩=ca.80と示されていますから、基本的にはこのテンポを基準にしましょう。《今、ここに》は、ハーモニーが移ろうゆったりとした印象の曲ですが、Adagio(アダージョ/ゆっくりと)などとは異なりあくまでModeratoですから、あまりもたもたしすぎずに、音楽が流れていくように意識して欲しいと思います。フレーズを息長く、たっぷりと歌えそうなら、もう少し遅くしても良いかと思います。

次にteneramenteですが、これは柔らかな母音の響きで、各フレーズをレガートに歌うことで表現できると思います。特に、pmpといった弱声の場面を丁寧に歌うことを意識すると良いと思います。

入りの音の確認

【イントロ】の場面は、ソプラノ→アルト→テノール→バスと、高い声部から順に”ooh”で入っていきます。この入りの音が取りにくいと思いますので、しっかり確認しておいて欲しいと思います。

また、前に入ったパートが伸ばしているところに、後から入るパートの音が重なっていくことで、ハーモニーに厚みが出ていくという仕掛けにもなっていますので、どのような和音になっているかも合わせて確認しておきたいところです。

1~2小節は以下のようになっています。

  • 1小節1拍目…「ラ♭」単音
  • 1小節2拍目…「ラ♭」+「ファ」(短3度)
  • 1小節3拍目…「ラ♭」+「ファ」+「レ♭」(D♭の和音)
  • 1小節4拍目…「ラ♭」+「ファ」+「レ♭」+「シ♭」(B♭mの和音)
  • 2小節1拍目…「シ♭」+「ファ」+「レ♭」+「ソ♭」(G♭M7の和音)
  • 2小節2拍目…「シ♭」+「レ♭」+「シ♭」+「ミ♭」(E♭m7系の和音 ※omit3)
  • 2小節3拍目…「ラ♭」+「ド」+「ラ♭」+「ラ♭」(A♭の和音 ※omit5)

参考のためにコードネームも記載していますが、難しければ無視しても大丈夫です。

ここで重要なのは、それぞれの瞬間で、きちんと美しいハーモニーが鳴っているかです。中には少し複雑な和音(G♭M7)も含まれていますが、正しく歌えばすべてきれいに響く和音となっています。

テンポを落として練習する、それぞれの和音で立ち止まってロングトーンをして確認するといった練習に取り組むと良いと思います。

<>と母音の表現

【イントロ】の2小節分の音楽表現にも注目しておきましょう。

ソプラノからpで順に入っていき、クレッシェンドしていきます。このとき、後から入るパートは、存在を主張するためにソプラノのクレッシェンドに合わせて少し大きめのところからスタートすると良いと思います。その後デクレッシェンドして音量を落ち着かせ、フェルマータとなっています。

クレッシェンドの山の頂点となる2小節の1拍目に<>のアクセント(三善アクセント)があります。

これは通常のアクセント(>)よりも柔らかい音の立ち上がりのアタック感で歌います。

また、母音が”ooh”の狭い響きから”ah”の広がった響きになりますので、全体として音がボワンと広がるようなイメージの音楽にできると良いと思います。

【A】…3小節~ “(いま)ここに”

フレーズは大きく、レガートに

【A】から歌詩を歌いますが、基本的にフレーズを大きく捉えること、そしてレガートに(滑らかに)歌うことを心がけましょう。

フレーズ感としては、できれば4小節単位で、つまり”いまここにわたしはいて いまここでわたしはうたう”をひとつのまとまりとして歌えると良いと思います。

息が続かない場合、”いまここにわたしはいて”の後でブレスを取ることになると思いますが、あまり大きく間をあけず、なるべく瞬間的にブレスを取れるようにして欲しいと思います。同時に、その直前の”て”があまりに短くなってしまったり、投げやりな感じにならないよう、丁寧に歌い切るようにしてください。

