合唱ってこんな感じ

合唱の種類(形態・編成)を覚えよう|声・伴奏による違いと魅力【曲紹介あり】

合唱の形態・種類

「混声とか男声、女声合唱ってどんなもの?」
「合唱の種類についていろいろ知りたい」

こんな方に読んでもらいたい記事です。

合唱にはさまざまな「形」があります。

声の性質による、混声合唱、女声合唱、男声合唱という分け方や、伴奏する楽器などの違いなどがあり、それぞれ独自の魅力を持っています。

この記事では、合唱の主な種類や演奏形態の違いを、初心者の方にもわかりやすく解説します。

それぞれの形態における代表的な合唱曲もあわせて紹介しますので、いろいろな曲を聴いてみたい・知りたいという方にも楽しんでいただけると思います。

演奏機会の少ない形態についても触れてみましたので、ここで紹介した曲を知っていれば、「コイツ、やるな」と思ってもらえること受け合いです。

ぜひ最後までご覧ください。

声の性質で分ける方法

合唱の形態には、実はいくつかの分類の仕方があります。

その中でも最も基本的なのが、「声の性質(=音域や声の高さ)」によって分ける方法です。

ここでよく耳にする「混声合唱」「女声合唱」「男声合唱」などの言葉も、この分類にあたります。

それぞれの特徴を見ていきましょう。

混声合唱(こんせいがっしょう)

女声と男声の両方が一緒に歌う合唱形態です。

広い音域を持ち、それによって生まれる豊かで厚みのある響きが魅力です。

もっともポピュラーな形態で、レパートリーも多く、数々の名曲・名演が存在するカテゴリです。

『ぜんぶ』(混声合唱・無伴奏)

それでは混声合唱の作品を聴いてみましょう。

無伴奏というのは、後で説明しますが、ピアノなどの伴奏がつかない、声だけで歌う形態です。

混声合唱ならではの、充実した、そして相澤作品らしい温かなハーモニーが堪能できる作品です。

『河口』(混声合唱・ピアノ伴奏)

続いてはピアノ伴奏がつく混声合唱を聴いてみましょう。

混声合唱らしい重厚なハーモニーとピアノ伴奏のダイナミックさによって、”フィナーレ”の壮大さが実によく表現されています。

なお、本ブログではこちらの記事(『河口』(混声合唱組曲《筑後川》より)練習・演奏のポイント)で演奏のコツも解説しています。

女声合唱(じょせいがっしょう)

女声だけによる合唱形態です。

繊細で透明感のある響きが特徴で、混声合唱にはない柔らかさや軽やかさが魅力です。

低音を補うためにピアノ伴奏が付くことも多く、音域のバランスを取る工夫がなされています。

『ほたるたんじょう』(女声合唱/無伴奏)

まずは無伴奏作品で女声合唱の響きを感じてみましょう。

『ほたるたんじょう』は、派手さはないですが、神秘的で、静寂が美しい作品で、女声合唱の魅力が十二分に活かされています。

『きょうの陽に』(女声合唱/ピアノ伴奏)

続いて、ピアノ伴奏付きの女声合唱です。

《明日のりんご》に収録されている『きょうの陽に』は、女声ならではの柔らかい声や透き通ったハーモニー、しなやかで繊細な表現が魅力的な作品です。

ピアノパートも非常に美しく、多彩な場面を演出していることが分かると思います。

男声合唱(だんせいがっしょう)

女声合唱に対し、男声だけで歌う形態です。

重厚で力強い響きが魅力のひとつですが、実は繊細で美しい表現も可能で、その魅力を活かした作品も多く存在します。

合唱の形態やパートを表すときには、「女性」「男性」という言葉ではなく、
「女声」「男声」という表記を用います。

  • 女声…高音域を担当する声区。性別は問わない。
  • 男声…低音域を担当する声区。性別は問わない。

「性別は問わない」と書いたのは、合唱の分類で大切なのは、生物的な性別ではなく、声の音域(高さ)だからです。

そのため、男性であっても高い声域を持つ人は「女声合唱」に参加でき、逆に、低音域が得意な女性が「男声合唱」で歌うことも可能です。

このように、「女声」「男声」という言葉は性別を指すものではなく、声の高さ・音域をもとにした音楽的な分類を示すものなのです。

『虹』(男声合唱/無伴奏)

