こんにちは!
今回は矢澤宰作詩・萩原英彦作曲、《光る砂漠》より『再会』を紹介します。
曲調や難易度、曲の魅力・鑑賞のポイント、演奏・練習のポイントなどを解説しています。
この曲を知らなかった人、これから聴いてみたい人、これから歌ってみたい人のお役に立てば幸いです。
それではどうぞ!
もくじ
『再会』ってどんな曲?
まずは『再会』という曲について、「この曲知らない!」「初めて知った!」という人のために、作詩者・作曲者、難易度、曲調についてざっくりと紹介します。
作詩は矢澤宰、作曲は萩原英彦
『再会』の作詩は矢澤宰、作曲は萩原英彦。
全9曲からなる混声合唱組曲《光る砂漠》の1曲目です。
難易度は…中~上級
『再会』の難易度は、中~上級です。
フレーズが全体的に短めで、曲の規模も大きくないのでその点では取り組みやすい作品です。
音使いというか、ハーモニーの移ろいが少々独特で、慣れるまでに苦労するかもしれません。
divisiや拍子の変化は比較的多くなっています。
曲調は…情景と心の動きを巧みに描写
この曲で歌われるのは秋との「再会」。
ひとり歩く校庭で秋と出会う、その心の動きが様々な工夫を用いて表現されます。
メロディーはどちらかというと語るような部分が多く控えめな表現。
鮮やかな描写はヴォカリーズやピアノパートが担当します。
『再会』の魅力について語る!
続いては『再会』という曲を、「聴いたことある!」「これから聴く!」という人に向けて、曲の魅力や鑑賞のポイントについて語っていきたいと思います。
孤独な情景と小さな心の揺らぎを感じる
冒頭は女声合唱によるアンサンブルから始まります。
和音に耳を澄ますと、通常使われる三和音に交じり異質な響きが聴き取れます。
これらは4度を重ねた和音やsus4の和音。
長調(明るい)・短調(暗い)に分類されず、色彩感のない空虚な響きです。
これにより”誰もいない校庭”をひとり歩く、そんな孤独(しかし悲しさは感じない)にも思えるような情景が良く描写されているように思います。
フレーズの後半では男声が合流。三和音が中心となり、音楽に彩りが増してきます。
一方で、#の音と♭の音が切り替わることによる心情の揺らぎも感じます。
「秋が立っている…、でも本当に?」
というような期待と疑心が、主人公の胸に交互に訪れているようにも思えます。
con sentimento(コン センチメント/感情を込めて)の指示があることも、感情の揺れに関連していると思います。
なお巻末の作曲者の註によれば、con sentimentoは
洗練された感受性をもって
とのこと。感情表現が大げさになりすぎぬよう、という注意喚起の意図もあるのかもしれません。
朴訥な主人公の語り、緊張の瞬間の鮮やかさ
続くいてはアルトがメロディーを歌う、あるいは語ります。
主人公は”黙って手を伸ばし”、それだけ。
秋との出会いに対して大喜びするでもなく、話しかけるでもなく、控えめなリアクション。朴訥と言っても良いかもしれません。
メロディー自体も最低限の起伏に抑えられ、sensibile(センシービレ/敏感に、感覚でとらえて)の指示もあります。
それと対照的なのがヴォカリーズ(m)とピアノパートの表現です。
ヴォカリーズはメロディーの音量mpに対してそれより大きく、mfで歌われます。その上、divisiもあり厚く、豊かなサウンド。
ピアノパートは32分音符の非常に細かなフレーズで、キラキラと鮮やかです。
控えめなメロディーに対して、それ以外のパートによるやや饒舌な表現。
これは朴訥な主人公-秋の関係と、両者が手を伸ばす緊張の瞬間の鮮やかさと対応しているように思われます。
音楽の密度と時間感覚の消失
主人公と秋が目と目を合わせる、その決定的な場面です。
ここが曲の重心、詩の重心としての役割を果たしています。
”見つめ合った”の小節では一文字一文字に異なる和音が与えられています。
まとめておくとこんな感じ。
A7 → G♭ → C → A7 →E♭ → C
最高音に向かって駆け上がるようなフレーズを、subito p(スビト ピアノ/急に小さく)からのmolto cresc.(モルト クレッシェンド/だんだん大きくして、十分に)で歌い上げます。
以上のような要素から、この1小節分は非常に密度の高い音楽になっていることが分かります。
見つめ合っている瞬間、「感覚が消失して気が付けば長い時間経っていた」そんな感じがします。
まとめ:『再会』(矢澤宰/萩原英彦)
それではまとめです!
《光る砂漠》より『再会』でした。
さまざまな技巧を用い、孤独なシチュエーション、登場人物のキャラクター、心の揺れ動きが効果的に表現されている曲でした。
特に重心となる場面での、時間感覚が消失するような劇的な表現が印象的です。
今回はここまで。お読みいただきありがとうございました!