また、4拍子の拍感が強く出すぎて、拍節的な歌い方にならないようにすることにも気をつけましょう。

このような点に気をつけると、冒頭に書かれているteneramente感が出てくると思います。

バスの音が土台

【A】では、バスの歌っている音に注目すると、6小節目までずっと「レ♭」の音を歌い続けていることが分かります。

これが保続音として全体の和音の土台になりますので、バスパートの人はブレずに正しい音をキープして歌えるようにしてください。

他の3パートの人は、このバスの音を必ず聴きながら自分の音を歌うようにします。そうすることで全体の和音が安定します。

また、バス+テノール、バス+アルト、バス+ソプラノというように、2パートで歌ってみて、どのような関係になっているかを確認するのも、非常に効果的な練習になると思います。

保続音…和音が変化する中で特定の音(主に低音)を長く維持し、楽曲に安定感や重厚さを与える技法。不動の音と移り変わる和声が響き合うことで、豊かな緊張感とドラマチックな効果を生み出します。

臨時記号と和音の色を感じて

【A】は和音の移り変わりが繊細で美しい場面です。

特に、臨時記号が出てきたときには、和音の色彩がどのように変わるのかにぜひ注意して感じ取ってみて欲しいと思います。

具体的には5小節目のテノールの「シ♭♭」や、7小節目のバスの「レ♮」、9小節目のソプラノの「ソ♮」が挙げられます。

異なる動きをアピール

【A】の場面は基本的にホモフォニー(各パートが同じリズムで進む音楽)で進んでいきますが、7小節目からのアルトは他の3パートと別行動になるので、しっかりアピールして欲しいと思います。

”いまここに”の入りの言葉を少し強調することでメロディーのずれが明確になり、音楽に立体感が出てきます。

メインのメロディを、他のパートが和音(伴奏)として支える音楽の形式。主役と脇役の役割がはっきりしており、旋律の美しさや言葉が伝わりやすいのが特徴。

高めの音も丁寧に

10小節はどのパートも比較的高い音域となります。

雑になってしまいそうなところなので、最後まで気を抜かないようにしましょう。

7小節にcresc.が書かれていますので、少し音量的には増していきますが、接続先はmfなので、声を張り上げる必要はありません。

むしろハーモニーに集中して、丁寧に歌い切ることが大切なフレーズだと思います。

【B】…11小節~ “(くう)き”

言葉の掛け合い

【A】がホモフォニー主体の音楽だったのに対し、【B】はメロディーと歌詩をズレて歌うポリフォニー的な音楽となっています。

”くうき”、”かぜ”、”ひかり”といった言葉をタイミングよく聴かせられるように意識しましょう。

言葉を明瞭に伝えるためには、語頭の子音を長めに発音するのがコツとなります。

”くうき”や”かぜ”であればk子音、”ひかり”であればh子音となります。

子音を強調しようとして「強く」歌ってしまうとレガートさが失われてしまいやすいので、「長さ」を意識すると良いでしょう。

複数の独立したメロディが、対等に絡み合いながら進行する音楽の形式。それぞれのパートが独自の動きをすることで、複雑な響きの重なりを生み出す。

休符に緊張感を

”くうき かぜ ひかり”のフレーズでは、これまであまり出てこなかった休符(8分休符)が出てきます。

休符ではその瞬間、音の無い時間となり音楽に緊張感が生まれます。

漫然と歌ってしまうとそのような効果は生まれないので、集中して音の長さをそろえることが大切です。

ただし、音がブツブツ切れるような印象になってしまうと美しくありません。そうならないためには、休符の直前の音をできるだけ丁寧に処理することが必要になります。

和音の中で動くライン

16小節のテノール動きはぜひアピールして欲しいラインです。

B♭mの和音の中でテノールの音が下がっていくことで、響きの色合いが微妙に変化していきます。

一つ一つの響きを感じ取りながら歌い進めるのが大切です。

和音の解決

18~19小節にかけて、内声(アルトとテノール)の音が変化することで和音が解決します。

内声の2パートはいずれも音が下がりますが、このとき必ずソプラノとバスが伸ばし続けている音を聴いて、そこに溶け合わせるように動くことが肝心です。

動きがあるので目立つことは必要ですが、乱暴に降りてしまうと和音に溶け込まず、違和感が残ってしまいます。

デクレッシェンドでは息を揃えて

19小節で和音が解決した後、デクレッシェンドでフレーズを収めていきます。

このとき、一人ひとりがお互いの声を聴き合いながら小さくしていくことが大切です。

続く【C】のフレーズはmfですから、ここで完全に音楽が終わってしまわないように、小さく絞りすぎないことも意識しておきましょう。

【C】…20小節~ “(いま)ここに”