まずは無伴奏の男声合唱曲を聴いてみましょう。

無伴奏男声合唱組曲《いつからか野に立つて》に収録されている『虹』という曲です。

荒々しさはなく、むしろモダンなハーモニーが魅力です。

このような表現ができるのは、男声合唱の懐の深さと言えるでしょう。

『神話の巨人』(男声合唱/ピアノ伴奏)

続いてはピアノ伴奏付きの男声合唱です。

男声合唱組曲《海の構図》の中の一曲で、非常に荒々しいピアノパートと男声合唱の迫力がマッチした作品です。

童声合唱(どうせいがっしょう)

子どもの声による合唱形態です。

音域としては女声合唱とほぼ同じで、童声合唱向けに書かれた作品を女声合唱で演奏することもあります。

子どもにしか出せない、澄んだ音色やまっすぐな響きを生かした作品が多く、純粋な表現が魅力です。

『気球に乗ってどこまでも』(童声合唱/ピアノパート)

童声合唱はピアノ伴奏付きの作品を聴いてみましょう。

実に童声合唱らしい、親しみやすく、のびのびと歌える作品です。

手拍子も入って楽しい演奏ですね。

パート数で分ける方法

合唱は、歌う人たちをいくつのグループ(=パート)に分けるかによっても分類されます。

このグループのことを「パート」と呼びます。(詳しくはこちらの記事(【SATB】合唱パートの種類と呼び方|混四・混三・女声・男声での違い)もご覧ください)

2つのパートに分かれて歌えば「二部合唱」、3つなら「三部合唱」、4つなら「四部合唱」と呼びます。

先ほど紹介した「声の性質による分類」と組み合わせて、「女声三部合唱」や「混声四部合唱」といったようにより詳しく表記されます。

ただし、「混声四部合唱」のことは、単に「混声合唱」と呼ぶことが一般的です。同様に「女声合唱」「男声合唱」についても、タイトル上で部数を省略することも多いです。

一方、「混声三部合唱」の場合では、「混声四部合唱」と区別するために、「三部」が明記されます。

また、全員が同じメロディーを歌う場合では、「一部合唱」とは呼ばず、斉唱(せいしょう)と呼びます。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

斉唱(せいしょう)

全員が同じメロディーを歌う形態です。

ハーモニーは生まれませんが、声がそろうことで生まれる一体感や、力強い響きが魅力です。

国家や学校の校歌などにもよく見られる形態で、合唱の原点とも言えるでしょう。

二部合唱(にぶがっしょう)

2つのパートに分かれて歌う形態です。

パートごとに異なる音を歌うことでハーモニーが生まれることが斉唱との大きな違い。シンプルながら、合唱の魅力をしっかりと感じることができます。

混声の場合は「女声+男声」で構成され、混声二部合唱と呼ばれます。

女声二部合唱では「ソプラノ+アルト」、男声二部では「テノール+バス」に分かれます。

小学校や初心者向けのレパートリーで多く見られる形態です。

『未知という名の船に乗り』(同声二部合唱/ピアノ伴奏)

ピアノ伴奏付きの同声(女声)二部合唱です。

最初はユニゾンで2つのパートが同じ音を歌っていますが、途中からハモったり、メロディーをずれて歌う掛け合いとなっていくのが分かりますね。

三部合唱(さんぶがっしょう)

3つのパートに分かれる形態です。

二部合唱よりもハーモニーの幅が広がり、より複雑な響きを楽しめます。

混声では「ソプラノ・アルト・男声」の3パート構成が基本。変声期に差し掛かる男子生徒も歌いやすいように考えられた形態で、中学校の合唱曲に多く見られます。

女声では「ソプラノ・メゾソプラノ・アルト」、男声では「テノール・バリトン・バス」という構成が一般的です。

『時の旅人』(混声三部合唱/ピアノ伴奏)

『時の旅人』は中学生向けのレパートリーとして非常に有名です。

極端に高い音や低い音は使われていないものの、転調やピアノパートの音型の変化によって巧みに場面を展開させ、ドラマチックな音楽を構成しています。

曲の終盤の”いまきみと”のメロディーは、男声パートの人数が多くなりやすい混声三部合唱の特徴がよく活かされています。

四部合唱(しぶがっしょう/よんぶがっしょう)

