rit.の読み方は「リタルダンド」、意味は「だんだん遅く」です。

楽典の本などではここまでで終わってしまうことが多いですが、この記事では、音楽表現を深めるためにもう少し深堀りしていきたいと思います。

rit.の読み方と意味

冒頭でも触れましたが、rit.について、もう少し詳しくまとめてみます。

  • 読み方…リタルダンド
  • 意味…だんだん遅く
  • その他の書き方…ritard./ritardando

rit.「テンポを少しずつ落とし、次第にゆっくりにして」いう指示の記号で、多くの曲で使われます。練習の際には「ここからリットして」などとも言います。

また、後述する通り他の記号との組み合わせで使われることも多いです。

似ている記号との違い

riten.

  • 読み方…リテヌート
  • 意味…直ちに遅く

rit.がだんだん遅く、すなわちゆっくりとテンポを変化させるのではないのに対し、riten.記号が書いてある箇所ですぐにテンポを遅くする指示になります。

rall.

  • 読み方…ラレンタンド
  • 意味…だんだん緩やかに

rall.rit.と同じ意味と捉えてもほとんど支障がないことが多いです。

ですが、「緩やかに」という意味からして、音楽がしだいに収まっていく、つまり音量が減衰していくようなニュアンスも含まれている記号です。

書籍に該当する記述があったので引用しておきます。

rall.はrit.に対して、速さと同時にエネルギーの減衰も、そこに加わっていると見なすべきでしょう。

引用:青島広志『究極の楽典』p.203

また、rit.は自分でブレーキを掛けて遅くする、rall.自然にテンポが緩やかになっていくというように説明されることもあります。

他の記号との組み合わせ

poco / un poco

  • 読み方…ポーコ
  • 意味…少し
  • 読み方…ウン ポーコ
  • 意味…やや少し

pocoun pocoも「少し」という意味で、ほぼ同じと思って問題ありません。組み合わされた記号の意味を弱めるときに使われます。

したがって、poco rit.un poco rit.の場合は「少しだけrit.して」という意味になります。

pochissimo

  • 読み方…ポキッシモ
  • 意味…pocoの最上級(=ほんのわずか)

~issimoはイタリア語の最上級形を作ります。

pochissimopocoの最上級。少しの最上級なので、組み合わせて使われる場合は「ほんのわずかにrit.して」という意味になります。

molto

  • 読み方…モルト
  • 意味…非常に

moltoは一緒に使われる記号の意味を強める効果があります。

molto rit.ならば、「十分にrit.して」という意味になります。

non / senza

  • 読み方…ノン
  • 意味…~でなく
  • 読み方…センツァ
  • 意味…~せずに

どちらも記号を否定する効果を持ちますので、「rit.なしに」「rit.せずに」という意味になります。

e ~

  • 読み方…エ
  • 意味…そして

英語のandに相当するのがeです。

rit. e dim.などのように使われます。この場合「rit.しながらdim.(だんだん小さく)して」ということになります。

al fine

  • 読み方…アル フィーネ
  • 意味…終わりまで

fineは繰り返し記号が使われる際に曲の終わりを示す記号です。

なのでrit. al fineでは「曲の終わりに向かってずっとrit.して」という意味になります。

関係が深い記号

a tempo

  • 読み方…ア テンポ
  • 意味…もとの速さで

rit.とあわせてよく使われる記号がa tempoです。

rit.で遅くなったテンポをもとに戻す指示に使われます。

歌い方のコツ

rit.が出てくる場面では当然ですがテンポが変わりますので、それをしっかり意識しておかないとタイミングがズレてばらばらになってしまいます。

rit.を見つけたら目立つように楽譜にチェックを入れておくのも手です。

またテンポが遅くなるとブレスが足りなくなることがあります。事前に意識して最後まで歌いきれるよう、先を見据えて深いブレスを取るようにしましょう。

指揮の振り方のコツ

ゆっくりになる場所はゆっくり振れば良いのですが、指揮の動きだけでは十分に伝わらないときもあります。

そのため、リハーサル時点で「ここからrit.します」「これくらい遅くします」「こうやって振ります」などとすり合わせておくと良いでしょう。

テンポをかなり落とす場合、動きを遅くしていくと1拍分の図形では間が持たなくなることがあります。そのようなときに有効なのが分割です。今まで1拍で振っていたところを2拍分の動きで振るテクニックです。例えばこれまで4分音符を単位で振っていたところを8分音符単位に分けて振ることになります。

分割のコツは、分割する前の時点でしっかりテンポを落としておくことです。分割するとこれまでと比べて単純に腕の動きの速度が2倍近くになります。そこでテンポを落としきれていないと動きが間に合わなかったり、プレイヤーを戸惑わせることになります。

事前にしっかりテンポを落としておけば、スムーズに分割に移行できます。

分割は便利なテクニックですが、頻繁に使うと動きがうるさい印象を与えてしまう恐れもあります。多少テンポを落とすくらいの場面では分割せずに頑張って1つ振りするということも考えたいところです。

【具体例】実際の曲に出てくるrit.

ここからは、実際の楽譜を見ながらどのように演奏すればよいか考えてみましょう。

『絆』(作曲:山崎朋子)

ちょっと切ないメロディーが魅力の合唱曲、『絆』を例に取ります。

音楽記号_rit._『絆』作詞・作曲 山崎朋子『絆』を参考に作成。

この譜例では”きえ”の上にrit.が書かれています。

また、rit.に続けて書かれている点線(—)によってその範囲が示されています。つまり”きえることはない いつまでも”のフレーズの間、rit.の効果が続くということです。

点線の先にはa tempoがあります。書かれている場所としてはピアノパートの2つの16分音符上になっていますので、ここから元の速さに戻ることになります。つまり、次のフレーズのテンポを示しているとも言えます。

rit.の間、テンポを決めるのはより細かい動き(8分音符)をしている合唱パートです。ピアノパートの2分音符はメロディーを聴きながらタイミングを取るのが良いでしょう。

一方、a tempoのところでは動きのあるピアノパートがテンポを決めます。合唱パートはピアノの16分音符の音を聴いてロングトーンをカットするするとうまくいきます。

まとめ

rit.の意味は「だんだん遅く」でした。

登場頻度はかなり高く、ほとんどの曲で出てくると行っても過言ではないほどです。

テンポが変化するときは、ずれてバラバラになってしまわないよう、お互いの音をよく聴き合ってタイミングを取るのが演奏する上でのコツとなります。