練習・演奏のポイント

合唱曲『次の空へ』練習・演奏のポイント|クライマックスへ持っていこう

『次の空へ』練習・演奏のポイント
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『次の空へ』は、作詞・作曲者の弓削田健介さんの作品。

ポップス調のためキャッチーで、共感しやすい歌詞やちょっと切ないコードが魅力的な曲です。

この記事ではリクエスト時にいただいた質問の回答を踏まえ、練習・演奏のポイントを詳しく解説しています。

ぜひ最後までご覧ください。

音楽之友社「クラス合唱曲集 レッツ・コーラス!(第二版)」に収録されている楽譜を参考にし、本文中で歌詩などを引用する場合には「””」で示しています。

『次の空へ』の練習番号

練習を始める前に次のように練習番号をつけておきましょう。この番号に沿って解説を進めたいと思います。

『次の空へ』の練習番号
  • 【A】6小節~ “じゅうねんごの”
  • 【B】14小節~ “まっさおの”
  • 【C】23小節~ “いきてゆく”
  • 【D】32小節~ (間奏)
  • 【E】40小節~ “uh”
  • 【F】45小節~ “いきてゆく”

練習番号はどこから練習を始めるかを伝えるために役立つだけでなく、曲全体の構成を理解する助けとなりますので、ぜひ活用しましょう。

『次の空へ』練習・演奏のポイント

『次の空へ』練習・演奏のポイント

【A】つぶやくような雰囲気で

【A】の場面はポップスでいうところのAメロです。

しっとりと、つぶやくような歌う方がマッチする場面です。

言葉の頭を意識しよう

【A】のような場面では、言葉をしっかりと「喋る」ことが大切です。

せっかく素敵な歌詩なので、ぜひとも聞いている人に伝えたいですよね。

合唱で言葉を伝えようとするとき、ポイントになるのは言葉の頭、1文字目です。

この1文字目が聞いている人にしっかり伝わると、歌詩全体が伝わりやすくなるのです。

もちろん、すべての文字が伝わるようにすれば良いのですが、そうするとメロディーの流れが悪くなって、逆に音楽としての美しさが損なわれてしまうのです。

そこで、まずは言葉の頭の文字に丸印をつけてみましょう。(本ブログでは下線で表現します。)

  • じゅうねんごのくを”
  • おいらにかべる”
  • ころのもつ”
  • ろしてなおにどって”

このようになりますね。

印をするだけでもずいぶん意識が変わって、歌詩が聞き取りやすくなると思います。

休符が大事!

【A】の場面での「つぶやき感」を生んでいる要素として、休符があります。

  • “じゅうねんごのぼくを”の後の4分休符
  • “とおいそらにうかべる”の後の2分休符

などですね。

ここに無言の時間があることで、ぽつりぽつりとつぶやくような雰囲気が生まれます。

休符でのポイントは、その直前の音をきっちりと伸ばしきること。

長すぎても、短すぎてもよくありません。

【B】掛け合いと合流を意識して

【B】に入ると、ピアノパートが4分音符を刻み始め、音楽に動きが出てきます。

メロディーのずれ

【B】で最初に歌うのはソプラノ+男声。遅れてアルトが入ります。

つまり、メロディーをずれて歌う掛け合いになっているのですね。

【A】はユニゾンが主体でしたが、【B】ではそういった変化があることを、まずは押さえておきましょう。

ここでも言葉の頭

言葉の頭に◯をつける方法は、【B】ような掛け合いの場面でも有効です。

こうすることで、言葉が伝わりやすくなるだけでなく、メロディーがずれて入ったことが伝わりやすくなるからです。

“そのなかですこしだけおとなになったぼくも”というフレーズに◯をつけてみましょう。自分のパートだけでなく、他のパートも同様にしてみてください。

そうすると、◯のついた場所が、パートによってずれていることが分かりやすくなりますね。

◯の場所を確認しながら、他のパートがどんなタイミングで入ってくるかを感じ取りながら歌いと、掛け合いが上手く決まります。

合流とクレッシェンド

“いっしょにわらってる”のフレーズにも同じように◯をつけてみると、気づくことがあると思います。

ここまではパートによって◯がずれていましたが、ここでは位置がそろいますね。

つまり、ソプラノ・アルト・男声の3パートが歌うタイミングが一致するということです。

これを「タテがそろう」とよく言います。

3パートが合流することで、音の厚みが増します。

そうなったら今度はクレッシェンドがあります。「だんだん大きく」という意味ですね。【C】のfに向かって盛り上げていきましょう

【C】音量にメリハリをつけて

【C】はポップスで言うところのサビになります。

大きく歌う前に大きくブレス

【C】はf(フォルテ/強く)でしっかり盛り上げたい場面です。

大きな声で歌うために大切なのが、ブレス、つまり息継ぎです。

【C】に入る直前、つまり22小節と23小節の間でたっぷりと大きくブレスを取ることを意識しましょう。

ブレスを取るために少し音が抜けてしまうのは問題ないはずですが、ブレス記号や休符を書いていないことからすると、作曲家としてはこのクレッシェンドを次のfになるべく繋いで欲しいという意図があるかもしれません。

