こんな疑問に答えます。
歌声・発声の基礎になるのが腹式呼吸です。ただ、聞いたことはあるけれども実際のところは良く分からないという方も多いと思います。
この記事では腹式呼吸のやり方やコツ、実際に歌を歌うときの応用方法まで、初心者の方にも分かりやすよう解説しています。
腹式呼吸をマスターするとブレスのコントロール力が上がり、声が安定します。歌声の土台となるのが呼吸。それだけ重要です。
ぜひ最後までご覧ください。
もくじ
【前提】腹式呼吸とは?胸式呼吸との違い
腹式呼吸と胸式呼吸(きょうしきこきゅう)は対になる考え方です。
- 腹式呼吸…お腹(横隔膜)を使った呼吸、深い息
- 胸式呼吸…胸(みぞおちより上のエリア)を使った呼吸、浅い息
歌うときに大切になってくるのが腹式呼吸です。
どこに空気が入るのか問題
腹式呼吸を説明するとき、「おなかに息を入れる」とよく言います。
しかしこれはあくまでイメージの話。実際に息(空気)が入るのは当然肺です。
この点を勘違いしないようにしましょう。
腹式・胸式どっちがいい問題
実は人間の体というのは完全な腹式呼吸、完全な胸式呼吸というものはできないようになっています。
呼吸をするときは、多かれ少なかれ全身の筋肉や神経が連動しているからです。
腹式呼吸が重要、と言われるのは通常、何も意識していない状態だとこの「全身の使いっぷり」が不十分になってしまうからです。
つまり、全身をくまなく有効に使うために腹式呼吸を意識しようということですね。
こちらの本でも触れられています。合唱の人向けの本ですが、呼吸に関しては歌う人全員が役立つ内容になっていると思います。
歌うときに腹式呼吸が必要な理由【3つのメリット】
腹式呼吸は発声の基礎になります。その理由は次の通り。
- 全身をくまなく活用できる
- 単純に肺活力が上がる
- ブレスコントロールがしやすい
メリット1. 全身をくまなく活用できる
腹式呼吸では胸の周りのエリアがだけでなく、お腹や背中の筋肉も連動させて使うことができます。
体の一部分だけを使うのと、全身使うのとでは歌うときにどちらが有利になるかは分かると思います。
当然、全身を使ったほうが声量、音域、表現力など様々な面で有利になります。
メリット2. 単純に肺活力が上がる
腹式呼吸では普段より深く息を吸うことがきるので肺活量が上がります。
息の量がアップするということは声量アップや、長いフレーズを楽に歌いきる力に繋がっていきます。
メリット3. ブレスコントロールがしやすい
ブレス、つまり息を吸ったり吐いたりが自由自在にコントロールできるようになります。
歌唱力とは要するに声をどれだけコントロールできるかということで、その前段階として息のコントロールが必要になってきます。
腹式呼吸では胸式呼吸と比べて全身を活用できる分コントロールがしやすくなります。
腹式呼吸のやり方と注意点【5ステップ】
ここからは腹式呼吸のやり方(練習方法)と注意点もあわせて解説します。
- 息をすべて吐き切って空っぽにする
- お腹を下向きに意識しながら吸う
- いったん止めてキープする
- ゆっくりと吐く【3種類紹介】
- 息をすべて吐き切り、体を緩める
事前に体操などをして全身をほぐし、温めておくとより効果的です。
すべてのステップが重要なので、一つ一つポイントを確かめながら、はじめはゆっくりと行ってみてください。
ステップ1. 息をすべて吐き切って体を空っぽにする
まず最初に息をすべて吐き切ります。
吸うところからでなく吐くところからスタートするのがコツ。
いったん体の中を空っぽにすることでより深く息を吸い込むことができます。
ステップ2. お腹を下向きに意識しながら吸う
次にお腹を意識しながらゆっくりと息を吸います。
お腹周りが外向きに張り出していくような感じで、圧力が掛かるのを感じてみてください。
綿足の場合はどちらかというと前後より横向きの圧力を強く意識しています。
脇腹に軽く手を当てて、それを横に押し返すようにするとイメージがつかみやすいです。
肩が上がらないように
吸い込んだ肩が大きく上下する人は胸が呼吸の中心となってしまっています。
固めて動かないようにする必要はありませんが、必要以上に動いていないかはチェックしてみてください。
鼻から吸うとイメージがつかみやすい
息を吸い込むときは鼻からでも口からでもOK。
ただし、初めての場合は鼻から吸うのがおすすめ。
鼻の奥のほうに息の流れを冷たく感じるようにすると深く吸うことができます。
ステップ3. いったん息を止めてキープ
吸った後はすぐに吐き出さずにいったん止めてキープしましょう。
こうすることでお腹で息をコントロールするトレーニングができます。
このとき、唇を閉じてそこで止めるのではなく、お腹をつかって息をとどめましょう。
上手くできていれば口は開いたままで息を止めることができます。
ステップ4. ゆっくりと吐く【3種類紹介】
軽く音を出しながら吐きます。
