こんな疑問に答えます。
土台となる三和音(トライアド)に新たに音をつけ加えることで、より複雑な響きをもった和音を作ることができます。
根音(ルート)から数えて9度の音を加えた和音がナインスコードです。
この記事ではナインスコードの作り方とその響きについて解説します。
ナインスはセブンスと比べると登場頻度はやや低いですが、音楽の知識を広げることに役立ちます。
もくじ
【前置き】アドナインス「○add9」とナインス「○9」との違い
三和音(トライアド)に根音から数えて9度の音をつけ加えてできる和音がナインスコードです。
加える音をテンションノート、または単にテンションと呼びます。
実はナインスコードは大きく分けて次の2種類があります。
- アドナインス「○add9」…9度のテンションだけを加える
- ナインス「○9」…7度と9度を加える
アド(add)は加えるという意味。加える音は1つです。
一方、単にナインスと言った場合はそれだけで7度と9度の両方が加わります。
7度の音があるか無いかで和音の性質がガラッと変わることがあるので注意が必要です。
アドナインスコードの作り方【9度のテンションだけ追加】
まずは9度のテンションだけを加えたアドナインスコードを紹介します。
9度と言っても短9度、長9度などあるのでいろいろな組み合わせができるのですが、良く出てくるのは次の2つです。
- 長三和音+長9度
- 短三和音+長9度
言葉だけ見てもピンとこないと思いますので、ここからは楽譜と音源を使って解説します。
ナインスコードは言葉を覚えるのが大変ですが「こんな響きの和音があるんだな~」くらいに思っておくと役に立ちます。
長三和音+長9度…アドナインス
「ド」「ミ」「ソ」の和音に「レ」をつけ加えた和音です。
- 根音「ド(C)」の長三和音(メイジャートライアド)
- 長9度のテンション(アドナインス)
今回の場合「ド」が根音なのでCadd9(シーアドナインス)という名前になります。
普通の「ド」「ミ」「ソ」に浮遊感・キラキラ感・前向き感が加わった印象です。
短三和音+長9度…マイナーアドナインス
「ド」「ミ♭」「ソ」の和音に「レ」をつけ加えた和音です。
- 根音「ド(C)」の短三和音(マイナートライアド)
- 長9度のテンション(アドナインス)
今回の場合「ド」が根音なのでCmadd9(シーマイナーアドナインス)という名前になります。
暗いだけでなく、シャープな感じ、都会的なカッコよい感じが加わりました。
E♭Δ7(「ミ♭」「ソ」「シ♭」「レ」)に構成音が近いため、似た印象がありますね。
ナインスコードの作り方【7度と9度を追加】
最初に説明したとおり、ナインスと単にいった場合は9度だけでなく7度の音もくっつきます。
- 和音の長短
- 7度の長短
- 9度の長短
これらの組み合わせの可能性がり、たくさんの和音が作れるのですが、ここでは登場頻度が高いものだけ紹介したいと思います。
セブンスコードを土台として考えると整理しやすいです。
[セブンスコードと長9度の組み合わせ]
- メイジャーセブンス+長9度
- セブンス+長9度
- マイナーセブンス+長9度
[セブンスコードと短9度の組み合わせ]
- セブンス+短9度
先ほどと同様に楽譜と音源を使って解説します。
メイジャーセブンス+長9度…メイジャーナインス
「ド」「ミ」「ソ」「シ」の和音に「レ」をつけ加えた和音です。
1つ飛ばし、お団子状に音を積み重ねるのがポイントです。
- 根音「ド(C)」のメイジャーセブンス
- 長9度のテンション
今回の場合「ド」が根音なのでCΔ9(シーメイジャーナインス)という名前になります。
Δはメイジャー、つまり「長」の意味で、長7度と長9度を加えることになります。
CΔ7がさらにおしゃれになった感じですね。
セブンス+長9度…ナインス
「ド」「ミ」「ソ」「シ♭」の和音に「レ」をつけ加えた和音です。
- 根音「ド(C)」のセブンス
- 長9度のテンション
今回の場合「ド」が根音なのでC9(シーナインス)という名前になります。
単にナインスと言った場合には7度と9度がつきますが、Δなどの指定がないときは短7度、長9度の組み合わせになります。
もともとのC7の性格を引き継いでいるのが分かると思います。おしゃれ感がありつつ、次に進もうとする力の強い和音です。
マイナーセブンス+長9度…マイナーナインス
「ド」「ミ♭」「ソ」「シ♭」の和音に「レ」をつけ加えた和音です。
- 根音「ド(C)」のマイナーセブンス
- 長9度のテンション
今回は土台となる和音がCm7(シーマイナーセブンス)となります。
これに長9度のテンションを加えるとCm9(シーマイナーナインス)という名前になります。
Cmadd9と似た響きです。「ミ♭」と「レ」のぶつかり関係の影響が大きいですね。
さらに仄暗い雰囲気が出てきてます。
セブンス+短9度…セブンスフラットナインス
「ド」「ミ」「ソ」「シ♭」の和音に「レ♭」をつけ加えた和音です。
- 根音「ド(C)」のセブンス
- 短9度のテンション
土台となる和音がC7(シーセブンス)です。これに短9度(♭9)の音を加えるのでC7♭9(シーセブンスフラットナインス)という名前になります。
これまでナインスと言えばそれだけで7度と9度がくっつくと説明してきましたが、今回は短9度のテンションを指定するためにこのような名前になっています。
短9度はぶつかりがハードですが、短7度と組み合わせることで響きがマイルドになっています。第7音と第9音が3度になって良くハモるからですね。
ちょっとショッキングな響きでクセが強そうですが、和音の流れの中で使うと意外と聴き覚えのある感じになります。
リリカル(叙情的)な雰囲気の場面で良く使われる気がします。
和声法におけるナインスコード【属九の和音】
和声法ではナインスコードは属九の和音として登場します。
第9音は2度下がって第5音に解決することがポイントです。
これにてすっきりした解決感が生まれます。
2つ例を見てみましょう。
属九の和音の接続
3つ目の和音が属9の和音。今回はハ長調なのでG9のコードになります。
「ラ」→「ソ」と下がって解決します。
9度のぶつかった音程関係から5度の完全協和音程に進むことで解決感が生まれていますね。
属九の和音の接続(♭9を使う)
第9音を半音下げてG7♭9にしたのがこちら。
バスの「ソ」とソプラノの「ラ♭」が短9度の音程となりかなりぶつかるのですが、流れで聴くと結構自然な感じですね。
「ラ♭」→「ソ」と下がって解決するのですが、下がり幅が半音になっているためより解決する力が強くなっているように感じられます。
まとめ:楽譜を注意深く見て、ナインスコードを見抜こう
土台となる三和音あるいはセブンスコードに9度のテンションを加えることでナインスコードを作ることができました。
- 土台となる三和音…明るい・暗い
- 7度の音…長7度・短7度
- 9度の音…長9度・短9度
これらの組み合わせによって響きが大きく変わりますので、注目してみましょう。
「この曲和音がきれいだな~」と思うときにはナインスが使われていることも多いので、楽譜をじっくり見て見抜けられるようになると音楽がさらに楽しめるはず。
そうすることでハモるセンスも磨かれてきます。