こんにちは!
今回は今成敏夫作詩・木下牧子作曲による、ア・カペラ混声合唱のための《春の予感》を紹介します!
難易度・編成、組曲の魅力、各曲の紹介などを解説。
この曲集の魅力を是非お伝えできればと思います。
知らなかった人、これから聴いてみたい人、これから歌ってみたい人のお役に立てば幸いです。
それではどうぞ!
もくじ
《春の予感》ってどんな曲集?
まずは《春の予感》という曲集について、「この曲知らない!」「初めて知った!」という人のためにざっくりと紹介しておきます。
作詩は今成敏夫、作曲は木下牧子
《春の予感》の作詩は今成敏夫、作曲は木下牧子です。
春・夏・秋・冬をテーマとした曲が各2曲ずつ、合計8曲収録されています。
曲のサブタイトルにはア・カペラ混声合唱のためのとある通り、無伴奏による合唱作品となっています。
木下牧子さんは
- 《アカペラ・コーラスセレクション》のような無伴奏作品
- 《地平線の彼方へ》のような親しみやすいピアノ付き合唱曲
- 《方舟》に代表されるような大規模な作品
など幅広く手掛けておられる作曲家。
合唱畑の方は意外とご存じないかもしれませんが吹奏楽をはじめとした器楽作品も多く書かれています。
本曲集《春の予感》は曲の2~3分の曲がたくさん並び、小品集のような趣があります。
一方で東北大学混声合唱団と言うおそらく規模大きめの団体による委嘱作品と言うことで、声部をリッチに使ったヴォリューム感のあるサウンドに仕上がっています。
作詩は今成敏夫さん。
合唱作品の詩ではあまりお見掛けしない名前ですね。
ご本人のウェブサイトから引用。
パステルのやわらかい色合いに魅せられて、信州やヨーロッパの
風景を描き続ける。講談社より「愛のメルヘン」、白泉社より「高原の詩」
山と峡谷社より「風の詩・森のささやき」、至光社より「ペタともぐら」
等の絵本・画集を出版する。引用元:Pastel Magic
《春の予感》で使われている詩はこの紹介の中で出てくる『風の詩・森のささやき』から選ばれています。
詩と絵画によって構成されている詩画集です。
今成さんの画家としての作風は、パステル調の温かく柔らかいタッチの絵が多いですね。
なんだか和みます。
青や緑系の寒色がメインの絵はちょっと東山魁夷の絵を彷彿とさせます。
おそらく信州(長野県)を好んで描いたという点で共通しているところがあるのでしょう。
そう、長野県!
私は《春の予感》の詩を読んで、なんだか長野っぽいな~と思ってましたがまさしくその通り!
『風の詩・森のささやき』の出版社は山と渓谷社だったりして、合唱人より登山家の方がなじみ深そうです(笑)。
難易度は中級
《春予感》の難易度は中級です。
全体的にdiv.が多く、和声の進行を取ってみてもなかなか凝っています。
曲の長さ的に小アンサンブル的な作品かと思いきや、どちらかと言うと人数がいる合唱団の方が向いていそうな内容です。
私も初めて楽譜を見たときに驚きました。
中規模くらいの合唱団におすすめ 歌い手の力は結構重要
《春の予感》は中規模くらいので、美しい四季を表現したい団におすすめの曲集です。
繰り返しになりますが、曲の長さとは裏腹にdiv.を多用したリッチなサウンドが特徴の作品です。
和音の進行も結構凝っており、一筋縄ではいきません。
一つ一つの音が和音変化に重要な意味を与えているので、歌い手ひとりひとりがしっかり歌えるということもこの作品を演奏する際にはポイントとなってきそう。
一方で、やはりそれだけ贅沢に音を使っているだけの効果が出ている作品でもあります。
四季折々の情景が非常に豊かに鮮やかに描写されています。
合計8曲と結構たくさんありますが、それぞれの曲がそれぞれ個性を持った曲想。
是非通して聴いたり聴いたりしてみたい作品ですね。
《春の予感》の各曲を紹介!
