こんな疑問に答えます。
結論から言うと、指揮者のブレスは必要かつ非常に重要です。
これは合唱に限らずオーケストラなどの演奏でも同様です。
この記事では以下のことを解説します。
- なぜ指揮者のブレスが重要なのか
- ブレスと指揮の動きの関係性
ブレスをきちんと取ることは指揮としての道を歩んでいく第1歩と言っても過言ではありません。
ぜひ最後までご覧いただければと思います。
もくじ
指揮者のブレスが重要な理由【演奏者への影響大】
指揮者のブレスは重要です。
その理由は、一言で言えば「演奏者(プレイヤー)に与える影響が大」だからです。
指揮法の入門書である『はじめての指揮法(著:斉田好男)』から引用します。
ちょっと長いですが、とても大切な内容なのでじっくり読んでみてください。
指揮者が行うブレスは多くの意味を含んでいます。単なる”呼吸(息使い)”のみならず、指揮者のそれは演奏に大きな影響を与えます。もろもろの音楽的変化にあたって、まず指揮者の心が動き、それが具体的にはブレスとなり、腕の動きとしての”予備運動”などに連動し、身体のパフォーマンスとして表現されるのです。心の動きとダイレクトに結びついているブレスは、単なる腕の動きよりも演奏者に対して大きいアピール感を持ちます。その役割としては、まずテンポの指示、そして曲中における音楽的諸変化(新しいパートのデビュー、ニュアンスの変化、あるいは突如として現れるフォルティッシモの”打ち込み音”など)に対してのものであり、多くはワン・ブレスで行われます。
引用:斉田好男(1999年).『はじめての指揮法』
”心の動きとダイレクトに結びついているブレスは、単なる腕の動きよりも演奏者に対して大きいアピール感を持ちます。”という部分がポイントです。
ブレスと指揮の動きの関係性【源泉は音楽のイメージ】
ただ、これだけだと「ブレスがどう指揮の動きと関係するのか」「どうプレイヤーに影響するのか」が分からないですよね。
指揮におけるブレスの役割は以下のようになります。これをもとに詳しく解説していきます。
[指揮法のメカニズム]
- 次の音楽のイメージ
- ブレス
- 予備運動(=指揮の動き)
- プレイヤーへの影響
1.次の音楽のイメージ
まず指揮者が「どんな音楽を作りたいか」をイメージします。
このイメージが指揮の動きの源泉です。
ここを持たなければ指揮はできません。
音楽のイメージの具体例を示します。次のような要素が考えられます。
[音楽イメージの要素]
- 音量…大きい、小さいなど
- 音のタッチ…なめらか、固い、柔らかいなど
- 表情…豊かな、緊張感のある、リリカル(叙情的な)など
実際の曲ではこれらの組み合わせがイメージとなります。
「豊かなフォルテ、アクセントはつけずレガートに、リリカルな表情」と言った感じです。
2.ブレス
次がブレスです。
音楽をイメージし、イメージ通りのフレーズが歌い切れるようなブレスを取ります。(器楽でも同様です。)
イメージを持ってブレスを取ることで、体がその音楽に適応した状態になります。オーラ的なものが出てくると言っても良いかもしれません。
例としてイメージとブレスとの対応を紹介します。
[音量とブレス]
- 大きい…大きく取る
- 小さい…小さく取る
[音のタッチとブレス]
- なめらか…時間を掛けて取る
- 固い…瞬間的に取る
[表情とブレス]
- 豊かな…たっぷりと取る
- 緊張感のある…やや浅く
言葉で書くとまどろっこしいですが、イメージを持っていればそれが自然とブレスに反映されます。
例えば逆に「小さな音の出をイメージして取ったブレス」で豊かな音量を歌い切ることは不可能ですよね。
3.予備運動(=指揮の動き)
予備運動というのはプレイヤーに対して行う指揮の予備動作です。
多くの場合、1拍前の動きとなります。
「サン、ハイ!」というときの「ハイ!」の部分だと思ってもらっても良いと思います。
音楽のイメージを持ってブレスを取ることでそれが予備運動に表れます。
[音量と予備運動]
- 大きい…大きく振る
- 小さい…小さく振る
[音のタッチと予備運動]
- なめらか…加減速を少なく
- 固い…加減速を多く
[表情と予備運動]
- 豊かな…腕は脱力、スペースを大きく使う
- 緊張感のある…腕全体を緊張させて(力を入れて固めて)
繰り返しになりますが、おおもとのイメージがあればそれが腕の動きや状態に表れるという流れです。
4.プレイヤー(歌う側)への影響
以上の流れで、指揮者の音楽イメージがプレイヤーに伝わり、演奏に影響します。
- ブレス→雰囲気・オーラとしてプレイヤーに伝わる
- 予備運動→視覚的な情報としてプレイヤーに伝わる
イメージと動きを橋渡しするのがバトンテクニック
繰り返しになりますが、音楽イメージが指揮の動きの源泉となります。
イメージを持っていればそれがブレスに表れ、腕の動きに表れ、プレイヤーに伝わる、こういった流れなんですね。
その橋渡しをより効果的に行うのがバトンテクニック、いわゆる指揮法の技術です。
バトンテクニックに習熟していれば次のようなことが分かり、指揮を振り分けることができます。
- ガッツリしたフォルテを引き出したい→点前を大きく取る
- なめらかに歌って欲しい→平均運動を使う
- テンポをしっかり緩めたい→分割を使う
イメージを持つことは前提であり最初のライン。そこからどう効果的に伝えるかが腕の見せ所という訳です。
逆にバトンテクニックの面で実力が不足していると次のようなことが起こり得ます。
- 自分の持っているイメージを十分に伝えきれない
- 余分な動きをしてしまい、それがプレイヤーに悪い影響を及ぼす
ここまで「イメージを持つことが大事」と繰り返してきましたが、押さえる部分は押さえておかないといけないということですね。
まとめ:イメージとバトンテクニックは両輪
この記事では指揮者のブレスの重要性について解説してきました。
音楽のイメージがブレスへ、ブレスが腕の動きへと繋がります。
したがって「音楽のイメージ」を持つことが指揮をする上での前提となります。
ですが「思っていれば何とかなる」というものでもありません。思い描いたイメージをプレイヤーに効果的に伝える技術も必要となってきます。
それがバトンテクニック・指揮法という訳です。
バトンテクニックを学ぶための本はこちらの記事(【指揮者が選ぶ】合唱のおすすめ本|上手くなる本・知識がつく本)で紹介しているので、よろしければご覧ください。
こちらの記事(【まとめ】初心者のための指揮法完全ガイド|合唱指揮者が基礎から解説)では指揮法を学ぶ上で知っておきたい知識をまとめています。あわせてご覧ください。