そんな疑問に答えます。
筆者は指揮法を勉強した上で、5年間以上合唱指揮者をやっています。コンクールでの受賞歴もあります。
指揮者の役割としては大きく分けて2つあります。そして結論、指揮者のいる意味は大きいです。
良い演奏ができるかどうかは良い指揮者がいるかどうか、良い指揮を振れるかどうかに掛かっています。
この記事を読めば、指揮の持つポテンシャルを発揮させるために必要なことが分かります。
- 指揮者としての心掛け
- プレイヤー(歌う側)として磨くべきスキル
ぜひ最後までご覧ください。
指揮者の役割2つを解説
指揮者のするべき大きな役割は次の2つです。
- 本番に向けた練習をする
- 本番で指揮を振る
指揮者の役割1.本番に向けた練習をする
合唱団でもオーケストラでも本番で演奏を披露する前には必ず練習を行います。
練習の内容を組み立て、実施していくのが指揮者の1つ目の役割です。
本番の演奏が上手くいくかどうかは、この練習の積み重ねに掛かっています。そういった意味で指揮者は責任重大です。
練習の組み立てとはどんなものか、ざっと箇条書きで紹介します。
- 練習を始める「練習始めます!」
- 体操・発声の仕切り「こんな声で歌ってね!」
- パート練習の補習「この音気をつけて!」
- アンサンブルの手直し「この和音は聴き合って!」
- 楽譜の解釈の共有「この場面はこんなイメージ」
- 振り方の打ち合わせ「ここはこんな風に振ります」
- 練習時間の管理「5分休憩後、次の曲やります!」
などなど…、これらを練習の進み具合やメンバーの参加状況などによって臨機応変に行っていくことになります。
指揮者の役割2.本番で指揮を振る
音楽になじみのない方でもイメージしやすいのがこちらの役割です。
本番において曲の始まりから終わりまで、指揮によってプレイヤー(歌う側)に指示を伝えます。
具体例を挙げます。
- 曲を始める
- 強弱の指示
- フレージングの指示
- テンポ変化の指示
- 曲を終える
などなど…、ここには書ききれないぐらい指揮者は色々な情報をプレイヤーに伝えています。実はそうなんです。
冒頭にも書きましたが、この時の指揮の良し悪しは演奏の良し悪しにダイレクトに響きます。
指揮者の役割その他
以上の2つが指揮者の大まかな役割でしたが、場合によっては他にも色々なお仕事が発生します。
団体によっても変わると思いますが、いくつか例を挙げてみます。
- 選曲(演奏曲を考える)
- ホール(本番会場)との打ち合わせ
- オーダー(並び方)を決める
- パートリーダーとの打ち合わせ
- 練習場所のやり取り
- 渉外(他の団体とのやり取り)
- 客演の先生とのやり取り
- 中長期的な練習計画を決める
指揮者が不要と思われてしまう理由【2つの問題と解決策】
このような疑問に答えます。
指揮者が不要と思われてしまう理由としては次の2つの問題があると考えています。
- 指揮者側の問題
- プレイヤー側の問題
これら2つを解説した上で、「ではどうすれば良いのか」という具体的なアクションプランを紹介したいと思います。
指揮者側の問題:「指揮→音楽」の順序を理解しよう
自分が指揮をしているにもかかわらず「指揮者って意味あるの?」と思ってしまうのには理由があります。
それは「指揮→音楽」という大前提をきちんと理解していないからです。
前に説明したように、指揮者というのはプレイヤーに対して指示を与えます。
それにプレイヤーが応じる形で音楽が出てきます。
初心者の方が陥りがちな間違いとしては「音楽を聞いてそれに合わせて腕を動かす」というものです。
- 本来のあるべき姿:「指揮→音楽」
- よくある間違い:「音楽→指揮」
となっているので順序が逆になってしまっています。
このような状態では、当然ながら「指揮者が音楽を動かしている」という実感は得られません。
結果、「指揮者っているいる意味ないじゃん…」となってしまうのです。
プレイヤー側の問題:指揮を見る目を養おう
プレイヤー側にも問題があります。
それは「指揮を見て演奏に反映させる」という経験が圧倒的に足りないことです。
この経験不足により、
- 指揮を読み取る力
- 読み取った上で演奏に反映させる力
の2つが養われていないという状態になります。
指揮者が「指揮→音楽」という前提を理解した上で振っていたとしても、それを見る側が理解できなければ意味がありません。
仮に指揮者がやって欲しいことを理解できたとしても、それを演奏に反映させる技術が無ければ、これもまた演奏は変わりません。
