次のような質問をいただきました。
「(『HEIWAの鐘』について)ソプラノパートはみんな音程を覚えて、自信をもってつられることなく歌えています。しかし、アルトパートがソプラノパートと男声パートにつられてしまい、完全に消えてしまえます。また、アルトなのに微妙に音が高くてみんな歌いにくそうです。また、男声パートも女声パートにつられてしまい、大切なところで消えてしまいます。」
これにお答えして、『HEIWAの鐘』のアルト・男声にフォーカスして、音取りのコツを解説していきたいと思います。
素早く音取りができる3つのコツ
音取りのときには次のことを心に留めて練習を進めましょう。
何も意識しないのと比べると、格段に早く音が取れるはずです。
- 他のパートと音が同じところを意識
- 入りの音に集中
- 次の音は上がる? 下がる?
1. 他のパートと音が同じところを意識
合唱ではハモる音も出てきますが、実は他のパートと同じ音を歌うこともかなり多いです。
そういった部分を事前にチェックしておけば、同じ音のパートに合わせて歌えばそれで音取りはできてしまいます。
また、ここは同じ音だなと分かっていれば、つられることを心配しなくても良くなります。
2. 入りの音に集中
音取りで一番集中するべきなのは歌い出すときの入りの音です。
この音が取れていないと全体を正しく歌うことはほぼ不可能になります。
逆に最初の音をうまく捉えられると、そのまま流れで歌えてしまうことも多いです。
自分のパートの音をピアノで弾いてもらうときには一番最初の音を全力で聴きましょう。
また、その音を頭の中にしっかりイメージしてから歌い出すことも肝心です。
このイメージができていないと正しい音で歌い出すことはできません。
3. 次の音は上がる? 下がる?
音取りのときには、楽譜の歌詞の部分だけでなく、音符が書いてある部分も見るようにしましょう。重要な情報になります。
「楽譜は読めないよ!」という人も多いと思いますが、音符が書かれている場所が、次に上がるのか下がるのかは読み取れるはず。
上がるときは今より高い音、下がるときは今より低い音を歌えば良いことが分かります。音符の高さが変わらないときはいちばん簡単で、同じ音を歌い続ければよいのです。
楽譜を見てどこで音が上がるのか、下がるのかを予測しておくと音取りがかなりスムーズになります。
音取りの5ステップ
音取りは次のステップで、確実に一歩一歩進めていってください。
- ピアノの音をよく聴く
- 1パートでピアノを聴きながら歌う
- 1パートでピアノを外して歌う
- 他のパートと合わせて、ピアノありで歌う
- 他のパートと合わせて、ピアノなしで歌う
1. ピアノの音をよく聴く
まずはパートの音をピアノで弾いてもらって確認します。
集中して聴きましょう。
また、楽譜と見比べてどこで上がるのか、どこで下がるのかを確認するのも非常に効果的です。
2. 1パートでピアノを聴きながら歌う
次に1パートで、ピアノを弾いてもらいながらそれに合わせて歌いましょう。
ピアノの音とぴったり合うまで繰り返します。
3. 1パートでピアノを外して歌う
次に1パートでピアノ無しで歌います。
ピアノを外しても自信を持って歌えるように繰り返します。
4. 他のパートと合わせて、ピアノありで歌う
他のパート一緒に合わせます。
このとき、例えばアルトを練習したいときはピアノでアルトパートを弾いてもらいながら歌いましょう。
正しい音を確認しながら、合わせたときの感覚をつかみます。
5. 他のパートと合わせて、ピアノなしで歌う
最後にピアノを外して合わせます。
上手くいかなければ再度ピアノを弾いてもらいながら正しい音を確認します。
音取りがうまく行かない時に試してほしいこと
どうしてもうまく行かないときは次の方法を試してみてください。
- ゆっくり練習する
- ラララで歌う
- ソプラノにお休みしてもらう
- 苦手な音を伸ばして確認する
- パート練習に立ち返る
1. ゆっくり練習する
テンポが速いとついていくのがやっとで、音もリズムもいい加減になってしまうことがあります。
そこでゆっくりと練習することでそれらを確実に聴き取ることができます。
2. ラララで歌う
意外にも歌詞が音取りの負担になってしまうことは多いです。
そこでラララで歌うことで音だけに集中でき、音を取りが格段に楽になります。
3. ソプラノにお休みしてもらう
ソプラノはメロディーでかつ、一番高い音を歌いますので一番聞こえやすいパートです。
それゆえにソプラノが歌っているとそれにつられてしまうことが多いのです。