続いては《春の予感》の全8曲を紹介します! 収録曲は以下の通り。
- 『春の予感』
- 『キンポウゲの草むら』
- 『虹』
- 『星の話し』
- 『高原列車』
- 『たそがれ』
- 『冬の小さな旅人たち』
- 『シュプール』
前述の通り、春夏秋冬をテーマにした曲がそれぞれ2曲ずつとなっています。
それではどうぞ!
1.『春の予感』
表題曲『春の予感』。
曲の大部分が5/8拍子で、しなやかさと軽やかさに富んだ曲になっています。
厳しい冬が明け、草木がぐんぐんと芽吹いていくような様を描いた冒頭のヴォカリーズには強い期待感を感じますね。
中盤では動きのある場面もあり、曲集のオープニングとして非常に効果的な曲です。
2.『キンポウゲの草むら』
アンダンテ的な4拍子の部分と、軽やかな6/8拍子が印象に残る曲です。
特に6拍子の部分ではオシャレ音使いが、独特の浮遊感を醸し出していて非常に魅力的。
3.『虹』
木下牧子の虹と言えば、
「ひーとーびとのーかなしいーおもいがーー」
の方を思い浮かべますが(《いつからか野に立って》です)、これは違う方。
三連符と8分音符が複雑に絡み合う伴奏パートと女声のグリッサンドが相まってうねる様な、独特のサウンドを作り出します。
《春の予感》の中でもかなり難しい曲です。
4.『星の話し』
《春の予感》の中では最もオーソドックスっぽい書法で書かれた作品。
ゆったりとしたハーモニー重視のアカペラ作品と言った趣です。
♭系の調性・和音が中心となっており、高原の夜の静謐さが描かれます。
5.『高原列車』
『星の話し』とは打って変わって非常に快活で元気なサウンド。
6/8拍子に乗せて目まぐるしく変化する和音が、次々に移り変わる列車からの車窓風景を思わせます。
ところで高原列車と聞いて何を思い浮かべますか?
私は、八ヶ岳高原線(小海線)を思い出しました。
日本で一番高いところを走る列車で、日本で一番高いところにある駅、野辺山駅も通ります。
6.『たそがれ』
前半では和声による色付けは極力抑えられ、シンプルなメロディーとヴォカリーズのオブリガートによって構成された音楽が続きます。
このような書法は木下作品では結構珍しいんですよ。
寂しげな夕の表情が良く再現されています。
そして後半からは声部を贅沢に使った豊かなハーモニーが登場。
この前後半の対比が非常によくできた作品です。
歌う方はなかなか大変ですね。
7.『冬の小さな旅人たち』
「bon bon bon」や「pa pa pa」などのヴォカリーズによる軽快な伴奏が印象的な曲。
短調で進み、これから訪れる厳しい寒さを予感させます。
中盤ではロマンチックな詩の内容に応じて長調に転調。このあたりは聴かせ所でしょう。
8.『シュプール』
快速な4拍子で、裏打ちをする伴奏パートが一層の疾走感を演出します。
降り積もった雪、一面の銀世界の美しさを高らかに歌い上げます。
まとめ:《春の予感》(今成敏夫/木下牧子)
それではまとめです!
《春の予感》の紹介でした。
全8曲、四季折々の美しい自然を豊かに、鮮やかに表現した作品です。
私は楽譜を見ていて長野県に行きたくなりました(笑)。
多声部で書かれている箇所も多く、和声も凝っているので中規模の団体に歌って欲しい作品です。
《春の予感》に興味を持たれた方のために、追って各曲の解説も進めていく予定です。
- 『春の予感』
- 『キンポウゲの草むら』
- 『虹』
- 『星の話し』
- 『高原列車』
- 『たそがれ』
- 『冬の小さな旅人たち』
- 『シュプール』
今回はここまで。お読みいただきありがとうございました!