こんにちは!
今回は寺山修司作詩・信長貴富作曲、《思い出すために》より『てがみ』について解説していきたいと思います!
曲調や難易度、曲の魅力・鑑賞のポイント、演奏・練習のポイントなどついて深堀りしていきます。
この曲を知らなかった人、これから聴いてみたい人、これから歌ってみたい人のお役に立てば幸いです。
それではどうぞ!
もくじ
『てがみ』ってどんな曲?
まずは『てがみ』という曲について、「この曲知らない!」「初めて知った!」という人のために、作詩者・作曲者、難易度、曲調についてざっくりと紹介します。
作詩は寺山修司、作曲は信長貴富
『てがみ』は全6曲からなる寺山修司の詩による6つのうた《思い出すために》の2曲目。
作詩は寺山修司、作曲は信長貴富になります。
難易度は…やや簡単~ふつう
『てがみ』の難易度は、やや簡単~ふつう程度です。
リズムは難しくなく気軽に取り組めますが、音取りやハーモニーの面で少々厄介な部分もあります。
曲調は…ふわふわ、ゆったりと流れる3拍子
『てがみ』はゆったりと流れる3拍子。
一言で言うとふわふわっとした不思議な曲です。
詳しくは「魅力について語る!」で。
『てがみ』の魅力について語る!
続いては『てがみ』という曲を、「聴いたことある!」「これから聴く!」という人に向けて、曲の魅力や鑑賞のポイントについて語っていきたいと思います。
メロディー・ハーモニーに不思議な浮遊感
漂う不思議な浮遊感。
これが『てがみ』という曲の特徴でもあり魅力でもあります。
歌われるメロディーは行く当てもなく、宙をさまよっているような印象。
主音(その調の中でメインになる音)がはっきりしていないのが理由です。
また、和音の使い方も浮遊感の理由。
転回形が使われていること、減5や増5の和音が多用されていること、ドミナント的な動き(Ⅴ→Ⅰのような動き)が無いことなどが特徴として挙げられます。
風景を描くかのようなピアノパート
ピアノパートにも注目。まるで風景を描いているかのようです。
中音域の2度でぶつかる音には雫がしたたる音、高音部の5度系のアコードは水面に月の光が反射しているようなイメージを抱きます。
存在感のあるクライマックスと色彩感
中盤には大きくないものの、存在感のあるクライマックスがあります。
この部分では他の部分と異なりMaj7の硬質なコードが響きます。
それにより他の部分との対比を生み、確たる存在感に繋がっています。
FM7→F13→E♭M7→G♭M7
という色彩感の移り変わりも良いですね。
薄暗い海の蒼さというか碧さというか、そんな色合いに感じます。
G♭M7のコードの部分は全曲を通して唯一、合唱の四声帯で解決したコードを形成するところでもあります。
『てがみ』の練習・演奏のポイント!
最後に、『てがみ』という曲を「これから歌う!」「今練習してる!」という人に向けて、練習・演奏のポイントについて解説します。
浮遊感のある和音を決めるための3つのポイント
再三になりますが、この曲の特徴でもあり魅力でもあるのが浮遊感のある和音。
曲の良さを引き出すためにも、ここを押さえましょう。
以下の3つのポイントにまとめてみます!
- ピアノパートから同じ音を探す
- 直前の音から入りの音をイメージする
- 鳴るべきハーモニーの理解と確認
1.ピアノパートから同じ音を探す
良いハーモニーのためには正確なピッチで歌うことが必要です。
そのためにはまず、ピアノパートをよく聴いてそこに音を合わせることです。
具体的な例を挙げます。
9小節目のバスパートのFis音は、ピアノパートの左手が鳴らしていますよね。
その後もしばらくベースラインを辿って同じ音を出しているかと思います。
ここをよく聴けば正しいピッチで歌えそうです。
他にも同様の場所を探してみましょう。
2.直前の音から入りの音をイメージする
2つ目のポイントは直前の音から入りの音をイメージすることです。
先ほどと同じように、9小節目の音を例に挙げます。
バスのFis音はピアノパートと同じということでしたが、本来は同時に鳴らし始める音なので、ピアノを聴いてから歌い始めるということはできませんよね。
なのであらかじめFisの音をイメージしておく必要があります。
そのためには、直前のアルトのメロディーを良く聴いて、”み”と歌う音をイメージすると良いと思います。
オクターブ下ですが同じ音になっていますよね。
直前のピアノパートの和音から音を掴めるよう練習するというやり方もありますが、同じ音が無いので少々レベルが高いやり方になります(慣れてきたらやってみましょう)。
3.鳴るべきハーモニーの理解と確認
3つめのポイントは、鳴るべきハーモニーの理解と確認です。(ちょっと難しい内容です。)
自分の音が取れていても、全体として楽譜に書かれているハーモニーが鳴っていなければ意味がありません。
そのためには、まず楽譜に書かれているのがどんな和音なのか理解しておく必要があると思います。
例えば20小節目は、ソプラノとバスがA音(=根音)、アルトがE音(第5音)、テノールがCis音(第3音)なので全体としてはA dur(コードネームで言うとA)の和音が鳴るはずです。
このように正解となる和音をあらかじめ理解しておき、アンサンブルの時には本当にそのようなハーモニーになっているか確認してみましょう。
ちょっと難しいのであと2か所くらい確認しておきたいと思います。
Ges dur(コードネームで言うとG♭)になります。
アルトとバスのGes音が根音、テノールのDes音が第5音、ソプラノのB音が第3音ですね。
これは普通の長調のコードです。
[jin-yohaku440]
ここで鳴るべき和音はA dur(A)。20小節目と同じようですが配置が違います。
ここではバスがE音(第5音)を歌う第二転回形となっています。
この転回形が浮遊感を生んでいる要因の一つでしたね。
バスは普段根音を歌うことが多いので、バランスに注意が必要です。
せっかくなのでややこしめの和音も取り上げてみます。
コードネームで書くならA6-5とでもなりましょうか。(違ってたらすみません。)
ポイントはアルトの第5音が半音下がっていて、テノールとぶつかっていることです。
普通の和音のようにドミソでハモってしまっていないか、テノールと2度になっているかがチェック項目になりそうです。
いったんあえてA6を作ってみてから、アルトの音を半音下げる、というやり方でも良いかもしれませんね。
まとめ:『かなしみ』(寺山修司/信長貴富)
それではまとめです!
《思い出すために》より『てがみ』でした。
ふわふわとした不思議な浮遊感が漂う幻想的な曲でした。
中間部にあるピリッとした硬質な盛り上がりも聴きどころの一つです。
取り組む際には自分以外のパートをよく聞いて、鳴るべきハーモニーが鳴るように練習しましょう。
今回はここまで。お読みいただきありがとうございました!