4つのパートに分かれる形態です。

混声の場合は「ソプラノ・アルト・テノール・バス」に分かれ、それぞれの頭文字を取って SATB(エス・アー・テー・ベー) と呼ばれます。この読み方は英語表記をドイツ語風に読んだものが定着した形です。

混声四部合唱は最もスタンダードな形態で、単に「混声合唱」と言えば通常はこれを指します。低音から高音まで広い音域を持ち、非常に充実した響きと、表現力を備えています。

男声合唱でも四声での構成が一般的で、「トップテナー・セカンドテナー・バリトン・バス」に分かれます。

女声合唱の場合は、「ソプラノⅠ・ソプラノⅡ・アルトⅠ・アルトⅡ」といった表記が多く見られます。

『水汲み』(混声四部合唱/無伴奏)

混声合唱組曲《心象スケッチ》に収録されている『水汲み』は、後述するdivisiのない純粋な四部合唱の作品です。

シンプルながら、宮沢賢治の見た世界観が、実に美しく描かれている名曲です。

混声合唱の良さがとても良く出ています。

より多いパート数の場合

特に難しい曲では多いのですが、実際の合唱曲では、楽譜に「divisi(ディヴィジ、div.とも)」という指示が書かれており、各パートがさらに2つ以上に分かれることがあります。

このようにしてパート数が4パート以上になっても、もともとの形が混声四部合唱であれば、依然として「四部合唱」としてみなされます。

また、そもそも最初から5パート以上になっている曲も存在します。例えば「SSAATTBB」のように、8パートになっているような場合です。

このような場合でも、「八部合唱」とは呼ばず、単に「混声合唱」と表現されることが一般的です。

Jubilate Deo(混声合唱(8パート)/無伴奏)

パート数の多い合唱曲数として、外国語(ラテン語)の作品になりますが、ガブリエリによる『Jubilate Deo』を紹介します。

これはソプラノ・アルト・テノール・バスがそれぞれ2パートに分かれた合計8パートによる作品です。

紹介する音源は、これを8人で歌っているので八重唱ということになりますが、通常は大人数で歌われることが多いと思います。

聴いてもらうと、8つのパートが順番に入ってメロディーを歌っているのが分かると思います。

群に分かれる場合

さらに発展的な形として、パートだけでなく 「群(ぐん)」に分かれて歌う合唱形態もあります。

「群(ぐん)」とは、合唱のひとまとまりのグループのことです。例えば混声なら「ソプラノ・アルト・テノール・バス」のセットを1群とし、それを2つ持てば「二群合唱」になります。「ダブル・コーラス」と呼ぶこともあります。

さらには、三群・四群といった大規模な作品も存在し、迫力のある響きや空間的な広がりを活かした壮大な音楽が展開されます。

通常の合唱では、パート同士の掛け合いが主になりますが、群に分かれた合唱では「合唱団どうしの掛け合い」が生まれ、他の形では味わえない効果が生まれます。

『Credo』(混声合唱(二群)/無伴奏)

二群による混声合唱作品を紹介します。

ドイツ・ロマン派の作曲家、ラインベルガーによる《Missa in Es (Cantus Missae) Op.109》より『Credo』です。

2つに書かれた合唱体が掛け合うように歌い合い、音楽を進めていくのが分かると思います。

『あなた』(混声合唱(三群)/ピアノ伴奏)

三善晃作曲の『あなた』は、「三群の混声合唱体とピアノのための」と第される通り、非常に大規模な作品です。演奏にも相当な技術が必要とされます。

音源リンク

※終盤部分の抜粋になります。

『Hora est』(混声合唱(四群)/オルガン伴奏)

『結婚行進曲』などでで有名なメンデルスゾーンによる作品です。

曲の序盤(3分くらい)までは男声合唱、それから女声が入って混声合唱となります。

『Spem in Alium nunquam(40 声のモテット)』(混声合唱(八群)/無伴奏)