再びレガートに

【C】は【A】を再現する場面となっています。

レガートに、柔らかく歌うことを思い出して歌いましょう。

音量指示の違いに注意

【A】はmpで歌いましたが、【C】ではmfとなっていることが違います。

同じフレーズを繰り返すときは、このような表現の違いをしっかりと把握して演奏することが大切です。

【D】…28小節~ “わたしのからだと”

sub.pの表現

sub.とはsubito(スービト/ただちに)のこと。つまり、sub.psub.mpは「急に音量を小さくして」ということになります。

デクレッシェンドしてだんだん小さくしていくのと違い、いわば不意打ちのような効果のある表現で、聴いている人をぐっと引き込むような印象を生み出すことができます。

ポイントとしては、【D】に入る前のcresc.でしっかり大きくしておくこと。これによりダイナミクスの落差を大きくでき、効果もアップします。

ただし、小さくしたときにも声の支えを忘れないようにしましょう。そうしないと音程が下がってしまったり、響きのない声になってしまうことがあります。

また、小さくすると言っても男声は主役なので、メロディーであるという意識を持っておくことも重要です。

主役と伴奏

先ほども少し触れましたが、28~31小節は男声が主役です。

それに対し、女声は伴奏的な役割となり、それを反映して音量記号に差がつけられています。

女声のリズムのイメージ

伴奏パートの女声は8分音符でリズムを刻んでいます。

私にはこれが「心臓の鼓動」のように感じられました。”わたしのからだ”という肉体性に関連する表現のように思います。

このあたりは、詩全体を通して読んでみるとイメージがつかめると思います。

fに向かうクレッシェンド

練習番号としては次の【E】になりますが、36小節からが曲全体を通して最も盛り上がる場面になります。

このfに向かうクレッシェンドはとても大切。単に音量だけが大きくなるというよりは、内面的な熱さも伴うと感動的なフレーズになるでしょう。

【E】…36小節~ “(いま)ここに”

テヌートは熱く!

【E】の最初の歌詩”いま”にはテヌートの記号が付けられていて、「ぜひとも熱く、エネルギーを込めて歌って欲しい!」という作曲家の思いが感じられます。

質量感のあるアクセントを伴って、力強く歌うと良いと思います。

クレッシェンドにそなえる

39~40小節あたりから、この曲で最大の音量となるffに向かうクレッシェンドがあります。

”いま”を少し小さめに入ると、クレッシェンド際のダイナミクスレンジを広く取ることができ、心の底から気持ちがふつふつと沸き立つような感動的なクライマックスシーンとなると思います。

rall.とテヌートを十分に

”わたしは居て”ではrall.(ラレンタンド/しだいに緩やかに)とテヌートを十分に効かせて、言葉を噛みしめるようにしっかりと歌いましょう。

そうすることで”居て”に非常に強い意志とメッセージを感じさせる場面にできると思います。

重要な和音、できれば長く

”居て”のロングトーンは、特にソプラノは高音で大変なのですが、和音もしっかりと確認しておきたいところです。

まずはソプラノ以外のパートでハモるように練習してみてください。B♭という和音になります。レが♮になっていることがポイントで、これによって明るい響きになっています。

その次にソプラノを入れると、全体ではB♭7という複雑な響きを持つ和音になります。

テノールの音が溶け込まずに飛び出してしまうときは、ファルセット(裏声)をうまく活用するとうまくいきやすいと思います。

【F】…42小節~ “わたしは”