そうなると指揮者的には「やっぱり指揮者って意味無いな…」となってしまいますし、プレイヤー側の人もそれ以上指揮者から何かを汲み取ろうとしなくなってしまいます。
【解決策】指揮のポテンシャルを発揮させる5ステップ
指揮者側、プレイヤー側それぞれの問題を解決するためにはどうすれば良いでしょうか。
次の5ステップでトレーニングを積みましょう。
- 「指揮→音楽」という意識を共有(全体)
- 自分がどんな音楽を作りたいかをイメージ(指揮者)
- 最低限のバトンテクニックを身につける(指揮者)
- そのように振る理由の説明と理解(全体)
- 指揮と演奏が連動していることを体感(全体)
ステップ1.「指揮→音楽」という意識を共有(全体)
「指揮→音楽」という意識ができていなことは指揮者の問題点として挙げました。
このことは指揮者だけでなくプレイヤー側もぜひ知っておいて欲しいと思います。
これを知っているだけで指揮の見方が変わるはずです。
ステップ2.自分がどんな音楽を作りたいかをイメージ(指揮者)
「指揮→音楽」を実践するには、指揮者自身がどんな音楽を作りたいのかを具体的にイメージすることが必要です。
このイメージを明確に持つことでそれが指揮の動きに現れます。
例を挙げます。レベル感は様々ですがこのくらいからのスタートでOKです。
- フォルテが書いてある→迫力のある音量が欲しい
- スタッカートが書いてある→軽快なタッチの音が欲しい
- 歌詩が素敵→聞いている人に言葉をしっかり届けたい
ステップ3.最低限のバトンテクニックを身につける(指揮者)
続いては最低限のバトンテクニック(=指揮法)を身につけましょう。
自分が作りたい音楽のイメージが持てていれば、ある程度はそれが指揮に現れます。
それをより効果的にプレイヤーに伝えるために必要なのが指揮法の技術です。
「ここはこういう音が欲しい、だからこのテクニックを使う」という状態になれるのがベストです。
ステップ4.そのように振る理由の説明と共有(全体)
作りたい音楽のイメージができ、それを指揮としてどのように振ればよいか分かりました。
続いてはそれを練習・リハーサルの場でプレイヤーと共有しましょう。
「ここはこんな音が欲しいのでこう振ります」と伝えます。
このステップの目的は「プレイヤーに指揮の見方を学んでもらうこと」です。
ステップ5.指揮と演奏が連動していることを体感(全体)
最後に指揮者の指示に従って曲を練習していきます。
ここで「指揮の動き」と「それをどう演奏に反映させたらよいか」が結びつきます。
トレーニングを繰り返していくことにより、口頭による説明を省いても指揮の動きに対応できるようになってきます。
ここまで来ればこのような体感が得られます。
- 指揮者側→自分の指揮が伝わる・指揮で音楽が変わる
- プレイヤー側→指揮の見方が分かる・指揮で音楽か変わる
【結局、指揮者は必要?】有り無しのメリット
世の中には色々なスタイルの合唱団があります。
指揮者を置くか置かないかで、どちらが優れているということはありません。
それぞれに良いところがあります。
指揮者を置くメリット
- 指揮者が音楽の方向性を明確に示すことで、説得力のある音楽が作れる(など)
指揮者無しのメリット
- プレイヤーの自主性が際立ち、ライブ感の高い演奏ができる(など)
私自身は指揮者有りが好き
私は合唱のような音楽の場合、指揮者有りのメリットの方が大きいと感じます。
指揮者の明確なビジョンのもと音楽づくりを行うことで、強い説得力が得られます。
楽譜の解釈によっては、その魅力が増幅され、作曲者の予想を越えた演奏ができる可能性もあります。
一方指揮者無しの場合、プレイヤーの音楽センスが相当高ければメリットを発揮します。
しかしアマチュアの場合、どうしても中途半端な演奏になってしまいがちです。
攻め切るべきところ、訴求するべきところが甘くなってしまうことが多いと感じます。
まとめ:現役プレイヤーが語る「指揮者の役割」とは
この記事の結論をまとめておきます。
- 指揮者の役割…練習の組み立てと本番
- 指揮の影響力を発揮するには「指揮者」「プレイヤー」双方のレベルアップが必要
- アマチュアでは指揮有りのメリットが大きい
指揮をきちんと見れるようになることは指揮者・プレイヤーの両方に大きなメリットがあります。
良い演奏にも必ず繋がりますので、日々の練習でぜひ取り組んでみてください。
こちらの記事(【まとめ】初心者のための指揮法完全ガイド|合唱指揮者が基礎から解説)では指揮法を学ぶ上で知っておきたい知識をまとめています。あわせてご覧ください。