パートの数が5つ以上になることもあると先ほど書きましたが、なんと40パートで歌う作品もあります。せっかくなので紹介しておきます。

ルネサンス期の作曲家、タリスによる『Spem in Alium nunquam』です。

動画を見てもらうと分かる通り、この曲はメンバーを小さなグループに分けて歌っています。小合唱団は8つあり、それぞれが5パートに分かれています。なので、合計8×5=40パートあるということになります。

伴奏で分ける方法

合唱の形態は、伴奏の有無や、どのような楽器が用いられるかによっても分類できます。

ここで言う「伴奏」は便宜上の呼び方であり、実際にはピアノやオーケストラのパートも、合唱と対等な1パートとして扱われることが多くあります。

そのため、作品名では「ピアノ伴奏付き合唱」とは言わず、「○○合唱とピアノのための」などの表現が一般的です。

無伴奏(むばんそう)

文字通り、楽器の伴奏を伴わない形態です。

合唱ならではのハーモニーが最も純粋に楽しめる形態と言えます。

無伴奏で演奏することを「アカペラ」と呼ぶことも多いです。

「アカペラ」とは、楽器を使わずに、声だけで演奏する音楽のことです。

イタリア語の「a cappella」が語源で、「教会風に」という意味があります。

本来は教会音楽から派生した無伴奏の合唱様式を指しましたが、現代ではポップスやロックなど、さまざまなジャンルの音楽を歌う際にも用いられます。

ピアノ伴奏

ピアノを用いる合唱作品は、楽器伴奏の中でも最もレパートリーが多い形態です。

特に日本の合唱作品では、「無伴奏」か「ピアノ伴奏」かという二択と言ってよいほど、ピアノ伴奏作品が広く親しまれています。

ピアノが加わることで合唱をしっかり支え、音楽の土台や流れを明確にしてくれるため、初心者でも取り組みやすい曲も多いです。

一方で、より高度な作品になると、ピアノパートは単なる「伴奏」にとどまらず、独自の音楽的役割を担うことも多くなってきます。

そういった作品においては、曲のタイトルに「ピアノのための」などとつくことがあります。

オーケストラ伴奏

管弦楽と合唱が共演する壮大な形態です。

大規模なコンサートで取り上げられることが多く、クラシック音楽の分野では重要な位置を占めます。

代表的な作品としては、ベートーヴェン『第九交響曲(合唱付き)』、モーツァルト『レクイエム』、ヴェルディ『レクイエム』、オルフ『カルミナ・ブラーナ』などが挙げられます。

『くちびるに歌を』(混声合唱/オーケストラ伴奏)

オーケストラ付きの曲を紹介しておきたいと思います。

『くちびるに歌を』は作詩:フライシュレン/訳詩・作曲:信長貴富による作品です。

もともとはピアノ伴奏の曲ですが、後にオーケストラ伴奏にも編曲されました。

ちなみに歌詩は日本語とドイツ語の両方を歌っています。

ギター伴奏

数は多くありませんが、ギターによる伴奏もありますので、曲を例示しておきます。

『黄色い鳥のいる風景』(混声合唱/ギター伴奏)

ギター伴奏のついた作品です。

曲の前半はアカペラですが、後半になってギターが入ります。

ギターが入ることでぐっと雰囲気が変わるのが感じられると思います。

『未来へ』(混声合唱/ピアノ伴奏/ギター伴奏)

ピアノとギターによる伴奏の作品です。

ギターの音色が爽やかな曲調を引き出しています。

パーカッション伴奏

合唱には無いリズム感をプラスしてくれるので、非常に面白い演奏効果が期待できます。

『Laudate Dominum』(女声合唱/タンバリン)

ハンガリーの現代作曲家、ジェンジェシによる女声合唱作品です。

曲の後半になってタンバリンが登場します。

まとめ:合唱形態で覚えておきたいこと

それでは今回のまとめです。

合唱の種類/形態
  • 合唱を「声の性質」で分類した場合、女声・男声・混声合唱がある。
  • 無伴奏の形態をアカペラという。
  • 伴奏やパートの数によっていろいろな曲がある。

今回の内容を知っておくと、次のように合唱曲に興味を持つきっかけになると思います。

  • 「今日は混声合唱を聞いてみよう」
  • 「ピアノ付きの男声合唱はどんな曲があるんだろう?」

曲を聞くことは合唱の経験値になり、上達スピードも上がります。

いろいろトライしてみてください。