Poco meno mosso

Poco meno mosso(ポーコ・メノ・モッソ)は「これまでより少し遅く」という意味の速度記号です。

【F】は曲の最後の場面になりますから、少しテンポを落として堂々と歌いましょう。

熱量を保ったまま

【F】での音量はffとなっています。3~4分程度の短めの小品では、曲のスケール感に対して少し大げさな印象があるため、あまり使われることのない記号です。

《今、ここに》も曲の長さで言えば同程度の曲ですが、あえてffという非常に強い記号を使っているのは、”わたしは うたう”という言葉に、作曲家は非常に強い意志を感じているからのように思います。

ここから先は、弱まることなく、ぜひとも熱量を十分に保ったまま最後まで歌いきって欲しいと思います。

”わたしは”のエコー

42小節からはソプラノが歌う”わたしは”に対し、それを追いかけるように下三声が”わたしは”と歌います。

アルト・テノール・バスの3パートは一体感を持って、ハーモニーも充実させて歌いましょう。音符一つ一つについて和音がどうなっているかも確認しておくと良いと思います。

頼りなくならないように

45小節の3~4拍目では、ソプラノとテノールだけが”うたう”と歌います。

2パートだけになること、低音パートがいなくなることから、少し頼りなくなってしまうおそれがあるフレーズです。そうならないようにしっかり響かせて歌いましょう。特にウ母音が狭くならないように気をつけて欲しいと思います。

riten.(リテヌート/ただちに遅く)がありますから、この2つの4分音符の長さを十分に引っ張ってから次に進みましょう。

複雑なコード進行

46~49小節はエンディングのフレーズです。

アルト・バスが分かれ、複雑さと厚みのあるハーモニーとなっています。

最初のうちは、高声(ソプラノ+テノール)だけ、低声(アルト・バス)だけで取り出してそれぞれ練習しておくと良いと思います。

高声はレ♭の音をずっと伸ばしますから、音が下がってこないようにしっかりキープしましょう。あわせて、ここでもやはりウ母音が潰れてしまわないように意識して欲しいと思います。口の中の空間の奥行きを深く感じるようにするとうまくいきやすいです。

低声はまずはしっかりと自分が歌うべき音を確認しておくと良いと思います。分かれた際の上のパート(アルトのハイ・バリトン)は同じ音の動きとなりますので、音をきちんとそろえておきましょう。47小節に入ると、アルト・バスだけでDの和音(レ・ファ♯・ラ)になります。根音(=和音の土台となる音)はローベースのレの音になりますから、これをよく聴いてハーモニーを整えましょう。

最後に4パートで合わせます。コード進行は次のようになっています。

  • 46小節…A(ラ・ド♯・ミ)
  • 47小節…DM7(レ・ファ♯・ラ・ド♯(=レ♭))
  • 48小節…D♭(レ♭・ファ・ラ♭)

低声の音が変化することで、高声が保続するレ♭の音の役割が変わっていくことを感じながら歌ってみましょう。特に47小節では長7度といって難しい音になりますが、その分複雑な響きがあり、聴かせどころになると思います。

最後の一押し

47小節の低声の”うた”に付けられたテヌートとmolto riten.最後の一押しとも言える表現です。

ハーモニーが崩れないように気をつけながら、しっかり歌いましょう。

音量・熱量をキープ!

48小節にsenza dim.(センツァ・ディミヌエンド)と書かれています。senzaは「~せずに」という意味ですから、ここは「弱くせずに」ということになります。

フェルマータを含むロングトーンで、充実した音量と熱量をキープし、最後まで歌い切ることで、非常に感動的な演奏になると思います。

音の切り方もポイントになると思います。指揮者と気持ちを合わせて、ビシッと決めてみてください。

まとめ

《今、ここに》は、繊細なハーモニーの変化と、言葉の力強さが魅力的な作品です。

音量の変化や和音の色彩、一つひとつの言葉を丁寧に積み重ねることで、より深い音楽になっていくと思います。

本記事が、皆さまの練習や演奏のヒントになれば幸いです。

何か分からない点などありましたら、お問い合わせからご連絡ください。

この度はリクエストありがとうございました。