こんな疑問に答えます。
合唱に関する本は結構たくさん出版されています。これだけあると逆にどの本を読んだらいいのか分からなかったりもしますよね。
私自身これまでに「良い本にも出会った!」ということも「この本は微妙だったな…」という経験もしてきました。
この記事では私が今までに色々読んできた中で、おすすめできる合唱の本をジャンル別にまとめました。
興味がある本は是非手に取っていただきたいと思います。
初心者向けの合唱の本
まず最初は初心者向けの本です。
幅広く合唱の知識をつけられる本を紹介します。
初心者の方はどれか1冊読むことをおすすめします。
絶対! うまくなる 合唱100のコツ(著:田中 信昭)
東京混声合唱団の創設者である田中信昭(たなかのぶあき)先生の著書です。
各テーマごとに「ギュッ」とポイントがまとまっており、満足感のある本です。
この本の内容を日々の練習で実践すれば、確実に合唱の力が向上するはずです。
私自身10年以上経験がありますが、「なるほどなあ」と思わされるトピックがいくつもあり、長く使える本となっています。
必ず役立つ合唱の本(監修:清水 敬一)
合唱指揮者である清水敬一(しみずけいいち)さん監修の本です。
合唱入門的な内容を、網羅的・体型的に解説した本です。
「合唱をはじめてやる人に向けて、練習~本番までの流れを知ってもらう」ことがこの本の狙いとなっているように思います。
合唱の全体像を理解するという点では良い本です。ただし、本全体のボリューム感はそれほど無いので、各内容が薄くなりがちなきらいはあります。
後半の章では楽曲分析の例と、往年の名曲紹介にページ数を多く割いています。
特に昭和の名曲が数多く取り上げられています。私の場合、平成生まれでその年代の合唱事情には疎いのでたいへん為になりました。
ただし、初心者向けの本のわりには難しい曲を紹介しすぎかなといった印象もあります。
初心者のうちから名曲に触れて欲しいという意図だと思いますが、親しみやすい曲の割合がもう少し多くても良いかなと思いました。
楽典の本
楽典の本を紹介します。
音楽用語の辞書と考えてもらっても良いと思います。
究極の楽典[新装版](著:青島広志)
作曲家・青島広志先生による本です。
中級者~上級者の方が楽典を幅広く、かつ専門的に押さえておくのに良い本です。
内容がしっかりしているので信頼感があります。
音楽を深く理解するための入り口として優れています。
一番よくわかる楽典入門(監修:木下牧子)
先ほど紹介した『究極の楽典』は初心者の方にはやや難しい内容です。
初心者の方にはこちらの木下牧子さんの本が良いと思います。
歌い方・発声・ボイトレに関する本
発声・歌い方に関する悩みを持っている方は非常に多いと思います。
これらの本が役に立つと思います。
必ず役立つ合唱の本 ボイストレーニングと身体の使い方編(著:北條 加奈, 監修:相澤 直人, 医学監修:楠山 敏行)
発声の入門書です。
「あい混声合唱団」のボイストレーナーである北条加奈先生 著、指揮者の相澤直人先生 監修と非常に信頼感のある本です。
この本で私が一番良いと感じたのは、
- 声・発声はあくまで音楽の表現のためにある
というコンセプトです。たいへん強く共感しました。
- 合唱初心者の方
- 発声の方向性で悩んでいる方
はこの本の内容をインプットしておくと、合唱における発声で大きく間違うことは無いはずです。
奇跡のハイトーンボイストレーニングBOOK(著:弓場 徹)
声楽家・弓場徹(ゆうばとおる)先生の本です。
「YUBAメソッド」は聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。
タイトルと表紙ははちょっと胡散臭いですが、私自身はこの本と付属のCDに大変お世話になりました。
ぶっちゃけこの本のCDばっかりやってたら上手くなった、と言っても過言ではありません。
- 高い声を出せるようになりたい
- 跳躍(音が跳ぶフレーズ)が上手く歌えない
こういった方は試してみる価値があると思います。
やり方としてはCDを聞いてマネするだけなので、理解もしやすいです。
ヴォーチェ・ディ・フィンテとその実践(著:当間修一)
「大阪ハインリッヒ・シュッツ室内合唱団」の創設者・常任指揮者の当間修一先生の著書。
シュッツ合唱団の圧倒的な響き・ピッチの精度に魅了された人も多いのではないでしょうか。
その声の秘密が「ヴォーチェ・ディ・フィンテ」というわけです。
理論から実践まで丁寧に記述されています。
イラストで知る 発声ビジュアルガイド(著:セオドア・ダイモン)
発声に関わる体のあらゆる部位をイラストで解説した本です。
解剖学系の本は難しいものが多いですが、本書はカラーで取っつきやすく説明文もとても分かりやすいです。
「軟口蓋とか鼻腔とかよく分からん…」という悩み、実は教える側の人でも抱えていることが多いのではないでしょうか。
この本が理解の助けとなるはずです。
(CD付き)ヴォイストレーニング大全(著:福島 英)
ブレスヴォイストーニング研究所所長である福島英さんの著書。