このとき喉に力が入らないように、自然に吐けるようにしましょう。
お腹は外向きに力を入れつつ、張ったままが良いとされています。
お腹をへこますというのも昔はよく言われましたが、今はどちらかというとへこまさない指導法が多いような気がしています。
吐く際には何かしらの子音で音を出します。
- s子音「スー」
- h子音「ハー」
- z子音「ズー」
これら3種類を目的に応じて使い分けてみてください。
s子音「スー」
一番オーソドックスな方法で、お腹の圧力を感じやすい方法です。
初めての人はこれがおすすめです。
h子音「ハー」
寒い日に手を温めるようなイメージで、太く柔らかい息を吐きます。
軟口蓋の動きを意識することができます。
z子音「ズー」
sの子音を有声にしたもので、息→声という繋がりを意識できます。
ステップ5. 息をすべて吐き切り、体を緩める
腹式呼吸の練習では十分に吐き切ることが常に重要です。
体を空っぽにできたら瞬間的に緩める(脱力)させます。
そうすることで、自分から吸おうと思わなくても自然と息が入ってくるはずです。
このとき「ハァー!!」という感じで大きな音がする、吸い込むのに時間が掛かってしまうときは脱力が不十分。
逆に上手くできていると「ハッ」という感じで瞬時に体が息で満たされます。
腹式呼吸ができないときの対処法
「練習してみたものの上手くできない…」という方は次の方法を試してみてください。
- 鼻から吸う
- 脇腹に手を当てる
- 姿勢を変える
- しゃがんで吐き切る
鼻から吸う
口から吸っている人はいったん鼻から吸うことを試してみてください。
このとき鼻の奥に空気の通るのを冷たく感じるようしましょう。
こうするとお腹で息を吸い込みやすいです。
脇腹に手を当てる
脇腹に手を当てて、その手を押し返すような感じで吸うとお腹を上手く使えます。
姿勢を変える
なかなか息が深く吸えないときは姿勢を変えてみてください。
- 座ってやる
- 仰向けになる
体勢を変えると腹式呼吸がしやすくなります。
ただし、実際寝転んで歌うことは少ないと思うので、つかんだ感覚を立ったままで出来るようにしないといけないです。
しゃがんで吐き切る
そもそも息が十分に吐き切れていないことが原因の場合もあります。
そういう人は「そろそろ吐き切ったかな?」と思ったら、そこから膝を曲げてしゃがみ込んでみてください。
こうすることで体の中に残った空気をすべて追い出すことができます。
吐き切ることも腹式呼吸の大切なコツです。
腹式呼吸をさらに鍛える方法【穴あきペットボトル】
腹式呼吸をバリバリに鍛えたい人は次の練習法がおすすめです。
- ペットボトルの底にいくつか画びょうなどで穴をあける
- 口でくわえて吸ったり吐いたりする
- 7~8秒くらいで吐き切れるように
※酸欠注意
この方法ではかなりお腹をしっかり使わないと息ができません。
穴の開いてないペットボトルでへこます方法はあんまり好きではありません。
負担が掛かりすぎる、瞬間的に吸うことになりコントロールがしにくいといった理由です。
【応用編】歌いながら腹式呼吸を行うコツ
「練習ではできるけど、実際に歌を歌いだしたら腹式呼吸ができなくなっちゃうな…」と、こんな方もいらっしゃると思います。
そんなときは、次の2つを意識してみてください。
- フレーズの最後で息を使い切る
- 息継ぎで瞬間的に体を緩める
自分から吸いに行くというよりは、使い切ったから勝手に息が体に入ってくるというイメージが重要です。
そのためには練習している曲をすべてリップロールで歌ってみるという方法もあると思います。
リップロールで歌うと普段よりも息をしっかりと送れらないとできないので、腹式呼吸の練習になると思います。
まとめ:歌が上達したいなら腹式呼吸はマスト
まとめです。腹式呼吸は歌声の基礎となります。
理由は次の通り。
- 全身が活用できる
- 単純に肺活力が上がる
- ブレスコントロールがしやすい
練習は次の流れで行いましょう。
- 息をすべて吐き切って空っぽにする
- お腹を下向きに意識しながら吸う
- いったん止めてキープする
- ゆっくりと吐く【s, h, zを使い分け】
- 息をすべて吐き切り、体を緩める
呼吸の練習をする前には体操など、全身のウォーミングアップをしておくと効果が高まります。
実際に曲を練習するときには、次のことを意識してください。
- フレーズの最後で息を使い切る
- 息継ぎで瞬間的に体を緩める
繰り返しになりますが、息を使い切る→体を緩めることで自然に息が入ってくるというイメージが肝心です。
リップロールでメロディーを歌う練習法も紹介しました。
腹式呼吸は歌が上達したいなら必ずマスターしておきたいところです。
しかし「1人だとどうしても感覚が分からない…」という方もいらっしゃると思います。
そんなときはボイトレを活用してマンツーマンで指導してもらうのも1つの方法で、そのほうが理解がしやすいという人も多いはずです。