そのため、あまり大きな隙間を空けること無く、半拍分で瞬間的にブレスを取るようにすると良いと思います。

f・mfの歌い方

【C】に入って最初の2小節はf。

ここはたっぷりと、豊かなレガート(なめらかに)で歌いましょう。

その後、デクレッシェンドがありmfとなります。

ここでは音量を小さくするだけでなく、歌い方も変えてみたいところ。

fのところは8分音符が主体だったのに対し、mfのところは16分音符が主体で、細かいリズムになっています。

こうしたフレーズでは、たっぷりと歌い上げるというよりは、歌詩を丁寧に「喋る」ような歌い方を意識しましょう。

音量と歌い方の変化をつけると、音楽にメリハリが出てきます。

ユニゾンを大切に

29~30小節は再びmfが出てきます。

【C】の他のところと異なるのは、ここがユニゾンであること。

これまで3パートでハモっていたところから、一気に響きがシンプルになることで、歌詩をより印象的に伝えることができます。

このmfは出来るだけ大切に、優しく丁寧に歌いましょう。

ピアノパートの伴奏が変化することも感じ取ると、イメージをつかみやすいと思います。

2カッコではfをキープ

1カッコではmfを大切に歌いましたが、2カッコではfをキープする必要があることはしっかり押さえておきましょう。

“あるこうつぎのそらへ”という前向きな歌詩にふさわしく、力強く歌い切ってください。

『次の空へ』というタイトルを歌う歌詩でもありますね。

【D】高音をきらめくように

【D】はピアノパートによる間奏です。

右手の高音のパッセージはきらめくように弾きましょう。

【E】ここからが見せ場

【E】の場面は一曲を通して、一番の聞かせどころとなる場面です。

【E】からクレッシェンドして、転調し、【G】に入ってのソロ、コーラスでのffの流れをしっかり表現・アピールしてください。

クリアするべき要素も多くなっています。順番に見ていきましょう。

入りの音をイメージして

まず難しいのが【E】の入り。

音がぶつかる(アルトの「ミ」と男声の「ファ♯」)上、しばらく休みだったこともあり、音を見失いやすいところです。

ピアノを38小節から弾いてもらい、正しい音で入る練習を繰り返しましょう。

直前のピアノパートから自分のパートの音がイメージできるよう、集中する必要があると思います。

クレッシェンドの前は小さく

42小節からのクレッシェンドは、転調するところに向かって大いに盛り上げましょう。

ここでのクレッシェンドのコツは、最初は小さめに入こと。

40小節には音量的には何も書かれていませんが、あえてmpくらい小さく入ることで、その後のクレッシェンドのレンジ(音量変化の幅)が大きく取れ、非常に効果的です。

ピアノパートも同様に小さく入り、そこからcresc.していきましょう。

ビート感を強調して

ピアノパートに関連してもう一つ。

ここから8分音符を刻む伴奏形となっています。

ここはスタッカートおよびスタッカティッシモがついているところは少しアクセント的に、期待感を煽るようなイメージで弾いてみましょう。

転調で新しい世界へ

44小節の”そらへ”でヘ長調へ転調します。

ほとんど前触れがない転調のため、一気に新しい世界が広がるような印象のある、鮮烈な場面です。

“※難しい場合はこの1小節コーラス省略OK”と但し書きがありますが、コンクールなどでのアピールを考えると、あったほうが確実に良いでしょう。

全体の音が半音上がることになるので、歌う音を高めにイメージすると、明快なサウンドが得られると思います。

【G】ラストシーンにふさわしく

ラストにふさわしい雰囲気を作りましょう。

声部による対比

【G】ではサビのメロディーを歌うパートの数やハモリが変わっていくことが特徴です。

  1. “いきてゆく~”…ソプラノソロ(1パート)
  2. “ありがとう~”…コーラス(3パート)
  3. “あるこうつぎの~”…コーラス(ユニゾン)

②が歌う人数も多く、ハモりますので、音の厚みが一番あるフレーズです。音量的にもff(フォルティッシモ/とても強く)で、クライマックス。

①③は②と差がつくように意識しましょう。そうすることで音楽にメリハリが出てきます。

その意味で、①のソプラノソロは、朗々と歌うことが難しければ、fといっても、自然な無理のない発声・音量で歌っても良いと思います。

ピアノパートはそのに配慮してはじめからmfですが、この場合はさらに控えめにすると良さそうです。

短調の和音を切なく、美しく

50小節の”だきしめ“と伸ばす音は、ハーモニーが大切。

短調の切ない響きの和音を、美しく響かせましょう。

それぞれのパートの音が跳躍して上がるため、乱暴にならないよう、より丁寧に歌うことを意識しましょう。

フェルマータを伸ばしている間は、自分の音が下がらないように。

また、周りの声を良く聴いて、響きを溶け合わせることを意識してください。

終わりに向かう雰囲気づくり

ffを歌いきった後は、mfと落ち着き、曲の終わりの雰囲気に向かいましょう。

51小節からはややテンポを落とし、しっとり歌っても良いと思います。

また、53小節で”あるこうつぎのそらへ”という歌詩を繰り返しますが、ここはこれまでよりいっそう大切に、優しく歌いたいフレーズです。

まとめ

ポイントをまとめておきます。

  • 【A】つぶやくような雰囲気で
  • 【B】掛け合いと合流を意識して
  • 【C】音量にメリハリをつけて
  • 【D】高音をきらめくように
  • 【E】ここからが見せ場
  • 【G】ラストシーンにふさわしく

【E】~【G】がこの曲での一番の聞かせどころとなります。

ですが、だからと言って【A】~【D】が大切ではないということはありません。

【E】~【G】で感動的な音楽にするために、【A】~【D】をどう歌うか、どうクライマックスまで持っていくかが重要です。

さらに詳しく知りたいことがあれば、お問い合わせなどからお気軽にご連絡ください。

最後までご覧いただきありがとうございました。