「ボイトレに関する内容はこれ1冊で十分!」というコンセプトで書かれており、それに違わない充実度となっています。
朗読系のボイトレと歌唱系のボイトレがまとめられていますが、私の考えとしても声は同じ肉体から発せられるものなので、その方が自然かなと思います。
本書で紹介されているストレッチ・筋トレ・発声練習は、多くのプロが共通して行っている普遍的なものが選ばれており、その点もポイントが高いです。
指揮法に関する本
指揮法に関する本を紹介します。
はじめての指揮法―初心者のためのバトンテクニック入門(著:斉田 好男)
よく分からない指揮というものを明快に、体型的に記述した本です。
次に紹介する『指揮法教程』の導入書という位置づけの本でもあります。
- 基本的な図形(2拍子・3拍子・4拍子)
- 平均運動、叩き、しゃくい
が図解で解説されています。
コラムである「演奏のツボ」「棒振りのツボ」は非常に有益で、これは指揮者以外の方にも読んでいただきたい内容となっています。「指揮者目線での音楽」が学べます。
他の合唱本では語られないトピックもあり、この部分を読むだけでも価値ありです。
「そもそも指揮とは? なんのためにあるの?」という根本的な疑問が解決できると思います。
【改訂新版】 指揮法教程(著:斎藤 秀雄)
『はじめての指揮法』からさらにステップアップして、より本格的に指揮を勉強したい方向けの本です。
巻末に練習題の楽譜(ベートーベン、シュトラウスなど)が用意されており、振り方が本文で詳細に解説されています。
大変ですが、これを一つ一つ追っていくことで
- こういう音楽だから、こういう腕の動きになる
という指揮法の必然性を学ぶことができます。
音楽理論・作曲の本
音楽理論の本を紹介します。
私自身は音楽理論ガチ勢ではないですが、これらの本を読んだり楽譜をいろいろ研究していたら作曲ができるくらいにはなれました。
実践コード・ワーク 完全版 理論編(著:篠田 元一)
コード理論の本です。体系的に詳しく書かれています。
最近の合唱曲の多くはこういったコード理論をもとに書かれているので、楽曲分析に役立ちます。もちろん作曲にも使えます。
曲の分析に役立つということで指揮者・パートリーダーの方にもおすすめです。
新実徳英の作曲入門(著:新実徳英)
合唱系の作曲本ってあまりないので貴重な本と思います。
- 美しいメロディーはどうして美しいのか?
- メロディーを磨き上げるにはどうするか?
ということに主眼が置かれている本です。
色々な作曲家(バッハ、モーツァルト、メンデルスゾーン、ドビュッシーなど…)の作品を取り上げ、ケーススタディー的に進みます。
私自身はこの本を読んで、楽曲を分析するための思考法が身につけられたと思います。
コード&メロディで理解する 実践!やさしく学べるポピュラー対位法(著:彦坂恭人)
ポピュラー的なコード上のメロディーにどう対旋律をつけるかということを、実践例を通して学べる本です。
先ほど言いましたが、最近の合唱曲の多くはコードの上にメロディーを乗せるという作り方がされることが多いです。なので自分で曲を作るときも自然とそうなります。
そういったとき、「どうやってメロディーを絡ませるか」という点で大いにヒントとなった本です。
正しいドレミの歌い方 楽器がなくても楽譜は読める!(著:鳴海史生, 大島俊樹)
「階名唱(移動ド)」の本です。
という方も多いと思います。そういった方は一読していただきたい本です。
練習問題が豊富に用意されているので、この本を読み進めるだけで「階名唱」のセンスがかなり身に着くはずです。
こちらの記事(【苦手を克服】合唱の音取りが早くなるコツ11選|絶対音感無しでもできる)で書きましたが、「階名唱」ができると新しい楽譜を読みとる初見能力アップに繋がります。
合唱史・音楽史の本
音楽史って難しいですよね。でもルネサンスやロマン派の音楽を演奏する際には背景を知っておきたいものです(自戒)。
日本の合唱史(編集:戸ノ下達也、横山琢哉 編集)
私もそうですが、平成生まれの人はそれ以前の合唱の歴史や曲について知らないことが多いと思います。
そういった方は是非読むことをおすすめします。
この本で登場する作曲家の名前を覚え、曲を聞いていくだけでもかなり視野を広げることができるはずです。
西洋音楽史 「クラシック」の黄昏(著:岡田暁生)
音楽学者・岡田暁生先生の著書。
新書ですが分かりやすく西洋音楽史が学べます。
- バッハをバロックと分類するのは無理がある
ということが知れるだけでもこの本を読む価値がある気がします。
「バッハ」の章、自分的にはかなりスッキリしました。
合唱音楽の歴史(著:皆川 達夫)
めっちゃ分厚くて値段も高い本です。
ですが、
- 合唱の始まり
- グレゴリオ聖歌
- アルス・ノヴァ
- フランドル
- ルネサンス
- バロック
- ロマン派
- 19世紀
- 20世紀
などなど…。
合唱音楽の大きな流れ・全体像を理解できるので非常に有用な本となっています。
「ルネサンス」「ロマン派」の音楽を演奏する際には、この本を読んで理解を深めておきたいですね。
以上です!
良い本があったら随時紹介していきたいと思います。