そこで、ソプラノにはいったんお休みしてもらい、アルトと男声だけで練習してみましょう。
それができたらまたソプラノに入ってもらいます。
4. 苦手な音を伸ばして確認する
どうしても音が難しいところはあるものです。
「この音が取れないな」というときはその音で止まって伸ばしてみるのが有効です。
そうすることで各個人が音が取れているのか、いないのか、いないときはどう間違っているのかが分かります。
5. パート練習に立ち返る
合わせてみて難しいときはそもそも音がしっかり取れていないのかもしれません。
いったんパート練習に立ち返ってみて、もう一度パートの音を確認することも時には必要です。
遠回りのようでこれが近道になることも多いです。
『HEIWAの鐘』音取りのコツ
ここからは練習番号ごとに音取りのコツを解説していきます。
【B】”LA LA LA”
入りの音に集中して
【B】の場面は3パートでハモっているため、音を見失うと戻ってくるのが難しい場面です。
最初の音に集中して、確実に入れるようにしましょう。
[最初の音]
- アルト…「ミ♭」
- 男声…「ラ♭」
【A】はピアノの前奏になっていますが、その流れから自分の音を取れるように練習しましょう。
大きく降りる音に注意
【B】では大きく音が飛んで降りるところがあり、難しい点です。
- アルト…「ソ → ド」
- 男声…「ラ♭ → ミ♭」、「ファ → ド」
下がった先の音が正しいかどうか、確認しながら進めましょう。
男声はピアノの左手が手がかり
男声の音は跳躍(音が飛ぶこと)が多く難しいですが、ピアノパートの左手が手がかりとなります。
基本的に同じ音を弾いているので、ピアノと合わせるときはそちらにも注意を向けてみましょう。
【C】”よみがえれ”
ユニゾンは聴き合って
【C】の場面はユニゾン(全員が同じ音を歌う)で、メロディーを歌いますので、音取りの麺では大きな問題はないと思います。
ソプラノを中心に、お互いの声を聴き合いながら合わせてください。
【D】”おびやかす”(”Hum.”)
ソプラノなしで練習してみよう
【D】はアルトが特に音が取りにくそうな場面です。
ソプラノの動きに沿うような音形となっているためつられやすいのです。
まずはソプラノにお休みしてもらうことで、アルトの音をしっかりと確認しましょう。
入りの音に集中して
同じことを何度も繰り返すようですが、それだけ大切なのです。
例えば21~22小節では、最初の音を取れさえすれば後は簡単。
あるとは「ファ→ミ♭→レ♭」と降りていくだけ、男声はほとんど同じ音です。
高い音は事前にイメージ&準備して
24小節目の”わすれゆく”では少し高い音「ド」が出てきます。
ここで高い音が出てくることを事前にイメージし、さらにしっかりブレスを取るなど体の準備をしておきましょう。
そうすれば決して届かない音ではありません。
どうしても出にくい場合は、アルトにソプラノの人が応援に入っても良いかもしれません。
【E】”いつか”(”じゆうなそらが”)
男声はメロディー
男声はメロディーですので覚えやすい音かと思います。
“にじかかる”や”しあわせおくるだろう”は音が高いので乱暴にならないよう注意しましょう。
アルトは低い音から入る
“じゆうなそらが”や”たかくおおきな”のフレーズの入りは少し低めの「ド」の音となっています。
ここも事前に音を明確にイメージしておかないと入りづらい音です。
最初の音が入れないと続くフレーズは歌えません。
「ここは低い音から入る」と思っておくだけでも歌いやすさが結構変わります。
【F】”ぼくらの”
アルトは高い音から入る
アルトの最初の音は高い「ド」です。
先程も書いたとおり、高い音では事前のイメージと準備が肝心。
直前の4分休符でお腹の底まで息を入れて次の音に備えましょう。
大きく下がる音に注意
“ぼくらのうまれた”ではアルトの音が「ド → ファ」と大きく下がります。
音を外しやすいところですので要注意です。
“こぶしをひろげて”でも同様に。
【H】”LA LA LA”
【B】と同様です。
まとめ:地道に繰り返すのが一番の近道
音取りというのはなかなか進まず、大変だと思います。
「これだけやったおけばOK」という方法をお伝えできれば良いのですが、そうもいかず、地道に繰り返すことが結局のところ一番の近道です。
音が取れれば歌えるようになって、少し楽しくなってきます。
音が取れて他のパートと合わせられるようになると、ハーモニーが生まれて合唱がもっともっと楽しめるようになります。
長い道のりかもしれませんが、必ず良いことがあるので、めげずにぜひ頑張ってください。