こんにちは!
今回は宮沢賢治作詩・千原英喜作曲、《月天子》より『東の雲ははやくも蜜のいろに燃え』について解説していきたいと思います!
曲調や難易度、曲の魅力・鑑賞のポイント、演奏・練習のポイントなどついて深堀りしていきます。
この曲を知らなかった人、これから聴いてみたい人、これから歌ってみたい人のお役に立てば幸いです。
それではどうぞ!
もくじ
『東の雲ははやくも蜜のいろに燃え』ってどんな曲?
まずは『東の雲ははやくも蜜のいろに燃え』という曲について、「この曲知らない!」「初めて知った!」という人のために、作詩者・作曲者、難易度、曲調についてざっくりと紹介します。
作詩は宮沢賢治、作曲は千原英喜
『東の雲ははやくも蜜のいろに燃え』の作詩は宮沢賢治、作曲は千原英喜。
全5曲からなる混声合唱組曲《月天子》の4曲目です。
ちなみに組曲通して演奏される場合には、3曲目『敗れし少年の歌へる』から続けてAttacca, subito(アタッカ、スビト/続けて次の曲を演奏、すぐに)で演奏されます。
難易度は…中級
『東の雲ははやくも蜜のいろに燃え』の難易度は、中級です。
曲そのものは非常にメロディックで親しみやすいもの、曲のボリュームがそこそこあり、後半では高音域が多用されるなど結構ハードな曲です。
曲調は…和風ロック? 五音音階と熱いビート感
『東の雲ははやくも蜜のいろに燃え』は前書きに
後半、エクスタシーの高まりではLed Zeppelinの「天国への階段」を意識していた。
とある通り、あたかもロックなようなノリ、熱いビート感が特徴です。
メロディーには五音音階が使われており、それが和風テイストを醸し出しています。
これについても前書きで触れられています。万葉集に詠まれている情景を重ねたんだとか。
『東の雲ははやくも蜜のいろに燃え』の魅力について語る!
続いては『東の雲ははやくも蜜のいろに燃え』という曲を、「聴いたことある!」「これから聴く!」という人に向けて、曲の魅力や鑑賞のポイントについて語っていきたいと思います。
前奏:万葉の情景へのトリップ
先ほど、本曲には万葉の情景が重ねられていると書きました。
その歌がこちら。
東の野にかぎろひの立つみえてかへりみすれば月かたぶきぬ
柿本人麻呂の作。広大な平野と、東西の気象現象の対比、スケールの大きな情景を感じさせます。
この組曲のタイトルが《月天子》となっていますし、本曲でも「月」は大きなテーマとなっています。
前奏はシンプルなメロディーと和音から素朴に始まりますが、次第に幻想的な和音へと展開していきます。
ピアノパートが奏でる音階とコーラスによるヴォカリーズによって曲想は膨らみ、まるで万葉の世界にトリップしていくかのような雰囲気です。
軽快な伴奏に乗せて歌われる五音音階のメロディー
歌いはじめに書かれているCommodo(コモド)は軽快に、気楽にと言った意味。
8分音符の流れやナインスのテンションが気分を高めてくれます。
そこに乗せて歌われるのは五音音階のメロディー。
使われている音は以下の五つ。
ド レ ミ ソ ラ
和風というか、古風な感じですね。明るくて、ちょっとおめでたいような感じもします。
音階だけでなく、リズムも特徴的。
16分音符とタイの組み合わせが、ポピュラー音楽を思わせます。
思わず歌いたくなるような親しみやすいメロディーです。
一転シリアスに、語り掛けるように歌う
Poco meno mosso(ポーコ メノ モッソ/前より少し遅く)、serioso(セリオーソ)からは文字通りシリアスに、真剣に。
ハ長調(調号無し)から変イ長調(♭×4)に転調し、グッと夜の闇が深まる感じがします。
ピアノパートのコードのロングトーン+ユニゾンによる旋律という形となり、装飾的な音を最小限に抑制した音楽で語り進めます。
転調を繰り返しながらクライマックスへ
この後クライマックス部分に渡り、転調が繰り返され次第に熱く盛り上がっていきます。
まずは先ほどの変イ長調(♭×4)からホ短調(#×1)へ。
短調になることでシリアスな雰囲気は残しつつも、ピアノパートビート感がテンションを高めていきます。
その後さらに嬰ト短調(#×5)へ転調。
音域が高くなり、ソプラノが執拗言って良いほど高音のロングトーンを連発します。
エクスタシーの高まり、と作曲者が述べている部分です。
ロックギターのアドリブのようなピアノパートにも注目
同じくクライマックス部分では、ピアノパートにも注目です。
ロック・ギターのアドリブのように
と指示されている通り、16分音符のパッセージが縦横無尽にかき鳴らされます。
また、特に指示は書かれていないのですが左手のコードにも注目です。
低い音域でテンションの付いた分厚いコードが鳴らされます。
通常このような書き方はしません。音が濁ってしまうからです。
(左手はオクターブや五度の和音を鳴らすことが多いですよね。)
この場面ではそれを逆手に取り、音の濁りによってビート感や力強さに繋げているのだと私は考えています。
「天子」への信奉心が現れる 幻想的なアカペラ部分
曲の終わりの部分では、美しく幻想的なアカペラ部分が現れます。
コラールのようでもありますね。
「天子」として月を信奉する賢治の心象が現れているかのようです。
途中から加わるピアノパートは天から降り注ぐ光のようです。
まとめ:『東の雲ははやくも蜜のいろに燃え』(宮沢賢治/千原英喜)
それではまとめです!
《月天子》より『東の雲ははやくも蜜のいろに燃え』でした。
軽快なノリとメロディーから始まり、クライマックス部分では熱く、ロックな気分の高揚感が感じられる曲です。
それゆえに曲のラストで登場するコラールのようなアカペラが一層引き立ち、心に沁みます。
今回はここまで。お読みいただきありがとうございました。