こんな疑問に答えます。
拍子の特徴は次の2つです。
- 拍(≒音符)をいくつかまとめたもの
- 何拍かごとに強さを感じるタイミングがある
でもこれだけだとピンと来ませんよね。
そこでこの記事では具体的な譜例や音源を使って分かりやすく解説したいと思います。
また、実際の合唱作品でも紹介しますのでお楽しみに。
拍子の考え方は慣れないと難しいですが、マスターできると楽譜を読む力がグッと早くなると思います。
ぜひ最後までご覧ください。
もくじ
拍子の意味【分母と分子が表すもの】
青島広志著の『究極の楽典[新装版]』より引用してみます。
「拍子」は、実際には何拍かごとに心理的、物理的な強点、力点を周期的に設定して拍をまとめるものです。結果的には、何拍かごとにアクセントを付けて、拍を二つから五つほどのまとまりに作り上げるということになります。つまり、拍に乗ったリズムを、さらに頑丈な檻の中に閉じ込めて、観察できるようにしたものが拍子なのです。
引用:青島広志(2019年).『究極の楽典』
ちょっと難しいですよね。ポイントは以下になります。
[拍子の特徴]
- 拍(≒音符)をいくつかまとめたもの
- 何拍かごとに強さを感じるタイミングがある
これでもまだ難しいと思うので、詳しく解説していきます。
拍子の書き方【分数のように表す】
拍子はこのように分数の形で表します。
分数なので、読むときは下の数字から先に「よんぶんのさんびょうし」となります。
分母と分子の数字の意味【どの音符をいくつまとめるか】
拍子は分数の形で書きますが、数学での意味とは少し異なります。
- 分子…基準の音符を何個まとめるか
- 分母…基準の音符を決める
先ほどの3/4拍子では「基準は4分音符。それを3つまとめる拍子」ということになります。
楽譜では拍子のまとまりは小節線で区切って表されます。
まだ良く分からない人も多いと思いますので、続いては実際の楽譜を見ながら音源を聴いてみましょう。
単純拍子の読み方・数え方【よく見るものを紹介】
拍子にはいろいろありますが、まずは「単純拍子」と呼ばれるものの中で特によく見かけるものを紹介します。
これらを知っておけば標準的な曲はだいたい歌えるようになります。
2/4拍子
2/4拍子は4分音符を2つずつまとめるという意味になります。
楽譜を見ると、確かに1小節の中に4分音符が2つ入っていますね。
音源も聴いてみてください。打楽器の高い音と低い音が聴き取れると思います。
- 1拍目(高い音)…強拍
- 2拍目(低い音)…弱拍
言葉で表すと「イチ、ニー、イチ、ニー」のように「イチ」が強く感じられると思います。
2/4拍子の合唱曲
思いついたら書きます。
3/4拍子
すでに例として挙げた3/4拍子です。
1小節の中に4分音符が3つ入っていることが分かります。
- 1拍目(高い音)…強拍
- 2,3拍目(低い音)…弱拍
言葉で表すと「イチ、ニー、サン、イチ、ニー、サン」のように「イチ」が強く感じられると思います。
3/4拍子の合唱曲
いくつか例を挙げてみたいと思います。
- 『二十億光年の孤独』(作曲:木下牧子)
- 『いっしょに』(作曲:木下牧子)
『二十億光年の孤独』はスピーディーな3拍子、『いっしょに』はゆったりとしたアカペラ(無伴奏)の作品です。
4/4拍子
1小節の中に4分音符が4つ入っていることが分かります。
- 1拍目(高い音)…強拍
- 2,3,4拍目(低い音)…弱拍
言葉で表すと「イチ、ニー、サン、シー、イチ、ニー、サン、シー」のように「イチ」が強く感じられると思います。
4/4拍子の合唱曲
4/4拍子の曲は中学生向けの作品もたくさんあります。
- 『マイバラード』(作曲:松井孝夫)
- 『名づけられた葉』(作曲:飯沼信義)
- 『未来へ』(作曲:信長貴富)
『名づけられた葉』は前奏の力強い4分音符が大変印象的です。
複合拍子の読み方・数え方【小さなまとまりを1拍と捉える】
ここからは少し難しい複合拍子を紹介します。
複合拍子というのは「音符の小さなまとまりを大きな1拍と捉える拍子」です。
これも言葉だけではピンと来ないと思うので、具体例をご覧ください。
6/8拍子(2拍子の仲間)
6/8拍子は「8分音符を6つずつまとめる」という意味になります。
3/4拍子と同じようですが、6/8拍子には「8分音符×3」の小さなまとまりがあるところが違います。
1小節の中に「8分音符×3」の小さなまとまりが2つあるので、6/8拍子は2拍子の仲間となります。
それを踏まえつつ音源を聴いてみましょう。今回は2種類の打楽器を使っています。
- 大きな1拍目(高い音)…強拍
- 大きな2拍目(低い音)…弱拍
- 8分音符(トライアングル)…小拍
言葉で表すと「イチ、ニー、サン、ニー、ニー、サン」のように感じられると思います。
また、最初の「イチ」が一番強く感じられますね。
6/8拍子の合唱曲
6/8拍子は難しいようですが、曲はたくさんあります。
それだけ魅力的な拍子であると言えると思います。
- 『夢の世界を』(作曲:橋本祥路)
- 『リフレイン』(作曲:信長貴富)
『リフレイン』では6/8拍子の「ゆらぎ感」が詩の雰囲気とよくマッチしています。
9/8拍子(3拍子の仲間)
9/8拍子は「8分音符を9つずつまとめる」という意味になります。
1小節の中に「8分音符×3」の小さなまとまりが3つあるので、9/8拍子は3拍子の仲間となります。
- 大きな1拍目(高い音)…強拍
- 大きな2,3拍目(低い音)…弱拍
- 8分音符(トライアングル)…小拍
言葉で表すと「イチ、ニー、サン、ニー、ニー、サン、サン、ニー、サン」のように感じられると思います。
また、最初の「イチ」が一番強く感じられます。
9/8拍子の合唱曲
- 『雨』(作曲:木下牧子)
- 『蓮の花が咲いた日』(作曲:木下牧子)
『雨』では9/8拍子の長いフレーズ感に加え、ドリア旋法のメロディーがアンニュイな雰囲気を醸し出しています。
12/8拍子(4拍子の仲間)
12/8拍子は「8分音符を12つずつまとめる」という意味になります。
1小節の中に「8分音符×3」の小さなまとまりが4つあるので、12/8拍子は4拍子の仲間となります。
- 大きな1拍目(高い音)…強拍
- 大きな2,3,4拍目(低い音)…弱拍
- 8分音符(トライアングル)…小拍
言葉で表すと「イチ、ニー、サン、ニー、ニー、サン、サン、ニー、サン、シー、ニー、サン」のように感じられると思います。
また、最初の「イチ」が一番強く感じられます。
12/8拍子の合唱曲
- 『青葉の歌』(作曲:熊谷賢一)
『青葉の歌』では12/8拍子のたっぷりとしたフレーズ感が存分に生かされた作品となっています。
混合拍子の紹介【異なる単純拍子の組み合わせ】
ここまで紹介してきたのがオーソドックスなものの例ですが、分母と分子の数字を変えることでいろいろな拍子が作れます。
クラス合唱のレパートリーではあまり見かけないですが、知っておくとより理解が深まるので聴いてみましょう。
5/4拍子の合唱曲
- 方舟(作曲:木下牧子)
5拍子の曲として有名なのが木下牧子さん作曲の『方舟』。
普段とは違う、切迫感のあるリズムが生かされています。
7/8拍子の合唱曲
- 『行進』(作曲:荻久保和明)
『行進』は7拍子の曲。2+2+3/8拍子となっています。
10/8拍子の合唱曲
- Tempestoso(作曲:松本望)
Tempestoso(テンペストーソ/嵐のように)は一貫した10拍子が強烈に印象的な作品。
6+4/8拍子となっています。
まとめ:拍子に慣れるにはいろいろな音楽に触れよう
まとめです。拍子で大切なのは分母分子が何を表しているかです。
- 分子…基準の音符を何個まとめるか
- 分母…基準の音符を決める
拍子の概念は難しいですが、実際にいろいろな曲を聴きながら「どこが強拍かな?何拍子かな?」と考えることで理解が深まります。
楽譜の読み方に関しては【詳説】楽譜の読み方完全ガイド【初心者~上級者まで必見】でまとめていますので、あわせてご覧ください。